文系から弁理士を目指すことはできる?主な大学の出身学部から業務内容まで公開!

自分は文系だけど弁理士にはなれるの?

と疑問を持っている方もいるでしょう。

結論からいうと、文系でも弁理士になることはできます。中には文系の方が向いている業務もあるくらいです。

今回は文系から弁理士を目指すことについて、出身学部による有利・不利や文系弁理士の業務内容まで詳しく解説します。

これを読めば文系からでも十分弁理士が目指せるということが分かるはずです。

文系から弁理士を目指すことをざっくり説明すると

  • 少数派だが文系弁理士も活躍している
  • 法律系学部以外の文系が試験でやや不利なのは事実
  • 商標に特化するなど、文系弁理士向きのキャリアも

大学時代文系でも弁理士になれるの?

アスファルトを走る 文系から弁理士を目指すことももちろん可能です。ただし弁理士試験の出題内容を考えれば、学部による有利・不利が少々存在することも事実だと言えます。

そもそも弁理士の仕事とは?

弁理士は知的財産の専門家です。知的財産はデザインやブランドなどの無形財産のことを指します。

知的財産権とは、特許権や意匠権、著作権、実用新案権などです。その中でも特許や商標、意匠の登録に関しては特許庁に権利を申請しなければなりません。

申請書を出願の上、審査に通れば無事権利として認められます。

その出願の手続きを発明者に代わって行うのが弁理士の主な仕事です。

出願して権利化する際には、そもそも出願が必要かどうかのコンサルティングを行うこともあります。

また特許庁からの審査結果通知に対応することも弁理士の仕事です。

弁理士は理系出身の方が有利?

弁理士試験の受験者および合格者を見ると、受験者の約7割が理工系です。一方で法文系の受験者は約2割になります。

合格者に関しては、全体の8割が理工系、法文系は1割程度でした。

また合格率で見ると理工系が7.4%なのに対し、法文系は4%です。

よって文系の方が合格率が低く、弁理士試験に関してはやや不利な傾向にあると言えます。

そもそも弁理士資格に挑戦する文系の受験者が少ないことを見ても、やはり文理による有利・不利もしくは向き・不向きはあるとみるのが自然です。

以下が2022年の試験データの詳細です。

理工系 法文系
合格者数 148人(76.7%) 29人(15.0%)

合格率に試験内容は関係している?

弁理士の試験には短答式試験と論文式試験、口述式試験があります。

短答式は特許や意匠、商標などに関する法律系の内容が出題される試験です。形式は5肢択一のマークシート方式になります。

次の論文式試験ですが、必須科目と選択科目の2種類です。必須科目の出題範囲は、特許・実用新案、意匠、商標の3科目になります。

短答式および論文式の必須科目までに関しては全員共通の試験です。そのため試験内容によって文理による有利・不利が出るとは考えにくいでしょう。

一方で論文式の選択科目では実質文理が異なる試験を受けます。選択科目は6種類から1つを選択して受験しますが、6種類の内訳は理工系科目5つに法律問題が1つです。

文系の多くは法律問題を選択し、理系は理工系科目のどれかを選択するでしょう。

文系と理系、それぞれに向いていると思われる選択肢が用意されているため、特別文系が不利とは言えません。

それでも文系の方が合格率が低いのはなぜ?

考えられる可能性はいくつかありますが、一つは選択科目の選択肢です。文系は基本的に法律問題を選ぶしかありませんが、理系には選択肢が5つ用意されています。

自分の専攻などに合った得意科目を選択できる分、選択科目に関してはやや文系が有利でしょう。

また文系資格は理系よりも種類が多く存在するという点も理由の一つです。つまり優秀な人は司法試験や公務員などの試験を受けるため、最初から弁理士の試験を受ける文系受験者は少ないと言えるのです。

さらに文系と言っても必ず法律系学部の出身者とは限りません。他の文系学部出身者であれば法律の論述式問題を解くのは簡単ではないでしょう。

弁理士の合格率については、以下の記事で詳しく解説しています。

弁理士に不利な学部は?

