弁理士は需要がない?仕事の将来性やニーズの高まる業務まで徹底解説!

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「弁理士の需要がないって本当?」

「弁理士の仕事には将来性があるの?」

弁理士を目指している人の中には、こんな疑問や不安を抱いている人もいるのではないでしょうか。

一生懸命勉強しているのに、このようなネガティブな声が聞こえてくると、モチベーションも下がってしまいます。中には弁理士を目指すことを諦めてしまう人もいるでしょう。

そこで、この記事では弁理士の需要の将来性について解説します。合わせてオリジナリティを持たせる方法についても紹介します。

この記事を読めば、弁理士の仕事や将来性への不安は吹き飛ぶでしょう。是非モチベーションを高めて弁理士を目指してください。

弁理士の将来性についてざっくり説明すると

  • 弁理士の仕事の需要が尽きることはない
  • コンサルティング業務を取り入れることが鍵
  • オリジナリティを持たせることで需要は高められる

弁理士の仕事に需要はある?

手のひらのクエスチョンマーク 「弁理士は仕事の需要がないから、資格を取得しても無駄」という声が多く上がってきています。ですが、このような声を鵜呑みにしてしまうのは危険です。弁理士の仕事を多方面から見ていない人の意見である可能性が高いからです。

本当に弁理士の仕事は需要がないのかどうか、具体的に検証してみる必要があります。そこで、まずは弁理士の現在の状況から見えてくる、仕事の需要について解説します。

弁理士は人数増加によって競争が生まれている

弁理士試験には受験制限が設けられていません。誰でもチャレンジできる資格であることから、資格を取ろうとする人が毎年一定数存在します。その結果、弁理士の登録者数は増加傾向にあります。

その一方で業務の電子化に伴い、弁理士業界全体の業務は若干減少傾向にあります。報酬単価も下落しており、弁理士の間で就職先や転職先での競争が生まれているというのが現状です。

競争が激化している証拠として挙げられるのが平均年収です。現在、弁理士の平均年収は600~700万円程度とされています。ですが、実際は収入格差が大きくなっており、人気のある弁理士なら年収は5,000万円以上の人もいますが、年収200万円程度の弁理士も多く存在しています。

業務がなくなる状況ではない

弁理士業界では、就職や転職において競争が大変激しくなっています。しかし、業務自体がなくなるということはないと予想されています。その理由として挙げられるのが、弁理士の仕事は官公庁と関係があるからです。

官公庁関連の仕事のほとんどは、書類申請です。世間一般ではIT化が進んでいますが、官公庁は現在も書類申請にこだわっています。官公庁の書類申請の中には、特別な権限や知識を要するものも多くあります。これらの方式がなくならない限り、一定数の需要はあります。

また弁理士には、特許庁への出願という弁理士にしか行なうことができない独占業務が存在しています。この仕事は弁理士という特別な資格を持った人以外が行なうことはできません。

このような理由から、弁理士の業務はもちろん、弁理士という職種自体がなくなるという心配もないと考えられます。

業務範囲は限られているが需要は尽きない

AI化が進んでいる昨今、弁理士の業務範囲も限られてくるかもしれません。ですが、弁理士の仕事の中にはAIでは代替できないものが多くあります。

弁理士は特許を出願したい発明者や企業の人たちとコミュニケーションを取り、その上で出願の手続きを進めます。出願申請の書類を作成する際にも依頼者の意図や気持ちを汲み取り、それを文字に書き起こすという能力が必要ですが、このようなことはAIにはできません。

また、出願したい依頼者の中には、どのような権利を取るべきなのかわからないという人も多くいます。そのような場合も、依頼者の発明品やアイデアについて具体的に話を聞き、その上でどのような権利を取れば良いかを具体的に詰めていかなければいけません

AIはコミュニケーション能力という点では、まだまだ人間に劣ります。弁理士の仕事はコミュニケーション能力が不可欠です。AIはこの不可欠なコミュニケーション能力の要素は代替できないので、弁理士の需要は尽きないといえるでしょう

