弁理士の選択科目とは?科目ごとの過去問からの傾向や免除制度まで解説!

更新日時 2020/04/21

「弁理士試験ではどの科目を選べばよいのだろう?」

「各科目の概要や難易度を教えてほしい!」

弁理士試験を受験する予定の人ならこのようなことでお困りではないでしょうか?論文式試験の選択科目は合否を左右することもある重要なものです。

ここでは弁理士試験の論文式試験における選択科目を紹介します。論文式試験の概要や、それぞれの科目の難易度、さらには初学者でも勉強しやすいおすすめ科目なども紹介します!

弁理士試験の選択科目についてざっくり説明すると

  • 選択科目は全6種類から選ぶ
  • どの科目も記述式で、合格基準は60%
  • 資格や学歴によっては試験そのものが免除される

弁理士試験の選択科目とは?

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弁理士になるには国家試験である弁理士試験に合格しなければいけません。弁理士試験は短答式試験、論文式試験、口述式試験の三段階に分かれています。

短答式試験では7科目、論文式試験では必須科目と選択科目合わせて4科目に解答する必要があります。口述式試験では論文式試験の必須科目と同じ科目が出題されます。ここでは論文式試験における選択科目について紹介します。

そもそも弁理士ってどんな仕事?

弁理士とは特許権や著作権に関する専門家です。特許権は発明に対して与えられる権利ですが、特許庁に申請しなければ認められません。特許の申請は複雑で、素人が簡単に行えるものではありません。

そこで求められるのが弁理士です。弁理士は特許権や商標権の申請書類の作成や代行、相談などを主な業務とする仕事です。弁理士の業務は弁理士試験に合格し、登録した弁理士だけが行うことの出来る独占業務です。

弁理士試験の概要は?

弁理士試験は年1回、夏ごろに行われます。詳しい日程と試験会場は以下の表に示してあります。見てわかるように、最終試験が東京でしか行われません。地方出身者はスケジュール管理も必要になります。

受験資格に制限がないため誰でも受験できますが、合格率は例年6~7%と低くかなりの難関試験です。受験者数が変動しても合格率が変わらないため、相対評価の試験と捉える人もいるようです。

試験種 日程 試験会場
短答式試験 5月17日 東京、大阪、仙台、名古屋、福岡
論文式試験(必須科目) 6月28日 東京、大阪
論文式試験(選択科目) 7月19日 東京、大阪
口述試験 10月17日~19日 東京

各科目での試験科目・配点

短答式試験

短答式試験は五肢択一式マークシート式で行われます。試験時間は3.5時間です。問題数は全部で60問なので、1問あたり3.5分で解答するくらいのペースが必要です。

短答式の合格基準は全科目の合計点が満点に対して65%以上であることです。ただし、1科目でも40%に満たない科目があると不合格になってしまいます。苦手科目をつくらずにバランスよく得点することが求められます。

科目 出題数
特許・実用新案に関する法令 20題
意匠に関する法令 10題
商標に関する法令 10題
工業所有権に関する条約 10題
著作権法及び不正競争防止法 10題

論文式試験

論文式試験は記述形式で行われます。試験時間は必須科目が合計5時間、別日程で行われる選択科目が1.5時間です。

必須科目の合格基準は平均点が54点を超えていることです。ただし、1科目でも47点未満の場合には不合格となります。短答式試験と同じく、苦手をなくすことが重要です。

選択科目の合格基準は満点の60%以上の得点です。以下の5つの中からどれか1科目のみを申し込み時に選択します。なお、当日の変更はできません。

必須科目の科目名 試験時間
特許・実用新案に関する法令 2時間
意匠に関する法令 1.5時間
商標に関する法令 1.5時間
選択科目の科目名 試験時間
理工Ⅰ(機械・応用力学) 1.5時間
理工Ⅱ(数学・物理) 1.5時間
理工Ⅲ(化学) 1.5時間
理工Ⅳ(生物) 1.5時間
理工Ⅴ(情報) 1.5時間
法律(民法) 1.5時間

口述式試験

口述式試験は面接形式で行われます。試験時間は各科目10分程度で、合計30分ほどです。試験科目は論文式試験の必須科目と同じく工業所有権に関する法令です。

口述式試験はAからCの3段階で評価されます。合格基準はC評価が2科目以上ないことです。例年合格率が90%を超えている形式的な試験なので、他の試験ほどの対策は必要ありません。

