社労士と行政書士はどっちがおすすめ?難易度や年収・メリットなどの違いを徹底比較!

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社労士

のんびり社労士いけい

「社労士と行政書士って何が違うのかがよく分からない・・・」

こんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

行政書士と社労士(社会保険労務士)はどちらも合格率が非常に低い高難度資格であり、それぞれ資格としての有用性は非常に高いと言えます。

しかし、それぞれの資格は異なる専門性を有しており、人による適性や出題される問題の傾向も変わってくるのが一般的です。

そこでこの記事では社労士と行政書士の難易度やメリット、仕事の特徴といった観点から2つの資格を徹底比較します

社労士と行政書士の主な違いは

  • 専門とする法律の分野が違う
  • 社労士の方が安定した働き方ができる
  • 行政書士は独立開業がメイン
  • 試験の難易度に大きな差はないが、社労士の方がやや難しい

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社労士と行政書士は今話題の大人気資格!

喜ぶ人々 経済的に先行きが見えない中にあって、独占業務を担うことの出来る国家資格は、就職・転職に非常に有利です。

しかし、いずれの資格を取るにせよ、時代の流れの中にあって、需要は日々刻々と変化しているのも事実です。

中でも昨今では、行政書士と社労士(社会保険労務士)が話題になることが多く、かつては地味な資格だったのにも関わらず、法律系の国家資格の代表格になってきています。

こういった変化としては、以下の様な理由が考えられます。

  1. 弁護士をはじめとする法律系の資格の中では、社労士や行政書士は比較的難易度が低い
  2. 社労士や行政書士は需要が高まりつつある分野の資格で、将来の展望が明るい
  3. 法律系の資格の中でも稼ぎやすい分野である(場合によっては年収1000万を超えることも)

しかし、 需要が高まりつつあるということは、この分野を狙って社労士・行政書士にチャレンジする人も増加する可能性がある事を意味しているので、これら資格取得を目指すのであれば、なるべく早く行動を起こすべきでしょう。

社労士と行政書士の仕事の違いは?

?を取り囲む人 行政書士と社労士(社会保険労務士)は、いずれも独占業務を担う士業なのですが、関連法令が違うので、専門とする分野が大きく異なっています

では、社労士と行政書士の仕事は、具体的にどの様な違いがあるのでしょうか?

社労士の仕事は?

社労士はよく労務関係のプロフェッショナルと呼ばれており、取り扱う仕事もそれらに関わる書類作成・提出代行業務・コンサルティング等が主となっています。簡単に言ってしまえば保険、年金、労務管理が専門の仕事です。

ざっくりといえば、雇用保険や健康保険、厚生年金といった社会保険や労働に関する法律全般の知識を活かして、それらに基づいて適切なアドバイスや手続きをサポートすることが仕事ですが、それらは具体的に1号業務、2号業務、3号業務に分類できます。

なお、独占業務となっているのは1号業務及び2号業務であり、3号業務に関しては独占業務となっていません

※独占業務を無資格者が報酬を貰って業として行うと法律違反になります。(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)

1号業務(独占業務)

労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成を行い、行政官庁(労働基準監督署や年金事務所など)に提出する手続きを代行します。

また、それら申請書類の調査や処分が行われた際は、事業主の依頼により代理人として主張や陳述なども行います。

※健康保険、厚生年金保険の加入・給付の際の手続きなど

2号業務(独占業務)

企業で備え付けなければならない帳簿類(就業規則、労働者名簿、賃金台帳など)を労働社会保険諸法令に基づいて作成する業務です。

具体的には就業規則、退職金規定、給与規定の作成や変更などです。

3号業務(独占業務ではない)

企業のからの相談に応じ、人事や労務管理の適切なアドバイスにや指導を行います。

なお、3号業務は独占業務では無いものの、企業からの需要も高く社労士には欠かせない能力の一つになっています。(実際、この3号業務で社労士としての差別化を図り、稼ぐ傾向にあります。)

また、近年では個人からの年金相談も増加しているので、そういった分野でもビジネスチャンスがあることが伺えます。

※労働時間や労働環境などに関わる相談や指導を行う、いわば人事コンサルタントのような仕事

社労士の仕事内容についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

行政書士の仕事は?

