弁理士の合格率が低い理由は?合格率からじゃわからない本当の難易度を徹底考察!

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「弁理士の合格率はどうして低いの?」

これから弁理士を目指す人や現在弁理士を目指して勉強中の人は、そんな疑問を抱いているのではないでしょうか。さまざまな国家試験がある中で、弁理士の合格率の低さは驚くほどです。

合格率が低いのは、簡単に言えば学習範囲が大変広いからです。そのため、多くの人たちは勉強不足で合格できないという結果に陥ってます。ですが、それだけではありません。

どうして弁理士試験の合格率が低いのかを、試験内容の難易度に焦点を当てて解説します。

弁理士の合格率についてざっくり説明すると

  • 弁理士試験の範囲は大変広い
  • 試験の難易度が上がってきている可能性がある
  • 勉強不足が低い合格率の原因である可能性有

弁理士試験の合格率の推移

弁理士は「士業」と呼ばれる国家資格の一つです。「士業」とは「~士」とつく資格のことで、弁理士の他に弁護士や税理士、行政書士や公認会計士などがあります。

その中で弁理士の国家試験には毎年3500人ほどが挑戦しています。ですが、現在の合格率は6~7%です。

過去10年の合格率とその受験者数の推移を示したグラフは以下の通りとなります。

近年は受験者数が低迷しているにもかかわらず、合格率は一定して低い水準を保っていることがわかります。

これは他の士業の国家資格と比べても極めて低い合格率です。この合格率の低さには何らかの理由があるはずです。

弁理士試験の合格率が低い点について、次の大見出しで具体的にポイントを挙げて解説します。低い理由がわかれば、勉強の仕方も変わってくるでしょう。

他士業試験の合格率との比較

弁理士試験はその合格率の低さから、試験自体の難易度が高いと言われがちです。ですが、それは本当なのでしょうか?他の士業試験の合格率と比較してみましょう。

士業 合格率
司法書士 約3~4%
社労士 約6~7%
弁理士 約6~7%
宅建士 約15%

上の一覧表を見ると、弁理士の合格率は社労士とほぼ同じです。社労士については、試験の内容によってはもっと合格率が下がる年もあります。

そのような試験内容も考慮に入れると、弁理士の合格率は法律系の資格の中では比較高い部類に入ります。

弁理士試験に合格することは決して簡単ではありません。ですが、それは士業だからで、士業の資格試験は他の試験に比べても難易度が高い傾向があります。

ですが、士業だけで見ると比較的合格率は高い部類に入るため、資格取得が狙える士業ではあります。

弁理士が他の資格と比べてどれほど難しいのかについては、以下の国家資格難易度ランキングをご覧ください。

弁理士試験の合格率が低い理由5選

電球 弁理士意見の合格率が低いのはなぜでしょう。その理由について5つのポイントに絞って解説します。

平均受験回数が多い

受験回数
初めて 11.5%
1~5回 68.1%
6~10回 13.8%
11~15回 6.2%
16~20回 0%
21回~ 0.4%

弁理士試験合格者の特徴の一つに、受験回数が多いという事実があります。上の一覧表からもわかるように、最も多いのは1~5回の受験者です。

初めて弁理士試験を受験した人はわずか11.5%しかありません。初回の試験で合格までたどり着くことは難しいということです。

何故、1~5回目の受験に合格者が集中しているのかというと、短答式試験の援助制度があるからです。

弁理士試験には短答式試験と論文式試験と口述試験の合計3種類があります。そのうち短答式試験は合格すると、その後2年間短答式試験は免除されます。

短答式試験と論文式試験の両方を並行して勉強を進めるのは想像以上に困難が付きまといます。

そこで1年目は短答式試験の勉強に集中して合格し、2年目以降で論文式試験と口述試験の合格を狙う人が多い、というのが現状となります。

学習範囲が非常に広い

