免許や資格が必要な公務員とは?公務員試験に役立つ資格や有利な資格を詳しく紹介!
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「公務員になるために免許や資格は必要なの?」
「公務員で有利になる資格・免許が知りたい!」
このようにお思いの公務員志望の方は多いのではないでしょうか。
公務員は「安定している」「給与水準が高い」「ワークライフバランスが取りやすい」などという理由で人気な職業の一つです。
役所や学校の教員など、身近な存在である感じもする公務員ですが、いざ自分がそれを目指すとなると、「どんな準備をすれば良いの?」「特別な資格が必要なの?」など、分からないことも多いと思います。
この記事では、公務員と資格、免許の関係について解説していきます。
これを読めば、公務員になるために自分が取得すべき資格について理解を深めることが出来るはずです。
公務員の資格をざっくり説明すると
- 一般職などでは特別な資格は必要ない
- 資格免許職を目指すなら特定の資格が必要
- 公務員試験で加点対象となる資格がある
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地方公務員になるのに免許や資格は必要?
大前提として、公務員という職種に就くためには「公務員資格」が必要になります。
公務員試験に合格することで、「公務員資格」を取得できるということになります。つまり、公務員試験自体が資格試験なのです。
基本的には、公務員試験を受けて合格すれば公務員になることが可能になり、その他の資格が必要ということはありません。
資格免許職では特別な資格が必要
公務員の中には「公務員資格」とは別に、定められた資格が必要になる「資格免許職」という職種が存在しています。例えば「看護師」や「保健師」などが資格免許職に挙げられます。
こういった資格免許職に就くためには、公務員試験に受かるだけでなく、その資格免許職に必要な資格や免許(上記の例で言えば「看護師資格」や「保健師免許」)を取得しなければなりません。
また、各種試験を受験する際、その試験を受けるために満たしていなければならない要件(=受験資格)が定められていることがあります。
公務員試験の受験資格には以下の5つの要件があります。
要件 | 要件の内容 |
---|---|
共通要件 | 全ての受験者が必ず満たしていなければならない要件 |
年齢要件 | 受験者の年齢の範囲を定める要件 |
学歴要件 | 試験問題の難易度に関する要件 |
身体要件 | 身長や視力などの身体的条件で受験資格を制限する要件 |
資格要件 | 特定の資格の有無で受験資格を制限する要件 |
上で述べたような「資格免許職」においてはこの資格要件が大きく関わって来るのです。
この記事の後半で「資格要件」で定める内容について詳しく解説していきます。
公務員資格は必ず必要な資格
公務員資格は公務員になるために必ず必要な資格です。国の機関や地方自治体が実施する採用試験・公務員試験を合格することで取得できます。
特別な資格は必要ない
「国家公務員」は「国家公務員試験」に合格しないとなることができず、また、「地方公務員」は「地方公務員試験」に合格しないとなることができません。
従事するのが国行政なのか、地方行政なのかによって、受験すべき公務員試験は異なり、また取得すべき公務員資格も異なります。
しかし、都道府県庁や市区役所で働くような「事務職」などの公務員については、基本的には公務員試験を受験・合格して得られる「公務員資格」だけがあれば良いのです。
つまり、上記のような公務員の職種の場合、公務員試験の他に特別な資格試験などを受験して合格する必要はありません。
資格免許職は特別な資格免許が必要
公務員の中には「公務員資格」とは別に特定の資格が必要になる資格免許職という職種が存在しています。