社労士が労務関係のプロであるならば、行政書士は行政機関に提出する行政書類作成のプロと言えます。

具体的な業務は、許認可申請、権利関係、事実証明ですが、簡単に言ってしまえば各種許可申請が仕事となっており、さらにそれら業務は大きく分けて以下の3つに分類されます。

役所に提出する書類の手続き代行

会社を設立するには会社設立許可申請、飲食店を経営するには飲食店営業許可といったように、何かにつけて役所への許可申請が必要になります。

しかし、許可申請は専門知識が必要で煩雑な上に、少しでも不備があると再作成が求められるため、素人には難しい作業です。

しかし、この分野のプロである行政書士であれば、スムーズに各種許可申請を通すことが可能です。

権利義務に関する書類と事実証明に関する書類の作成

行政書士は、権利義務に関する書類と事実証明に関する書類について、その作成と相談を行っています。

このうち、権利義務に関する書類とは、何らかの権利の発生、変更、存続、消滅などに対して意思表示し、何らかの効力を発生させる事を目的とした書類を指しています。

例えば、遺産分割協議書、あらゆる契約書(贈与、売買など)、念書、示談書、内容証明、告訴状などがそれにあたります。

一方、事実証明に関する書類とは、交渉を必要とする事柄を証明する書類を指します。実地調査図面(位置図面、測量図面)、会計帳簿、車庫証明、財産目録等がそれにあたります。

端的に言ってしまえば、権利義務に関する書類は起こった事柄の証明・意思表示、事実証明に関する書類は存在するものの記録ということが出来るでしょう。

代理人として契約・念書等の書類作成

行政書士は、契約書を含むあらゆる書類作成を代理人として行い、かつそれらの依頼に対してどのような書類が必要なのかの相談にも応じています。

このため、行政書士は別名「代書屋さん」とも呼ばれます。

行政書士の詳しい仕事内容は以下の記事をご覧ください。

社労士・行政書士の登録の違い

登録のイメージ画像

どちらの資格も、国家試験に合格しただけでは名乗ることができません。

それぞれ登録の際に違いがあるので、しっかりと把握しておく必要があります。

社労士の登録について

社労士の場合、国家試験合格後に全国社会保険労務士連合会に登録をすることで「社労士」を名乗ることができます。

規定の実務経験を満たしている場合はすぐに登録を行うことができますが、そうでない場合は指定の講習を受ける必要があります。

講習の申し込みから、大体1年位で登録が完了するイメージです。

また、登録の際に「開業型」と「勤務型」のどちらかをする必要があります。

その名の通り、「開業型」は自分で事務所を構えて開業する方向け、「勤務型」は企業に勤務して企業内社労士として活躍したい方向けの登録形態となります。

行政書士の登録について

行政書士の場合は、試験合格後にそれぞれの都道府県の行政書士会に書類を提出することで、入会することができます。

その後、日本行政書士会連合会の審査を受ける、という流れで登録が完了します。

登録完了までに大体1ヶ月と、社労士よりもずっと早く登録を済ませることが可能です。

また、行政書士の場合は登録に実務経験が必要ない、という点も社労士の登録との相違点です。

社労士と行政書士の年収やメリットの違い

年収のイメージ画像

社労士と行政書士はともに国家資格の士業ですが、実際に働くことを考えるとどちらにメリットがあるのでしょうか?

社労士の方が安定した生活を送れる!

上記のように、社労士としての働き方は、「開業型」と「勤務型」に分けることが出来ます。

「開業型」とは文字通り独立開業を行うことですが、「勤務型」は企業に会社員として雇われ総務部や人事部で社労士としての業務を行う働き方です。

社労士登録の際に「勤務型」を選べば、会社員としての身分を保ったまま社労士として働くことができます。

「勤務型」の場合、会社の給与規定に則って報酬が決まるので「開業型」より収入が少なくなる場合もありますが、会社員としての身分が保たれたまま経験が積めるので、収入面での安定を図ることが出来ます

また、将来的に独立したときにも、企業と顧問契約を結んで継続的に業務を請け負うことで安定した収入を得ることができますし、セミナー講師や資格予備校の講師などでの臨時収入を得ることもできます。

いずれにしても、社労士は比較的安定した生活が保証されている資格だと言えるので、仕事として働くことを考えた場合検討する価値のある資格だと言えるでしょう。

社労士は就職や転職で有利!