弁理士試験の合格率が低いもう一つの理由は、学習範囲が非常に広いという点です。

弁理士の試験内容は、短答式試験と論文式試験と口述試験の3つです。これら基本的にはこの3つすべてに合格しなければ、弁理士試験合格とはなりません。

更に、短答式試験は7科目、論文式試験は4科目もあり、試験範囲が大変広いことがわかります。

試験範囲が広いということは、それだけ勉強時間も多く取らなければならないということが言えるのです。

短答式試験

試験科目 出題数 合格基準 出題形式
特許・実用新案に関する法令 20題 40% 5肢択一式のマークシート方式
意匠に関する法令 10題 40% 5肢択一式のマークシート方式
商標に関する法令 10題 40% 5肢択一式のマークシート方式
工業所有権に関する条約 10題 40% 5肢択一式のマークシート方式
著作権法及び不正競争防止法 10題 40% 5肢択一式のマークシート方式

短答式試験は全部で60題出題されます。出題形式はすべて5肢択一式のマークシート方式で、満点を基準として65%以上の得点が取れていれば合格です。

ただし、それぞれの試験科目については満点を基準として40%以上の得点が取れていなければいけません。

更に、ただ単に合格基準に得点が達していたからと言って必ずしも合格になるとは限りません。

短答式試験は次に控えている論文式試験や口述試験に進むための試験でもあります。これらを受験するに相当だと工業所有権審議会が認めた人のみが合格できるのです。

論文式試験(必須科目)

試験科目 合格ライン 配点比率 出題形式
特許・実用新案に関する法令 48点 2 記述論文
意匠に関する法令 48点 1 記述論文
商標に関する法令 48点 1 記述論文

論文式試験には2種類あります。こちらはその中でも必須科目の論文式試験です。

出題科目は3科目あり、すべて問題に対して論文式で記述して回答します。合格ラインは54点以上ですが、それぞれの合格ラインを下回るとその時点で不合格です。

注目すべきは配点比率です。「意匠」と「商標」に対して「特許・実用新案」は2倍の得点配分になっています。これは意匠や商標に比べて、特許・実用新案が重視されているということです。

論文式試験(選択科目)

試験科目 選択問題 出題形式
理工Ⅰ(機械・応用力学) 材料力学、流体力学、熱力学、土質工学 記述論文
理工Ⅱ(数学・物理) 基礎物理学、電磁気学、回路理論 記述論文
理工Ⅲ(化学) 物理化学、有機化学、無機化学 記述論文
理工Ⅳ(生物) 生物学一般、生物化学 記述論文
理工Ⅴ(情報) 情報理論、計算機工学 記述論文
法律(弁理士の業務に関する法律) 民法(総則、物件、債券) 記述論文

論文式試験には必須科目以外に選択科目もあります。これは、願書出願時にあらかじめどの試験科目を選択するのか申請します。申請後の変更はできません。

選択科目の論文式問題の合格基準となる点数は、満点に対して60%です

口述試験

試験科目 試験時間 試験方法
特許・実用新案に関する法令 10分 面接
意匠に関する法令 10分 面接
商標に関する法令 10分 面接

口述試験の合格率は90%と言われています。短答式試験や論文式試験に比べると合格率は大変高く見えますが、それぞれの試験でふるい落とされた人たちの合格率ですから、試験内容は簡単だと思わない方が良いでしょう。

採点方法はそれぞれの科目で答え方は回答内容などを見て、「A:良い」「B:普通」「C:不十分」の3段階方式で採点します。合格基準はC評価が二つ以上ないことです。

科目合格制度がない

弁理士試験の合格率が低い理由として、科目合格制度がないことも挙げられます。科目合格制度とは、その科目が合格点に達していた場合は次回の試験で免除されるという制度です。

中小企業診断士試験や税理士試験などでは、科目合格制度があります。1回目の試験でいくつかの科目が合格点に達していれば、来年受験する際にはその科目については勉強しなくて済みます。不得意な部分だけ集中して勉強すれば良いのです。

