司法書士になるにはどうしたら良い?受験資格や資格取得の対策法を解説!

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国家資格の1つである司法書士は、法律に関係する書類の作成などを行い、社会的なニーズも高いことから人気が高い職業です。

ですが、どのようにしたらなることができるのでしょうか。何から勉強したら良いのかわからなくては進めようがありません。

そこで、今回は司法書士のなり方について、その勉強方法も含めて詳しく解説します。

司法書士になるには

  • 司法書士試験を受験する
  • 筆記試験と口述試験の両方に合格する
  • 新人研修を受ける
  • 司法書士として勤務または開業をする

司法書士ってそもそもどんな資格?

ねこの写真 司法書士とは、不動産登記や商業登記、簡易裁判所における訴訟など法律に関係する書類を作成したり、法律に関する手続きを代行する人のことを言います。

メインとなる仕事は、個人や企業からの依頼を受けて、裁判所や法務局などの手続きを依頼人に代わって行うことです。

司法書士として仕事をするためには、まずは司法書士試験に合格して資格をとることが必要です。試験を受けるにあたり、年齢制限などは設けていないので、誰もが受けることができます。

ですが、試験の合格率は低く、資格をとった後には研修に参加することも必要になります。

司法書士を目指すときには、まず試験について詳しく知っておくことが大切です。

司法書士への道1:試験勉強を始める

計画のイメージ 司法書士の第一歩として、試験勉強を行うことが必要です。ここでは、勉強の仕方や学習時間の目安などについて紹介します。

事前に知っておけば、試験勉強を始めるときに困ることはありません。

学習の進め方は?

学習の進め方にはいくつかの方法があります。司法書士試験は出題範囲が広く、高度な知識が求められるので、一般的には資格学校などに通いながら学習を進めると良いでしょう。

ですが、専門学校に通うとなると資金も必要になってきます。資金的な都合から専門学校に通うことが難しいという場合には、通信講座や独学で学ぶという選択肢もあります。

通信講座や独学なら働きながら学習することができるので、生活が大幅に変わるということはありません。

司法書士の勉強は難しいですが、独学でも合格は不可能ではありません。ただしそのためには、法律の知識が下地として出来ていることが求められるので、法学部出身の方や既に行政書士の資格を持っているといった条件がついてくるでしょう。

合格するためには自分に合っている予備校・通信講座を選べるか、テキストを見つけられるかどうか、といった点がカギとなります。

勉強時間は3000時間以上

司法書士の資格をとるためには、どれぐらいの勉強時間が必要なのでしょうか。

司法書士の試験では法律に関する知識が多く問われるので、勉強する量もかなり多く必要になります

法学部を出ているなど、法律に関しての下地ができている人の方が有利に進めることができますが、これまで法律に携わってこなかったという人も、学習方法などを工夫することで、合格へと近づくことができるのです。

司法書士の試験を受けるチャンスは1年に1回しかないため、合格を目指すとなると3000時間以上の勉強時間が必要になります

まずは試験の日を逆算してから学習方法などについて計画を立てると良いでしょう。

出題頻度の高い主要4科目を中心に攻める

これまでにも何度か触れましたが、司法書士試験には主要4科目と呼ばれる科目があります。主要4科目は、民法、不動産登記法、商法、商業登記法の4つです

これら4科目は、試験範囲である11科目の中で特に出題数が多いためこのように呼ばれています。

午前の部の試験と午後の部の試験の択一式の問題を合わせて考えると、主要4科目は出題数の約75%を占めており、かなり大きな割合を占めているといえます。

出題数が多いということは、それだけ試験における重要度が高いということになるため、優先的に学習する必要があります。

さらに、主要4科目はその他の試験科目の基礎になる科目です。初めに勉強して身につけておくことで、他の科目の学習もスムーズに進むでしょう。

そうした理由から、どの科目から学習するべきか悩んでいる方は主要4科目から勉強を進めていくことがおすすめです。

マイナー科目もぬかりなく対策

主要4科目以外の7科目は「マイナー科目」と呼ばれることがあります。マイナーと呼ばれていることから、おろそかにしても問題ないと考える方がいるようです。

しかし、これらの科目は択一式問題の約25パーセントを占めます。司法書士の試験は、択一式の問題の85パーセントを正答しなければ、記述式の問題については採点すらされません。

