弁護士と税理士の関係は?免除制度から仕事・収入・試験難易度の違いまで徹底解説!
「弁護士と税理士のダブルライセンスって役に立つのかな?」
「弁護士になると税理士登録できるって聞いたけど、税理士試験の受験は不要なの?」
士業系資格の中でも高い人気を誇る弁護士と税理士。何か資格を取りたいと考えている人の中には弁護士や税理士が気になっている人も多いはずです。
そして中には両方の資格に興味があって、弁護士と税理士の相性や違いを詳しく知りたい人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は弁護士と税理士の共通点や違いについて詳しく解説していきます!
この記事を読めば両方の資格の特徴をしっかりと理解でき、特に弁護士資格を取得すれば税理士登録もできて資格として非常に魅力的であることが分かるはずです!
弁護士と税理士の共通点や違いについてざっくり説明すると
- 弁護士は法律の専門家、税理士は税務の専門家でともに士業系の国家資格
- 弁護士と税理士の業務は全く異なるものの相続など関連する業務も多い
- 合格まで何年もかかることが多い点は同じだが難易度は司法試験のほうが高い
弁護士と税理士の違いと共通点
弁護士と税理士はどちらも士業系の国家資格であり、様々な資格の中でも最難関・最高峰に位置付けられています。
弁護士は法律全般、税理士は税法のスペシャリストであり、有資格者にしかできない独占業務があるなど共通点も多い法律系資格です。
また個人の日常生活や企業の経営活動の中で問題が生じた際には弁護士と税理士の両方に相談するケースも多く、仕事内容でもお互いに影響し合っている資格と言えます。
試験制度でもこの点は色濃く反映されているので、まずは仕事内容や資格試験における弁護士と税理士の共通点・相違点を確認しておきましょう。
弁護士は無試験で税理士登録可能
弁護士は士業系資格の中でも最高峰に位置付けられ、弁護士資格を持っていれば様々な資格の登録が可能です。具体的には以下のような資格を登録することができます。
- 税理士
- 弁理士
- 社労士
- 行政書士
- 海事補佐人
弁護士が上記の資格の登録を行う際には無試験で登録が可能なので、税理士登録をする際にも税理士試験を受験したり合格したりする必要はありません。弁護士が税理士の上位資格に位置付けられていることや資格としての格の高さが伺えます。
ただし弁護士として登録する際に登録料や年会費がかかるように、税理士登録をする際にも費用がかかります。登録料5万円や登録免許税6万円など決して安くはないので、実際に登録するかどうかは費用負担も考慮した上で検討が必要です。
弁護士試験には税理士資格による免除はない
弁護士は税理士として登録できて業務を行えますが、逆に税理士が無試験で弁護士として登録することはできません。あくまで試験の免除制度があるのは弁護士だけです。
税理士資格を持っていても司法試験で優遇されることはなく、税理士が弁護士になる場合には他の人と同様に通常のルートで資格取得を目指すことになります。法科大学院を修了するか予備試験に合格し、その上で司法試験に合格しなければいけません。
弁護士も税理士も資格取得まで何年もかかることが多い資格ですが、免除制度があるかないかは大きな違いと言えます。
ダブルライセンスを取ると業務内容は?
