弁理士の仕事内容は?独占業務や年収・弁理士試験の難易度まで徹底解説!

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弁理士ってどんな仕事をするんだろう?

と疑問をお持ちの方もいるでしょう。

弁理士は、知的財産権を取得したい発明家にとっては欠かせない存在ですが、一般の人には馴染みがない部分も多いかもしれません。

今回は、弁理士の仕事内容について、独占業務や年収、弁理士試験の難易度まで詳しく解説します。

これを読めば、弁理士がどんな仕事をしているのか、よく分かるはずです。

弁理士の仕事内容についてざっくり説明すると

  • 特許庁への知的財産権の申請は、弁理士の独占業務
  • 平均年収は700〜800万円
  • 弁理士試験は、合格率10%以下の難関試験

弁理士の仕事内容

黒板のはてな 弁理士とは、知的財産の専門家です。知的財産とはデザインやアイデアなどの無形財産を指します。

また知的財産権とは著作権や実用新案権、意匠権、商標権などです。

弁理士の主な業務は、特許庁への知的財産権の申請を、発明者に代わって行うことになります。

また知的財産の専門家として、企業などにコンサルティングを行うことも弁理士の仕事です。

最近は国内外で知的財産に対する意識が高まっているため、国際的に活躍する弁理士も増えています。

弁理士の行う業務には何種類かある

弁理士の主な仕事には、特許庁への特許や意匠、商標の出願があります。出願の際は、発明者からのヒアリングを元に、知的財産の内容について正確かつ詳細に文章化しなければなりません。

商標登録の業務は、世の中に商品が出ていく際に必要です。

また最近では、特許庁によるデザイン経営の促進により、意匠権が重要視されるようになっています。

商標に関する業務

商標出願では、まずクライアントと打ち合わせをして、製品のスペックなどを知ります。その上でどのような権利を取得するかを決定するのです。

また商標を使用することで紛争が起きる可能性がないかを事前調査することも必要になります。

それらを済ませて出願書類を作成し、特許庁へ提出します。

審査が終われば、特許庁から弁理士へ通知が届くので、クライアントへ結果報告です。

審査に無事通れば、後は登録料などを支払って権利化完了となります。

意匠に関する業務

意匠を登録する際の流れも商標登録と似ています。

まずクライアントを打ち合わせをし、デザインの特徴や製品の機能、用途などを確認します。それを元に出願書類を作成し、特許庁へ提出という流れです。

ここでも意匠を取得することによって、紛争が起きないかを事前調査する必要があります。

後の流れは商標と同じです。特許庁の審査に通れば、登録料などを支払って権利化となります。

弁理士の果たす役割

法律は権利を守る上で重要です。弁理士は法理、特に知的財産の専門家として不正を防止する役割があります。その役割を果たすために弁理士は様々な業務をしていきます。

具体的には、新技術などに対する特許の取得や企業の知的財産に関するコンサルティングなどを行います。

また特許庁に対して特許など知的財産権を申請できるのは弁理士だけであり、このような業務は「独占業務」と呼ばれています。

企業にとって知的財産権の保護は重要な課題です。知的財産権の保護がきちんと行われていれば、事業が円滑に進み、業績アップにも繋がるでしょう。

知的財産権を取得する場合、頼りになるのは弁理士だけになります。なぜなら、知的財産権の取得は弁理士の独占業務だからです。

このように弁理士は企業および市民にとって、欠かせない存在だと言えます。

弁理士が頼られる理由

弁理士試験は難易度が高く、たとえ優秀な人でも勉強には数年を要します。そのため、弁理士試験を突破した弁理士の知識は豊富であるといえます。

弁理士が持つ法律知識は、量が膨大であり、かつ内容も専門的で難解だと言えます。そのため一般人では理解することは難しいでしょう

そのため、専門家である弁理士の存在は非常に重宝されるのです。

弁理士の主な就職先

対談する二人 弁理士の就職先は、特許事務所や一般企業、独立開業など様々です。それらに関して具体的に見ていきましょう。

特許事務所

弁理士の就職先として、最もメジャーなのが特許事務所です。弁理士に転職する場合も、特許事務所への勤務を最初に思いつくでしょう。

特許事務所で雇われている弁理士の年収は、平均700〜800万円と言われています。これは一般的なサラリーマンと比べて、高い水準です。ちなみに日本人の平均年収は400万円程度と言われます。