マイナー科目は各科目の出題数が少ないとはいえ、おろそかにして良い科目では決してないことを知っておきましょう

また、すべての科目の内容は司法書士として活躍する際に必須の知識です

司法書士として業務を行う際にマイナーな内容は把握していないという事態にならないように、学習を怠らないようにする必要があります。

司法書士への道2:資格を取得する

レベルアップのイメージ 司法書士になるための勉強をした後、次に進むべきステップは資格を取得することです。

いくら勉強をしても資格をとらなくては、仕事に活かすということができないのです。

ここでは、司法書士試験の内容や合格率について解説します。内容について知ることは試験対策にも繋がります。

筆記試験は全部で3つの試験

司法書士の筆記試験は7月に行われます。午前と午後に分かれて、午前はマークシート式、午後からはマークシート式と記述式があります。

以下ではそれぞれの試験概要について詳しく解説していきます。

午前の部(択一式)

午前の部は択一式の試験のみです。マークシートを使用します。

試験時間は2時間。問題は計35問です

主要4科目と呼ばれる4科目のうち、民法と商法(会社法・その他商法分野に関する法令)が出題されます。

試験内容を詳しく見ると、憲法が3問、民法が20問、刑法が3問、商法が9問という構成でした。出題内容を整理すると以下のようになります。

試験科目 出題数 割合
憲法 3問 8.6%
民法 20問 57.1%
刑法 3問 8.6%
商法 9問 25.7%
合計 35問 100%

民法の問題は全体の半数以上を占めています。最重要科目であるといえるでしょう。合格のためには民法の学習が欠かせないことがわかります。

また、2020年度からは大規模な民法改正が行われ、最新情報も取り入れる必要があるため、民法に対する勉強の比重はさらに重くしていく必要があるのです。

午後の部(択一式)

午後の部は択一式の試験と記述式の試験があります。先に択一式の試験の内容を確認しましょう。

午前の部同様、マークシートを利用して解答します。択一式の問題の数についても、午前の部と同様に35問です

しかし、午後の部は記述式の問題と合わせて3時間で解答する必要があります。択一式の問題数は同様ですが、全体の時間配分は午前と同じとは限らないことを知っておきましょう

午後の部の択一試験の出題内容を整理すると以下のようになります。

試験科目 出題数 割合
民事訴訟法 5問 14.3%
民事執行法 1問 2.9%
民事保全法 1問 2.9%
司法書士法 1問 2.9%
供託法 3問 8.6%
不動産登記法 16問 45.7%
商業登記法 8問 22.8%
合計 35問 100%

主要4科目からは不動産登記法と商法登記法が出題されます。

令和元年度の試験は民事訴訟法5問、民事執行法1問、民事保全法1問、司法書士法1問、供託法3問、不動産登記法16問、商業登記法8問という構成でした。

不動産登記法が16問出題されていることに注目しましょう。午前の部の民法は20問でしたが、不動産登記法はそれに次いで多く出題され、民法と合わせて重点的な学習が必要である科目といえるでしょう。

午後の部(記述式)

次に、午後の部の記述式の問題について確認しましょう。

記述式の問題は2問出題されます。記述式のためマークシートではなく、自分自身で解答を作成する必要があります。そのため、択一式の問題に比べて難易度が高いといえるでしょう。

出題は、主要4科目である不動産登記法と商業登記法から1問ずつです。問題に対して、実務に直面した登記申請書を作成する必要があります。

記述式の問題への対策として、申請書作成の際のひな形を押さえることが重要ポイントになってきます。

また、商業登記法の記述問題では、計算を必要とするものもあることを知っておきましょう。計算が必要となるのは主に、募集株式の発行に関する登記についての出題がされた場合です。

