司法試験の難易度は易化している?合格率や勉強時間・受験者数を徹底考察!
「司法試験の難易度は低くなっているって聞いたけど本当?」
「合格率や必要な勉強時間はどの程度なのか知りたい!」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
司法試験は言わずと知れた超難関試験であり、合格までに数年はかかってしまうことで有名です。
しかし、近年は試験の難易度が易しくなっているという噂を聞きますが、本当でしょうか?
こちらの記事では、司法試験の難易度や合格者数などの推移について解説していきます!
司法試験の難易度についてざっくり説明すると
- 国家資格の中では最難関の難易度
- 合格までに必要な勉強時間は最短でも3000時間
- 近年の合格者数は1,400人程度
- 受験回数の制限が緩和された
- 取得までに時間がかかるため、就職浪人する覚悟が必要
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司法試験の難易度
司法試験は他の資格試験と比べても難易度は非常に高く、最高クラスと言えます。
しかし、近年合格率は大きく上昇しており、最新の令和4年度試験では45.5%と、最難関試験としてはかなり高い合格率を記録しています。
この数字は従前の旧司法試験に比べると10倍ほどの合格率となっており、このことから「司法試験は簡単になった」と言われています。
そのため、2年~5年ほどの勉強期間を設けてしっかりと効果的な対策をして試験に臨めば十分に合格を狙える難易度と言えるでしょう。
司法試験の試験科目と試験制度
そもそも司法試験はどんな内容の試験なのでしょうか。
司法試験は一次の短答式試験と二次の論述試験から成っています。
短答試験では憲法・民法・刑法の知識が択一問題形式で出題され、論述試験は公法系科目と民事系科目、刑事系科目、選択科目に分かれています。
公法系科目の内訳は憲法・行政法、民事系科目の内訳は民法・商法・民事訴訟法、刑事系科目の内訳は刑法・刑事訴訟法、選択科目では知的財産法・労働法・租税法・倒産法・経済法・国際関係法(公法系)・国際関係法(私法系)・環境法の内、いずれか1科目を選びます。
つまり、計8つの法律を含む4科目を受験することになります。
司法試験は試験範囲が膨大
司法試験の出題範囲は非常に広く、同じ法律系資格である行政書士や司法書士と比べても圧倒的に範囲は広いです。
この勉強する科目の多さが、試験の難易度を上げる最大の要因となっています。
ただし近年合格点が下がってきており、1575満点中、800点を割るケースが令和2・3年度と連続して続いています。
1問1問の難易度は高いものの現状は「5割ほどの得点で合格できる」試験であるため、基本書の内容や短答試験・論文試験対策を全て完璧に仕上げる前に合格できたという人も実際にいるのです。
論文式試験の存在が難易度を高めている
司法試験の難易度を高める大きな要因として、白紙の答案に要求事項に沿って適切な回答を示すことが求められる「論文式試験」の存在が挙げられます。
択一試験は所与の選択肢の中から答えを探すものなので、知識の暗記によって正解を導き出すことができます。
これに対し論文式試験の場合は知識の暗記に加えて、それを適切な場面で要求事項に沿ってしっかりと運用できる力が求められます。
一定の知識を覚えていたとしても、それを運用する力はまた別軸の要素となるため、この違いに戸惑い躓いてしまう方が多いのです。
司法試験試験の受験資格は?
司法試験には受験資格が設けられており、それをクリアするためには司法試験予備試験に合格するか、または法科大学院を卒業する必要があります。
法科大学院の受験資格は、大学を卒業していること、または大学に3年以上在籍し優秀な成績を修めていることが求められるなどがあります。
予備試験には受験資格がありませんが合格率が約4%の超難関試験となっているので、司法試験はそもそも受験資格を得るのが難しい試験と言えるのです。
なお、法科大学院には法学部卒業者などの法律既修者を対象にした2年間のコースと、法律未修者を対象とした3年間のコースがあります。
司法試験の受験資格を得る方法を比較すると、予備試験に合格するルートの方が短期間で済むことが多く、また費用も抑えられるのでオススメです。
ちなみに、以前までは司法試験受験について「5年を経過するまでの期間、3回の範囲内」という受験回数の制限が設けらていましたが、平成27年から「5年間に5回まで」に緩和されました。
司法試験は易化している
政府は、法曹人口の増加を目指して新司法試験を開始しました。
その結果、近年の合格率は上昇を続けており、30〜40%程の人が合格しています。
旧司法試験の合格率はおよそ10%程度だったため、近年の数字はその3〜4倍にあたることになります。
つまり、今は試験の難易度が易化傾向にあるため、司法試験に合格するチャンスなのです。
しかし、易しくなっているとはいえ最高クラスの難易度の試験であることには変わりないので、油断せずにしっかりと勉強することが大切です。
司法試験の難易度は偏差値で言うと?