事務職ではなく、専門的に特定分野の業務に携わる職種があるのです。
まず、地方公務員の職種には次の6つの区分があるのですが、このうちの一つが資格免許職です。
職種区分 | 内容 |
---|---|
行政職 | 行政官公庁や市区役所、町村役場などの事務系職員職 |
技術職 | 土木・建築・電気・機械・農具・化学等の各分野の業務を専門的に担当する職員 |
福祉職 | 各自治体の福祉事務所や児童相談所、その他福祉施設等で福祉的業務を行う職員 |
心理職 | 心理士、心理判定員等として面接や診断、援助等を行う職員 |
公安職 | 警察官、消防隊員など治安維持に従事する職員 |
資格免許職 | 看護師、保育士、栄養士、獣医師、薬剤師など専門職として公務を行う職員 |
「資格免許職」では、公務員資格の他に特別な「資格免許」が必要になります。心理職や福祉職なども特定の資格が求められることもあります。
公務員資格とは別に資格が必要となるものについて、以下で説明します。
資格免許が必要な仕事の一覧
資格 | 仕事内容 |
---|---|
幼稚園教諭、保育士 | 公立幼稚園、公立保育園で乳幼児の教育や保育を行う |
保健師 | 保健所、保健センター等で地域住民の健康指導、健康管理を担う |
助産師 | 特定地方独立行政法人が運営する公立病院で助産師業務全般、保健所・保健センター等で母子保健業務を行う |
薬剤師 | 公立病院で外来調剤・病棟業務、保健所で地域施設の新規開設許可・立入り検査、役所で薬事衛生・医薬安全に関する検査・指導を行う |
臨床検査技士 | 公立病院で臨床検査、保健所感染症検査等を行う |
診療放射線技師 | 公立病院、研究センターでの画像撮影・診断・検査・治療等を行う |
理学療法士 | 公立病院・保健センター等でリハビリ業務を行う |
作業療法士 | 公立病院・保健センター等でリハビリ業務を行う |
獣医 | 役所・食肉衛生検査所・家畜保健衛生所などで家畜の衛生管理、流通する食品の検査・監督業務を行う |
教員 | 公立学校にて児童・生徒に学科・生活の指導や教育を行う |
管理栄養士、栄養士、学校栄養士 | 公立学校・公立病院で学校給食・病院食の栄養管理・指導、保健センター等で地域住民の栄養管理・相談、栄養士免許の申請受付・飲食店業無許可等の業務を行う |
司書 | 公立図書館で司書業務、公立学校で司書教諭業務を担う |
学芸員 | 公立博物館・美術館・動物園等で学芸員業務を行う |
衛生監視員 | 保健所等で飲食店等の新規営業許可、監視指導、食中毒等の検査を行う |
心理援助職 | 公立病院・児童相談所・精神衛生保健センター等で面接・検査・相談支援等を行う |
社会福祉士 | 役所の福祉課・福祉事務所・児童相談所等で福祉相談・支援等を行う |
臨床心理士 | 公立病院・児童相談所・精神衛生保健センター等で心理検査・カウンセリング業務等を行う |
精神保健福祉士 | 公立病院・公立施設・役所の福祉課・精神保健センター等で主に精神障害者に対するソーシャルワークを担う |
消防 | 消火隊・救急隊・救助隊から成り、火災の鎮火と人命救助を担う |
代表的なものを一覧にしましたが、これら以外にも公務員の資格免許職はあります。
資格免許職の注意点
公務員の資格免許職を目指す際の注意点はどんなことがあるのでしょうか。
最も重要な注意点は「学歴」についてです。資格免許職の場合、ほとんどで短大卒あるいは大卒以上の学歴が必要です。
資格免許自体に学歴条件がある場合が多く、必然的に公務員になる場合もその学歴が必要となってきます。
公務員試験は「大卒程度」や「高卒程度」などの区分があるのみで学歴による規定を設けているわけではないので、違いに注意が必要です。
次に、「試験合格≠採用」であるということです。例えば看護師を例にしてみると、民間の病院に勤務する場合、その病院の採用試験を受けて合格すれば採用となります。