会社法の知識を実際に活用して、資本金の額などをその場で計算する必要が生じてきます。

記述式の問題の中で突然計算が出てくると戸惑う方もいるかもしれません。そうした問題が出てくる可能性を頭に入れておく必要があるでしょう。

記述式の詳細は以下の記事をチェックしてください。

口述試験は主に3科目の出題

7月に行われる司法書士試験に合格をすると、10月に口述試験を受けることができます。

口述試験というのは、口頭で会話形式で出題された設問に対して口頭で回答するという形式の試験です。

筆記試験とは違い、その場で即座に適切な回答を求められるため、専門的な知識や特別な訓練が必要になります。

ただ実質的な試験範囲は、不動産登記法、商業登記法、司法書士法の3つが主です。

加えて、司法書士として業務を行うために必要な知識が要求されていることも事前に知っておく必要があります。

事前に練習を行うなど対策を行っておくことが必須となります。また、試験のときは試験官と向かい合って座ることになるケースが多いため、緊張しやすくなるでしょう。

ですが、緊張していては試験で実力が発揮できない可能性があります。当日はできるだけリラックスして、緊張をほぐすことが大切です。

気になる口述試験については下記の記事をご覧ください。

試験難易度はかなり高い

司法書士の試験での受験者数は減少傾向にあります。令和元年度には13,683人となっています。

その一方で司法書士の合格率は例年3~4%と低い水準を保っています

その傾向は実際のデータを見ても明らかです。

この過去10年間のデータを見ても、数字はほとんど変化していないといってよいでしょう。

ただ、受験者数の減少傾向にもかかわらず、合格率は一定に保たれているため、資格そのものの価値は維持されているのです。

司法書士試験の難易度についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

司法書士への道3:新人研修を受ける

研修のイメージ 司法書士試験に合格したからといって、すぐに司法書士になれるというわけではありません。

司法書士になるためには、新人研修に参加することが必要です

ここでは、新人研修とは何か、どのように参加することができるのかについて解説します。

新人研修は参加が必須

司法書士として働くためには、資格の取得後に新人研修に参加することが必要になります。

新人研修の期間は3ヶ月程度あり、研修後には修了考査に合格して、それから司法書士会に登録することができるのです。

登録することができたら、司法書士としての活動ができるようになります。

新人研修の日程や内容は、地域によって違いがあるので、研修を受けるときには地域の司法書士会に問い合わせてみるとよいでしょう。

研修費用はかなり掛かる

司法書士になるためには新人研修へ参加することが必要になります。

ですが、そこには費用がかかるということも覚悟しなくてはなりません。宿泊代や手数料などを計算すると、約20万円ほど用意する必要があります

司法書士を目指すときには、前もって費用の準備をしておくことが大切です。

司法書士への道4:司法書士として働く

パズルのイメージ

新人研修へ参加して、いよいよ最後のステップです。それは、実際に司法書士として働くことです。

ここでは、司法書士としての働き方や認定司法書士へのなり方について解説しています。司法書士となってからは、働き方などを工夫することで収入に大きな違いが出てきます。

司法書士は勤務と開業の2パターンの働き方が存在

司法書士としての働き方としては、大きく2つに分けることができます。それは、勤務司法書士と開業司法書士です。

勤務司法書士というのは、司法書士事務所に勤めるということです。

司法書士になったばかりの人が研修の意味合いを込めて勤めるというケースが多く、ここで実務経験を積むことで、更なる成長を促すことができます。

大手の司法書士事務所だと、年収も高くなるので安定した収入を得ることにも繋がるのです。

開業司法書士というのは、自分で独立開業することです。

司法書士になったばかりでは、すぐに収入に繋げるのは難しいかもしれません。ですが、安定的に顧客を獲得することができるようになれば高年収に繋がる可能性があります。

そのためには、インターネットを使って大々的に広告を載せたり、魅力的なホームページを作成するなどして、集客に力を入れることも大切です。

働き方によって収入などが大きく変化するということもあり得るので、働き方を選択するときにはよく考えてから決めるようにしましょう。

認定司法書士を取ることで高みを目指せる

本のイメージ 司法書士として働くにあたり、より高いレベルを目指すのであれば、認定司法書士になるという方法があります。

認定司法書士になることで簡裁訴訟代理業務などを行えるようになるなど、より広い業務を行うことができます。

そして、司法書士は裁判所へと提出する書類を作成することができますが、法廷に弁護士のように立つことはできません。

ですが、認定司法書士になると、目的価額が140万円以下の簡易裁判所での訴訟案件については、弁護士と同じように法廷に立つこともできるのです。