司法試験の取得難易度は、偏差値だと75程度だと言われています。
以前よりも難易度は低くなったとはいえ、偏差値は依然としてとても高く、最難関国家試験であることは間違いありません。
なお、偏差値が近い他の士業に資格に税理士・公認会計士(ともに偏差値72)があります。
税理士も公認会計士も取得までに数年かかる資格として知られているため、いかに弁護士が難関資格であるかが分かります。
過酷で難易度の高い試験日程
司法試験は勉強期間だけでなく試験当日もハードな試験です。継続的な勉強を可能にする体力・長時間の試験時間・緊張感に堪えらえる体力双方がないと乗り越えられないという点でハードといえるでしょう。
司法試験のスケジュール
1日目(論文式)
公法系2科目が各2時間、選択科目が3時間 合計7時間
2日目(論文式)
民事系3科目が各2時間 合計6時間
3日目:中日
4日目(論文式)
刑事系2科目が各2時間 合計4時間
5日目(短答式)
憲法50分、民法75分、刑法50分 合計2時間55分
このように、試験日程は中日を挟んで5日間と長く緊張状態にさらされる過酷なものです。
司法試験では経済力も必要
司法試験の難易度の高さをあげる要因として金銭的負担の大きさも指摘されています。
例えば、法科大学院進学には、相場で1年当たり100~150万円が必要とされています。
また、予備試験ルートでも予備校に通う際には年80万円前後が授業料としてかかります。
特に法科大学院に通う際には、仕事を退職する方も少なくありません。
このように金銭的負担の大きさも、司法試験の難易度を高めているのです。
司法試験の合格率
最難関試験と言われる司法試験の合格率はどれくらいなのでしょうか。
司法試験の合格率は約30~40%
近年の合格率は以下のようになっています。
なお、令和4年度に実施された司法試験の受験者数は3,082人、合格者は1,403人で合格率は45.5%でした。
出典:法務省:司法試験
近年の合格率は30~40%程度で推移しており、平成28年を境に合格率は毎年上昇しています。
これは、受験者数が減少しているにも関わらず、合格者が毎年横ばいであることが大きな要因となっています。
一見、「難関試験の割には合格率が高いじゃないか」と思う人もいるかもしれません。
しかし、そもそも司法試験の受験資格を得るまでに厳しい要件があるため、総合的な合格率自体は他の資格試験よりも遥かに低いのです。
よって、猛者たちの中で半分より上の成績を収めることが必要であるため、その難易度は依然として非常に高いです。
ちなみに、類似する法律関係の士業では、行政書士試験の合格率が8〜15%、司法書士試験の合格率が3〜5%となっています。
司法試験の合格点
合格ラインは、1次の短答試験は60%程、2次の論文試験では45%程以上の得点となっています。
なお、短答式試験の合否判定は以下の通りです。
-
すべての科目で40%以上の得点をする
-
3科目の合計得点でその年の合格最低点を上回っている
なお、論文式試験は、
- 全科目で満点の25%以上の得点をし、総合点でその年の合格基準点を上回ること
が合格基準となっています。
両方の試験で科目ごとに足切りが設定されているため、満遍なく勉強しなければなりません。
つまり、足切りなどに注意は必要ですが全体の4割近くは落としても問題ないということになるため、深入りはせずに満遍なく勉強するのが効果的です。
司法試験合格までに必要な勉強時間
司法試験は厳しい受験資格があるため、受験資格を得る過程も非常に困難な道のりです。
合格率4%の司法試験予備試験に合格するか、法科大学院を卒業するかのいずれかのルートを選択しなければならず、どちらも非常に難易度は高いのです。
合格までに必要な勉強時間は3000時間〜8000時間程度と言われており、合格できるレベルに達するまでに数年を要する試験であることがわかります。
そのため就職浪人して取得を目指す人も多いです。
つまり、長い期間勉強し続ける体力と精神力が求められるため、独学で合格を目指すのはほぼ不可能でしょう。
司法試験の受験者層
司法試験の受験者の年齢分布や男女比などについて分析してみました。
受験者の年齢層
司法試験合格者の2022年度試験の平均年齢は28.3歳でした。
近年、合格者の平均年齢は28~29歳で推移しています。
なお、同じ法律系士業でも、司法書士試験の平均合格者年齢は37~38歳となっています。
