中小企業診断士の実務補習の内容は?日程や費用・実際の感想を紹介!
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中小企業診断士
平井東
「中小企業診断士の実務補習ってどんなことをするんだろう?」
「実務補習の日程や必要な費用が知りたい!」
この記事を読まれているあなたは、きっとそんな悩みや疑問を持たれているのではないでしょうか?
中小企業診断士の実務補習とは、中小企業診断士の試験合格後、資格登録のためにほとんどの方が受講を必要とする講座です。
しかし、いつまでにどういう流れで進めていけばいいのか、いまいちイメージを掴めていない方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、中小企業診断士における実務補習の内容やスケジュール、費用や中小企業診断協会のことについてまとめてみました。
読み終えられた頃には、実務補習に対してのイメージが明確になり、中小企業診断士の資格取得に向けて、更なる一歩を踏み出すことができるでしょう!
中小企業診断士の実務補習の概要
- 試験合格後に実務補習の受講が必要な人もいる
- 実務補習では中小企業診断士の実務が学べる
- 開催期間や場所は決まっている
- 実務補習には多額の費用がかかる
中小企業診断士の実務補習とは
中小企業診断士という資格は、試験に合格しただけでは取得することはできません。2次試験に合格後、3年以内に「実務補習」を15日以上受講するか、診断実務に15日以上従事することではじめて中小企業診断士として登録することができます。
資格取得後すぐに診断実務ができる中小企業は少ないため、登録を目指すほとんどの方が、中小企業診断協会などが主催している実務補習を受講しているのが実情です。
実務補習の流れ
申し込み
実務補習の受講申し込みをインターネットで行う場合は、中小企業診断協会のサイトにてユーザー登録が必要になります。
ユーザー登録には、メールアドレスの登録が必要です。
内容
実務補習の内容は簡潔に述べると、経営コンサルティングの一連の流れを実際に体験する実習になります。中小企業診断士第2次試験合格者が受講者となり、5~6名のグループを作ります。各グループに指導員(中小企業診断士)が付き、実際の企業に対する経営診断やアドバイスを行います。
実務補習の流れとしては、まず診断先へヒアリングを行い、報告書の方向性をグループ内で議論します。その後、担当になった項目の報告書を作成し、各々が作成した書類を持ち寄って、全体的な整合性などを検討し報告書を完成させます。
実務補習のスケジュール
実務補習のスケジュールについては下記のような流れで動いていきます。
実務補習のスケジュール
日程 | 内容 |
---|---|
1日目 | ループ別打ち合わせ、企業訪問・調査、資料分析など |
2日目 | 企業訪問・調査、資料分析など |
3日目 | 全体調整、診断報告書の作成 |
4日目 | 全体調整、診断報告書の作成 |
5日目 | 企業へのプレゼンテーション、診断報告書の提出 |
この5日間を1セットとして、合計3セット15日間の実務補習を行うことで、中小企業診断士に登録することができます。
実務補習には2通りのコースが用意されており、「15日コース」を1回受講するか、「5日コース」を3回受講するかになります。
スケジュールの心配はない
会社に勤めながら中小企業診断士を目指している方は、実務補習のために会社を15日も休めない、と不安に感じている方もいらっしゃると思います。
でも、安心してください。実務補習は5日間×3セット実施するわけですが、この5日間は土日を含んでいます。
また、2日目と3日目の間は、報告書作成のため期間が空いています。したがって5日間の実施日としては、順に金・土・土・日・月といったスケジュールになるので、土日週休2日の会社に勤められている方の場合、会社を休む必要があるのは2日間のみということになります。
つまり15日コースの場合、会社を休む必要があるのは6日間ということになります。
また、実務補習は3年以内に15日間受講すれば、中小企業診断士に登録することができます。合格した年に5日間、翌年に5日間、翌々年に5日間というような受講の仕方でも良いので、各々のスケジュールに合わせて受講予定を組むことができます。
実務補習における報告書の内容は?
実務補習では、企業調査・分析を実施した後に、診断報告書を成果物として作成することになります。基本的となるのは以下の4つの章で、一人が一つの章を担当します。
- 経営戦略
- 営業マーケティング
- 生産管理・運営管理
- 財務・会計
必ずこの4章で構成されると言うわけではなく、グループの人数や、診断する企業に合わせて、経営情報システム(IT活用)や人的資源管理(人事強化)について章に付け加えたり、生産と運営管理を別の章にして作成したりします。
実務補習の行われる時期・場所
先にも述べましたが、中小企業診断士の実務補習は、2通りのコースが用意されており、「15日コース」は2月に、「5日コース」は2・7・8・9月に開催されます。開催場所は、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡となっています。
開催期間についての注意点として、8月に開催されるのは東京・大阪・名古屋のみなので他の場所で受講しようとする方はスケジュールを組む際に注意が必要です。
また、新型コロナウイルスの影響により開催場所や日時が変更される可能性があるので、常に最新情報をチェックすることを心がけましょう。
実務補習の存在意義は?
