弁理士試験の短答式試験の勉強法は?配点・合格率や過去問の使い方の実態まで解説!

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「弁理士試験の短答式試験ってどんな試験なの?」

「難しいって聞いたけど、良い勉強法はないの?」

弁理士試験に受かるためにはまず短答式試験を突破しなければいけないため、短答試験は気になりますよね。

そこで今回は弁理士試験の短答式試験とはどのような試験なのかについて、合格率や勉強法と併せて詳しく解説します。

この記事を読めば、弁理士試験の短答式試験の試験科目や制度が分かるだけでなく、勉強のポイントもしっかり理解できるはずです。

弁理士試験の短答式試験についてざっくり説明すると

  • 短答式試験に合格しないと論文式試験・口述試験に進めない
  • 例年5月中~下旬の年1回実施される
  • 合格率はおよそ20%で難易度の高い試験である

弁理士試験の短答式試験

積み重なった本 弁理士試験では短答式試験・論文式試験・口述試験が行われますが、まず短答式試験に合格しなければその先の論文式試験に進むことはできません。

そして短答式試験は=特許法・実用新案法・意匠法・商標法・著作権法・不正競争防止法・条約==から構成されていて、それぞれの知識を広く問われます。

科目が多い上にそれぞれボリュームがあるため、短答式試験に合格するためには頻出問題や重要ポイントを抑えながら、効率よく勉強を進めることが大切になります。

また弁理士試験の短答式試験には一定の傾向があるため、過去問対策もとても効果的です。

短答式試験の概要

弁理士試験は短答式試験・論文式試験・口述試験それぞれ年に1回しか実施されません。

例年、短答式試験は5月中旬~下旬、論文式試験は6月下旬~7月上旬に行われるため、短答式試験終了後から論文式試験までそれほど時間がありません。

また短答式試験の合格発表は例年6月上旬で、合否が分かるまでに3週間ほどかかります。

短答式試験と論述式試験では異なる科目の知識や理解が問われるため、短答式試験が終了したら合否が分からなくても論文式試験の勉強に取り掛かる必要があります

弁理士試験の流れ 日程
短答式試験 5月中旬~下旬
短答式試験合格発表 6月上旬
論文式試験 6月下旬~7月上旬

弁理士試験の短答試験の詳細

短答式試験は東京・大阪・仙台・名古屋・福岡の5都市で実施されます。

短答式試験は5肢択一式のマークシート形式で全60問出題されますが、試験時間が3.5時間もかかる長丁場な試験です。

試験科目とそれぞれの出題数は以下の表を参考にしてください。

試験科目 出題数
特許・実用新案に関する法令 20題
意匠に関する法令 10題
商標に関する法令 10題
工業所有権に関する条約 10題
著作権法及び不正競争防止法 10題
60題

上から3科目(太字の科目)の出題には、工業所有権に関する条約に関する規定が含まれることがあり、工業所有権法令の範囲内で条約の解釈・判断を考査します。

短答試験の合格率と合格点

喜ぶ子どもたち 先ほども触れましたが、短答式試験に合格しなければその先の論文式試験や口述試験に進むことができません。

弁理士試験の第一関門とも言える短答式試験の合格率や合格基準を確認していきましょう。

短答式試験には免除制度もあります。併せて確認しておきましょう。

合格率は平均20%前後

短答式試験の合格率は年によってばらつきがあるものの、平均は20%前後、近年は10%程度と低くなっています。

いくつかの見解があるものの、合格率の低さから難易度が高い試験であることがうかがえます。

弁理士の短答式試験の合格率を特許庁のデータを用いて以下の表にまとめました。

合格率
H(平成)17 31.2%
H18 31%
H19 29.5%
H20 29.6%
H21 19.3%
H22 13.7%
H23 30.3%
H24 26.1%
H25 9.2%
H26 11.8%
H27 14.1%
H28 15.5%
H29 8.9%
H30 20.1%
R1 18.3%
R2 18.2%
R3 11.3%

免除制度利用者の合格率は?