認定司法書士になると難しい案件も多いですが、仕事のやりがいを更に強く感じられるようになるのではないでしょうか。

認定司法書士になるためには、新人研修に加えて「100時間研修」と呼ばれる特別研修を受けることが必要になります

更に試験に合格した上で法務大臣の認定を受けると、晴れて認定司法書士と名乗ることができるのです。

司法書士に比べると更に高いスキルが求められるので、他との差別化をすることもできます。

今後、司法書士として活躍する上では取得しておいた方が良い資格の1つです。

認定司法書士についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

司法書士になるために重要なポイント

資料のイメージ 司法書士になるためには重要なポイントがあります。

ここでは、重要なポイントとは何かについて詳しく解説します。司法書士を目指すときにはチェックしておくと良いでしょう。

幅広い法律知識が必要になる

司法書士になるためのポイントとしては、法律に関する知識を幅広く取り入れるということです

なぜなら、司法書士の仕事というのは、法律に関わることが中心となる仕事が多く、民法関係や商法関係、そして訴訟関係など携わる案件も幅広くあるからです。

試験内容もかなり難しいものばかりなので、法律の知識について学んできた法学部出身または法律の勉強が苦ではないということが求められます。

また、法律関係の情報というのは常に変化していきます。

そのため、その変化に常にアンテナを張って対応する場面が多々あるのです

どんな案件にもすぐに対応することが理想的なので、試験が終わった後も学び続けることが大切です。

几帳面で責任感が強いことが求められる

司法書士になるためには、几帳面で責任感が強いことも重要なポイントです。

司法書士が取り扱う仕事というのは、いずれも重大なものが多く、小さなミスも許されないというものを多く取り扱っています。場合によっては依頼人の人生を大きく左右する可能性があるのです。

書類に不備がないかどうかを念入りにチェックして、ミスが出ないように心がけます。書類作成においては、几帳面過ぎるほど何度も入念に確認することが大切です。

そして、依頼された案件がどれだけ難しくても最後までやり遂げる責任感が必要なのです。

特に個人や企業からの依頼を受けとるにあたっては、互いに信頼関係を築くことが大切になります

新しい創意工夫を生み出せることが理想

新しいビジネスを創造するということも司法書士にとっては必要なことです。

司法書士の働き方は近年多様化してきています。これまでと同じような働き方をしていた場合には、 限界を感じてしまう可能性があります。

独立開業をしている人は、特にビジネスチャンスを自分で生み出すことができるのです。

これまでになかった方法で顧客にサービスを提供するなど、まさに自分のアイデア次第で成功する方法を見つけることが大切です。

そのことで、更に仕事の幅が広がっていきます。独占業務を有する士業であるからと資格に甘んじるのではなく、自分から積極的に創意工夫をして動く必要があります。

司法書士の将来性はどうなる?

明るいイメージ

司法書士の仕事は、将来的にはどうなってしまうのか。その需要が気になるという人もいるでしょう。

実は今、人口減少や資格取得の難しさから司法書士有資格者への求人が激増しているのです

法律に関する手続きは複雑なものが多くあるため、司法書士の仕事が失われるということはないでしょう。

特に、日本は高年齢化が進み、難しい書類作成の代行を依頼するという人も増加傾向にあります。今後も社会的必要性が高まっていくことが考えられます。

また、国家資格である司法書士の資格は1度とれば一生仕事を続けていくことができるのです。

勤務司法書士として働きながら、いずれは独立するということもできます。

自分で開業した場合には、自分のペースで仕事を行うことができるので、肉体的にも精神的にも余裕を持った働き方をすることができるようになります。

また、自由な時間を活用して家庭との両立も可能なので育児や介護をしている人にとっても、働きやすい環境を作ることができます。

司法書士の将来は、資格をとることの難易度の高さから、需要性が高く、その働き方も自分で選択することができる職業なのです。

司法書士を目指すときには、どのような働き方をしたいのかも考えておくと良いでしょう。

司法書士のなり方まとめ

司法書士になる方法まとめ

  • 難関である司法書士試験の突破が第一歩
  • 新人研修にはそれなりに費用がかかるので注意
  • 司法書士の求人は増加しており、将来性の高い仕事である

法律に関係する書類の代行を行う司法書士の求人は高まっていく傾向にあるので、将来性が望める職業でもあります。

司法書士として働くためには、まずは資格を取得するために試験勉強を始める必要があります。

試験の合格率は低く、難易度も高いのですが、興味がある場合には今から少しずつ次の試験に向けて勉強することが大切です。

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