このように、司法試験の平均合格者年齢が低い理由は、司法試験の難易度の高さに加えて、まとまった勉強時間を確保できる大学在学中など比較的若い内から受験勉強を開始する層が多いからだと考えられます。
しかし、社会経験を積んだ上で司法試験に臨むのは不利かというと、そんなことはありません。
実際に社会人になってから法律などを学び、30代や40代から司法試験に挑んでも、合格を狙うには遅くありません。
実務経験を積んでいる分、法曹として十分に活躍できる可能性も広がるなどメリットもあるのです。
ちなみに、2022年の司法試験最小年合格者は18歳、最高齢合格者は68歳でした。
司法試験受験者・合格者の平均年齢については下記の記事をご覧ください。
受験者の男女比
2022年度の司法試験合格者の男女比は、以下の通りです。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
合格者数 | 1,014人 | 389人 |
合格者に占める割合 | 72.27% | 27.73% |
弁護士に限らず、士業は男性の割合が大きいのが特徴です。
ただ、近年は少しずつ女性の割合が増えてきており、今後もその傾向は続くものとみられます。
予備試験と司法試験はどっちが難しい?
予備試験の合格は司法試験の受験資格の1つとなっていますが、実は予備試験の方が司法試験よりも難しいというのが受験界隈の通説です。
予備試験の方が司法試験よりも難易度が高いとされている理由は主に2つあります。
予備試験は合格率が非常に低い
予備試験の方が難易度が高い理由の1つ目が、予備試験の方が圧倒的に合格率が低いということです。
司法試験の合格率が例年30〜40%であるのに対して、予備試験の合格率は例年4%前後です。
ここでは、予備試験の直近5年の合格率をデータで見ていきましょう。予備試験の競争率の高さがこちらの合格率の数字から垣間見ることができます。
年度 | 短答式 | 論文式 | 口述式 | 最終合格率 |
---|---|---|---|---|
令和4年 | 21.8% | 17.8% | 98.1% | 3.6% |
令和3年 | 23.2% | 18.2% | 98.1% | 4.0% |
令和2年 | 23.8% | 19.0% | 95.7% | 4.2% |
令和元年 | 22.9% | 19.1% | 96.4% | 4.0% |
平成30年 | 23.8% | 17.9% | 94.9% | 3.9% |
※合格率は合格者数÷受験者数で計算
このように、最終合格率は4%前後を推移しています。
予備試験合格者のほとんどが司法試験の合格する
2つ目が、予備試験合格者のほとんどが司法試験に合格するということです。
ここでも直近5年の予備試験合格者の司法試験合格率をデータで見ていきましょう。
年度 | 予備試験合格者の司法試験合格率 |
---|---|
2022年 | 97.5% |
2021年 | 93.5% |
2020年 | 89.4% |
2019年 | 81.8% |
2018年 | 77.6% |
データからもわかるように、直近2年では予備試験合格者の9割以上が司法試験にも合格していることが分かります。
よって、予備試験に合格することは司法試験に合格することとほぼ同義と言えるのです。
実際、弁護士として就活や転職活動をする際も、予備試験合格者は「エリート」として優遇されることが多く、予備試験合格により自らに箔を付けることができるのです。
司法試験と大学入試の難易度を比較
司法試験の難しさは大学だとどのレベルなのでしょうか。
司法試験の偏差値は75ですが、これと近い偏差値(2022年のベネッセデータより)の大学・学部を並べると次のようになります(一部抜粋)。
大学 | 学部 | 偏差値 |
---|---|---|
一橋大 | 法学部 | 77 |
名古屋大 | 医学部 | 76 |
大阪大 | 法学部 | 76 |
中央大 | 法学部 | 75 |
神戸大 | 医学部 | 75 |
同志社大学 | 法学部 | 75 |
京都大 | 教育学部 | 74 |
熊本大 | 医学部 | 74 |
筑波大 | 社会・国際学群 | 73 |
旧帝大クラスの医学部医学科やMARCHの最難関学部、京都大学などかなりの難関大学が名を連ねることが分かります。
母集団が異なるため一概に数字を比較することはできませんが、司法試験の資格試験内での立ち位置を測る上での参考指標にしてください。
東大と司法試験合格はどっちが難しい?
