弁理士試験の論文式試験の対策法は?配点・合格率や過去問の使い方の実態まで解説!

更新日時 2020/05/16

弁理士試験の論文式試験って、どのように対策すれば良いのだろう?

と疑問に思っている方もいるでしょう。

弁理士試験の論文式試験は、1次試験となる短答式試験に負けず劣らず、難易度の高い試験です。そのためきちんと対策する必要があります。

今回は弁理士試験の論文式試験の対策法について、配点および合格率や過去問の使い方などを詳しく解説します。

これを読めば、弁理士試験の論文式試験について、その対策法がよく分かるはずです。

弁理士試験の論文式試験の対策法をざっくり説明すると

  • 短答式の合格者だけが受験でき、合格率は25%
  • 配点からして必須科目が重要
  • 過去問を使って定型的な出題内容を把握しよう

弁理士試験の論文式試験

机に多くのボールペン 弁理士試験は短答式試験と論文式試験、口頭式試験からなります。

また論文式試験は必須科目と選択科目の2種類です。これらは別の日程で行われます。

試験内容は、工業所有権に関する知識がざまざまな切り口で問われます。工業所有権とは特許権や実用新案権、意匠権、商標権などです。

ちなみに短答式試験でも論文式試験と同じ科目が存在します。

論文式の選択科目には理系科目も含まれ、勉強量は膨大です。そのため論文式の対策はメリハリをつけて行うことが重要になります。

メジャーな論点を中心に対策を進めましょう。出題には一定の傾向があるため過去問演習も有効になります。

論文式試験の概要

試験の日程ですが、必須科目が6月下旬から7月上旬に、専門科目は7月下旬から8月上旬に行われます。

弁理士試験は短答式試験に始まり、全ての試験が1年のうちに行われる試験です。そのため短答式試験の合格後から論文式試験まではそこまで時間がないため注意しましょう。

ちなみに試験は年に1回です。

それぞれの科目における試験会場や試験科目、配点比例、試験時間は以下の通りになります。

  • 必須科目
詳細
試験会場 東京・大阪
試験科目 特許法・実用新案法・意匠法・商標法
配点比率 特許法・実用新案法:意匠法:商標法=2:1:1
試験時間 特許法・実用新案法:2時間 意匠法・商標法:各1.5時間
  • 選択科目
詳細
試験会場 東京・大阪
試験科目 1. 理工Ⅰ(機械・応用力学)-材料力学・流体力学・熱力学・土質工学 2. 理工Ⅱ(数学・物理)-基礎物理学・電磁気学・回路理論 3. 理科Ⅲ(化学)-物理化学・有機化学・無機化学 4. 理工Ⅳ(生物)-生物学一般・生物化学 5. 理工Ⅴ(情報)-情報理論・計算機工学 6. 法律(弁理士の業務に関する法律)-民法(物件・債権・総則)(*1〜6のうちいずれか1科目を願書出願時に選択して受験)
配点比率 必須科目:選択科目=4:1
試験時間 1.5時間

ちなみに論文式試験の受験資格は、短答式試験の合格です。

論文式試験の合格率と合格点

無人の教室 難関試験で知られる弁理士試験ですが、論文式試験の合格率や合格ラインはどうなっているのでしょうか。

合格率は25%前後

過去の論文式試験における合格率は以下の通りです。

合格率
H17 26.4%
H18 23.2%
H19 22.3%
H20 21.4%
H21 28.3%
H22 26.6%
H23 23.9%
H24 29.4%
H25 24.8%
H26 28.3%
H27 25.8%
H28 26.1%
H29 25.0%

10年以上前に遡っても合格率に大きな変動はなく、概ね25%ほどになっています。

短答式試験の合格率が20%なので、一見論文式試験の方が難易度が低いように見えるかもしれません。

しかし、論文式試験は短答式試験の合格者のみが受験するため、一概にそうとも言い切れません。

人によって見解が異なるかもしれませんが、基本的には難易度の高い試験だと言えるでしょう。

短答式試験では基本的な知識が問われるのに対し、論文式試験ではより細かい暗記が求められます。論文式ではごまかしが効かない記述力が問われるため、短答式よりも難しい試験といえるでしょう。

免除制度利用者の合格率は?