詳しくは後述しますが、弁理士試験には免除制度があります。

以下の表に弁理士試験に合格した人の内、免除制度を利用した人としていない人の割合をまとめました。

一般 短答一部免除 工業所有権法免除
H(平成)21 18% 72% 1%
H22 13% 60% 3%
H23 40% 38% 6%
H24 28% 47% 7%
H25 14% 45% 6%
H26 35% 43% 6%
H27 42% 39% 3%
H28 34% 60% 1%
H29 26% 64% 2%

こちらも年によってばらつきがあるものの、基本的には免除制度を利用している人の方が有利であることがわかります。

合格基準

短答式試験の合格基準は総合得点(60点満点)の65% です。これは基準であり、短答式試験合格後の論文式筆記試験と口述試験を適正に行う観点から、工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であることが求められます。

さらに==各科目の満点の40%==と定めていて、一科目でも合格基準を下回る科目があれば不合格となります。

どの科目でも一定水準の得点を得ることが必要になります。 苦手科目を作らないためにも満遍なく勉強を進めるようにしましょう。

総合得点、各科目の合格点の基準は以下の表の通りです

科目 合格点
全体(60点) 39点
特許・実用新案(20点) 8点
意匠(10点) 4点
商標(10点) 4点
条約(10点) 4点
著作権(10点) 4点

免除制度はある?

弁理士試験の短答式試験は免除制度があり、条件に当てはまれば短答式試験のすべてまたは一部の科目が免除されます。

免除制度の対象であっても免除を受けるためには、事前に申請をする必要があるので注意しましょう。

免除制度の詳細は以下の表の通りです。

対象者 免除科目 期間
短答式試験に合格した人 すべての試験科目 短答式試験の合格発表日より2年間
平成20年1月以降に進学し、工業所有権に関する科目の単位を修得して大学院を修了した人 工業所有権に関する法令・条約の試験科目 大学院の課程修了日より2年間
特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した人 工業所有権に関する法令・条約の試験科目

合格後は2年間有効

短答式試験に合格すれば、その年の論文式試験の受験資格を得られます。さらにもしもその年の論文式試験に落ちてしまっても、翌年と翌々年は短答式試験を飛ばして論文式試験から受けることができます。

一度短答式試験に合格すれば、その後2年間は論文式試験の勉強に注力することができる非常に重要な制度なため、活用する人が多いです。

先ほど合格率のところで紹介しましたが、弁理士試験合格者には短答式試験の免除を受けている人が多く、平成29年度を例に挙げると合格者のうち64%が短答式試験の免除を受けていました。

論文式試験に進むために

先述通り、短答式試験は全体の65%程度の最低合格点を獲得した上で、すべての科目で40%以上の得点をしなければ、短答式試験の時点で不合格になります。

つまり、どれだけ論文式試験の対策をして準備万端にしていたとしても、その年の論文式試験に進むことはできなくなるのです。

弁理士試験を受ける人には短答式試験と論文式試験を別の年度で分けて受験することで合格を目指す人が多いため、短答式試験が不合格となると、合格までにさらに2年はかかることもあります

科目合格制度はない

短答式試験は各科目ごと合格基準が定められていますが、科目合格制度は存在しません。

つまり一度受験した時にとても良い成績の科目があったとしても、その時の試験の全体の点数や他の科目が合格基準に達していなければ、翌年にもう一度すべての科目を受験して、合格基準点を獲得しなければいけないのです。

弁理士試験の短答式試験に合格するためには、他の資格以上に満遍なく勉強することが大切になります。

ちなみに論文式試験は選択科目と必修科目に分かれているため、科目合格が存在します。

短答式試験の難易度が高いのはなぜ?

落ち込む子ども 合格率や合格基準を見て短答式試験の難易度が高いことは分かりました。しかし短答式試験の難易度はなぜ高いのでしょうか?

ここからは短答式試験の難易度が高い理由について見ていきます。

選択肢が難しい

短答式試験は5つの選択肢から答えを選ぶマークシート方式なので、「簡単そうだ」と思うかもしれません。

しかし短答式試験では「選択肢の中に正解はいくつあるか?」という問題も出題されるため、選択肢すべての正誤を判断しなければいけない場面があります。

正解にたどり着くには条文の細かい部分もしっかり正確に覚えておく必要があります。

また基本的な知識が問われる論文式試験に対して、短答式試験ではより細かい部分や例外的な部分を問われる上に、ひとつしかない正解を確実に選ばなければいけません。しっかりと対策することが重要です