特許事務所での勤務には、独立して経営する場合と比べて、安定的に収入が維持できるというメリットがあります。しかもその収入は高収入です。

また特許事務所では、事務や雑務を求められないため、特許業務のみに集中できることも魅力と言えます。

ほとんどの弁理士がまず特許事務所へ

一口に特許事務所と言っても、その実態は様々です。数人の弁理士からなる小規模の事務所もあれば、数百人の弁理士が属する大規模なところもあります。

未経験から弁理士となる場合、まずは事務所に勤務することが一般的です。そこで経験を積み、弁理士としてのスキルを高めることができます。

弁理士として就職する人の割合は増加傾向にありますが、そのほとんどが就職先に特許事務所を選ぶようです。

企業内弁理士

昨今、企業が社内に専門家を雇用するケースが増えています。企業内弁護士や企業内会計士は有名です。

同様に、企業内弁理士の数もかなり増えており、人気の就職先となっています。

企業経営に関わる業務となるため、普通の特許事務所で働くよりも、フレキシブルに働くことが可能です。

また大手企業などの場合、給与の面でも待遇が良い場合もあるでしょう。それらのメリットから、企業内弁理士には人気となっています。

企業内弁理士の仕事内容は?

企業内弁理士として働く場合も、特許庁への申請・登録業務が主になります。

先願主義の知的財産権は、既存の権利に同様のものがあれば、権利を取得することができません。

そのため、製品などの独自性をいかにアピールできるかが、権利化成功の鍵となるのです。

企業内弁理士が一般の弁理士と違うのは、扱う製品が自社製品だと言うことです。自らの働きが業績に直結するため、やりがいのある仕事だと言えるでしょう。

弁理士の就職・転職については、以下の記事を参考にしてください。

独立する人も

弁理士の独立には、個人で独立する場合もあれば、複数で独立経営するケースもあります。

独立開業のメリットは、超高収入が狙えることや労働時間を好きに決められることなどです。一方で特許事務所に勤務するような安定性はなく、経営手腕次第では廃業のリスクもあります。

弁理士数は増加傾向にあるため、独立開業には、他社との差別化が重要です。

またクライアントの獲得も今後の成長に向けた大きな課題になるでしょう。

開業後しばらくは低収入の時期を経験することも多いため、一定の貯金も必要です。

弁理士になるには

パズル2ピース 弁理士になるには弁理士試験に合格する必要があります。試験の難易度は高く、非常に狭き門です。

費用は合計でいくら必要?

弁理士になるための費用としては、以下のようなものがあります。

  • 弁理士試験受験料

  • 弁理士会の登録料・年会費

  • 実務修習の受講料

  • 塾に通う、通信講座を受ける場合には受講料

上から3つは確実に必要な費用です。弁理士試験の受験手数料は12,000円で、特許印紙にて支払います。

また、弁理士試験に合格後は、日本弁理士会が実施する実務修習に参加しなければなりません。実務修習の受講には118,000円が必要です。

実務修習を修了すれば、弁理士としての登録を行います。登録には登録免許税と日本弁理士会への登録料・会費が必要です。

登録免許税は60,000円登録料・会費は50,800円(35,800円+15,000円)となります。

つまり、弁理士試験から弁理士登録までに、少なくとも20万円以上のお金が必要になるのです。

弁理士試験の受験資格

弁理士試験に受験資格はありません。そのため、大学を卒業していない方や一般企業で働いている方でも受験し、合格できる試験です。

受験資格はないものの、理工系学部出身の人が多く受験する傾向にあります。理由としては、製品開発は理系と関わりが深いこと、文系は司法試験や公務員試験などの他の資格を目指すことなどが考えられます。

ちなみに、実務修習を受けて弁理士登録をするには、弁理士試験合格以外にも方法があります。以下のどちらかに該当する者は、いきなり実務修習を受けることが可能です。

  • 弁護士となる資格を有する者

  • 特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者

弁理士試験の難易度

弁理士試験の合格率は、例年6~8%程を推移しています。そのため難易度の高い試験と言えるでしょう。

しかし、弁理士試験には受験資格がないため、受験のハードルは低い試験です。勉強不足でも記念受験はできるため、合格率がより低くなっている可能性はあります。

また弁理士試験は、短答式試験と論文式試験、口述式試験の3段階です。中には短答式と論文式を、2年以上かけて合格する予定で受験する人もいます。このことも、合格率を下げる一因かもしれません。