企業の知財部で働く人も

近年、企業の知財部で弁理士や特許技術者などの知財知識のある人を求めるケースが増加しています。

多くの企業は、自社の技術やイノベーションを保護し、競合による知的財産権の侵害を防ぐことが重要であると考えています。

企業の中で専門的な知財知識や経験を活かしてほしいというニーズが高まっています。

従来は、弁理士は特許事務所に勤務するのがオーソドックスでしたが、企業で働くという新しい選択肢ができたといえるでしょう。

スタートアップ企業支援

大手の企業は自社の知財部がありますが、ベンチャー企業およびスタートアップ企業は通常知財部がありません。

そのため、スタートアップ企業が特許を出願する際、弁理士に委託するケースが多くあります。特許事務所がコンサル的な視点からサポートし、知的財産の保護と戦略的な活用を支援しています。

大手の企業は出願件数が多く特許出願に対するコストを減らしたいという意向が多いのに対して、スタートアップ企業は出願件数が比較的少なく、出費を惜しまないため、スタートアップ企業を専門に支援する特許事務所が増加しています

特許庁も支援に注力しており、出願費用の支援やスーパー早期審査などの制度があります。今後さらに注目を集めるでしょう。

弁理士業界の現状

国内の出願件数は減少

日本国内の特許出願件数はここ10年減少傾向が続いています。2019年までは30万件を超えていましたが、2020年、2021年と2年連続で30万件を下回っています。

弁理士にとって特許出願の知財手続きは主要業務の一つです。国内の出願件数は頭打ち状態で今後増加する見込みがあるかどうか不透明です。

国内における弁理士の需要は伸び悩んでいるといえるでしょう。

国際出願件数は増加

国内の特許出願件数が伸び悩んでいる一方で、特許庁を受理官庁とした特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数はここ10年で2万件程度増加し、2019年には5万件を超えました。2020年、2021年と5万件にはわずかに届きませんでしたが、高い件数を維持しています。

現在は経済活動・研究開発活動のグローバル化が進んだ影響で、国内だけでなく国外においても知財の保護と戦略的活用の重要性が高まってきているといえます。

国際出願数は今後も増加し続けると思われるため、弁理士の需要は高いでしょう。

弁理士の志願者・合格者は減少

弁理士試験志願者数は平成20年ごろが1万人ほどで、それをピークとして減少傾向にあります。それに伴い、合格者数もピーク時には800人ほどいましたが、近年は減少傾向にあります。

令和4年度の志願者数は3558人であり、合格者数は193人のみとなっています。

志願者が減少することで弁理士の人気が下がっているという見方が広がり、それが将来性が期待できない、需要がないといった考えにつながっている可能性があります。

若手の弁理士が少ない

弁理士の年齢分布は次のようになっています。(2023年5月31日現在)

年齢(歳) 人数(人) 割合(%)
20~29 104 0.9
30~39 1,073 9.1
40~49 4,025 33.0
50~59 3,558 30.0
60~69 1,733 14.6
70~79 953 8.0
80~89 340 2.9
90~ 41 0.3

出典:日本弁理士会会員の分布状況

上記の表より、20代~30代の弁理士は全体の10%しか占めていないことがわかります。

20代~30代の弁護士は全体の4割近くを占めることから考えてみても、弁理士はほかの業種と比べて、若手が少なく、中高年以上が中心となっていることがわかります。

弁理士の年収

弁理士の年収は働き方や立場によって変化しますが、平均年収は700万円から800万円程度といわれています。日本の給与所得者の半分以上の年収は200万円から500万円であり、平均年収は400万円程度であることを考慮すると、弁理士の年収は高い水準にあるといえるでしょう。

弁理士は勤務先によって平均年収に大きな差がみられます。中堅以上の特許事務所だと平均年収が1000万円ほどの事務所もあります。また、年齢や経験、スキルによっても大きな差が生じます。

