公務員は行政書士の試験が免除される?特任制度の詳細や試験の難易度差を解説!

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行政書士

宮城彩奈

「公務員は行政書士の試験が免除されるの?」

「公務員だと、資格を取るにあたって有利なの?」

公務員と資格試験について、このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

今回主に解説していく行政書士試験は、一般的に難関といわれる資格試験です。

しかし、公務員としての勤続年数が一定以上あれば、試験を受けることなく行政書士として資格登録できるということはご存じでしょうか?

公務員も行政書士も行政に関する事務業務に携わる仕事として関連度が高く、公務員としての勤務経験を行政書士試験に活用することが可能です。

この記事では、公務員としての経験を行政書士に活かす制度や、公務員試験と行政書士試験の関連性などについてご紹介します!

現在公務員として勤務されている方や、行政書士資格を取りたいとお考えの方には、今回の記事が参考になるはずです!

行政書士試験の免除についてざっくり説明すると

  • 公務員として一定期間勤務した人は無試験で行政書士の登録ができる試験免除制度が存在する
  • 行政にまつわる業務を主とする行政書士と公務員は親和性が高く、行政書士試験と公務員試験の出題範囲もほぼ同じ
  • 公務員でも試験免除制度を行使せずに行政書士試験を受ける場合もある
  • 行政書士以外にも公務員としての勤務経験を活かすことのできる国家資格が複数存在する

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公務員なら無試験で行政書士になれる

階段と人

行政書士に資格登録するためには、一般的には行政書士試験を受験し合格することが必要です。

しかし一定の条件を満たしている場合に限り、行政書士試験を受けなくても行政書士として登録できるケースが存在します。

行政書士登録の特任制度とは

試験に合格せずとも、行政書士に登録することができる特任制度が存在します。

以下行政書士法第2条を参考にして、行政書士の資格を得ることができる者として規定されている条件を以下のようにまとめました。

  • 行政書士試験に合格した者。

  • 弁護士、弁理士、公認会計士、税理士のいずれかの資格を有する者。

  • 国または地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間、あるいは行政法人または特定地方独立行政法人の役員または職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して17年以上(中卒の場合は20年以上)の者。

上記のように、弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格のいずれかを取得している人、あるいは17年間(中卒の場合は20年間)公務員として勤務していた人であれば、無試験で行政書士になることができます。

弁護士・弁理士・公認会計士・税理士は超難関試験を突破する必要がある特別な国家資格です。

一方で、上記の超難関試験を突破していなくとも、公務員として17年間あるいは20年間勤続さえすれば行政書士試験を受けなくて済むというのは、行政書士の資格を得るにあたって大きなメリットであるといえるでしょう。

ただしそのかわりに、行政書士の資格を得られるようになるまでに、17年あるいは20年という非常に長い月日がかかることも考慮しておかなければなりません。

試験を受けなくてもよい点は評価できますが、それまでの時間がかかりすぎるというデメリットを天秤にかけて考える必要があります。

業務にも関連した部分がある

行政書士とは、その名の通り行政に関する事務全般を扱う資格です。

行政書士が行う仕事は、官公庁への許認可書類提出手続きの代行、権利義務に関する書類や契約書等作成の代行が主なものです。

行政書士の仕事の範囲は非常に広く、行政書士が扱うことのできる書類の種類は一万を超えるともいわれています。

一方、公務員は市民と近い位置で働き、それぞれの役所で法律に則って書類作成をはじめとした行政事務に携わることが多いです。

それぞれの業務を行うために、必要となる知識に共通する部分があることから、公務員としての仕事は行政書士の仕事に通ずる部分も多いと言えます。

公務員なら行政書士試験も有利になる?

ノートと鉛筆

公務員と行政書士は試験内容が似ている

公務員試験は行政書士試験と出題範囲が類似しているという点にも注目できます。

具体的には、法令科目の憲法・行政法・民法や、一般知識科目の政治・経済・社会と文章理解などについては、出題範囲がほぼ同じで関連度が高いと言えるでしょう。

ただし、行政書士試験の方が対策しづらく難問となっています。

公務員試験と行政書士試験はどっちが難しい?