ちなみに、弁理士試験の合格に必要な時間は、3,000時間以上と言われています。そのため、難易度が高い試験であることには変わりありません。

弁理士を名乗るには登録が必要

試験合格後、実務修習を修了しても、それだけではまだ弁理士として仕事をすることはできません。

弁理士になるためには、弁理士会に定められた登録手続きを行わなければならないと、弁理士法に定められています。

そのため、弁理士会に入会しない、つまり登録を行わない場合は、弁理士として活動することはできません。

登録のタイミングは任意なので、実務修習はが修了してすぐに登録する必要はありません。ただし、登録を行わない限りは、弁理士としての活動ができないということです。

高卒でも弁理士になれる?

弁理士試験に受験資格はないため、もちろん高卒でも弁理士になることは可能です。

その場合は、論文式試験の選択科目で、法律を選ぶ方が賢明だと言えます。

これは文系受験者にも共通することですが、選択科目における理系問題の対策に、大学レベルの理系科目を基礎から学んでいくことは時間的に困難でしょう。

法律問題は暗記も多いため、高校レベルの知識からでも勉強がしやすい科目だと言えます。

弁理士の平均年収はどれくらい?

喜ぶ子供 弁理士の平均年収は、700〜800万円程度と言われています。

ただし、政府など公式の統計は存在しないため、あくまで参考の数字です。

弁理士の収入は、一般的なサラリーマンの平均年収400万円と比べると、十分に高い水準だと言えます。

ちなみに年収700〜800万円というのは、特許事務所に勤務する一般の弁理士の給料です。事務所の大きさや役職によっては、さらに高い場合もあるでしょう。大手事務所では、様々なサービスを行うため、その分儲けも大きくなるのです。

また、企業内弁理士という働き方もあります。この場合も特許事務所勤務と同水準の給料が期待できるでしょう。大手企業に就職・転職した場合は、さらに待遇が良いこともあります。

独立開業した場合、案件を取る営業能力次第では、超高収入も目指せるでしょう。同時に、経営が上手くいかないと低収入や廃業のリスクがあります。

弁理士の収入についての詳細はこちら!

弁理士業務のやりがい・向いている人

こちらを見る子供 弁理士の業務には、どのようなやりがいがあるのでしょうか。また弁理士に向いている人とはどのような人物なのでしょうか。

弁理士業務のやりがい

弁理士の主な業務は、特許の取得ですが、これは意外と時間がかかる作業です。特許を取得するには最低でも1年、長い場合は10年かかることもあります。

発明者と二人三脚で、手間や苦労をかけて特許が取得できた時は、大きなやりがいを感じるでしょう。また、権利化によって発明者から感謝されることにも充実感があります。

また、特許の申請には、権利を請求する範囲が重要です。権利の範囲が広すぎると審査に通りにくくなる一方で、範囲が狭過ぎると権利としての価値が薄くなってしまいます。

そのため、権利化には弁理士の実力が如実に反映されるのです。この点も弁理士のやりがいでしょう。上手くいった場合は、弁理士としての実力を世間に証明することになるのです。

辛いところ

弁理士は、期限に追われる仕事です。手続きごとに明確な期限が定められているため、常にそれをクリアしていく必要があります。

特許庁から「拒絶理由通知」を受ければ、意見書や補正書の期限が設けられます。その期限を過ぎれば、その時点で権利化失敗です。

複数案件を抱えていれば、数々の締め切りを意識しなければいけません。期限が迫る中、クライアントとの調整を行わないといけないこともあり、神経を使う場面が多い仕事といえるでしょう。

弁理士に向いている人

弁理士試験に合格するには、最低でも2年は孤独に勉強を続ける必要があります。その努力ができる人でなければ、弁理士にはなれません。

また、弁理士になった後も勉強は続きます。発明品を理解できるよう、常に新しい技術について知識を蓄えておく必要があるのです。毎日ニュースをチェックし、情報収集することが重要となります。

そのため、勤勉な人が弁理士に向いていると言えるでしょう。

さらに、弁理士は職務上、常に新しいアイデアに触れることになります。そのため、好奇心旺盛の人にはたまらない職業だと言えます。

細部にまで気を配れる人や、相手を言い負かすような攻撃性を持つ人も、弁理士に向いていると言えるのです。

弁理士の志望動機

弁理士の志望動機としてまず挙げられるのは、やはり収入の高さです。

資格取得には長い勉強が必要ですが、一度資格を取れば一生仕事ができることも魅力と言えます。

特許事務所や企業で働くことができる一方で、独立開業という選択肢もあり、多様な働き方ができることも志望される理由です。

また弁理士は、理系の専門性が活かせる珍しい国家資格と言えます。技術や研究を知的財産として保護し、産業を支えるという業務内容に魅力を感じる人も多いようです。

弁理士の求人の実態は?