では、日本最高の偏差値を誇る東大と司法試験はどっちが難しいのでしょうか。
同じデータから東大の偏差値を見てみると次のようになります。
大学 | 学部 | 偏差値 |
---|---|---|
東京大 | 文科一類 | 83 |
東京大 | 文科二類 文科三類 |
82 |
基本的には東大の方が偏差値が高いことが分かります。
もちろん司法試験のような国家試験の偏差値と大学受験の偏差値は比べられるものではありませんが、一つの目安にはなるでしょう。
一方で、司法試験や予備試験は東大文1の学生でもかなり苦戦し、落ちてしまったり撤退を余儀なくされる方も一定数いることから、東大の方が難しいと言い切ることは難しいかもしれません。
東大と司法試験の難易度については、以下の記事で詳しく比較しています。
司法試験の難易度ランキングでの位置づけ
弁護士になるために必要な勉強時間は、他の資格と比べても圧倒的に多いです。
こちらのトピックでは、他の資格試験と難易度を比較してみました。
他の士業系資格と難易度を比較
弁護士と関連する士業資格である「行政書士」や「司法書士」と司法試験の難易度について調べてみました。
行政書士
行政書士は身近な街の法律家とも呼ばれる法律系士業です。
最近は副業を解禁する風潮が高まっているため、行政書士を取得し副業や週末起業などにつなげることができます。
行政書士試験の試験科目には憲法・民法・商法など司法試験の試験内容との重複もあるため、司法試験を受ける前に行政書士に合格している人は大きなアドバンテージとなるでしょう。
また、司法試験で苦手とする受験生が多い商法も扱うため、この点でも勉強を経験しておくと有利になります。
しかし、司法試験の方が出題難易度は圧倒的に高く、出題範囲も広範に渡ります。
行政書士試験の合格には600時間ほどの勉強時間が必要であると言われており、司法試験に合格にはするためには5倍〜12倍もの勉強時間が必要ということになります。
行政書士の詳しい難易度については下記の記事をご覧ください。
司法書士
司法書士は会社の登記や不動産の権利移転登記などの独占業務が与えられています。
行政書士よりも法律の知識は深く、多くの企業での法務部などで活躍できるでしょう。
司法書士試験の試験科目にも憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法などがあるため、多くの科目が司法試験と重複しています。
また、司法書士試験の合格には3000時間ほどの勉強時間が必要であると言われており、司法書士も十分に難しい資格であることが分かります。
ただし、一般的に司法試験合格には司法書士の2倍以上もの勉強時間が必要となるため、司法試験がいかに難易度の高い試験かが伝わると思います。
司法書士の詳しい難易度については下記の記事をご覧ください。
社会人に人気の資格と司法試験の難易度比較
社会人に人気の資格である「日商簿記」や「宅建士」と司法試験の難易度を比べてみました。
日商簿記
日商簿記は企業の経理や財務の部門で生かせる資格で、就活の場面などで非常に役立ちます。
企業側からも「取得しておいてほしい資格ランキング」で毎回上位に入るほど、使い勝手の良い資格です。
最も難しい1級は800時間ほどの勉強時間が必要と言われており、司法試験のおよそ10分の1で済むことになります。
司法試験は年1に回しか受験のチャンスがないのに対し、簿記試験は年に3回受験機会があるため、取得のチャンスが非常に多いです。
試験回数からも、簿記試験の方が難易度が低いと言えるでしょう。
簿記1級の難易度については下記の記事も併せてチェック!