公務員試験と行政書士試験を比較すると、上記のように試験範囲が被っている箇所も多数ある一方で、行政書士試験の方が問われる内容への深い理解が必要であり、難易度も高めに設定されています。

このように、基本的には行政書士試験の方が難しいことが多いとはいえ、公務員試験の中でも難関とされる地方上級公務員以上の試験になってくると、公務員試験の方が難易度が高くなることもしばしばあります。

つまり、公務員試験には非常に多くの種類があり、その難易度は低いものから非常に高いものまで様々であるため、公務員試験と行政書士試験とでどちらの試験の方が難易度が高いか、一概に言い切ることは難しいと言えるのです。

免除制度を利用せず取得する方も

公務員としての勤務を17年、あるいは20年以上という条件を満たすためには、やはり長い年月がかかるのがネックとなります。

これほどの長い年月に渡って勤続していれば、年齢を重ね、重要な役職についていることも多いですし、そこから退職して行政書士として独立することを選ぶのはかなりの大きな決断になります。

あるいは、公務員として就職された方の中でも、この先長く勤めるのが難しい状況になってしまったり、仕事に満足できず転職を視野に入れたりするという方もいらっしゃるでしょう。

そのため、公務員の方でも17年または20年という年月を待つのではなく、自分で行政書士試験の勉強をして資格取得をされる方も多いです。

また、公務員からの転職を考えているという方の中には、何らかの資格を取得していることが転職において有利にはたらくことを見越して、あえて難関な行政書士試験にチャレンジするという方もいらっしゃるようです。

公務員が行政書士を取得するメリット

親指を立てる人

行政書士の資格を取得することで、独立開業するチャンスが拓けるというのは大きなメリットであるといえるでしょう。

公務員の年収については公務員法により基準が定められているため、どんなに頑張って働いても年収には限界があります。

しかし行政書士として独立開業すれば、公務員として勤務していた頃よりも大幅な年収増加が狙えますし、あるいは自分で働き方や働く時間を自由に決めることも可能になるなど大きなメリットがあるのです。

また、行政書士として事務所を開業し軌道に乗せるには、それなりの準備と経験が必要となります。

公務員の業務は行政書士の扱う業務との親和性が高く、独立後も公務員時代の業務経験を活かすことができるため、公務員から転身した行政書士は、全くの未経験の状態から独立するよりも行政書士として成功する可能性が高いと言えるでしょう。