弁護士と税理士は非常に親和性が高い資格です。ダブルライセンスによる様々なメリットがあり、弁護士の高度な専門性と税理士の業務範囲の広さがそれぞれ役立ちます。
例えば個人顧客から相続の相談を受けた場合で、相続人の間で遺産分割の話し合いがまとまらずトラブルになるようなケースが典型的な事例です。
弁護士としてトラブル対応を担う一方、税理士登録をしておけば相続税申告の手続きも進めることができます。
法人顧客からの依頼の場合も企業を法務面から支えつつ法人税申告もサポートできるなど、両資格を保有することで切れ目なく業務を提供できる点が大きなメリットです。
その一方で税理士登録している弁護士は70人に1人程なので決して多くはありません。
税理士登録が弁護士におすすめの理由
税理士登録までしている弁護士が少ない背景には、実務経験がない中で税理士として登録して業務を開始することに躊躇するケースなどがあるものと考えられます。
しかし税理士登録をしている弁護士が少ないからこそ仕事を獲得できるチャンスと考えることもできるはずです。特に地方ではどちらの士業も人数が少ないため、ダブルライセンスによってビジネスチャンスが大きく広がります。
また実務経験はそもそも顧客相手に業務を行う中でこそ積めるものなので、実務経験がないことを理由に税理士登録を躊躇するのは順序が逆というものです。
これは税理士登録に限らず弁護士が社労士や弁理士などの登録をする際にも言えることですが、無試験で免許登録ができる制度はぜひ有効に活用して下さい。
弁護士と税理士の仕事の違い
法律全般が対象領域になる弁護士は業務範囲も非常に広くて担える仕事の種類も広範囲に及びます。一方で税理士の場合は税金という専門分野に特化していることもあり、税務書類の作成・確定申告などの申請手続き・税務相談などが業務の中心です。
以下では弁護士と税理士の具体的な業務内容や違いについて解説していきます。
弁護士の業務内容
私たちの日常生活において治安が一定に保たれているのは法律という決まりがあるからです。社会の中で法律が守られて不正が起きないように役割を果たすのが弁護士であり、法律の専門家がいることで世の中の秩序が保たれています。
権利の衝突が起きそうな場合に調整を行ったり、実際に問題や不正が起きた場合に裁判で被害者や加害者を弁護して権利を守るのが弁護士の仕事です。
問題が起きた後に主に機能を発揮する警察や裁判所とは異なり、弁護士は法的な問題が起きる前から市民の間に入って法律面でのサポートを行うことも多いと言えます。
弁護士は私たちの普段の生活にも関わる身近な存在であり、日常生活に関係する様々な法律を扱う専門家です。業務内容は多岐に渡りますが、大きく分けて民事事件と刑事事件の2種類があります。
民事事件について
民事事件とは個人の間で起きるトラブルのことです。知人とのお金の貸し借りに関する問題や夫婦間での離婚問題などが該当します。
これらの事件が起きて訴訟や和解に向けた交渉を行う際には法的な知識が欠かせません。弁護士に依頼するのが一般的で、訴訟を有利に導く法的な理論構築を依頼者の代わりに行ったり、不安を抱える依頼者からの様々な相談に応じるのが弁護士の仕事です。
弁護士は頼れる専門家として相談者に安心感を与える存在でもあります。
刑事事件について
刑事事件とは警察や検察などが捜査して刑罰を科すかどうかを裁判で決める事件のことです。傷害や強盗などの犯罪が該当します。当事者がともに私人である民事事件とは違って刑事事件では訴える側は国の機関です。
刑事事件における弁護士の役割としては例えば被告人の弁護を行って冤罪を防ぐことが挙げられます。法律を正しく解釈・運用して処分内容や判決を適切な内容に導くのも弁護士の役割であり、拘留されている人の権利を守るのも弁護士の大切な仕事です。
弁護士の詳しい仕事内容は下記の記事をご覧ください。
税理士の業務内容
税理士には資格保持者しかできない独占業務があり、以下の3つが該当します。
- 税務代行
- 税務書類の作成
- 税務相談
1点目の「税務代行」はクライアントの代わりに税務署に対して申告を行う業務で、法人税や所得税などの税金の申告手続きを代行して確定申告や決算をサポートします。
2点目の「税務署類の作成」は申告時の必要書類をクライアントに代わって作成する業務です。不慣れな人には分かりにくい税務書類の記入や作成を代わりに行います。
3点目の「税務相談」は税金の計算方法や節税対策について相談を受けるもので、特例制度の活用などを提案して税額を安くできるように顧客を税務面から支える仕事です。
さらに独占業務以外にも税理士には様々な仕事があり、税務の専門家としての業務は広範囲に及びます。記帳代行によって顧客の事務負担を軽減したり、試算表や決算書を作って経営数値を視覚化して素早い経営判断をサポートするのも税理士の仕事です。
税金を安くできる制度の利用要件を満たすようにコンサルティングを行ったり、経営面に関するアドバイスや会社の運営方針に関する助言を行うことも税理士の重要な役割となっています。
税務や会計は企業の経営と深く関わる部分なので、税理士は経営者にとって最も頼れる相談相手である場合が多いです。
税理士の詳しい仕事内容は下記の記事をご覧ください。
弁護士と税理士の業務の共通点
弁護士と税理士は専門分野を持つスペシャリストという点では共通していますが、両者の業務内容は全くの別物です。弁護士が無試験で税理士登録できるとは言っても、弁護士が普段から税理士の仕事に関わったり理解しているというわけではありません。
そもそも弁護士が税理士登録できるのは、終戦後に税理士の数が足りず人数を増やす必要があったからです。司法試験では税務の知識は問われず弁護士が税金の実務を理解しているわけではないので、大半の弁護士は会計・税務の分野では素人と言えます。
一方で相続関連業務など弁護士・税理士両方の知識が必要になる場面も少なくありません。弁護士が税理士登録すれば法務・税務の両方に対応でき、顧客から依頼された時に法務・税務の仕事を一括受託できるダブルライセンスは大きなメリットになります。
弁護士と税理士は相続などの専門知識が必要な分野で活躍する点で共通し、業務分野が別物で重ならないからこそ弁護士が税理士登録をする意味は大きいと言えるでしょう。
弁護士に依頼することで相続トラブルに?