中小企業診断士の資格登録に、なぜ実務補習が必要なのでしょうか。中小企業診断士の試験内容を見てみると、その意味を感じ取れると思います。
各試験の意味とは
まず1次試験は、中小企業診断士の基礎である経営全般の知識を取得できているかどうかの試験となっています。
2次の筆記試験は、与えられた条件に対して、制限時間内に改善案を導きだすことができるかどうか、2次の口述試験は、対面で質問された事項に対して的確な回答ができるかどうかの試験になっています。
現場では自ら与件の情報を集めなければならない
中小企業診断士の2次試験が難しいとよく言われますが、所詮は事例として内容がまとまっている与件文に対して回答を用意する試験であって、それだけで実務レベルの力が測れるものではないと言えます。
実際の経営コンサルティングの現場においては、試験のようにまとまった与件文が用意されているわけではなく、その与件となる情報を自ら集めて診断報告書を作成していくことになります。
試験と違って実務では業界研究をしたり、企業訪問をして現場を視察させてもらったり、社長や社員に直接意見をヒアリングしたりと、情報を足で稼ぐ必要があります。
また中小企業診断士になるには、机上の知識だけではなく、企業毎に合った改善提案をできる能力が必要となります。実務補習はまさにその能力を磨くための訓練となっており、経営課題の本質がどこにあるのかを読み取り、的確な改善提案を行えるようになるために実施されているといってもいいでしょう。
実務補習は費用もかかりますし時間の拘束もあるので大変ではありますが、経営コンサルティングに携わっていない方にとって、実務を経験できるとても貴重な機会であると言えます。
実務補習を受講した人の感想
実際に実務補習を受講した人の感想をまとめてみました。
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即席チームで作業をしていくことに最初は不安を覚えたが、前向きな人が多くコミュニケーションを取りながら楽しく作業をすることができた。
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期間が短いため、深くまで入り込めないのは残念だが、実務を実際に見ることができるのはとても有意義な体験。
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メンバーそれぞれ働いている環境が違うため、色々な視点を学ぶことができた。実際の会社の実務についての話を聞いて、中小企業診断士の学習内容と実務のつながりを確認することができた。
実務補習を通じてメンバーと作業をする際に、新たな考えや知識をそれぞれにぶつけ合い吸収し合うことでとても刺激になったという声が多くあがっていました。
はじめは所詮補習とタカをくくっていた人も、実務を通して現場の生の声を聞いている内に、「この会社を何とかしてあげたいと責任感が生まれた」という意見もありました。
実務補習の費用
実務補習の受講料は約15万円とかなり高額となっていますが、上の感想を聞けば受講する価値はかなり高いと思っていただけるのではないでしょうか。
この実務補習を実施しているのは中小企業診断協会です。ここからは中小企業診断協会について解説していきます。
中小企業診断協会には登録するべきか
中小企業診断協会への登録は、試験合格後3年以内に登録しなければ、以降登録することができません。後からでいいやと放っておくと、気づいた時には登録期間が過ぎていた!ということになりかねないので、試験前に登録するかどうか決めておくといいでしょう。
中小診断協会の入会金は3~7万円程度、年会費として東京の場合は5万円ほど必要となります。この額を払って中小診断協会に入会するメリットは何でしょうか。
中小企業診断協会に登録する最大のメリットは、資格の更新が楽になるということです。
中小企業診断士の資格を維持するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 実務従事(5年間で30ポイント以上)
- 理論更新研修(5年間で5回以上)
中小診断協会に所属すると、これらの条件を満たすのが格段に楽になります。これについては次の項目で具体的に説明していきます。
中小企業診断協会に登録するメリット
実務従事の機会をもらうことができる
実務従事とは、中小企業診断(コンサルティング業務)のことを指します。コンサルティング会社に勤務する中小企業診断士の方や、コンサルティングを実施している独立中小企業診断士の場合は、実務従事が仕事に直結しているため、更新登録においては何の問題もありません。
ですが企業内中小企業診断士の場合、実務従事を行う機会が無いため、自力で探したり知人に紹介してもらわなければなりません。中小企業診断協会に入会しておけば、活動の一環として実務従事の機会をもらうことができ、実務従事の条件を満たしやすくなります。
理論更新研修を割安で受講することができる
理論更新研修も中小企業診断協会が実施しており、入会していれば1回6,000円で受講することが可能です。非会員の方は会員に比べて2~3割ほど割高になります。
中小企業診断士同士のネットワークを作ることができる
中小企業診断協会は、各県数十名~数百名の中小企業診断士が加盟しています。各県協会には多くの研究会や同好会が存在しており、いずれも活発に活動をしています。
中小企業診断協会に入会し、このような活動に積極的に参加すれば、中小企業診断士どうしのネットワークを構築することができるでしょう。横同士の繋がりで仕事が回ってくることも多々あるので人脈を増やすことに損をすることはありません。
特に、将来独立を視野に入れている中小企業診断士の方は入会している場合が多いです。
実務補習が免除される場合
中小企業診断士の実務補習を免除して資格登録できる方法もあります。それは、中小企業診断士登録養成課程を受講することです。
養成課程では中小企業庁の示すガイドラインに基づいた「演習」と「実習」により構成されたカリキュラムを受講することで、2次試験及び実務補習が免除となります。
選ぶ学校にもよりますが、費用が200万円前後かかるのがネックです。しかし夜間に受講することができるので本業と両立できるほか、難関の2次試験を突破せずともほぼ確実に診断士になることができます。
中小企業診断士の養成課程についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
中小企業診断士の実務補習まとめ
中小企業診断士の実務補習まとめ
- 実務補習では5~6名のグループで診断報告書を作成する
- 3年以内に15日間受講できれば大丈夫
- 実務補習を通じて企業毎に合った改善提案ができる力を身に着けることができる
- 受講の費用は約15万円
- 養成課程を受けることで実務補習を免除することもできる
中小企業診断士の実務補習についていろんな面から解説してきました。イメージが漠然としていた方は大分クリアになったのではないでしょうか。
中小企業診断士の資格取得を目指して頑張ってください!