ひだまりの少女 弁理士は現在就職難であるなどと言われていますが、実際に弁理士で食べていけないという人はほとんどいません。その意味で、昔と比べて就職状況に大きな変化はないと言えます。

未経験でも転職できる?

弁理士試験の平均合格年齢は30歳前後と言われています。そのため、新卒採用で一般企業に就職し、数年キャリアを積んでから転職しても遅くありません。十分に成功するチャンスがあります。

弁理士試験の勉強内容は膨大なので、法律の知識がゼロから合格を目指す場合、少なくとも30代のうちに勉強を始めるようにしましょう。

しかし、40代以上の人でも弁理士を目指すことは可能です。弁理士は自由業のため、定年がなく、一度資格を取得すれば生涯弁理士であり続けることができます。

よって40歳で一念発起し、45歳で弁理士になったとしても十分に成功のチャンスはあるでしょう。70歳まで続けたとすれば、40歳から勉強を始めても、25年のキャリアを積むことができます。

弁理士の将来性は低い?

パンフレットを見る女性 弁理士の仕事は、将来AIによって代替されるという言説があります。しかし、その可能性は高くないでしょう。

弁理士の仕事は、特許取得を望む発明者とコミュニケーションを取ることが必要だからです。いくら自然言語処理に長けたAIといっても、その業務を完璧にこなすのは難しいでしょう。

特許を取る場合、どのような権利を取るべきかが、発明者の中で明確になっていないことも多いです。その際、弁理士はきちんと話を聞いて、出願内容を検討して行く必要があります。

時には、発明者本人も言語化できていないような微妙な感覚やニュアンスまで汲み取る必要もあり、この汲み取りは、AIには困難を極めます。

一方で、AIなど技術の発達は、弁理士の業務効率化に役立つ場合もあります。実際、弁理士の業務を助けるシステムも、次々に開発されています。

そうした最新技術に関する情報を常にキャッチアップし、他の弁理士と差別化を図ることも、弁理士業界を生き抜く上では重要です。

したがって、常に生き残る努力や勉強を続ける必要はありますが、弁理士はまだまだ必要とされる職業だと言えます。

弁理士になるまでの大まかな流れ

続く道と雲 最後に弁理士になるまでの流れを大まかに解説します。

弁理士試験に合格する

弁理士試験は、日本弁理士会の主催で年に1回行われます。

試験の短答式、論文式、口述式の3段階です。それぞれの試験をクリアすることで、次の試験に進めます。短答式に関しては誰でも受けることができます。

また論文式は、必須科目と選択科目の2種類があります。

短答式と論文式にはそれぞれ免除制度も存在し、何年かに渡って合格を目指すという作戦も良いでしょう。

実務修習を修了し、登録を行う

弁理士試験に合格すれば、実務修習に進みます。実務修習は、座学とe-ラーニングの2種類です。どちらも受ける必要があります。

座学は基本的に欠席ができず、事前課題もあるため、ハードな内容です。e-ラーニングにおいても、途中で問題が出題されるため、飛ばしながら見ることはできません。

一方で、実務経験者には免除制度もあり、該当者は免除制度を有効に使って、負担軽減をしてください。

実務修習を終えれば、後は日本弁理士会へ必要書類を提出し、各種費用を支払えば登録完了です。

弁理士の仕事内容についてまとめ

弁理士の仕事内容についてまとめ

  • 特許庁へ特許権などの申請を行えるのは弁理士だけ
  • 年収は700万円以上で、場合によっては超高収入も
  • 難易度の高い試験には、3,000時間の勉強が必要

弁理士の仕事内容について詳しく解説しました。

弁理士は独占業務を持つ価値のある資格です。試験の難易度は高いですが、挑戦してみるメリットは十分あるといえるでしょう。

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