いずれにせよ、弁理士は難易度が高いため、ほかの難関国家資格と比較しても年収が比較的高い傾向にあります。

弁理士の将来性

小道 弁理士業界は、同業者同士での競争が激化しています。その原因の一つがAIの導入の進展です。弁理士の仕事の中にもAIが代替しているものがあるのです。

そのような中で弁理士の将来性はどのようになっているのでしょう。弁理士のこれからについて解説します。

人間のアイディアは今後もなくならない

化石燃料などはいつかは取り尽くしてしまいますが、人の「もっと世の中を良くしたい」と思う気持ちとアイディア・工夫は今後も無くなることはありません。

弁理士という仕事はこうしたアイディア・工夫を守っていく仕事なので、将来性は十分に高いと言えるでしょう。

機械に奪われない仕事もある

弁理士の中にも、簡単な仕事があります。そのような仕事はAI化されているのも事実です。人間よりもAIの方が仕事がスピーディーで、間違いが少ないというメリットがあります。

特に書類作成においては、記載方法や内容に間違いがあると特許出願のタイミングが遅れてしまい、その間に知的財産が侵害されてしまうということもあります。

しかし、PCなどを用いて電子申請をすれば、仮に間違いがあったとしてもすぐに対応できるのでタイムラグがなくなります。修正や訂正をしている間に知的財産が侵害されてしまうということも、防ぐことができるのです。

現実問題として弁理士の仕事は、AIの影響で20年後には90%ほどが代替されてしまう可能性があるとも言われています。

しかし、特許を出願するためにはまず最初に出願したい人と話し合う必要があります。また、特許庁で実際にどのような申請を行なう必要があるのかなどの判断をする必要もあります。これらはAIでの代替は難しく、臨機応変に対応できる人間の方が有利だと考えられてます。

また、弁理士会全体でも機械化やAI導入に影響されることがないように、努力や工夫が重ねられています。業界全体でも地道な努力の動きがあるので、そう簡単に弁理士の仕事が失われることにはならないでしょう。

コンサルティング業務をする

弁理士の仕事の中でも特にAIによる代替の可能性が低いとされているのがコンサルティング業務です。

コンサルティング業務とは、対話をしながら依頼者の思いや考え、悩みや不安を感じ取り、専門的な知識を活かして的確なアドバイスをすることです。更には、依頼者にとって利益になるような方法を提案することも含まれます。

依頼者によって思いや考え、抱えている悩みや不安は異なります。仮に同じ案件であっても10人いれば10人すべて違うのです。そのため、その依頼者に合わせた臨機応変な対応が不可欠となります。

このような通り一遍では進められないようなコンサルティング業務は、AIには難しいでしょう。AIは同じ仕事は間違いなく、スピーディーにこなすことができますが、臨機応変に対応するということは得意ではないからです。

仕事ではオリジナルの強みも重要

握手する人たち 弁理士の業務の中でも、AIが代替できない代表的な物としてコンサルティング業務を挙げました。ですが、すべての弁理士がコンサルティング業務が得意だというわけではありません。

コンサルティング業務が苦手な弁理士は生き残ることが難しいのかと不安になる人もいるでしょう。ですが、そのようなことはありません。オリジナル分野を持つことで差別化ができ、生きな残ることができます。その方法について解説します。

コンサル業務以外でも差別化できる

コンサル業務が苦手な人は、それ以外で差別化するという方法があります。自分の得意分野を見つけてそれだけに絞り込み、専門知識を磨いていくということで差別化ができます。専門知識が増えれば、それだけ活躍の場は広がっていくからです。

例えば、最近特に注目を集めているのが物理工学や工業工学、バイオテクノロジーや半導体の分野です。これらの分野の発展は目覚ましく、これからも新しいアイデアが生み出され、商品開発も進んでいくでしょう。

ただ、注目を集めているということは、それだけ多くの人たちがこれらの分野を狙っているということです。必然的に知的財産の侵害も増えていきます。そのようなことにならないように、弁理士が的確な判断でスピーディーに特許などの出願をする必要があります。

勉強して専門知識を増やしていけば、これらの分野での需要は大幅に増えるでしょう。口コミがさらに顧客を引き寄せ、多くの依頼者が集まるということも夢ではありません。

誰も目をつけていない、または競争が明らかに少ないと考えられる分野などに注目し、早期に新規開拓すれば顧客を総ざらいすることもできます。視野を広げてさまざまな分野に目を向けてみると良いでしょう。