宅建
宅建は不動産売買などの場で独占業務が与えられている、不動産に関するプロフェッショナルです。
宅建を持っていると不動産業界ではかなり高評価をしてもらえるため、不動産業界で働きたいと思っている人には必須の資格です。
宅建では民法の勉強をするため、若いうちに宅建を取得しておくと抵抗なく民法の勉強を進められるでしょう。
宅建試験には300時間前後の勉強で合格できると言われており、司法試験と比べると圧倒的に簡単です。
年に一回しか試験は実施されないものの、確実に短期で資格が取得しやすく、司法試験に向けたウォーミングアップにもなります。
ただし、司法試験と比べると簡単とはいえ、宅建の合格率は15%ほどで、油断すると不合格になります。
そのため、短期で合格を目指す場合であってもしっかりと勉強する必要があります。
宅建士の詳しい難易度については下記の記事をご覧ください。
科目別の特徴と難しさ
司法試験全体の難易度を把握したところで、次はそれぞれの科目別の難易度を詳しく見ていきましょう。
憲法
国の最高法規であり、試験においても必須科目です。
条文は少ないものの判例が多く、憲法独特の難しさがあります。
短答式試験では、条文や判例だけでなく学説の知識を問う問題も出題されるため、かなり細かい点まで勉強しなければなりません。
つまり、暗記だけでなく、学説とそれに伴う論点の把握や理解が大切になってきます。
また、論文式試験ではある法律の「憲法適合性」を問う問題が多く出題されており、この判断を行う上で必要に応じて関連してくる判例や反対意見などにも触れながら答案を作成していく必要があります。
関連知識の厚さはもちろん、原告・被告の双方に立って俯瞰的に問題を捉える必要がある点で論述を行う際には一定の慣れが必要となります。
民法
民法は条文が1000以上あり、勉強量がもっとも膨大なため多くの受験生が苦労しています。
重要論点を押さえつつ、メリハリをつけながら根気強く勉強することが求められます。
以前から「民法を制する者が司法試験を制する」と言われる程の重要科目なので、時間を割いてでも丁寧に勉強していきましょう。
量がとにかく多いので、すべての範囲を1周目の段階でインプットしようとしても無理です。
そのため、基礎講義や基本書を1周して全体像を把握し、2周目以降でじっくりインプットしていくのがオススメです。
また、論文式試験においては、幅広い場面でそれぞれのシチュエーションに即した「請求の可否」が問われることとなり、未だかつて出会ったことのない未知の論点を取り扱う問題も散見されます。
このような際に、基本的な法律概念をしっかりと使いこなして文章を組み立てていく必要性があり、応用力を求められる点に民法の論文式試験の難しさがあります。
刑法
刑法は憲法・民法と並んで「上三法」と呼ばれる基幹科目です。
刑法は論理的な要素が特に強く、判例が複雑で難しいと感じる人が多いです。
しかし、興味を持ちやすい科目でもあり、好きな科目として挙げる受験者・合格者も多い科目です。
論点はたくさんありますが、結果無価値論の立場と行為無価値論の立ち場など、主要な二項対立の構造に落とし込んで論点を把握することで基礎知識は仕上がります。
また、論文答案の「締め」の部分に当たる罪数処理など、しっかり勉強すれば機械的にこなせる問題も多いので、得点源になり得る科目と言えるでしょう。
さらに、近年の論文式試験では、「罪責を論ぜよ」というオーソドックスな設問に加えて、異なる見解から立論を行わせる問題や、複数の学説を問うような問題も併せて出題されるようになり、複数の問われ方に対して答案をまとめ上げる訓練が必須となっています。
民事訴訟法
民事訴訟法は、司法試験・予備試験の科目の中でも苦手とされている方が非常に多い科目となります。合格者の方ですら、6割程度の十分とは言えない理解で合格しているのが実情なのです。
民事訴訟法が苦手とされる要因の一つに、インプット・アウトプットの方法が具体的に確立されていない点が挙げられます。