文章量が多い

選択肢の中から正解の選択肢を見つける問題ならば、正解の選択肢が見つかればすぐに次の問題に進むことができます。

しかし上述の通り、正しい選択肢の数を問われるような問題では、すべての選択肢をしっかり読んで判断しなければいけません。

弁理士の短答式試験は問題文も選択肢もそれぞれ文章が長いため、全60問を解くためにはかなりの量の文章を読むことになります。

そう考えると試験時間3時間半は決して長くはありません。

むしろ3時間半ずっと集中を続けて文章を理解しなければいけないため、非常に大変な試験です。

短答試験の勉強法の重要ポイント

ノートに線を引く このように合格が難しい短答式試験ですが、しっかり対策を立てて勉強をすることで合格に近づくことができます。

ここからは押さえておきたい勉強法の重要ポイントを紹介します。

まずはインプットから

短答式試験の勉強に取り掛かるなら、まず基礎的な論点や判例を一通りインプットしていくのが一般的です。

とは言え、勉強すべき事項の量は少なくないため、はじめから完璧に覚えたり、理解しようとすると挫折してしまう可能性があります。

まずは一通り予備校の講義を聴いたり、基本書を読んだりして、全体の流れを理解するところから始めるのがおすすめです。

何度も繰り返しインプットをすることで徐々に理解も深まるので、必ず繰り返し行いましょう。

またインプットしながら同時に短答式試験の過去問や予想問題集を解いてアウトプットを行えば、より知識が定着しやすくなるので効率よく勉強できます。

このように勉強すれば短答式試験の勉強だけでなく、論文式試験の対策にも繋がります。

過去問を使おう

弁理士のテキストや過去問はたくさん市販されているため手に入りやすいです。短答式試験の過去問も、丁寧な解説付きのものがLEC東京リーガルマインドやTACなどの予備校各社から市販されているのでぜひ活用しましょう。

短答式試験の出題には典型的な形式があり、過去問の類似問題が出題されることもあります。過去問対策は出題傾向や頻出問題の把握にもなるためとても有効な学習法です。10年分ほど活用するのがおすすめです。

過去問も繰り返し勉強するのが大切

過去問も一通りだけでなく繰り返し解くようにしましょう。1周目は不安を感じた問題には△、間違えた問題には×などの印を付けながら一通り解きます。2周目、3周目では△や×が付いた問題を克服していくように進めると効率的です。

1周目は分からない問題が多くて時間もかかるため大変に感じるかもしれません。

しかし2周目、3周目と繰り返し解いていくことで理解が深まって、解くスピードが早まったり、正解数が増えたりするため、手応えが感じられて勉強が楽しくなっていくはずです。

出題形式に対応する

先ほども少し触れましたが、短答式試験の問題は5肢択一のマークシート方式ではあるものの、選択肢から正しいものを選ぶ問題だけでなく、正解の数を選ぶような問題も出題されます。

出題パターンは6つに分けられるので確認しておきましょう。

  1. 適切なものを選ぶ問題
  2. 不適切なものを選ぶ問題
  3. 正しいものの数を選ぶ問題
  4. 不適切なものの数を選ぶ問題
  5. 正解の組み合わせを選ぶ問題
  6. 文章の空欄を書いてください

1と2のように選択肢から答えをひとつだけ見つければ良い問題なら、すぐに次の問題に進むことができます。

しかし3~6のような出題の場合はすべての選択肢に目を通した上で正解を導き出さなければいけないため、時間がかかって時間配分が難しくなる可能性があります。

法改正に対応しよう

先ほど過去問を活用することをおすすめしましたが、短答式試験では法改正された部分が狙われて出題されることがあるため、法改正前の過去問をそのまま解くと混乱してしまうことがあります。

しかし短答過去問集には改正民法に対応して編集を施してあるものも市販されています。過去問集を選ぶときには改正民法に対応している最新のものか確認してから選びましょう。

そもそも弁理士試験は独学で合格できる?

考える女性

先ほども少し触れましたが、弁理士試験はテキストや過去問集が豊富で手に入りやすいため、独学でも勉強を始めやすい資格だと言えます。

しかし勉強量が膨大な上に、法律用語などの聞きなれない言葉も多いため、まったく知識がない人が独学で合格を目指すのは簡単なことではありません。

予備校などを活用すると効率よく合格が目指せる

弁理士試験に合格するためには3,000時間ほどの勉強が必要だとされていますが、独学では効率よく学習を進めることが難しいため、もっと多くの学習時間が必要になると考えられます。

その点、予備校などを活用すればカリキュラムにそって勉強を進められるため、効率的に学ぶことができる上に、法の改正などの情報も手に入れることができます。

できるだけ短期間での合格を目指すなら、予備校などを活用することも検討してみましょう。

弁理士試験の短答式試験についてまとめ

弁理士試験の短答式試験まとめ

  • 合格基準点があるため苦手科目を作らないようにバランスよく勉強する
  • 免除制度があるので上手に活用して合格を目指そう
  • テキストや過去問は繰り返し勉強してインプットする

弁理士試験の短答式試験について、試験科目や試験制度、勉強法などを説明してきました。弁理士の短答式試験は決して簡単に合格できる試験ではないことがお分かりいただけたと思います。

しかし、ポイントを押さえてしっかり勉強すれば、十分に合格を目指せる試験です。

テキストや過去問集を手に入れやすい資格でもあるので、ぜひ挑戦してみてください。

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