弁理士になるのに不利になるという学部は基本的には存在しません。しかし試験においては、文系学部、特に法学系以外の教育学部や外国語学部、人文学部出身者には不向きな部分もあると言えます。

それらの学部では法律系学部と違い、弁理士試験と関連のある分野を大学の講義などで扱うケースが少ないからです。

そのため法文系学部出身者に比べると相対的に不利だと言えるでしょう。

文系弁理士のメリット・デメリット

悩む女性

理工系に比べてやや不利だと言える文系の弁理士受験ですが、文系から弁理士になるメリットとデメリットは何でしょうか。

文系から弁理士のメリット

文系で弁理士を目指すメリットとしては、文系の方が弁理士の勉強に時間を割けるという点が挙げられます。理系は講義や研究で忙しい場合が多いからです。

また法文系学部の出身者なら、学部で培った法律知識を活かせるため、弁理士試験の対策がしやすいこともメリットであるといえるでしょう。

さらに弁理士に採用された後にもメリットは存在します。実は弁理士の業務には文系の方が向いているものも存在します。

実は弁理士の仕事内容は文系に近い?

弁理士の主な仕事は特許庁に申請書類を出すことです。つまり文章を書くことが主な業務になります。

また特許庁への出願はただ機械的に行えば良いのではなく、発明者や審査官とコミュニケーションを取る必要があります。発明者(依頼人)の要望を汲み取り、審査官に伝わるような論理的で明解な文章を作成しなければなりません。

以上のような業務内容はどちらかというと文系向きと言えるのです。

文系から弁理士のデメリット

弁理士の試験勉強で法律知識は習得するわけですから、理系出身の弁理士は理工系の専門知識に加えて、法律知識(文系的な知識)を有することになります。

一方で文系弁理士は文系の知識しか持っていません。その点では文理両方の知識のある理系弁理士の方が有利だと言えるでしょう。

発明は理系の知識と関係するため、理系の知識は重宝されやすく、その分給料も高くなります。

募集の段階で理系希望と書いていなくても、実際に採用されやすいのは理系であることも多いようです。

理系でも理系内容を全て知っている訳ではない

理系には物理や化学など様々な分野があります。そのため理系弁理士だからといって理系全般の知識に詳しいというわけではありません。全く知らない分野もない訳ではないでしょう。