学習する概念が抽象的すぎる点や、問題での問われ方のバリュエーションが多岐に渡ることから、多くの方が学習方法に苦心しており、結果として敬遠されやすい科目となっているのが実情となります。
多くの方が抱える苦手意識を解消するためには、インプット段階からそれぞれの概念や制度を簡潔でわかりやすい言葉に言い換える力、具体例を即座にイメージする力を愚直に積み上げていく作業が大切になります。
刑事訴訟法
刑事裁判の手続きに関する法律で、刑法とも関わりが深いです。
裁判手続きに関するだけあり、捜査の開始から判決の言い渡しまでの時間の流れを意識しつつ勉強すると、要領よく効率的です。
難易度は他の科目と比べても普通レベルで、刑法が得意な人は刑事訴訟法も得点源にしたいところです。
具体的な出題傾向を見ると、予備試験においては設問の一部で、マイナーな内容からの出題が増えており、こちらの傾向は注意が必要となります。
しかし、内容は百選に掲載されている判例がベースとなっている内容が少なくないため、まずは百選の内容を確実に抑える意識で学習を進めることが大切です。
商法
商法は商法総則・商行為、手形法、会社法の3分野から主に出題されます。
商法は一般的になじみを感じる人が少なく、すんなりと理解できる人は少ないでしょう。
司法試験では、特に会社法を中心に問われるため重点的な対策が必要です。
扱う条文が多く、法律の仕組みや実務上の法律の扱い方の具体的なイメージしにくいため、抵抗感を持つ人が多い科目です。
論文試験では、「会社法の条文を正確に検索して、その条文をもとに設問の問いに答えられるか」というオーソドックスな設問が多くを占めており、条文を正確に検索できるか否かがものをいうこととなります。
そのため、普段の学習の中では条文に重きを置いて学習を進めていくことが大切です。
選択科目
司法試験の論文問題では労働法・倒産法・知的財産法・経済法・租税法・環境法・国際関係法(私法系)・国際関係法(公法系)の中から1科目を選択することになります。
どの科目が少ない勉強量で合格できるか、合格後のキャリアを考えると特にどの分野に詳しい法律家になるべきかを勘案して選択科目を決めると良いでしょう。
具体的な受験者数と割合は以下のようになっています。
- 令和4年度
科目 | 受験者数 | 割合 |
---|---|---|
倒産法 | 420人 | 13.7% |
租税法 | 208人 | 6.8% |
経済法 | 583人 | 19.1% |
知的財産法 | 464人 | 15.2% |
労働法 | 911人 | 29.8% |
環境法 | 129人 | 4.2% |
国際関係法(公法) | 38人 | 1.2% |
国際関係法(私法) | 307人 | 10.0% |
- 令和3年度
科目 | 受験者数 | 割合 |
---|---|---|
倒産法 | 437人 | 12.9% |
租税法 | 277人 | 8.2% |
経済法 | 639人 | 18.8% |
知的財産法 | 486人 | 14.3% |
労働法 | 1,009人 | 29.7% |
環境法 | 143人 | 4.2% |
国際関係法(公法) | 46人 | 1.4% |
国際関係法(私法) | 355人 | 10.5% |
倒産法・経済法・労働法・知的財産法を選択する人が多いことが分かります。
出典:法務省:司法試験
弁護士が狙い目の資格である理由
司法試験の受験者数は近年は減少しており、合格率は上昇を続けています。
そのため、司法試験には以前よりも合格しやすくなっており、今は弁護士を目指すには狙い目の時期と言えるのです。
今なお最難関の国家試験
試験科目の膨大さや合格に必要な勉強時間等を考慮すると、司法試験は最難関の国家試験に間違いありません。
しかし、旧司法試験に比べると試験難易度は低下しており、合格しやすい資格になっています。
それにも関わらず、弁護士という資格の世間的な評価は高いままであり、弁護士免許を持っているだけで周囲から一目置かれる存在になることができるのです。
特に、現状は地方で弁護士が不足しがちで高い需要があるため、免許を活かして多くの人の役に立ちたいと考えている人は都市部よりも地方で活動するとやりがいを感じられるでしょう。
