市役所で働く公務員の仕事内容は?給料や職員の待遇、業務に必要なスキルを解説
「地方公務員って市役所でどんな仕事をしているの?」
「民間企業から市役所の事務職員に就職できる?」
このような疑問をお持ちの方は、いらっしゃいませんか?
市役所で勤務している人たちは地方公務員の身分を有しており、非常に安定した雇用が保障されています。
具体的に市役所業務・県庁業務にはどのようなものがあるのでしょうか?また、民間経験があっても市役所や県庁に就職できるのでしょうか?
さらに、市役所や県庁で働く際に必要なスキルについても、気になる部分は多いでしょう。
こちらの記事では、市役所職員の給料や業務内容、さらには必要なスキルについても詳しく解説していきます。
市役所で働く公務員についてざっくり説明すると
- 一つの仕事を続けることは少なく、様々な部署を経験していく
- コミュニケーション能力は必須
- ルーズな人は市役所勤務に向かない
- 社会人経験者も多く採用されている
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市役所職員の仕事内容は?
街の行政サービスの窓口として活躍する「市役所職員」は仕事のタイプ別に「事務系」「技術系」「その他」に分けられます。
市役所職員(事務系)の仕事
事務系の市役所職員の仕事は3年〜4年周期で部署を異動しながら様々な業務を学んでいきます。
多くの市役所では、この「ジョブローテーション」と呼ばれるシステム採用しており、様々な業務を幅広く経験することで今後の糧にしていくことができます。
業務内容としては「戸籍や住民票、各種届け出に対応するための窓口業務」から「工場やテーマパークの誘致活動による地域活性化事業」「地域の防災設備の充実化」など多岐にわたります。
基本的にはデスクワークでの資料作成やアポ取り業務がメインとなりますが、部署によっては打ち合わせが必要なときは会議や関係者との会合、県庁・中央官庁への出張などもあります。
市役所職員(事務系)に必要なスキル
市民の方々を相手にする仕事が多いので、コミュニケーション能力が必須です。
また、市役所はクレームになりやすい場所でもあるため、基本的なビジネスマナーも必要となるでしょう。
ジョブローテーションが採用されているため、様々な業務を効率良くこなしていけるような要領の良さも求められます。
市役所職員(技術系)の仕事
技術系の市役所職員は、土木や化学といった専門領域のスペシャリストとして採用されます。
その道のプロフェッショナルとして現場で指揮を取ることが多く、業務内容としては「道路工事の計画立案」「工事の現場での指揮・管理」「都市構想の立案アドバイス」「騒音・悪臭公害の場合の測定業務」など多岐にわたります。
事務系の仕事と比べると、部署の異動があっても専門家として採用されているため同じような業務に携わりやすく、「新しくゼロから仕事を覚える必要が無い」と言えます。
市役所職員(技術系)に必要なスキル
事務系ほどのコミュニケーション能力は必要ないものの、自分の専門分野とそれに関する法律などの知識が必要になります。
例えば、道路の計画立案などでは都市計画法という法律が絡んでくるため、そのような関連する法律は押さえる必要があるのです。
その他の仕事
事務系や技術系以外にも、国家資格(保健師や獣医師、薬剤師、保健師、心理判定員、保育士、栄養士、看護師、学校栄養職員)を活かして行政サービスに貢献する「資格免許職」があります。
また、身近なところでは小学校・中学校の用務員や市営施設の庭管理を行う「技能職」、消防士が該当する「消防職」も地方公務員の身分を有しています。
市役所職員の一日のスケジュール例
ここでは、事務職を例に取って市役所職員の1日のスケジュール例について紹介していきます。
時間 | 内容 | 詳細 |
---|---|---|
8:15 | 出勤、朝礼 | 開庁は8:30ですが、それより前に出勤して準備や業務連絡等を行います |
8:30 | 開庁 | 市役所には朝から多くの人が訪れます |
8:30~10:00 | 窓口、電話対応 | 各種手続きを行なっていきます |
10:00~11:00 | ミーティング | 担当する企画のため、他部署の担当者と会議を行い詳細の確認を行います |