弁護士は業務範囲が広いだけに全ての弁護士が全分野に強いわけではありません。弁護士に依頼する際は得意分野を確認することが大切で、相続では特に注意が必要です。
たとえば相続人が複数人いて被相続人が遺言を残していない場合には遺産分割協議を行いますが、弁護士は協議に関わって遺産分割協議書を作成する権限を持っています。
しかし相続に詳しくない弁護士の場合、後々にトラブルの原因になる事項が協議結果や内容に含まれていても気付けず、相続人に対して適切なアドバイスを行うことができません。依頼された内容を文面に落とし込むだけの単なる作業になる可能性があります。
一方で税理士の場合には遺産分割に関して意見する権限がそもそもありません。そのためこう言ったトラブルが起きるリスクは低いと言えるでしょう。
どっちが年収が高いの?
弁護士も税理士も平均年収は1,000万円前後です。企業に勤める勤務型なのか事務所を構える開業型なのか、士業として駆け出しなのかベテランなのかなどで収入額に差はありますが、平均的には収入面で両士業に差はないと言えます。
また就職や転職においてどちらの資格も非常に有利で、職業としての安定性という面でもほとんど変わりません。法律事務所や税理士事務所に勤務したり一般企業や公的機関に採用されるケースも多く、自ら事務所を開設して独立開業することも可能です。
資格・職業として魅力的である点は弁護士も税理士も同じと言えます。
各資格の詳しい年収事情は下記の記事をご覧ください。
どっちの試験難易度がより高いの?
資格取得後の業務や社会的な役割を理解することと併せて、資格取得を目指す上で大切になるのが試験の難易度や必要な勉強時間の目安です。
以下では弁護士・税理士それぞれの試験の仕組みや合格率、合格するために必要な勉強時間の目安を紹介していきます。
そもそも弁護士になるには
弁護士になるには司法試験に合格する必要があり、司法試験を受験するためには以下のいずれかの条件に該当する必要があります。
- 法科大学院修了
- 司法試験予備試験合格
そもそも司法試験を受験するには上記どちらかの受験資格を満たさなければならず、どちらのルートで目指す場合も決して簡単ではありません。その上で司法試験に合格する必要があるので、弁護士は数ある資格の中でも最難関資格に位置付けられています。
そもそも税理士になるには
税理士になるための方法にはいくつかありますが、「税理士試験5科目合格+実務経験2年以上」によって税理士資格を取得するのが一般的です。
そして税理士試験を受けるには学歴・資格・職歴いずれかの受験資格を満たさなければいけません。学歴や職歴が該当しない場合は事前に簿記1級などに合格する必要があり、最終的に税理士試験に合格するまでにより多くの年月がかかることになります。
どちらの試験の合格率が高い?