論文式試験には選択科目免除と工業所有権法免除の2種類の免除制度が存在します。

論文式試験における免除制度利用者の合格率は以下の通りです。

一般 選択科目免除 工業所有権法免除
H21 28% 33% 100%
H22 27% 29% 0%
H23 24% 27% 55%
H24 29% 35% 35%
H25 24% 27% 47%
H26 28% 29% 20%
H27 26% 28% 14%
H28 26% 29% 0%
H29 25% 26% 0%

一般と選択科目免除に関しては、合格率がほとんど同じです。そのため論文式試験においては選択科目の免除の有無は、合格に大きな影響を与えないと言えます。

つまり重要なのは必須科目なのです。

合格基準

論文式試験における各科目の合格基準は以下の通りです。

科目 合格基準
必須科目 標準偏差による調整後の各科目の得点の平均(配点比率を勘案して計算)が、54点を基準として口述試験を適正に行う視点から工業所有権が相当と認めた得点以上であること。かつ47点未満の得点の科目が一つもないこと。
選択科目 科目の得点(素点)が満点の60%以上であること。

必須科目の満点は、特許・実用新案が200点、意匠と商標がそれぞれ100点になります。よって以下の全てを満たせば必須科目合格です。

  • 合計点が216点以上

  • 特許・実用新案科目が94点以上

  • 意匠と商標が47点以上

一方、選択科目に関してはどの科目も満遍なく勉強し、一定水準の点数を取る必要があります。

科目ごとに足切りがあるため、苦手科目を作らないようにしましょう。

免除制度はある?

論文式試験には必須科目と選択科目のそれぞれで免除制度があります。

必須科目の免除

必須科目の免除は以下の2パターンです。

  • 過去に必須科目を合格した者

必須科目を合格すると、論文式試験の合格発表から2年間は同科目の受験が免除されます。

  • 特許庁で審判または審査の事務経験が5年以上ある者

特許庁で審判または審査の事務に5年以上従事したものは「工業所有権に関する法令」及び「工業所有権に関する条約」に関する試験が免除されます。

選択科目の免除

選択科目の免除の特徴は、その期間が永久であることです。以下の3つの場合に適用されます。

  • 過去に選択科目を合格した者

平成20年度以降の論文式試験において、選択科目を合格した者は、同科目の受験が永久に免除されます。

  • 修士・博士・専門職学位に基づく選択科目免除資格認定

修士や博士、専門職学位を有する者は、工業所有権審議会から選択科目免除資格の認定を受けられる場合があります。資格が認定された場合、同科目の受験は永久免除です。

  • 特許庁が指定する公的資格を有する者

特許庁が指定する公的資格の取得者である場合、論文式試験において選択科目の受験が永久免除となります。公的資格は一級建築士や薬剤師、司法書士などです。

論文式試験に進んでから2年で合格を!

短答式試験にも免除制度があり、その期限は合格発表から2年間です。

短答式試験では全体の65%程度である合格基準点を超え、40%未満の得点の科目を1科目も出さなければ合格となります。合格するのは至難の技です。

一般的に短答式と論文式を別の年度で受験することも多いため、論文試験を何度も不合格になることは避けたいところだと言えます。

不合格になり、短答式の免除期限を過ぎてしまえば、短答式と論文式で最低でももう2年必要です。

そのため短答式免除の2年間のうちに論文試験を突破することが理想でしょう。

合格後は2年間有効

短答式試験に合格すればその時の論文式試験に進むことができます。また短答式の免除制度を使えば、例えその時に論文式を不合格となっても、翌年は論文式試験から受けることが可能です。

この免除制度を利用すれば、次の1年は論文式筆記試験の勉強に集中できます。そのため非常に重要な制度であり、多くの受験生が活用しています。

実際、免除制度の利用者(前年以前に短答式に合格した受験者)が合格するケースは非常に多いようです。平成29年度では合格者の63.9%が短答式免除者であることが分かっています。

科目合格制度がある!