しかし、公務員として看護師になる場合は、資格免許職試験に合格しても必ずなれるわけではなく、合格後に「看護師」として採用される必要があります。
さらに、各種資格を「取得見込み」という状態で試験を受けた場合、資格免許職試験に合格してもその資格免許自体を所定期日までに取得できなければ採用はされません。
資格免許職の試験内容
公務員の資格免許職の試験はどのような内容になっているのでしょうか。
一次試験で教養科目と専門科目のペーパー試験を受けます。教養試験は40~50問を120~150分間で解く形式で行われることが多くなっています。
二次試験では面接が実施されますが、個人面接であることがほとんどです。
保育士職の場合は、ペーパー試験、面接試験の他に実技試験を実施する自治体もあります。
また、いずれの職種においてもそれぞれの自治体によって試験内容が異なり、三次試験、四次試験などが行われるケースもあります。
公務員以外の役立つ資格や有利な免許
上記のように、資格免許職の公務員を目指すに当たって絶対に所有していないといけないのは、その資格免許職の資格免許です。
一方で、その他に「公務員試験が有利になる資格」や「公務員の実務に役立つ資格」もいくつか存在します。
公務員試験が有利になる資格
実際に公務員試験の加点対象になっていたり、将来的に取得することが義務付けられている資格には以下のようなものがあります。
TOEFL・TOEIC・英検
英語に関しては、公務員試験の教養科目でセンター試験レベルの問題が出題されます。
そのため、一定程度の英語知識は必須で、英語が苦手な場合は試験で出題されるレベルの内容は勉強して確実に身に付けておく必要があります。
また、国際化の影響で国家公務員総合職ではTOEIC・TOEFLのスコアや英検の級などが加点対象になるケースもあります。
英語が得意な方は積極的にTOEIC・TOEFLの高得点や英検の上位級を取得しておくことをお勧めします。
TOEICやTOEFLについては、以下の記事で詳しく解説しています。
中国語検定・ハングル能力検定
実務で使用するシーンも増えてきている現状もあり、警察官採用試験や教員採用試験等では、中国語や韓国語に関する資格も加点対象になっています。
中国語検定試験なら3級以上、ハングル能力検定試験なら準2級以上を取得しておくべきでしょう。
また、中国語では漢語水平考試(HSK)や中国語コミュニケーション能力検定(TECC)、韓国語では韓国語能力試験(TOPIK)なども加点対象になります。
中国語検定については以下の記事でより詳しく解説しています。
情報処理技術者
情報処理技術者試験の各資格も、警察官など一部の公務員採用試験で資格加点の対象になっています。
「情報セキュリティマネジメント」や「基本情報技術者」などの資格が対象となっています。
「ITパスポート」については比較的取得しやすい国家資格ではありますが、資格加点対象にならない自治体も多くあるため注意が必要です。
情報処理技術者についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
簿記
簿記検定も、一部の公務員試験(警察官など)では資格加点の対象になっています。日商簿記なら2級以上、全経簿記なら1級以上を資格加点対象とする場合が多いです。
経理知識が必要となる国税専門官や税務職員(高卒程度)の採用試験では、簿記資格の取得は有利と言えます。
特に、国税専門官は採用後に簿記検定2級の合格が必須となっているので、採用前に取得していると面接での自己アピールにも繋がります。
他の資格と比べて比較的取得しやすいとも言えるので、余裕がある人はチャレンジしておいて損はないでしょう。
簿記2級については、以下の記事でより詳しく解説しています。
運転免許は必要なの?