国家資格を取得すれば就職や転職で有利になる面も当然ありますが、多くの場合は実務経験を求められるので就職や転職に強いと言い切ることはできません。

しかし、社労士の場合は話が別です。何故なら、社労士の資格試験で勉強したものの殆どがそのまま実務で使えることも多いからです。

例えば、雇用保険の資格取得に関する手続きは、実際に作成したことがなくても、試験で出題される問題に答えられる知識があれば作成する事が出来ます。

資格自体が一定の実務能力を保証しているので、社労士資格は就職や転職で有利だと言えるのです。

社労士の詳しい就職・転職事情は以下の記事をご覧ください。

行政書士は一人でたくさん稼ぐのは難しい?

社労士が就職・転職で有利な反面、行政書士は中々厳しい状況にあります。

まず、社労士とは異なり、行政書士登録には区分(勤務型、開業型)が存在せず、行政書士として登録する場合必然的に独立・開業しなければなりません

しかも、取り扱える業務が書類作成代理に限られるため報酬単価が低く、単発の契約が多いため継続的に契約してもらえる保障も無いので、安定的に稼ぐことが難しくなっています

このため、行政書士の半数が300万円を下回るのが実情です。ただし、土地家屋調査士や社労士など他の士業と合同事務所を構えて顧客を共有すれば、サラリーマン程度の年収(500万円程度)を見込む事は出来るようです。

いずれにしても、行政書士の仕事のみで稼ぐのは難しいので、仕事として行政書を検討する場合は、何らかの対策を考えておく必要があると言えます。

社労士と行政書士はどっちが難易度が高い?

勉強する女性

社労士試験と行政書士はそれぞれ関連法令が異なるので、当然試験の内容も変わってきます。

では、試験にはどのような違いがあり、どっちの方が難易度が高いのでしょうか?以降で詳しく解説をします。

合格率や合格者数・受験者数を比較

年度 社労士の合格率
(受験者/合格者)
行政書士の合格率
(受験者/合格者)
平成27年度 2.6%
(40,712/1,051)
13.1%
(44,366/5,820)
平成28年度 4.4%
(39,972/1,770)
9.95%
(41,053/4,084)
平成29年度 6.8%
(38,685/2,613)
15.7%
(40,449/6,360)
平成30年度 6.3%
(38,427/2,413)
12.7%
(39,105/4,968)
令和元年度 6.5%
(38,428/2,525)
11.5%
(39,821/4,571)
令和2年度 6.4%
(34,845/2,237)
10.7%
(41,681/4,470)
令和3年度 7.9%
(37,306/2,937)
11.2%
(47,870/5.353)
令和4年度 5.3%
(40,633/2,134)
12.1%
(47,850/5.802)

出典:社会保険労務士試験 過去10年の推移と合格者の年齢階層別・職業別・男女別割合

出典:行政書士試験研究センター 最近10年間における行政書士試験結果の推移

社労士と行政書士の難易度は、いずれも合格率一桁台の難関資格となっていましたが、ここ5年で行政書士の合格率が2桁台に上昇しているので、どちらかと言えば社労士のほうが難易度が高いと言えます。

また、それぞれの受験者数が4万人前後と近年ほぼ同じなっているのが特徴的なのですが、これは社労士と行政書士の両方を取得するダブルライセンスの傾向が強まっているのが一因と言えるのかもしれません。

ただし、難易度はそこまで大きく変わらないので、どっちの資格を取得するかは自分がどっちの仕事をやりたいかで決めるべきでしょう。

試験内容の違いは?

行政書士の例年の試験内容は、法令科目(憲法、商法、民法、基礎法学、行政法)と一般知識課目(政治・経済・社会、情報通信及び個人情報保護、文章理解)となっています。

一方、社労士の例年の試験内容は、労働基準法および労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、健康保険法、厚生年金保険法、国民年金保険法、労務管理その他の労働および社会保険に関する一般常識となっています。

いずれも共通して試験範囲が広いことが伺えますが、試験内容自体は大きく異なる上に、試験内容が特徴的で人によっては合わない場合があります。なので、下の項目を参考にどっちを受験するかの参考にしてみて下さい!