ですが、弁理士試験ではそれができません。5科目のうち、1科目だけ合格基準の点数を下回って不合格になってしまった場合、来年再チャレンジする時には5科目すべての試験を受けなければならないのです。不得意な科目だけ集中して勉強すれば良いというわけにはいきません。

このような一発勝負の試験であることも、弁理士試験の合格率を下げている要因と言えます。

勉強不足の受験者も多い

弁理士試験の受験者の多くは、30~50代の社会人がメインです。これらの年齢層の人たちの多くは、仕事や家事などで毎日多忙な日々を送っており、自分の時間を作り勉強するということが難しいのです。

弁理士試験は試験の範囲が広い点から、長時間勉強するという環境を強いられます。

学生なら充分な勉強時間を確保することはできますが、社会人ではそうもいきません。その結果、勉強不足などの準備不足のまま試験に臨んでいる人もいらっしゃいます。

また、弁理士試験には受験資格がありません。このハードルの低さから、「いつでも受験することができる」と考えてしまい、モチベーションが上がらないということもあります。

「今回の試験で絶対に合格しなければならない」という気持ちが低い人もいるということです。

選択式と論文式があり対策困難

弁理士試験では短答式試験と論文式試験の2種類があります。短答式試験は択一式のマークシート方式ですから、知識さえあれば何とかクリアできるかもしれません。

一方の論文式は問題文を理解して何を聞かれているのかを解釈し、更には自分の言葉で文字にしなければいけません。ただ単に知識があるだけでは足りないということです。

選択式と論文式というまったく異なる試験方式のため、両方の試験対策を同時に進めることが困難になり、結果的に試験の合格率が下がっているということもあります。

また、最後の口述試験ではコミュニケーション能力も問われます。今まで問題集などと首っ引きで勉強してきた人にとって、最後にコミュニケーション能力まで問われるのはかなり大変なことだと言えます。

文系で弁理士になるのはより大変?

文系に限定した場合の弁理士試験合格率は4%です。理系の人に比べて圧倒的に低いと言えます。合格率だけで見ると、文系の人は弁理士になるのは大変なのかと思うでしょう。

ですが、実際には文系の人たちには理系の人たちよりもはるかに多くの資格の選択肢が用意されています。

司法試験や公務員試験などは、理系よりも文系の受験者数が多いのです。弁理士試験を受験する文系の人が少ないということが、合格率の低さの一つと言えます。

また、仮に文系の人が弁理士試験を受験した場合、難関となるのは論文式試験です。論文式試験の項目のほとんどは理系に集中しています。

選択科目では「法律」がありますから、法律系の学部出身者なら合格できるかもしれません。

しかし、弁理士の仕事自体は書類作成などの文系の人が得意とする部分がたくさんあります。この理由から、文系弁理士にも十分需要はあると言えます。

近年は合格率が上がってきている?

はてなマーク 近年の弁理士試験の合格率は上がってきているという声があります。そのような声を聞くと、それなら試験の難易度は下がってきているのかもと思う人もいるでしょう。ですが、それは大きな勘違いかもしれません。

合格率と難易度の観点から、近年の弁理士試験の合格率と難易度について解説します。

合格率と難易度の関係に注意

合格率が高いからと言って、難易度が下がってきていると考えるのは早合点です。何故なら、合格率は受験者層によって大きく左右されるからです。

例えば、長期に渡って試験対策を行なってきた人たちと、試験準備が不十分なまま試験に臨んだ人たちとでは、同じ試験を受験した場合の合格率は異なります。当然試験対策を行なってきた人たちの方が、合格率は上がるでしょう。

仮に、ある年の弁理士試験を受験した人の割合が、長期に渡って試験対策を行なってきた人の方が多かったなら、当然合格率は上がります。それが例え前年に比べて試験の難易度が上がっていたとしても、です。

どのような人たちが受験しているのかによって、合格率は大きく変動します。合格率が上がったからと言って、一概に試験の難易度が下がっているとは言えないのです。

試験はむしろ難化傾向にある?

