弁護士と公認会計士の関係は?難易度差やダブルライセンスのメリットまで解説!
弁護士と公認会計士の仕事をしている方の中には、両方の資格を持ち活躍している方もいます。いわゆるダブルライセンスですが、なぜ両方の資格を取る方がいるのでしょうか。
ここでは弁護士と公認会計士のダブルライセンスについて、ダブルライセンスを持つ方がいる理由から取得メリット、実際に取得する際の難易度についてまで解説します!
弁護士と公認会計士のダブルライセンスについてざっくり説明すると
- 弁護士と公認会計士は仕事上のかかわりが深い
- ダブルライセンス保持者の需要が高まってきている
- 弁護士と公認会計士はどちらも高難易度の資格
- ダブルライセンスを取るには計画的な試験準備が重要
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弁護士と公認会計士の関わりとは?
弁護士と公認会計士はそれぞれ法律系資格、会計系資格の中で最高難易度を誇る資格です。どちらか片方を取るだけでも大変な資格ですが、両方の資格取得を目指す方がいます。
これは、弁護士と公認会計士の仕事にある関わりが関係しています。まずはこの2つの資格と仕事がどういうものなのかを知っていきましょう。
公認会計士は受験資格が存在しない
公認会計士は難関国家資格の一つですが、受験資格が存在しません。いつでも、だれでも試験を合格すれば公認会計士になれます。弁護士の司法試験の様に、学歴等によって受験資格が限られることが無いのです。
しかし、公認会計士は仕事をするためには試験合格だけでなく、研修期間が必要です。公認会計士として仕事をするには、以下の条件を満たさなくてはならないのです。
- 2年間の実務経験
- 3年間の実務補修
この全てをこなしたうえで、修了考査に合格しなくてはならないのです。公認会計士になるには、合格後の研修と実務を長い時間をかけてこなしていく必要があります。
公認会計士は弁護士とは違い、合格してからが大変な資格でもあるのです。
弁護士は試験を受けるまでが大変
では、弁護士資格の方はどうなのでしょうか。弁護士資格の場合、公認会計士とは違い、受験資格を得るまでが大変な資格となります。
弁護士の資格試験である司法試験には受験資格があります。この受験資格を満たすには、以下の条件をクリアしなくてはなりません。
- 法科大学院(ロースクール)課程の修了
- 司法試験予備試験の合格
一般的な受験資格を満たすルート
一般的には大学の法学部に入学し、法科大学院課程の修了を目指す方が多いです。司法試験予備試験は受験資格が無いため、資格取得までの時間を短縮する目的で受ける方もいます。
どっちもかなり大変な条件です。この条件を満たした上で司法試験に合格し、弁護士会に入会することで初めて弁護士を名乗れるようになります。
ダブルライセンスのメリットは?
弁護士と公認会計士は、資格を取得し仕事が出来るようになるまでに、たくさんの時間と努力が必要な仕事です。
どちらか片方を取得するだけでもかなり大変なのに、ダブルライセンスを取る方がいるのはなぜなのでしょうか。
これは、弁護士と公認会計士の仕事が、お互いに深く関わる関係にあるためです。弁護士と公認会計士の仕事における関係性を解説していきます。
弁護士と公認会計士は仕事上の共通項がある
弁護士は法律に関係した仕事をこなし、公認会計士は企業の会計に関する仕事を行います。どちらも企業の根管に関わる仕事ですから、仕事内容によっては弁護士と公認会計士が協力して仕事を進めなくてはならない場面もあるのです。
例えば、弁護士と公認会計士が一緒に仕事をする場面として、企業の買収、つまりM&Aがあります。
企業の買収はただお金を払えばいいというものではありません。法律と税務、2つの面から買収する企業を調べる必要があります。この時、法律の面を弁護士が、税務の面を公認会計士が調査を行うのです。
ダブルライセンスを取得していればより専門性の高い仕事が出来る
この時、弁護士と公認会計士が協力して仕事を進めることになりますが、片方がもう片方の知識が無い状態で調べると、どうしても調査内容に不足面が出ます。
しかし、弁護士と公認会計士の知識があれば、調査内容に不足が出てしまうのを防げる のです。
法律と税務は元々共通点や繋がりが多いです。M&Aに限らず、両方の知識が必要な場面が発生します。この時に対応するために、ダブルライセンスを取得している方がいるのです。
ほとんどが会計士から弁護士になる