初めて法律を学ぶなら行政書士

法律系の国家資格を初めて受験する・自信がないならば、行政書士を受験することをおすすめします。何故ならば、行政書士で取り扱う科目は、憲法や民法など比較的馴染みがある法律が出題されるので受験勉強に取り組みやすいからです。

逆に、社労士試験で取り扱う法律は労使関連の法律であり、出題される問題は専門性が高く細かい知識が必要で、しかも特別法(一般法に特別なルールを付け加えた法律)が出題されるケースが多いので、社労士試験に取り組むにあったってはある程度は法律の知識がないとかなり厳しいのです。

例えば、労働基準法は民法の特別法という位置づけになっていますが、出題される問題も前提として民法を知っている事が求められるので、原則法の民法に関わる文言が出てきてしまい混乱する事があるのです。

以上から、ダブルライセンスを目指す場合には、先に行政書士資格を取得して法律の全体像や基本的な考え方を身につけておいてからもう一つの資格取得を目指すと良いといえます。

行政書士の具体的な試験内容は以下の記事を詳しくご覧ください

社労士は暗記することが多い

社労士の試験は出題される範囲が広く、手続法が主な内容となっているため暗記が重要な試験内容になっています

社労士試験は全てマークシートなのですが、そのうちの実に40%の設問が数字の選択(例えば、遺族年金の額は○○だとか、被保険者の数は○人だととか)なのです。

これはかなり細かいところまで暗記しなければならない試験だとわかりますね。(もちろん、労働基準法や労災保険法は判例問題なので理解力も必要になります。)

しかも、一般に法律は毎年改正されるので、一発で合格しないと前年の知識が次の年には活かせない場合もあります。ですから、 暗記力に不安のある人はやや不向きな試験と言えるのかもしれません。

社労士の具体的な試験内容は以下の記事を詳しくご覧ください

社労士と行政書士のダブルライセンスもおすすめ

行政書士は単体で取得しても働いていくには厳しい面がありますが、その他士業とのダブルライセンスのファーストステップとしてはかなり有望な資格と言えます。

とりわけ、行政書士と社労士のダブルライセンスは、それぞれの士業の足りない部分を補い合える関係にあるので、法律系士業としての営業が有利になりビジネスチャンスが広がります

特に、行政書士だけでは収入が安定しない不安を抱える人は、社労士とのダブルライセンスを取得すると、社労士として顧客を持ちながら顧客のニーズに応じて行政書士としての職務をこなすこともでき、両方の資格を活かしながら収入も安定させられるのでおすすめです。

なお、上でも述べたように、行政書士と社会保険労務士のダブルライセンスを取得する場合は、先に行政書士を取った方が良いでしょう。何故ならば、行政書士の方が法律分野をより広い視点で学習すること出来るからです

また、社労士には学歴等厳しいの受験資格がありますが、行政書士を先に取得しておけばそれら条件は緩和されるので、将来的にダブルライセンスを視野に入れているのであれば、やはり行政書士を先に取得するのが得策と言えます。

実際に社労士と行政書士のサービスを組み合わせてご活躍されている事務所も数多くあります。

皆さんもダブルライセンスを取得して、独自の価値を見出してみてはいかがでしょうか。

ダブルライセンスを検討する際に注意すべきポイント

ダブルライセンスを検討する際には、ダブルライセンスをすることそのものが目的なのか、それともあくまでメインとして据える資格で働く際の業務の幅を広げるための手段なのかをはっきりさせることが必要です。

方向性を決めておかないと、ただ資格を取得するだけの学習に陥ってしまい、今後の仕事において必要となる知識を効果的に身に付けることが難しくなってしまいます。

今後の自分のキャリアプランに照らし合わせてダブルライセンスの資格がどのような働きをするのかしっかりと検討するようにしてください。

社労士と行政書士の比較まとめ

社労士と行政書士の比較まとめ

  • 難易度はさほど変わらないが、専門分野が異なる
  • 行政書士は法律系資格の登竜門として最適
  • 社労士と行政書士のダブルライセンスは特におすすめ

両者とも資格取得の難易度は高いのですが、収入などを勘案すると行政書士として働くほうがやや不利な面があることが分かりました。

しかし、行政書士は社労士とのダブルライセンスとしての相性が、試験・仕事両面で非常に良く、社労士としての3号業務を補強してくれる強力な武器にもなります。

また、その他の士業とのダブルライセンスも有効ですが、時間や資金と言ったリソースは限られるので、相性の良い社労士と行政書士のダブルライセンスを優先的に検討することをおすすめします。

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