運転免許(第一種運転免許)は資格加点の対象外です。
しかし、地方自治体では業務で公用車(官公庁や地方自治体などの公的機関が業務に使用する自動車)を運転する機会が多いので、運転免許を持っていると職務で役立つことは非常に多いです。
自治体によっては、採用試験の受験資格として運転免許を明記しているところもあります。
公務員に限らず、職務上自動車の運転が必要となる職種は多くあります。また、仕事に限らずプライベートでも運転の機会は出てくるでしょう。
社会人になってから運転免許を取りに行くことはなかなか難しいので、加点対象でなくても取得しておくべき資格と言えます。
公務員の実務に役立つ資格
取得しておくと、公務員になった後に業務で役立つ資格もあります。
また、民間企業との併願を考えている場合であれば、以下の資格はいずれも民間でも十分な自己アピール要素になります。
どれも、容易に取れる資格ではありませんが、余裕があれば公務員試験のあとにでも取得を目指すと良いでしょう。
社労士
正式には「社会保険労務士」と言います。労働関連や社会保険法令に基づいた書類の作成や届け出、事業所からの相談業務などを行います。
人事や労務、雇用や保険・年金に関する業務で役立ちます。民間企業では人事部や総務部などで生かすことが出来るほか、独立も目指せる資格です。
社労士資格の詳細については、以下の記事をご覧ください。
宅建士
「宅地建物取引士」が正式名称です。宅地や建物の売買や賃貸借取引について、重要事項の説明を行うための資格です。
民間の不動産を扱う企業で有利なのはもちろんのこと、ビジネスに関して必要な知識を学べる資格でもあるため、人気の資格です。
公務員であれば、農地法や税法、土地計画法に関わる部署に配属された場合に役立ちます。
宅建試験の出題内容や難易度については、以下の記事で詳しく解説しています。
ファイナンシャルプランナー
顧客に対して住居や教育、老後といった将来についての資金計画やライフプランニングのアドバイスを行う資格です。
税金や健康保険を扱う部署に配属されている場合は、窓口で市民の方々から相談を受けることや、それに対してアドバイスを行う事もあるため、役に立つ資格です。
ファイナンシャルプランナーの資格は2021年で最も注目度の高い資格として話題になっているので、ぜひご確認ください。
行政書士
顧客から依頼を受け、官公署に提出する書類の作成や、申請等を代理で行う仕事です。取り扱うことの出来る書類は10,000種を超えると言われ、会社設立手続きや自動車関連の手続き、内容証明郵便など関わる分野は多岐に渡ります。
その名の通り、行政に関わる文書のプロであるので、公務員の窓口業務にも非常に役立つ資格です。
行政書士の資格の魅力や将来性については、以下の記事で詳しく解説しています。
簿記
資格加点の項でも触れましたが、実務においても簿記資格は役立ちます。特に、税務や決算書などに関する業務で役立ちます。
簿記の知識は、ビジネスにおけるお金の流れの基本的な部分をカバーしているので、公務員に限らず社会人として持っていて損はないと言えます。取得を推奨している自治体もあります。
公務員は他資格の取得も有利になる
公務員になるために必要な資格や有利な資格について述べてきましたが、逆に、公務員としての実務経験を積むことで試験が一部免除されたり、取得が可能になる資格も実は多いです。
司法書士、行政書士、中小企業診断士、税理士、弁理士、社労士などの資格では、公務員としての実務経験が優遇され、取得が有利になります。
例えば司法書士では、裁判所の事務官や書記官、法務事務官、検察事務官として10年以上従事すると、法務大臣の認定を得れば司法書士となることができます。
また、裁判所事務官・書記官、法務事務官、検察事務官になるための公務員試験は、司法書士試験に比べると易しいと言われています。
司法書士になるためにまずは公務員を目指す、という方もいるくらいです。
難関資格を有利に取得出来るということで、転職やキャリアチェンジの幅を広げることが出来るということも公務員の魅力の一つであると言えます。
まとめ
公務員の資格についてのまとめ
- 基本的に特別な資格は必要ない
- 看護師などの資格免許職を目指すなら特定の資格が必要
- TOEICなどの資格が加点対象となる場合がある
- 司法書士試験などの難関試験で公務員経験が優遇されることがある
資格免許職でなくとも特定の資格が公務員試験で加点対象となることがあります。さらに、公務員としての実務に役立つ資格も多く存在するのです。
事務業務などを行う一般的な公務員であれば特別な資格は必要ないですが、資格を持っていることで有利なこと、優遇されることなどが多くあることがご理解いただけたと思います。
この記事を参考にして、公務員としての職種の幅や将来的な転職の可能性なども視野に入れて、資格取得の計画を立てて頂ければ幸いです。