この2資格のダブルライセンサーは、キャリアアップとして公認会計士から弁護士を目指した方がほとんどとなっています。
公認会計士は主に企業等の会計を行う仕事ですから、仕事の殆どは事務作業になります。仕事内容はかなり高度で複雑ですが、作業自体は単調になりがちです。
一方、弁護士は事務作業だけでなく、実に様々な業務をこなす必要があります。知的好奇心や向上心が強い方は、この弁護士の仕事のスタイルに惹かれて、キャリアアップとしてダブルライセンス取得を目指す場合があるのです。
実際にダブルライセンスしている人の声
資格Timesでは実際に公認会計士として活躍された後に、見事司法試験に合格して弁護士になられた方へインタビューを行っています。
弁護士の仕事をする上で、公認会計士の知識がどのように生きるのかや、公認会計士と弁護士それぞれの働き方・年収事情までお伺いすることができました。
弁護士と公認会計士のダブルライセンスに興味がある方はぜひご覧ください。
弁護士と公認会計士の仕事の相違点
業務上、協力して仕事をこなすこともある弁護士と公認会計士ですが、それぞれの仕事そのものは大きな違いがあります。
ここで弁護士と公認会計士の仕事における相違点を確認しておきましょう。
弁護士の仕事内容
まずは、弁護士の仕事内容です。
弁護士の仕事は法律の専門家として、人々や企業の法律相談から、刑事事件の捜査や刑罰の決定に関わる等、実に様々な業務をこなします。
担当する事件によって行う業務は違いますが、共通して行う仕事内容をまとめると、以下の様になります。
- 依頼人の権利を守る
- 法律において不正が行われていないか調査・監視する
社会が求めている弁護士の役割
日本は法律によって様々な権利が守られている法治国家です。多くの人の平和と権利を守るため、日本の法律は膨大かつ複雑に作用します。これを一般人が理解し、正しく使うのは困難です。
弁護士はこの膨大かつ複雑な法律を正しく理解し、法律の力で人々をサポートするのが仕事となります。また、社会を監視し、法律違反や不正が行われていないか調べることも重要な仕事です。
公認会計士の仕事内容
次は、公認会計士の仕事内容です。公認会計士は企業の財務諸表が適切に作成されているかを監査するのが仕事になります。つまり、企業の財務における監査です。
この監査は、企業が法律に則って経営しているかを財務の面からチェックし、不正を防ぐために行われます。
万が一不正があれば、株式等市場にも影響が出てしまいます。もちろん、企業や企業の取り扱う業種に対する社会的信頼にも影響を与えることになります。
公認会計士は、企業が適切な経営をし、正しく財務諸表を作成しているかを確認することで、社会的な混乱を防ぐ仕事なのです。
共通点もある?
弁護士と公認会計士には共通点があります。先程も触れましたが、M&Aの様に弁護士と公認会計士が協力し合って仕事をしていく場合もあります。
この他、以下のケースでは弁護士でも会計士としての知識や技術が必要になります。
- 株や株価の訴訟
- 損害賠償請求の発生
内容を見ると分かるのですが、どれも法律と会計、税金が関係しているケースばかりです。ダブルライセンスの取得を考える方が多いのは、この共通点の多さも関係しています。
両資格保有者のみの事務所も?
最近は、弁護士と公認会計士の両方の資格保持者のみで構成されている事務所も出てきました。
元々、ダブルライセンスの価値というのは分かりにくいとされていました。しかし、法律と財務の高い専門的知識や、2つの要素を1つの事務所に任せられる点から、ダブルライセンスの価値が徐々に注目されるようになりました。
こうした背景から、両資格保有者だけの事務所は年々市場価値が高まっている傾向にあります。
年収の比較
市場価値が高まっているダブルライセンス保持者ですが、実際に働いた場合の年収はどうなるのでしょうか。年収の大体の目安として、弁護士と公認会計士の平均年収をご紹介します。
二つの資格の平均年収はこの様になります。
資格 | 平均年収 |
---|---|
弁護士 | 1,000万円前後 |
公認会計士 | 892万円 |
これは勤務先によって多少の変化はありますが、平均的なサラリーマンの年収に比べるとかなり大きな金額であることが分かります。
しかし、士業は基本的に本人の実力によって年収が決まります。これは弁護士も公認会計士も例外ではありません。実力を発揮できなければ、年収の金額が平均を下回る可能性もあるのです。
弁護士と公認会計士はどっちが難しい?