例えば力学とバイオ系、電子系では専門知識がかなり異なります。また大学で勉強したレベルで必ずしも最新技術をカバーできるとも限りません。

そのため文系が特別に不利という訳ではなく、勉強次第では理系に追いつける可能性も十分にあります。

弁理士と理系の関係については、以下の記事を参考にしてください。

文系におすすめの弁理士の仕事

本を読む女性二人 弁理士には特許関連の業務だけではなく、文系向きと言えるような業務内容も存在します。

弁理士の行う業務には何種類かある

弁理士の主な業務は特許庁への特許、商標、意匠の出願です。

出願にあたっては知的財産の内容を詳細かつ正確に文章で説明しなければなりません。

また世の中に製品が出ていく際には商標登録を行う業務もあります。

最近では特許庁によるデザイン経営の促進により、重要視されているのが意匠権です。

商標に関する業務

商標出願においてはクライアントと打ち合わしながら内容を詰めていきます。製品などのスペックを把握し、どのような権利を取得できるかを確認する作業です。

また商標を使用することで紛争が起きる可能性がないか事前調査を行う必要もあります。

そうした工程を踏んで、出願書類が作成され特許庁へ提出されるのです。

その後特許庁から弁理士へ通知が届いたら、内容をクライアントへ報告します。

権利が認められれば登録料などを支払って権利化は完了となります。

以上が商標に関する業務の流れになります。

意匠に関する業務

意匠を出願する場合もクライアントと打ち合わせをして出願内容を確認します。デザインの特徴や製品の機能、用途などを把握し、書類を作成することになります。

この場合も行わなければならないのは、意匠登録によって紛争が起きる可能性がないかの事前調査です。

書類を作成したら、特許庁へ提出します。その後、特許庁から弁理士へ通知が来るので、内容をクライアントへ報告します。

審査に通れば登録料などを支払い権利化完了です。基本的な流れは商標と変わりません

文系に多い弁理士キャリア

文系出身の弁理士の定番ルートの一つが商標に特化することが挙げられます。

商標の登録は製品の販売戦略において重要になります。企業間の争いはとても激しいため、強い商標戦略を練ることが非常に大切です。

ある程度、製品の性能が高まってくると、次はデザイン面での競争が始まります。その場合はデザイン性の高い製品を早く市場に届けることが重要になるのです。

そうするためにはどこに就職すれば良いの?

理系弁理士と同じく特許事務所に入るという選択肢があります。特許事務所によっては商標や意匠を扱うところもあるためです。

また実用新案の考案に関して言えば、特許ほど高度な技術が使われることが少ないため、文系弁理士でも活躍することができます。

一方で商標や意匠の専門事務所に入るという手もあるでしょう。全ての商標出願が特許事務所で出願されている訳ではないのです。

商標出願の件数は増えており、かつては年間10万件程度だったその数は、現在19万件を上回ります。意匠出願に関しては大きな変化はなく、年間3万件程度です。

特許出願と商標出願では、特許の方がもたらされる手数料は多くなります。しかし理系対文系ということを考えるのであれば、文系弁理士は商標出願にフォーカスするのも悪くないでしょう。

幸い件数が増えている今なら、商標出願がメインでも十分にやっていけます。

弁理士のスキルは他にも役立つ

弁理士の知的財産の専門家としてのスキルは、他のビジネスでも活用できます。

例えば一般企業において経営部門は文系が中心です。経営部門と知的財産部門のコネクトが甘い場合は、文系知識と知財関係の知識を活かして両者を繋ぐこともできるでしょう。

企業内弁理士として企業に就職する

最近では企業が自社内に法務や経理の専門家を雇用するケースが増えています。企業内弁護士や企業内会計士はよく聞く名前です。

そのため企業内弁理士という可能性もまたあります。商品開発を行うメーカーなどには知的財産部が設けられている企業もあり、そうした企業では弁理士の能力が重宝されるでしょう。

具体的には知的財産を創出する際の支援から特許庁の権利化、獲得した権利の活用など知財関係の業務を幅広く任されます。

また他社特許の監視や自社の知財戦略の考案も企業内弁理士の仕事です。

一般に大きな企業であればより専門的な対応能力が、組織が小さくなれば手広く色んな業務をこなすことが求められます。

一企業の社員となるため、独立開業で成功した場合のような超高収入は望めないものの、特許事務所勤務と同水準以上の安定した収入や福利厚生の恩恵を受けられるというメリットがあります。

英語力と合わせて活躍に期待できる

文系の場合、理系出身者よりも英語力が高い傾向にあります。そのため英語を武器にして活動するのも良いでしょう。

最近は海外に関係した知的財産の案件も増えています。具体的には日本から外国への出願(国外業務)と外国から日本への出願(外内業務)です。

これらの業務では英文での書類作成やクライアントとの英会話が必要になります。英語力の高い文系弁理士には有利な仕事でしょう。

国内の特許業務でも英語力があると有利!

国外業務や外内業務に限らず、英語力が役に立つ場面は存在します。

日本国内では明細書作成が軽視されがちです。しかし実際にはこの作業から生み出される経済的価値は非常に大きいため、重要な作業だと言えます。

実はこの明細書作成に文系弁理士の英語力が活かせるのです。最近は日本企業の外国出願の案件数が増えています。その際は国内で作成した明細書を英語に翻訳することになるでしょう。

そのため明細書作成段階で英語に翻訳しやすいような書き方を意識する必要があります。

具体的には英語にも対応した文構想を意識し、翻訳しにいく難解な書き方や言葉遣いは避けるなどの工夫が必要です。それらの工夫ができるのは、英語に長けた文系弁理士でしょう。