なお、口述式試験は2日間にわたって行われますが、試験で問われるテーマは日によって異なります。前日とは違う内容が問われるのでカンニングはできないよう配慮されています。

口述試験の試験科目

  • 特許・実用新案に関する法令
  • 意匠に関する法令
  • 商標に関する法令

弁理士試験には科目合格制度が存在する。

弁理士試験には科目合格制度もあります。短答式試験と論文式試験(必須科目)では合格から2年間、論文式試験(選択科目)では永続的に有効です。

結果として科目合格制度を利用することになる人はいますが、最初から科目合格を目的として勉強する人は少数派です。一度の受験でまんべんなく点数が取れるように勉強することが一般的でしょう。

また、税理士試験などと異なり、弁理士試験は段階的に実施されます。短答式試験合格者のみが論文式試験を受験でき、論文式試験の必須科目と選択科目を両方とも合格した人だけが口述式試験に進めます。

そのため、先に選択科目を片付けて法律の勉強に集中することはできません。ただし、短答式試験合格後に論文式試験を必須科目や選択科目だけ受験することはできます。

やむをえない事情で受験できなかった場合には翌年片方だけで済ませることができます。

科目免除制度の利用者も多い

弁理士試験には科目免除制度もあります。特許庁での実務経験者や大学院での学位取得者、一部の国家資格取得者は論文式試験(選択科目)の試験免除の対象者になれます。

ただし、誰でも免除される訳ではありません。実務経験であれば年数と職務内容に関する証明が、学位であれば研究内容などに対する審査が必要です。審査の結果、免除されない可能性もあるので油断しないようにしましょう。

資格についても対象資格は細かく決められています。技術士や情報処理技術者などを例に挙げると、品質管理部門や基本情報技術者は免除対象ではありません。あらかじめ確認しておくことを勧めます。

弁理士試験の科目免除制度についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

選択科目はどんな内容なの?

選択肢

選択科目は7種類ある

論文式では必須科目として次の3科目が出題されます。口述式試験でも出題される弁理士試験の基本ですね。

  • 特許・実用新案
  • 意匠
  • 商標

この他に選択科目も受験する必要があります。選択科目は以下の6科目から1科目を受験申込時に選んで受験します。

  • 理工Ⅰ
  • 理工Ⅱ
  • 理工Ⅲ
  • 理工Ⅳ
  • 理工Ⅴ
  • 法律

理工Ⅰ(機械・応用力学)

理工Ⅰは機械・応用力学に関する科目です。出題されるのは以下の4分野です。

  • 材料力学
  • 流体力学
  • 熱力学
  • 土質工学

論文式試験ではこの4分野の中から1つだけを解答すればOKです。すべての問題に解答する必要はありません。

弁理士試験では過去問が特許庁より公開されています。それぞれの分野で傾向や出題頻度を確認しておくことをすすめます。

この科目で選択者が多いのは流体力学と熱力学です。例えば、流体力学では粘性流体の層流、流体の無次元数などの出題が中心です。熱力学ではエントロピー、ガスサイクル、湿り空気に関する出題が目立ちます。

理工Ⅱ(数学・物理)

理工Ⅱは数学と物理学の科目です。出題されるのは以下の3科目です。上述のように熱力学は理工Ⅰで出題されます。

  • 基礎物理学
  • 電磁気学
  • 回路理論

理工Ⅰと同じく、この3分野の中から1つだけ選択すれば良いのです。基礎物理学と電磁気学、回路理論の3分野のうちの全てには解答しなくても大丈夫です。

基礎物理学では剛体や振動などが近年は多めです。電磁気学では静電場や磁界、磁界内での荷電粒子などが問われています。回路理論では抵抗回路網や論理回路、アンプなど初歩的な問題が目立ちます。

理工Ⅲ(化学)

理工Ⅲでは化学が出題されます。以下の3分野のうち1つに解答しましょう。高校程度の問題もあるため、比較的取り組みやすい科目です。

  • 物理化学
  • 有機化学
  • 無機化学

物理化学では熱化学、化学反応速度論、金属錯体、物質の光吸収や発光などで出題実績があります。作図問題も見られます。

有機化学では各種有機反応の機構や中間体、分子構造解析、環状分子の立体配座などです。π電子やアルドール反応などが多いとも言われています。

無機化学では分子の構造、酸・塩基、水溶液中の電気化学反応が出題されています。

理工Ⅳ(生物)