11:00~13:00 | 窓口、電話対応 | 手続き中にも市民からの相談を受け、妊婦さんやお年寄りにサービスの紹介や利用できる制度について説明を行っていきます |
13:00~14:00 | 昼休憩 | 昼の時間帯にも常に誰かが窓口対応や電話対応を行わなければならないため、昼休憩が遅くなることもあります |
14:00~14:30 | 部署内で打ち合わせ | 業務の進捗確認や割り振りの確認を行います |
14:30~17:00 | 窓口、電話対応 | 電話でお問い合わせが来ることもありますが、その場合でもしっかりと耳を傾けます |
17:00 | 閉庁 | 閉庁後も片付けや次の日の業務の確認を行います |
17:15 | 退庁 | 時期によっては残業があることも |
仕事のやりがい
市民の役に立っていることを実感できる
市役所職員や県庁職員の仕事の大きなやりがいは、住民と直接関わりながら住民の困りごとや不安を解消していくことができることです。
あまり専門的な知識を持たない市民からすると、気軽に相談できる市役所はとてもありがたい存在なのです。
何かの問題を解決した折に、住民の方から直接「ありがとう」といわれる機会が多く、モチベーションになるでしょう。
自分の有している法律に関する知識や行政的なスキルが住民の生活に役立っていることを実感できることが公務員の最大のやりがいと言えます。
新しいことを経験できる
事務職の場合、数年おきに部署を異動するためその度に新しい知識や経験を得ることになります。
慣れない業務にあたる時期が数年おきに訪れるのは少々大変ですが、その度に新しい発見があったり自身の成長を実感したりすることができます。
より良いまちづくりに貢献できる
市役所の職員ならば、自分が携わっている企画によって市民の暮らしがより豊かになっていく様子や、コミュニティが活性化してまちが市民にとってより過ごしやすくなっていく過程を間近で見ることができます。
これは市役所の職員ならではの特権と言えるでしょう。
市役所所職員に向く人・向かない人
それでは、市役所職員・県庁職員として働くにはどのような人が向き、どのような人は向かないのでしょうか?
【市役所に向く人】公平かつ柔軟な思考力を持つ人
市役所職員は市民から徴収した税金をもとに働いているため、いかなるときも公平・公正な立場で仕事に臨まなければなりません。
例えば、お年寄りが「車を持っていないので市営病院に行くことが出来無くて困っている」と訴えてきも、行政サービスの公平性の観点から個別に車を出して交通手段を提供するようなことは不可能です。
このようなときは、公平性を崩さないように市営病院を通るような市バスの本数を増やすよう議会に根回しを行ったり、予算がなくても予算を取れるよう他の福祉事業と抱き合わせにして提案するなど柔軟な発想力と対応が求められます。
このように、市民の声を真摯に聞いた上で様々なアイデアを出していく能力がある人は市役所職員に向いていると言えます。
【市役所に向く人】自分で勉強し続けられる人
市役所では、行政手続きに関する大量の法令を扱うため、法律に関する最新の知識が常に必要となります。
特に給付金の受け取り条件や年金・健康保険料の免除条件などはしっかりと自分で勉強して常に知識をアップデートしていかないと業務が勤まりません。
給付金などお金が絡んでくる部署は一つのミスで行政に対する信頼が大きく落ちてしまいますので、慎重に取扱うことが必要となります。
そのため、常に時事に感心を払い最新の知識を取り入れる努力ができる人は市役所職員の適性があるでしょう。
テキトーな人・お金がほしい人には向かない
市役所職員は税金を扱うため、お金の扱いにだらしがない人には不向きな仕事であると言えます。
公務員は私生活でも「自分は公務員である」という自覚を持つ必要があるため、私生活がルーズな人も向かないでしょう。
また、給料は基本的に景気の良し悪しに関係なくあまり変動することがないものの、部署によっては残業が多いです。
そのため、「公務員は楽そうだから」という考えで楽な仕事をして高いお金をもらい余暇を謳歌しようと考えている方は仕事に向きません。
仮に就職したとしても、おそらく理想と現実のギャップに耐えられずにすぐにやめるという結果になってしまうでしょう。
市役所職員になるには?
それでは、市役所職員になるにはどうすればいいのでしょうか?