直近7年間の弁護士と税理士の合格率を比較してみましょう。
年度 | 税理士試験の合格率 | 司法試験の合格率 |
---|---|---|
2015年 | 18.1% | 23.1% |
2016年 | 15.8% | 22.9% |
2017年 | 20.1% | 25.9% |
2018年 | 15.3% | 29.1% |
2019年 | 18.1% | 33.6% |
2020年 | 20.3% | 39.2% |
2021年 | 18.8% | 41.5% |
上記の税理士試験の合格率は全体の合格者数を受験者数で割った値となります。
科目ごとに合格率のばらつきはあるものの、概して10%台で推移しているといえるでしょう。
一方で司法試験の合格率は近年上昇していて、昨年2020年の試験では39.2%と40%に近づく勢いを見せました。合格率だけを見れば受験者のうち3人に1人以上は合格している状況です。
ただし司法試験よりも税理士試験のほうが合格率が低いからと言って、弁護士のほうが資格として簡単というわけではありません。
司法試験は受験資格の取得が厳しく、それゆえに母集団のレベルが税理士試験と比較して圧倒的に高くなっています。
その中でのハイレベルな競争に打ち勝って合格を掴み取る必要があるので、難易度としては司法試験のほうが圧倒的に難しいです。
次の「司法試験、税理士試験の勉強時間」でこの点を解説します。
各試験の詳しい難易度は下記の記事をご覧ください。
司法試験、税理士試験の勉強時間
税理士試験に合格するために必要な勉強時間の目安は3,000時間前後と言われていますが、どれだけ勉強が必要かは人によって差があります。
大学で税法を専攻していたり社会人になってから会計・税務の実務経験を積んでいる人であれば短い勉強時間でも対応できますが、知識が全くない人の場合はより多くの勉強時間を確保しなければいけません。
ただし前提知識の有無に関わらず試験合格に向けて抜かりない勉強が不可欠であることに変わりはなく、5科目合格するまでに何年もかかることが多いのが税理士試験です。
一方で弁護士資格を取得するのに必要な勉強時間ですが、初学者が司法試験予備試験に合格して司法試験を受験する場合、そもそも予備試験に合格するまでに1,000~5,000時間程の勉強時間が必要になります。
仮に社会人が働きながら予備試験合格を目指す場合には、平日3時間・土日10時間で週30~40時間の勉強時間を確保したとしても最短1年・通常2~5年かかる計算です。
裏を返せば最低でも週30~40時間の勉強時間は確保すべきであり、司法試験を受験できる段階にたどり着くまでにそもそも相当な努力をしなければいけません。
司法試験を受験するまでのハードルが非常に高く、さらに3人に1人しか合格できない司法試験に向けた勉強も必要になるなど、税理士試験よりも司法試験のほうが明らかに難易度が高くなっています。
各試験の勉強時間は下記の記事も併せてチェックしてください。
税理士と弁護士の試験内容の比較
税理士と弁護士では試験範囲や試験方式にも違いが見られるので、以下ではそれぞれの試験について概要を紹介します。資格Timesでは税理士試験や司法試験に関する様々な記事を掲載しているので、詳しく知りたい方は他の記事も参考にしてみて下さい。
試験範囲
税理士試験は各科目とも100点満点で60点以上で合格です。必須科目である会計2科目(財務諸表論・簿記論)に合格し、選択必須科目(法人税・所得税)と選択科目(相続税や住民税、消費税、事業税など)の中から税法3科目に合格する必要があります。
一方で司法試験では短答式試験と論文式試験が実施され、短答式試験は「憲法」「民法」「刑法」の3科目が、論文式試験は「公法系科目」「民事系科目」「刑事系科目」「選択科目」の4科目が行われます。
短答式試験・論文式試験ともに合格ラインは年によって若干変動しますが、短答式試験60%前後・論文式試験45%前後が合格点の目安です。
試験方式
税理士試験を受験するには「学歴・資格・職歴」のいずれかの受験資格を満たす必要があり、会計や税法の規定に関する論述問題や税額を求める計算問題が出題されます。
司法試験は法科大学院を修了または司法試験予備試験に合格した者が受験でき、短答式試験は選択式問題や正誤判定問題、論文式試験では論述問題が出題されます。
弁護士と税理士の共通点や違いまとめ
弁護士と税理士の共通点や違いまとめ
- 弁護士と税理士はそれぞれ法律・税務という専門分野で活躍する士業系国家資格
- 弁護士は無試験で税理士登録が可能だが業務内容自体は両士業で全く異なる
- 弁護士も税理士も超難関資格で司法試験のほうがより難易度が高い
今回は弁護士と税理士の共通点や違いについて紹介しました!
弁護士の資格を取れば税理士登録ができることや業務の幅が広がって社会で活躍できる可能性が上がることが理解できたと思います。
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