弁理士の将来性

よく晴れた並木道 弁理士を目指す人にとって、将来も弁理士の需要はあるのかという点は重要でしょう。

弁理士の仕事はAIに取られるのか

将来、弁理士の仕事はAIによって代替されるという言説がありますが、この真偽はどうなっているのでしょうか。

確かに簡単な種類作成などの業務はAIが行うようになるかもしれません。しかし現在弁理士が主に行っている業務に関しては、AIが代替することは困難だと言えるでしょう。

弁理士の仕事は文系的だと説明しましたが、その主な業務は書類作成です。書類作成と言っても、ただ機械的に作るのではありません。

書類の作成には、発明者(クライアント)や特許庁の審査官らとの意思疎通も含まれます。

書類作成時には発明者と打ち合わせをし、どんな権利を獲得したいのか、その権利をどのように活用するのかなどを確認していきます。

この際は、発明者自身も明確に分かっていないような言外の意味やニュアンスも汲み取って申請内容を決めなければなりません。

また、実際に書類を作成する際も、審査官に伝わりやすいような文章を心がける必要があります。

文法規則の単なる適用を超えた、こうした高度な言語処理は現在のAIには行えないでしょう。

そのためまだまだ弁理士は必要とされる職業であり続けるはずです。

弁理士のなり方

アスファルトと晴天 今回は文系からでも弁理士は目指せるという内容を解説してきました。最後にどうすれば弁理士になれるのかを説明します。

弁理士になれる人

日本弁理士会によると、弁理士になれる資格を持つのは以下のいずれかに該当する人です。

  • 弁理士試験に合格した者

  • 弁護士となる資格を有する者

  • 特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者

これらの人は日本弁理士会が実施する実務修習を修了することで弁理士となる資格を取得できます。

資格を取得したら登録料などの諸費用を支払って、日本弁理士会へ登録を行えば、晴れて弁理士です。

弁理士になれない人

一方で上記の項目に該当しても弁理士になれない人も存在します。それは以下のような場合です。

  • 刑事処分を受けた者

  • 業務上の処分を受けた者

  • 制限行為能力者など

各項目のさらなる詳細については、日本弁理士会のホームページより確認してください。

弁理士の試験

弁理士になるには日本弁理士会が主催する資格試験を突破して実務修習へ進むのが一般的です。

試験は短答式試験、論文式試験、口述式試験の3段階で行われます。

実施はそれぞれ年1回で、5月下旬ごろに行われる短答式からスタートして、合格者は次の試験へ進むという仕組みです。

試験会場は、短答式に関しては東京、大阪、仙台、名古屋、福岡で実施されます。論文式は東京、大阪、口述式は東京のみの実施です。

合格に必要な時間は、初学者で3,000時間とも言われる難関試験になります。独学で合格することも可能ですが、予備校や通信講座の活用もおすすめです。

過去問は特許庁のホームページより無料で入手が可能です。

実務修習について

どのルートを辿っても実務修習を修了しない限り、弁理士登録はできません。

実務修習は座学(集合研修)とe-ラーニングの2種類あり、どちらにおいても単位を全て揃える必要があります。

特に座学は原則欠席が認められず、事前課題の提出もあるため、負担の大きい研修です。

ただし実務経験者などには免除制度もあるため、有効活用をおすすめします。免除を受けるには申請が必要です。適用条件の詳細は日本弁理士会および特許庁のホームページから確認するようにしてください。

文系から弁理士を目指すことまとめ

文系から弁理士を目指すことまとめ

  • 文系からでも十分弁理士は目指せる
  • 試験や特許業務ではやや不利な面もある
  • 弁理士業務はむしろ文系的で、活躍の場も多い

文系から弁理士を目指すことについて詳しく解説しました。

文系でも弁理士になることは十分可能です。試験や一部業務で不利な点はありますが、文系向きとも言える弁理士業務では、文系弁理士が活躍できるチャンスも沢山あります。

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