採用試験を受けよう
市役所職員になるためには、春先から秋口にかけて行われる採用試験を受けて合格しなければなりません。
試験内容は、筆記試験・小論文・面接・プレゼンテーション・グループディスカッションなど受験する自治体や職種によって内容が異なるため、予め調べておくと良いでしょう。
多くの場合、自治体の主催する市役所試験では「上級」「中級」「初級」の3区分(場所によってはⅠ種・Ⅱ種・Ⅲ種なども)での募集が用意されており、「上級」を大卒程度、「中級」を短大卒程度、「初級」を高卒程度として設定しています。
それぞれの受験区分で募集要項が記載されていますので、自分が受験できる条件をクリアしているかどうか確認するようにしましょう。
倍率は高め。事前条件が必要な場合も
日本の将来の不安や非正規雇用の増大などもあり、安定している公務員を志望する人がとても増えており、それに伴い倍率も高くなっています。
市役所職員の採用試験倍率が4~20倍(年によって変動があります)となっており競争が激しいことがわかります。
特に初任給待遇が良く、人気の自治体はより倍率が高くなる傾向にあるため、滑り止めとしてあまり人気が無い自治体を受験しておくのも一つの策でしょう。
技術系の職業は、業務遂行に必要な能力や資格の事前取得が必要とされる場合もあるため、あらかじめ募集要項は熟読するようにしてください。
技術職は募集がないことも
基本的には募集が安定している公務員ですが、技術職に関しては、枠の空き状況や前年度までの採用状況に応じて、年度によっては募集がない場合もあります。
前述の条件と合わせ、希望の自治体に募集があるのか要項でしっかり確認しましょう。
資格の保持は優位に働く
自治体によっては、社労士・宅建士等の国家資格や簿記、英検などの保持によって採用に優位に働くことがあります。
要項を確認し、優遇対象の資格を保持している際にはエントリーシートなどに必ず記載するようにしましょう。
転職するなら社会人枠
転職などで民間企業出身者が公務員試験を受験する場合は、そういった方々を対象に「社会人枠」や「特別枠」という名前で専用の枠が設けられています。
社会人経験者の採用試験を実施する自治体は近年急増しており、令和元年度は全都道府県政令市の8割以上の自治体で社会人者枠の採用が実施されています。
また、各自治体で受験可能な年齢上限の引き上げもされており、59歳まで受験可能な自治体が増加しています。
社会人経験がある人は基本的なビジネスマナーなどが既に身に付いているため、即戦力として見なしてもらえるでしょう。
試験対策はどうする?
公務員試験に合格するためには筆記試験だけでなく論文対策や面接対策も必要になってくるので、完全独学での合格は現実的ではありません。
ただし、すでに民間企業で勤めていらっしゃる方の場合予備校に通う時間はなかなか取れないかと思います。
忙しい社会人の方から近年人気を集めているのが、スタディングなどのオンライン公務員講座です。
こうしたオンライン講座ではスマホを使って試験対策ができるので通勤中などの隙間時間でも学びやすく、最大の特徴はその価格の安さにあります。
もちろん論文対策や面接指導、コーチングなどもバッチリ含まれているので、これから公務員に向けて勉強を始めようとお考えの方はぜひ活用を検討してみてください。
市役所職員の勤務のリアル
それでは、市役所職員の給料や休日、福利厚生はどのようになっているのでしょうか?
給料は34~39万円!
市役所職員の給与は自治体によりばらつきがあるものの、だいたい平均して36~38万円程度となっています。
平均額が一番高い自治体のは北九州市の毎月39万8496円、最低額は札幌の毎月341,936円です。
各自治体の財政状況や人口動態などにより地方公務員の給与は異なり、 一般的に政令指定都市等の大都市は高く、人口の少ない地方都市は低額になる傾向にあります。
また、近年はふるさと納税が流行しており、これにより自治体の税収が影響を受けるためそれに伴いその自治体の職員の給与も影響を受ける可能性が指摘されています。
今後もふるさと納税は人気が続くと思うので、どうなっていくか気になるところです。
土日祝日は完全休日
市役所職員は、市役所の受付時間と連動するため基本的に週5日労働で完全週休2日制、年末年始や祝日は休みとなります。
また、始業時間と就業時間がきっちり守られているところが多く、民間企業と比べると「ホワイト」職場であると言えるでしょう。
しかし、残業が全く無いかというと決してそんな事はなく、所属している部署や職種・時期によっては土日出勤や残業が多くなってしまう時期もあるでしょう。
ただ、キャリアを通してみると残業時間が法定時間を越えると言うことは滅多になく安心して働くことができるでしょう。
福利厚生・研修制度も充実
地方公務員は職場定着率が非常に高く、その背景に充実した福利厚生や研修制度があります。