年収の高さと需要の高まりを見ると、弁護士と公認会計士のダブルライセンスのメリットをより具体的に感じられるようになります。
しかし、どっちの資格もかなり難易度が高く、ダブルライセンスともなればその難易度はより高くなります。高い難易度の資格に挑戦するには、資格の内容を分析し、計画的に行動しなくてはなりません。
弁護士資格と公認会計士の合格率や勉強時間を元に、資格難易度の解説と比較を行っていきます。参考にして下さい。
試験の合格率を比較
まずは合格率を見ていきましょう。2014年度~2022年度のそれぞれの合格率を表にまとめました。
年度 | 公認会計士合格率(%) | 司法試験合格率(%) |
---|---|---|
2015 | 10.3 | 23.1 |
2016 | 10.8 | 22.9 |
2017 | 11.2 | 25.9 |
2018 | 11.1 | 29.1 |
2019 | 10.7 | 33.6 |
2020 | 10.1 | 39.2 |
2021 | 9.6 | 41.5 |
2022 | 7.7 | 45.5 |
合格率で見ると公認会計士の方が低いため、司法試験よりも難しく思えるかもしれません。
しかし、最初に触れたとおり、司法試験には受験資格があり、それを満たす必要があります。それを考えると、合格率だけを見て一概にどちらが高い、とは言えなくなります。
司法試験の場合は受験資格を満たす必要がある
司法試験の受験資格を得るためには、法科大学院(ロースクール)課程の修了か、司法試験予備試験の合格のどちらかを満たさなくてはなりません。
法科大学院の入試はかなり難易度が高く、何度も受験している方もたくさんいます。司法試験予備試験も2014年度~2018年度の合格率を見ると3~4%台がほとんどと、こちらもかなりの難易度であることが分かります。
勉強時間はどっちが多い?
では、試験勉強にかける時間はどうでしょうか。それぞれの勉強時間をまとめると、以下の様になります。
- 公認会計士合格にかける勉強時間:約4,000時間以上
- 司法試験合格にかける勉強時間:3,000~8,000時間以上
さらに、司法試験予備試験を経由して司法試験に挑戦する場合、司法試験予備試験に合格するための勉強時間が必要になります。司法試験予備試験合格にかける勉強時間は、1,000~5,000時間かかります。
どちらも他の資格試験と比べて、多くの時間をかける必要があります。特に、弁護士資格は受験資格が設けられている分、勉強時間もより多く必要です。
ダブルライセンスを取得するには、この膨大な勉強時間を計画的に確保し、運用していく必要があります。
公認会計士の勉強時間については、以下の記事を参考にしてください。
公認会計士試験と司法試験の内容を比較
では次に、公認会計士試験と司法試験の試験範囲を見てみましょう。合格率や勉強時間、試験範囲を見れば、自分が試験に挑戦する時、受験に向けての計画をどうたればいいかも分かります。
試験範囲と合わせて免除制度についても触れていくので、そちらも参考にして下さい。
試験範囲
まずはそれぞれの試験範囲について触れていきます。試験のやり方や仕組みについても触れていくので、しっかり覚えるようにしましょう。
公認会計士試験の試験範囲
公認会計士の試験は、9つの科目から問題が出されます。この内、4つは選択科目となりますので、実質問題を解くのは6科目となります。必須科目と選択科目をまとめた図がこちらです。
必須科目 | 選択科目 |
---|---|
財務会計学 | 経営学 |
管理会計学 | 経済学 |
監査論 | 民法 |
企業法 | 統計学 |
租税法 |
公認会計士試験の試験方法
次に、試験のやり方ですが、公認会計士試験は2つの方法で試験が行われます。それが以下の2つです。
- マークシート方式の短答式
- 記述形式の論文式
公認会計士の試験は、最初に短答式試験に挑戦します。この短答式試験に合格しなければ、論文式の試験は受けられません。
公認会計士試験は、2回試験を受けなくてはならないのです。
必須科目は名称通り必ず受ける必要がありますが、選択科目はこの4つの中から1つを選び、問題を解いていきます。
司法試験の試験範囲
以下は弁護士資格を得るために受ける司法試験の試験範囲です。司法試験は2つの方式で試験が行われます。それぞれ出題される科目が違うため、図の形で解説していきます。
短答式 | 論文式 | 論文式(選択科目) |
---|---|---|
憲法 | 公法系科目 | 倒産法 |
民法 | 民事系科目 | 租税法 |
刑法 | 刑事系科目 | 経済法 |
労働法 | ||
環境法 | ||
国際関連法(公法系) | ||
国際関連法(私法系) |
この内、論文法の必須科目の具体的な内容はこの様な内容になります。
- 公法系科目 憲法および行政に関する分野の科目
- 民法、商法及び民事訴訟に関する分野の科目
- 刑法及び刑事訴訟に関する分野の科目
司法試験の試験方法
司法試験も公認会計士の試験同様、短答式で合格点を取らないと論文式の試験は受けられません。
また、選択式の論文式試験では、複数ある科目の中から一つを選び、回答します。
試験内容を見比べてみると分かる通り、司法試験は公認会計士試験よりも勉強する科目が多いです。試験を受ける前にもハードルが設けられていることも考えると、いかに司法試験が難しい試験であるかが分かります。
免除制度がある?