理工Ⅳは生物系が出題される区分です。以下のように二つの細かい分野に分かれているので、どちらか一方を選択して解答しましょう。

  • 生物学一般
  • 生物化学

生物学一般では生物学の概論的な知識が問われます。情報伝達の仕組みや基本的な生物学用語の説明をさせる問題などが出題されています。

生物化学では生化学の基礎的な知識や用語を問う問題、たんぱく質や脂質、教科書レベルの実験が出されています。

どちらも計算よりは論述での説明が中心です。計算が苦手な人でも解きやすい科目ですが、大学教養程度の生物系の知識と考察力が必要なので誰にでもおすすめではありません。

理工Ⅴ(情報)

理工Ⅴは情報系が出題される科目です。以下のように大きく2つの分野に分かれています。得意な方を選びましょう。

  • 情報理論
  • 計算機工学

過去問を見てみると、情報理論はマルコフ過程、ハフマン符号など情報理論の基礎的な内容が出題されます。計算機工学では論理回路、プログラムの変換と実行などの計算機工学に関する内容が問われます。

コーディングやモデリングなど実務中心の内容がメインではないので、IT業界従事者でも勉強し直す方が良いでしょう。

法律(選択科目)

選択科目としての法律は民法の科目です。知的財産権に関する科目ではないので注意しましょう。

出題されるのは民法の総則、物権、債権の3つの分野です。民法の全範囲までは問われないのでポイントを絞って勉強すると効果的です。試験形式は必須科目の論文式試験と大きくは変わりません。

理工系の知識がなくても勉強しやすい科目ですが、代わりに民法の知識が必要です。そのため、法学部を除けば必ずしも文系が有利というわけではありません。

おすすめの選択科目は?

ここまで見てきたように選択科目には6科目15種類の選択肢が用意されています。受験者はその中から1つを選択する必要があります。

理系の人や法学部の人は自身の専攻科目を選びましょう。大学で専攻してきた内容が選択科目にあるのなら、その科目を選ぶと良いでしょう。電磁気学専攻なら理工Ⅱで電磁気学を、有機化学専攻なら理工Ⅲの有機化学を選びましょう。

法学部以外の文系の人などであれば、理工Ⅴの情報がおすすめです。難しい内容に感じられるかもしれませんが、暗記が中心なので他の科目よりも勉強しやすいと言えます。

計算が得意なら理工Ⅰや理工Ⅱ、考察や論述が得意なら理工Ⅲや理工Ⅳも悪くはないでしょう。しかし、大学教養程度の難易度なのでやや手を付けにくいと言えます。

選択科目の割合

グラフ

受験者が実際にどの科目を選んでいるのか見てみましょう。特許庁の公表しているデータでは次のようになっています。

科目 選択者数 割合
理工Ⅰ 23人 10.3%
理工Ⅱ 34人 15.2%
理工Ⅲ 16人 7.1%
理工Ⅳ 15人 6.7%
理工Ⅴ 27人 12.1%
法律 109人 48.7%

見てわかる通り、おおよそ半数の人が法律の科目を選んでいます。理工系の科目では機械応用力学、数学や物理の選択者が多いようです。

令和元年の受験者は半数が理系で、もう半分が文系その他です。理系以外の人が法律を選んだと考えると割合にも納得がいきますね。

弁理士の選択科目についてまとめ

弁理士の選択科目についてまとめ

  • 選択科目は理工系5科目に法律を加えた6科目。
  • おすすめは理工Ⅴの情報。
  • 免除制度や科目合格制度も利用できる。

ここまで、弁理士試験の科目について紹介してきました。選択科目は弁理士試験で最も中核的な試験である論文式試験で登場します。

選択科目でどの科目を選ぶかは非常に重要です。理系の人は基本的に自分の専攻科目やそれに近い科目を選びましょう。法学部ならもちろん法律です。

一方、どの科目も苦手という人は情報を選ぶと良いでしょう。暗記中心なので手を付けやすい科目です。

また、行政書士などの狙いやすい科目を取得するという手もあります。科目免除制度を利用すれば永続的に試験が免除されます。

自分にあった科目を選択して合格を目指しましょう!