各自治体では、職員のモチベーション維持や主体性の向上のために研修やワークショップを設けていたり、入庁後の数ヶ月は先輩社員が横について業務について1から優しく教えてくれるメンター制度を敷いていたりする自治体が多いです。
一方、民間企業では従業員が少ないといきなり仕事を任されてしまう現場主義のところも多いことを考えると、地方公務員は充実したサポート体制が敷かれていると言えます。
加えて、出産時の給付金やレストラン・市営の施設の割引といった福利厚生が実施される自治体も増えてきており、非常に働きやすい職場環境なのです。
市役所勤務で身につくこと
市役所勤務は、行政に関わる様々な知識・スキルを身に付けることができ、これらの能力は退職した後でも役に立つスキルになります。
税金・給付金知識がつく
市役所に勤務することによって、税金や給付金に関する知識・スキルが身に付きます。
市役所では税務課などの部署があり、そこで医療費控除の申請や扶養控除の申請書類を扱ったり国民年金・国民健康保険についての相談を受けることもあります。
どのような条件で納税を免除されるのか、どういった人には給付金が支給されるのかという知識が身に付くため、周囲の人々の税金・給付金関係の相談に答えられるようになるでしょう。
また身近なケースだと、定年を控えている両親がいる場合に来年以降の住民税や国民健康保険の仕組みなど解説することができるようになる、と考えられます。
公共料金について詳しくなる
市役所では、水道代金や下水道代金などの公共料金の徴収を行っている部署があります。
そのため、水道料金の相場感覚などが養われ水道料金から漏水に気付けるなど、実生活で役に立つ知識が得られるでしょう。
水道料金だけでなく、公立学校授業料・印鑑証明手数料などについても同様の知識がつくと考えられます。
自分が働いている自治体の公立学校の授業料が高いのか安いのか判断することができ、身の回りに子育て世代がいれば有益なアドバイスができるようになるでしょう。
また、これら公共料金にも減免制度があるため、どのような人が減免対象なのかを知ることもできます。
福祉系や行政書士への転職もできる
最近では、少子高齢化により自治体は福祉系に積極的に取り組むようになっています。
そのため、市役所職員になれば福祉関連の法令や政策に関する知識を身に付けることができ、 この知識を活かして社会福祉法人や医療法人への転職が可能になります。
また、市役所の行政手続き業務に通算して17年以上勤務すれば、無試験で行政書士資格を取得することができるため、退職後に行政書士資格を得て行政書士事務所を開業する方も少なくありません。
難関資格の一つである行政書士を勉強せずに取得することができるメリットは絶大です。
退職後に行政書士として独立することで年金以外の収入源を確保することができ、老後の生活をより豊かにすることができるでしょう。
市役所試験の対策
市役所試験は、いわゆる地方公務員試験にあたります。
自治体によって試験日が異なりますので、自分が目指している市役所試験がいつ行われるのか、ホームページなどで確認するようにしましょう。
多くの場合、筆記試験→面接試験→最終面接試験といって流れで進んでいきますので、まずは最初の筆記試験を突破しないと話になりません。
筆記試験ではこれまで中学・高校の授業で習った主要五科目(国数英理社)が幅広く出題されますが、教科書を隅々まで読み込むような勉強は不要です。
どの科目にも出題頻度が高い論点が必ずあるので、過去問などを通じて出題傾向をつかむようにしましょう。
また、独学だと不安な人は迷うことなく予備校や通信教育の利用を検討してください。
予備校や通信教育の教材は無駄が無く、合格する確率が格段に高まります。
わからない問題があっても質問できる環境があるため、テキストの解説を読んでも全くわからないというストレスとは無縁です。
費用は高くつきますが、本気で市役所職員を目指すのであれば独学はやめるべきでしょう。
市役所試験の対策で特に鬼門とされるのが数学です。市役所試験の数学対策については、以下の記事を確認しておくと良いでしょう。
市役所で働く公務員まとめ
市役所で働く仕事まとめ
- 様々な部署を経験できるため生活に役立つ知識を得ることができる
- 市役所職員になるには試験に合格する必要があるため、努力が必要
- 社会人経験者でも最近は採用される数が増えている
- 雇用と給与が非常に安定しているため、ライフプランが設計しやすい
市役所職員として働くことで様々な法律の知識や公金の知識を身に付けることができます。
また、安定した雇用や給料だけでなく福利厚生も充実しているため、地方公務員になるメリットはとても大きいといえます。
地方公務員への就職や転職を目指している人は、早めに勉強など対策を開始すると良いでしょう!