昨今、弁理士の人数は飽和所歌にあると言えます。弁理士の受け皿に比べて弁理士の人数が多すぎるということです。就職活動がうまくいかないなどの声も多くなってきている点から、受験者数は近年低下傾向にあります。

受験者数が低下傾向になるのなら、反対に合格率は上昇してもおかしくありません。ですが、実際には上がったり下がったりを繰り返しており、合格率に目立った変動はありません。

受験者数は減っているのに合格率があまり上がっていないということは、試験の難易度が上がっている可能性があります。しっかり勉強して合格のための対策をしておく必要があると言えるでしょう。

弁理士の本当の難易度

積み重ねられた本 弁理士の本当の難易度は、どれくらいなのでしょう。法律系の資格に限定してみた場合の難易度や対策などについても解説します。

法律系資格の中でも難しい

弁理士は法律系の資格の中では難しい試験に分類されます。ですが、社労士や司法書士や弁護士などは、必死に勉強してもなかなか合格できない人が多くいます。実務経験の中で勉強しながら、更に勉強時間を作って試験に臨んでも合格できない人が一定数存在しているのです。

それ比べて弁理士の場合は、合格率の低さの理由として「準備不足」が挙がっています。充分な勉強時間が確保できずに試験に臨んでいる人がいるも多いということです。

言い換えるならしっかり勉強時間を確保して準備をすれば、合格できる可能性が高くなる資格である、ということです。

勉強時間をきちんと取る

司法試験などの超難関と言われている資格に比べれば、弁理士の試験は簡単に見えます。ですが、試験の範囲の広さやさまざまな方式で試験が行なわれているという点を考慮した場合、やはり難しい試験であると言えるでしょう。

弁理士の資格を取得するためには、最低でも3000時間の勉強時間は必要と言われいてます。1年以上の試験準備期間が必要だといことです。本気で弁理士を目指すのなら、相当の覚悟と多くの勉強時間を確保することが大切です。

勉強のモチベーション維持も課題に

弁理士を目指している人の中には独学で勉強している人もいます。特に短答式試験は5肢択一のマークシート方式ですから、独学で勉強しようと思えばできるのです。

ただ、独学ではモチベーションの維持が大変難しいという現実があります。励まし合う友人知人がいないため、勉強を始めても途中で挫折をしてしまうという人も多くいるのです。

いかに勉強のモチベーションを高く維持するか、ということも弁理士試験合格の課題と言えるでしょう。

無理して独学合格を目指さない

弁理士試験は多くの人が通信講座や予備校を活用して合格をつかみ取っているのが現状です。

そこで、確実に合格を勝ち取りたいなら基本的にはこれらをフル活用する方向で学習を進めていくとよいでしょう。

特に、通信講座の資格スクエアはハイクオリティの教材はもちろん、価格も安い点が特徴的なおすすめ講座となっています。

合格に必須な学習量を十分に確保できる講座となっているので、合格に向けた盤石の実力を身に着けられるでしょう。

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弁理士の合格率についてまとめ

弁理士の合格率についてまとめ

  • 準備不足の人が一定数存在している
  • 一発勝負の試験形式が合格率を下げているということも
  • 勉強時間を確保して準備すれば合格できる

弁理士の合格率について解説してきました。確かに合格率だけで見ると大変低いので、難易度が高いと考えがちです。実際に受験者数の減少に対して合格率は上がっていない点から、試験の難易度は上がっていると見るべきでしょう。

ですが、準備不足で試験に臨んでいる人も一定数存在しています。これは言い換えるなら勉強時間を確保して準備をすれば、合格できる確率は上がるということです。毎日できるだけ多くの勉強時間を確保して、弁理士の試験に臨んでください。

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