地域のニーズを満たす戦略も

差別化戦略にはもう一つの方法があります。それは、独立して地域のニーズを満たすことです。地域にはさまざまな特色があり、ニーズも異なります。独立開業した地域でニーズを調べ、マッチした仕事を行なうことで差別化を図ることができます。

弁理士の多くは、収入などの安定性を考えて首都圏などの大都市に集中して開業します。その方がより多くの顧客を獲得できますし、報酬も高くなるからです。大都市などに多くの弁理士が集中しているということです。

しかし、実際に発明家や研究機関、弁理士を必要としているメーカーなどは地方にも多く存在しています。そして、大都市に弁理士が集中していることから、意外と地方の方が弁理士を求める声が多いという実態があります。

地域に密着した弁理士として仕事をすると、特許に限らず商標や著作権なども幅広く手掛ける機会が増えます。取り扱う案件が増えることは自分自身のスキルと実績のアップにもつながり、スキルと実績の両方が上がれば、必然的に顧客数や収入も増えていくでしょう。

さらに需要を高めるには?

空へのグッド 今後、弁理士として仕事をするのなら、差別化だけでは足りないと思う人もいるでしょう。更なる努力で需要を高める方法は他にもあります。

以下では、差別以外で更に弁理士としての仕事の需要を高める方法について紹介します。

他の資格と組み合わせて取得

弁理士はダブルライセンスの相性が大変良い資格です。特に士業と呼ばれる資格とのダブルライセンスの相性は大変良く、弁理士で士業のダブルライセンスを持っている人は多くいます。

他の資格取得を通じてさまざまな可能性も広がります。当然、仕事の需要や将来性も広がり、収入面での安定性や増加も期待できるでしょう。

他の資格との相性が大変良いという点では、弁理士そのものがキャリアアップを目指す第一歩の資格として最適であるとも言えます。他の資格取得も視野に入れながら弁理士を目指すことで、可能性を広げること十分も可能です。

弁理士と弁護士は相性が良い

弁理士とのダブルライセンスで大変相性が良いのが弁護士です。実際に弁理士の資格取得者が、司法試験合格を目指して勉強を始めるというケースは多く見られます。

弁護士は仕事上で扱う訴訟が大変多岐に渡ります。もし弁理士の資格を有していた場合、特許関連の訴訟において専門性を発揮することができます。他の弁護士との差別化も容易に図ることができるでしょう。

また、弁理士として縁があった顧客については、その後の知的財産における訴訟問題についても取り扱うことができるようになります。より顧客との縁が深まり、仕事の需要や収入の安定にもつながります。

ただ、司法試験は日本三大国家試験と呼ばれているくらい大変難易度が高い試験です。簡単に司法試験に合格して弁護士になれるというわけではありません。弁理士と弁護士のダブルライセンスを狙うのなら、相当な覚悟を持って挑戦する必要があります。

英語力も強みになる!

最近は、海外進出を狙う企業が増えてきているのが現状です。それに伴って日本から外国へ特許などを出願する内外業務も増加傾向にあります。その手続きで大きな強みになるのが英語力です。外国に向けて出願をするのですから、当然書類などの内容はすべて英語です。

また、外国企業から日本への出願も増えてきているという実態もあります。高い英語力を身につけておけば、このような国際的な業務にも携わることができます。

弁理士の将来性についてまとめ

弁理士の将来性についてまとめ

  • 弁理士の業務範囲は限られるが需要が尽きることはない
  • 高いコンサルティング能力を身につけておくと安心
  • ダブルライセンスなどのスキルアップをすれば将来性が高くなる

弁理士の将来性について解説しました。確かに弁理士の業務の中でも書類作成などはAIに取って代わられる可能性が高いと言われていますが、弁理士の仕事にはコンサルティング業務なども含まれ、これはAIでは代替ができません。

コンサルティング能力を磨いたり、ダブルライセンスを取得したりするなどすることでいくらでも差別化は可能です。本人の努力次第で需要が尽きることはないので、弁理士の将来性は明るいと言えるでしょう。

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