需要が極めて高く就職・転職でも生きる
弁護士は法律系の資格の中では最高峰であるため、行政書士や司法書士の業務範囲もカバーできることになります。
つまり、弁護士になることで行うことができる仕事が飛躍的に増えるため、自分の市場価値を上げることができるのです。
一般的に、司法試験に合格した人は世間的な評価が高く、対外的に自分の評価をアピールしやすくなります。
特に、法律分野での専門性の高さは高く評価され、全国にある良い条件の弁護士の求人にありつけるでしょう。
勤務するだけでなく、独立開業することで高い年収を狙うことができるため、様々な用途で生かすことができるでしょう。
また、裁判官や検察官として働くキャリアも選ぶことも可能です。
この働き方だと国家公務員の身分を有することになり、非常に安定した雇用で高額の給与を得ることができるためとても魅力的と言えるでしょう。
昇格・昇給のチャンスが多い
2018年に実施された賃金構造基本統計調査によると、弁護士の平均年収はボーナスを含めて男性1595.2万円、女性が733.2万円でした。
この数字は一般的なサラリーマンよりも遥かに高い数字であり、弁護士は高給取りであることがわかります。
例年、年収ランキングでも常に上位にくるのが弁護士なのです。
また、裁判官や検察官もエリート国家公務員として高い給与が支給されています。
一般企業でも企業内弁護士を募集しているところも多く、昇給などのキャリアアップを目指して転職するという選択肢も増えるのです。
司法試験合格は生涯有効
司法試験に合格したという実績は、生涯にわたって有効です。
司法試験に合格した後であれば、弁護士事務所を独立・開業するという道も有力な選択肢になります。
独立開業することにより、定年退職という概念がなくなるため年齢に関係なく働くことができるようになります。
近年は年金問題が顕在化し、将来の老後資金が不足するであろう調査結果も話題になりました。
そこで、年金以外にも働くことによって収入を得ることができれば、豊かな老後を送ることができるでしょう。
弁護士であれば一件一件の単価が高く、現役の頃のようにバリバリ働かなくてもそこそこの収入を得ることができます。
そのため、現役の頃に法務の実務経験を積んでおいて、将来の独立に向けてしっかりと備えておくと良いでしょう。
司法試験に独学合格は困難を極める
司法試験に独学で挑戦することは稀で、予備校や通信講座を利用することが一般的です。
司法試験合格までには膨大な量の勉強をしなければならず、また勉強期間も必然的に長期間にわたるので、他の資格試験以上に独学での勉強は困難なのです。
独学だとモチベーションを保つことが難しいだけでなく、自分でスケジュール管理をしながら勉強を進めなければなりません。
また、論文試験の添削指導を受けられないので、客観的な添削を受けることができず自分の論文の良い点・悪い点を把握することができません。
司法試験に臨むうえで論文試験は避けて通れないため、このように添削を受けることができないと自分の問題に気づけずに厳しい戦いになってしまうでしょう。
司法試験の勉強をする際の注意点
以下のトピックでは、司法試験に合格するための勉強をする際の注意点についてまとめました。
仲間や予備校・通信講座をフル活用する
テキストの内容や過去問の解説など、全てが理解できなくても地道に基本テキストなどを繰り返し回していくことが大切です。
インプットをする上で重要なのは反復練習であり、コツコツと我慢強く続けることでインプットできるようになるのです。
こうした長くつらい勉強ペースを保つには、自主ゼミなどで共に勉強する仲間を作ったり、司法試験対策講座の講義のペースに合わせていくことが重要です。
一人だと挫折しやすい勉強も、一緒に合格を目指す仲間がいることでいい刺激になりモチベーションの維持に役立つのです。
学習スケジュールに沿って進める
独学だと長期間に及ぶ学習スケジュールをすべて自分で作成・管理しなければならず、非常に手間がかかります。