論文式試験は必須科目と選択科目の2種類ですが、これらには科目別合格制度が存在します。

必須科目では合格発表日から2年間、選択科目では合格すれば永久的に、同科目の受験が免除されるルールです。

しかし、近年の口述式試験の合格率は9割を超えています。ほとんどの受験者が合格することから、わざわざ口述式試験のためだけに1年間勉強するのはもったいないと言えるでしょう。

そのため必須科目において免除制度を利用するケースは稀です。

重要なのは選択科目で、一度合格すれば永久免除となるので、早く突破すればその後の勉強が楽になります。

論文式試験の答え方は?

悩む女性 何とか2年間で突破したい論文式試験ですが、どういった答え方を心がけるべきなのでしょうか。

根拠が大切

論文式試験の「論文」とは、自分の意見や思いを文章にするエッセーとは異なります。明確な根拠に基づき、筋道を立てて書かれた客観的文章でなければいけません。

弁理士の場合、法律の専門家なので、根拠となる条文を正しく示すことが非常に重要です。文章を通して条文に対する理解度の高さをアピールすることが合格に繋がります。

条文の要件を考える

根拠となる条文を選択したら、その条文がどのようなケースで適用されるのかということについても考えなければいけません。

法律が適用されるにはいくつかの条件があり、その条件のことを要件と言います。

根拠となる条文が適用される複数の要件を正確に把握しているかということも、重要なアピールポイントです。「正確に」とは「網羅的に」を意味します。

論文試験のポイント

論文の試験に臨む時、「論文の試験だからその場で自分の考えを書けば良い」と考えてしまいがちです。しかし、実際には事前にできる対策が沢山あります。

論文式試験では複数で採点を行っても、採点者による不平等が生じないよう、共通の採点基準が設けられているのです。

そのため試験前に過去問などの問題と模範解答を確認すれば、何を書けば得点に繋がるのかを分析できます。問題をパターン分けし、整理できるようにしておけば、本番でも良い結果が望めるでしょう。

論文試験対策はどう行う?

自然の中のはてな 論文式試験の具体的な勉強方法には、どういったものがあるでしょうか。

まずはインプットから

まずは基礎的な論点や判例のインプットから始めるのが一般的な勉強法です。

具体的には予備校の講義を聞いたり、基本書を読み込むなどして始めることをおすすめします。

勉強すべき事項の量は少なくありません。そのためインプットは繰り返し行うことが大切です。

またインプットと並行してアウトプットも行うようにしましょう。アウトプットの方法は過去問や予想問題集を解くことが挙げられます。

インプットとアウトプットを同時に行うことで、問題を解くための知識が定着していくでしょう。

こうしたサイクルでの勉強が、論文式試験には有効な対策だと言えます。

過去問を使おう

論文式試験の過去問は、東京リーガルマインドやTACなどの予備校各社から、丁寧な解説付きのものが市販されています。

論文式試験には定型的な出題内容があり、過去問の類似問題が出題されることもあります。そのため過去問対策は重要です。それによって試験で問われやすい概念を知ることができます。

過去問は10年分ほど解くのがおすすめです。1周目は不安な問題に△、間違えた問題に×などの印をつけて解きましょう。

1周目は全ての問題を解き、2周目・3周目からは△や×を中心に対策を行うのです。

1周目は時間もかかり、分からない問題も多いため大変に感じるでしょう。しかし2周目、3周目と進むにつれ、解くスピードは早くなり、正解数も増えていきます。

そのため次第に勉強が楽しくなっていくでしょう。

頻出内容に対応する

論文式試験は記述式のため、短答式と大きく異なりそうに思えますが、実際はそうではありません。

特に必須科目(工業所有法)の出題内容は、特許、実用新案、意匠、商標の4つに限られます。これは短答式試験の出題科目の一部です。

論文式ではそれぞれの科目で重要な概念や基本的な用語は決まっており、ケースだけ変えて出題される場合が目立ちます。そのため概念や用語を記憶するとともに、ケースを掴むことも意識しましょう。