試験内容を知ると、公認会計士試験と司法試験の難易度の高さがよく分かります。
どちらもかなり大変な資格試験ですが、公認会計士の方には免除制度が設けられているのです。この免除制度を上手く利用できれば、資格試験を有利に進められる可能性があります。
免除の内容ですが、公認会計士は短答式、論文式の両方に一部科目免除制度が設けられています。免除制度の条件を満たした上で免除申請を出し、その診査に合格すれば試験を受ける科目を減らせるのです。
公認会計士一部科目免除制度の条件
公認会計士一部科目免除制度の条件は、以下の項目に該当する方になります。
- 大学教授
- 博士学位取得者
- 司法試験合格者
- 税理士等一部の専門資格者
- 一定の企業等における実務経験者
- 専門職大学院の修士(専門職)の学位修得者
どの条件も、専門性の高い知識や技術を持っていることが証明できる内容です。また、この条件の中には司法試験、つまり弁護士資格も含まれています。
公認会計士の試験は、持っている資格によって試験を有利に進められる可能性があります。ダブルライセンスを目指すなら、この可能性も考慮しながら受験準備を進めるといいでしょう。
試験勉強は講座の活用が必須
弁護士・公認会計士両方とも市販の教材でできる対策には大きな限界があり、合格を目指す場合は通信講座・予備校の活用が一般的です。
講座を受講することで、独学では得られない下記の大きなメリットを享受することができ、効率よく合格を目指すことができます。
- 最新の試験傾向を分析したテキスト
- テキストは学習すべき内容を厳選
- 内容は最新の基準・法改正に対応
- 論文式試験に向けた豊富な添削機会を確保可能
司法試験合格にはアガルートがおすすめ
司法試験合格を目指したいとお考えの方には、アガルートの通信講座がおすすめです。
高い合格実績とリーズナブルな受講料という、多くの受験生が求めるニーズを満たしている点が最大の強みとなっており、高品質な教材・講義をリーズナブルな価格で手に入れることができるのです。
多くの合格者からも高い評価を得ている今最も勢いのある司法試験講座となっていますので、ぜひ受験をご検討されている方は、一度講座内容をご覧になってみてはいかがでしょうか?
会計士試験合格にはCPAがおすすめ
公認会計士試験合格を目指されている方は、CPAの講座がおすすめです。
他社を圧倒する高い合格実績が最大の強みであり、2022年度の合格者は606名に上ります。
また、有名講師陣が各科目に勢揃いしており、質の高い指導を常に享受することができる点も大きな強みとなっています。
弁護士と公認会計士まとめ
弁護士と公認会計士まとめ
- 弁護士と公認会計士のダブルライセンスは、より専門性の高い仕事が出来る
- 近年、弁護士と公認会計士のダブルライセンスの需要が高まっている
- どちらも高難易度資格のため、資格取得は計画性が大事
弁護士と公認会計士の資格は、需要の高まりがあっても取得するのがかなり難しい資格です。しかし、免除制度を利用する等、計画的な受験対策をすれば、両資格保持者も夢ではありません。
ダブルライセンスの取得を目指している方、公認会計士としてキャリアアップを目指している方は、弁護士の資格取得を考えてみてはいかがでしょうか。