公務員が行政書士登録をする際の注意点

行政書士の仕事イメージ

公務員が行政書士登録をする際は、以下の点を認識しておく必要があります。

在職中に登録することはできない

公務員には兼業禁止の規定があります。そのため、公務員在職中に行政書士登録をすることはできません。

同様に、公務員在職中に行政書士として活動し、報酬を得ることも規定違反です。

そのため、上記の特任制度を利用して行政書士登録をする人は、公務員の退職者が大半です。免除制度が活用できる頃には、40代になっていることもザラでしょう。

この年齢の時には公務員として高待遇を受けていたり、公務員の退職金が非常に高いことから、行政書士登録しない人も少なくありません。

登録費用は意外に高額

また、行政書士登録の際には様々な費用が必要になります。東京都行政書士会の場合の費用は、以下の通りです。

  • 入会金:225,000円
  • 登録手数料:25,000円
  • 登録免許税:30,000円

合計28万円と、非常に高い費用が必要となります。

さらに、都道府県ごとに登録後の月会費が必要となる場合もあります。

その他公務員が有利な資格一覧

黒板と電球

行政書士以外の難関資格においても、公務員優遇措置が取られているものが複数あり、公務員の勤務経験を生かすことが可能です。

司法書士・社労士・中小企業診断士・税理士・弁理士がその資格に該当します。

この項では、各資格を取得するにあたり、どのように公務員経験を活かすことができるのかについてそれぞれ解説していきます。

司法書士

司法書士は法律を扱う国家資格です。登記・供託に関する業務が主な仕事となります。民事裁判の代理人として法廷活動を行うことも認められています。

司法書士試験の合格率は4パーセント台と極めて低く、司法試験と並ぶ超難関試験であることで有名です。

しかし一部の公務員は、司法書士資格を取得する際に公務員の優遇措置を利用することが可能です。

裁判官事務官・裁判所書記官・法律事務官・検察事務官として10年以上勤務した場合、法務大臣の認定を得ることで司法書士として登録することができます。

司法書士試験の難易度の高さは以下の記事で詳しく確認してください。

社労士

社労士(社会保険労務士)は、労働法や社会保険に精通したプロフェッショナルであり、企業に属する社員の就業規則・年金・社会保険などについて相談に応じサポートを行います。

社労士試験は試験科目が8科目あり難関とされていますが、公務員としての勤務経験によって一部科目の免除制度が適用されます。

社労士試験の詳しい詳細は以下の記事を詳しくご覧ください。

中小企業診断士

中小企業診断士は経営・労務分野を扱う国家資格で、主に中小企業を対象に、企業の財務・労務などといった経営全般について診断・指導を行い、経営課題への対応を担います。

中小企業診断士になるためには、一次・二次試験を受け合格したのち実務補修を受けることが必要ですが、一次試験合格後、中小企業事業団が実施する「中小企業大学校」かその他の登録養成機関の元で1年間履修することでも、資格を取得することができます。

この「中小企業大学校」は、地方公務員向けにも実施されています。

地方公務員には、中小企業診断士試験の一次試験に合格していなくても「中小企業大学校」の養成機関に入ることができるという優遇措置が取られているのです。

そのため、養成機関での履修に1年間という期間はかかりますが、一般の人よりも効率よく資格を取得することができます。

※2020年現在、上記の中小企業診断士の公務員優遇措置は取られていません。

中小企業診断士の実務補習の内容については以下の記事で詳しく紹介しています。

税理士

税理士は、税金に関するあらゆるサポートを担う国家資格です。

税理士資格を得るにあたっての公務員優遇措置としては税理士試験の科目免除制度があり、これは国税に関連した公務員の職種に従事した人に対して適用されます。

税理士試験を突破するには5科目における合格が必要となり、税理士試験は難易度が高い試験であるため、科目免除制度を利用できるというのは非常に有利です。

税理士資格の詳しい難易度は以下の記事をご覧になってください。

弁理士

弁理士は知的財産の専門家で、特許や商標についての申請・出願の代行業務を主に行います。

また、知的財産権の取得についての助言や、自分や他者の権利関係の相談に応じた助言を行うなど、知的財産全般を扱います。

弁理士試験では法律だけではなく工業・産業に関する専門知識が求められるため、試験の難易度は高いと言えますが、特許庁の審判官や審査官として7年以上勤務した人であれば、特許・商標登録に関する十分な専門知識を持つとみなされ、無試験で弁理士になることができます。

弁理士資格の詳しい難易度は以下の記事をご覧になってください。

公務員の行政書士試験の免除まとめ

公務員の行政書士試験免除まとめ

  • 公務員として17年間(中卒の場合は20年間)勤続した人であれば行政書士試験の免除制度が適用され、試験を受けなくても行政書士として資格登録ができる

  • 行政書士も公務員も書類作成などの行政事務を請け負うという点で親和性が高く、そのため行政書士試験と公務員試験の試験範囲も関連度が高い

  • 17年間あるいは20年間公務員として勤続し行政書士に転身するのは現実的には難しく、行政書士を目指すという人は行政書士試験を受験することも多い

  • 公務員が行政書士に転身すれば、業務の親和性から独立開業した後も公務員の経験を活かすことができ、成功する可能性が高い

  • 行政書士以外にも複数の難関資格で公務員優遇措置が取られる

公務員に対する行政書士試験免除制度は大きな魅力ですが、デメリットも存在します。

行政書士を目指したいという方は、ぜひこの記事を参考にプランを立てていただければ幸いです!

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