司法試験対策の予備校や通信講座では、合格に向けての効率的なスケジュールを立ててくれるので、大まかな指針として活用することができます。
予備校・通信講座が作るスケジュールにはこれまでに蓄積されている合格のノウハウが詰め込まれているため、スケジュール通りに学習を進めるのが良でしょう。
勉強期間は長期に及びますが、合格を目指すためには継続的な勉強が何より大切になります。
学習スケジュールを立てることで合格までの道筋が見え、勉強を継続しやすくなるメリットがあるのです。
論文試験対策がヤマ
論文対策で重要なのは「自分が書いた答案を誰かに読んでもらって客観的な評価をしてもらうこと」です。
独学だと、他人に論文答案の評価をしてもらえる機会は限られてしまい、ブラッシュアップすることができません。
論文の質を高めていくためには、司法試験対策講座の講師など、添削のプロに実際に論文を読んでもらい、添削指導をしてもらう必要があります。
そこで良い点・悪い点や論文の構成など、様々な面でアドバイスをもらい次回以降に生かしていくことで合格に近づくことができるのです。
過去問を軽視しない
司法試験には出題頻度や引っかけパターンなどに一定の傾向があるため、過去問演習は非常に重要です。
演習を繰り返すことで重要論点や出題パターンがわかってくるため、本番に向けての対応力や実践力を高めることができます。
ただし、過去問をひたすらこなすだけでなく、改正法にも注意を払う必要があります。
テキストや過去問の教材を選ぶ際には、直近の法改正に対応したものを選ぶようにしましょう。
司法試験おすすめテキスト
司法試験のおすすめテキストをご紹介します。個人によって合う・合わないがあるので、中身をよくみてから購入することをおすすめします。
新・司法試験予備試験に独学合格する方法
資格スクエア代表弁護士の鬼頭政人氏が執筆している「新・司法試験予備試験に独学合格する方法」は、司法試験予備試験受験生のバイブルで中央経済社から1,815円で発売されています。
この本の特徴は、あくまで「独学」にこだわって自力での司法試験予備試験合格のための勉強法を伝授してくれる所です。
筆者である鬼頭氏自身が在学中に司法試験に一発合格した体験をもとに、独学合格するための50のメソッドを伝授してくれます。
司法試験の一連の勉強を本格的に始める前に1回読んでみると良いでしょう。
憲法の地図: 条文と判例から学ぶ
現役弁護士の大島義則氏が著した司法試験の「憲法」の参考書として有名な一冊で、法律文化社から2,200円で購入することができます。
憲法の条文の内容について最高裁の下した判決をもとに、わかりやすく解説してもらえる一冊で、「芦部憲法」などの基本書と一緒に読んでいくのがオススメです。
司法試験対策はアガルートがおすすめ
司法試験・予備試験の対策をするにはアガルートの講座がおすすめと言えます。
アガルートのフルカラーテキストの質の高さや講義の質の高さは司法試験・予備試験合格者からも非常に評判が高いです。
アガルートでは令和4年度の司法試験で全合格者の45.3%に当たる636人を輩出したという高い合格実績を誇ります。
また、教材やWEB学習機能の使いやすさも評判であり、忙しい方でもスマホを使ってスキマ時間に効率よく学べる点も人気の理由と言えるでしょう。
本気で司法試験合格を目指す方は、ぜひアガルートをチェックしてみると良いでしょう。
司法試験の難易度まとめ
司法試験の難易度についてまとめ
- 難易度は以前よりも易しくなっており、今が狙い目である
- 試験科目は多く出題範囲も膨大なので満遍なく勉強する必要がある
- 試験の中では最高峰の難易度なので、取得メリットは絶大
- 予備校や通信講座を利用し我慢強く勉強していくことが重要
司法試験の難易度は旧試験よりも落ちていますが、弁護士の価値や社会的な評価は不変です。
弁護士になることで多くの取得メリットを享受することができるため、取得を弁護士免許の取得を検討している人はぜひ司法試験対策講座の資料請求をしてみてください。
多くの困難がある司法試験ですが、辛抱強く勉強を重ねて合格を掴み取りましょう!