平成13〜29年度の論文式筆記試験(必須科目)の頻出用語は、特許・実用新案分野では「補正」、意匠分野では「関連意匠」、商標分野では「無効審判」などが挙げられます。

法改正に対応しよう

弁理士の試験では改正された法律を狙って出題されることもあります。法改正に関してはこれまでの過去問をそのまま解いても、混乱してしまうかもしれません。

法改正の対策としては、最新の問題集を使うことが挙げられます。既に改正民法に対応した編集が施されている問題集も市販されているようです。

市販のテキストを選ぶ場合は、最新版かどうか、最近の法改正に対応しているかどうかを見て選ぶようにしましょう。

弁理士試験に合格したら

飛び跳ねる女性 口述式試験の合格率は9割なので、論文式試験を突破したら弁理士試験合格となる可能性が高いです。では弁理士試験に合格したら次は何をすれば良いのでしょうか。

実務修習を修了し、弁理士登録を行う

弁理士になる資格は、日本弁理士会が実施する実務修習を修了することで得られます。実は、この実務修習が案外大変だと言われています。

実務修習は座学(集合研修)とe-ラーニングの2種類です。修了には両方で単位を全て揃える必要があります。

特に大変なのが座学です。座学には事前課題があり、原則として欠席が認められません

そのため座学に時間通り毎回出席することが、実務修習における一つのハードルになります。

また事前課題の完成度が不十分な場合、再提出になる場合もあるようです。場合によっては何度も再提出となることもあり、ここでも苦労する参加者がいるでしょう。

実施場所は東京、大阪、名古屋です。東京は参加者が多いため、いくつか時間別のコースがありますが、大阪・名古屋に関しては土曜コースのみだと言います。東京近郊に在住でない場合、時間的融通はききません。

e-ラーニングについて

e-ラーニングはテキストを手元において講義の映像を見るという内容です。

映像の途中には問題が挿入され、正答率が80%を超えなければ先に進めない仕組みになっています。そのため飛ばし飛ばし見たり、適当に見ることが許されません。

そのためある程度まとまった時間を確保して受講することになります。受講の時期は年末年始です。この時期は座学の事前課題作成時期でもあるため、弁理士試験に合格した年の年末年始は、多忙が予想されます。

弁理士試験を受けずに弁理士になる方法

実務修習を修了して弁理士となるには、弁理士試験に合格することが一般的です。しかし別の方法もあります

弁理士試験に合格する以外にも、以下のいずれかに該当する場合は、実務修習を受けて弁理士となる資格を得ることが可能です。

  • 弁護士となる資格を有する者

  • 特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者

弁理士登録を済ませ、弁理士になる

実務修習を修了したら、日本弁理士会で弁理士の登録ができます。

登録方法は日本弁理士会に登録申請書と必要書類を提出することです。登録が完了すれば晴れて弁理士となります。

弁理士登録の際には以下の費用が必要です。

費用 金額
登録免許税 60,000円
登録料 35,800円
会費 15,000円
合計 110,800円

弁理士試験・論述式試験の対策法まとめ

弁理士試験・論述式試験の対策法まとめ

  • 合格率25%だが、実質の難易度はもっと高い
  • 必須科目の攻略が重要になる
  • 法改正にも対応しつつ、過去問対策を徹底的に行うべき

今回は弁理士試験の論述式試験における対策法について詳しく解説しました。

論文式試験は、短答式の合格者だけの受験で合格率が25%という難しい試験です。

きちんと対策を行い、短答式合格から2年以内に合格を目指しましょう。

勉強法としては、基本内容のインプットからはじめ、過去問対策で仕上げていく方法がおすすめです。