中小企業診断士の財務会計の勉強法は?分野別の攻略法から簿記との関連性まで全て解説!

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中小企業診断士

平井東

「中小企業診断士の財務会計って難しいの?」

「財務会計の傾向や効果的な勉強法が知りたい!」

中小企業診断士試験において財務会計は非常に重要な科目ですが、難しいと感じている受験生も少なくありません。

ここでは中小企業診断士の財務会計について、勉強法や解答のポイントを踏まえて詳しく解説します

この記事を読んで、財務会計の疑問を解消しましょう!

中小企業診断士の財務会計についてざっくり説明すると

  • 中小企業診断士の財務・会計は重要度の高い科目である
  • 財務・会計に合った勉強法を取り入れることが大切
  • 問題を解くときのポイントを押さえよう

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中小企業診断士試験の財務・会計の概要

豆電球の写真 中小企業診断士の財務・会計はかなり重要な科目です。

財務諸表等による経営分析は、企業の現状把握や問題点の抽出のためには欠かせない知識であるからです。

応用力が求められることから単なる暗記では対応が困難なため、基礎から理解することが必要です。

アカウンティングとファイナンス

財務会計は、アカウンティング(会計)とファイナンス(財務)の大きく2つに分かれます。

アカウンティングでは企業経営に必要な財務諸表の分析など、簿記や財務諸表の読み取りに関することを学習します。

ファイナンスでは企業の資金活用の方法など、資金調達や運用、投資に関することを学習します。

資金を活用するためには財務諸表からの情報が大事になるので、まずはアカウンティングの内容を理解してからファイナンスの勉強に取りかかると良いでしょう。

財務・会計のねらい

中小企業診断士が企業経営を支援するためには、企業の現状を把握して問題点を抽出することが必要です。

企業の状態を知るためには利益や現金などの数値的な情報、すなわち財務・会計に関する知識、財務諸表等による経営手法が必要になるのです。

今後中小企業は資本市場から資金を調達したり、企業が成長するための戦略として他社を買収する動きが増大することも考えられます。

そのため、割引キャッシュフローの手法を活用した投資評価、企業価値の算定等に関する知識も必要になります。

財務・会計で学べること

財務会計を勉強することで、B/SやP/Lといった財務諸表が読みやすくなり、経営分析をするときの役に立ちます。

経営層の立場からの意思決定の理由がわかるようになったり、営業マンであれば提案する内容がより深いものになり数値の管理もできるようになります。

コンサルティングの仕事をするときは決算書を見る機会が多く、正確な数字を読み取るためには財務知識が必要となります。経営と財務の知識を持ち合わせていると、社長から信頼されやすくなります。

出題範囲

財務・会計については下記の範囲から出題されます。

  • 簿記の基礎
  • 企業会計の基礎
  • 原価計算
  • 経営分析
  • 利益と資金の管理
  • キャッシュフロー(CF)
  • 資金調達と配当政策
  • 投資決定
  • 証券投資論
  • 企業価値
  • デリバティブとリスク管理
  • その他財務・会計に関する事項

試験時間、配点

試験時間と配点については下記の通りです

科目 時間 配点
経済学・経済政策 60分 100点
財務・会計 60分 100点
企業経営理論 90分 100点
運営管理 90分 100点
経営法務 60分 100点
経営情報システム 60分 100点
中小企業経営・政策 90分 100点

科目免除の条件

科目免除の条件として他資格等保有による免除と科目合格による免除があります。

科目免除の条件は下記の通りです。

  • 公認会計士、公認会計士試験合格者、会計士補、会計士補となる有資格者
  • 税理士、税理士試験合格者、税理士試験免除者
  • 弁護士または弁護士となる資格を有する者
  • 前年度の「財務・会計」の科目合格者
  • 前々年度の「財務・会計」の科目合格者

※科目合格となる基準については満点の60%を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率で判定します。

財務・会計の難易度

クエスチョンマークの写真 財務会計の難易度は隔年で難化・易化する傾向があるものの、難易度が大きく変化することはありません。

財務・会計の平均点

過去3年分の平均点の推移は以下のようになっています。

データは全て、資格の大原中小企業診断士講座「採点サービス集計結果」より抜粋しています。

R4年度

科目 平均点
経済学・経済政策 53.9点
財務・会計 59.4点
企業経営理論 59.2点
運営管理 58.5点
経営法務 63.1点
経営情報システム 55.1点
中小企業経営・政策 55.5点

R3年度

科目 平均点
経済学・経済政策 61.9点
財務・会計 62.9点
企業経営理論 65.0点
運営管理 61.0点
経営法務 58.3点
経営情報システム 52.0点
中小企業経営・政策 51.5点

R2年度

科目 平均点
経済学・経済政策 67.0点
財務・会計 61.6点
企業経営理論 62.7点
運営管理 59.4点
経営法務 58.5点
経営情報システム 66.1点
中小企業経営・政策 64.0点

上記を見てわかるように、財務会計の平均点の推移は61.6点→62.9点→59.4点というように推移しています。

財務・会計の平均点は、他の各科目と比較しても特別低いということはありません。

財務・会計の合格率

中小企業診断士1次試験の科目別合格率の推移は以下のようになっています。

データは全てTAC「中小企業診断士 1次試験科目ガイド」より抜粋しています。

R4年試験

科目名 科目合格率
経済学・経済政策 10.5%
財務・会計 13.3%
企業経営理論 17.3%
運営管理 16.1%
経営法務 26.9%
経営情報システム 18.5%
中小企業経営・政策 10.9%

R3年度

科目 合格率
経済学・経済政策 21.1%
財務・会計 22.4%
企業経営理論 34.7%
運営管理 18.5%
経営法務 12.8%
経営情報システム 10.6%
中小企業経営・政策 7.1%

R2年度

科目 合格率
経済学・経済政策 3.5%
財務・会計 10.8%
企業経営理論 19.4%
運営管理 9.4%
経営法務 12%
経営情報システム 28.7%
中小企業経営・政策 16.4%

平成30年度試験では合格率が一気に下がりましたが、中小企業診断士試験では科目合格率は毎年大きく変動します。

実際、令和元年度試験では合格率が20%近くまで回復しています。

他の各科目と比較しても財務・会計の科目合格率は特別低いといったような傾向はありません。

財務・会計が難しいと感じる理由

財務会計では計算問題が多く、本質の理解が必要であることから苦手意識を持ってしまう受験生が多いのです。普段から計算に慣れておかなければ、問題と向き合ってもなかなかペンが進まないでしょう。

一方で、一度理解してしまえば解ける問題が多く、基本的に暗記要素は少ないので理解を重視した勉強をするように心がければ大丈夫です。

財務・会計科目の近年の出題傾向

会計知識と非会計知識の分野は、近年各テーマに置いて満遍なく出題されています。

問題の内、前半部分は簿記のような会計知識が必要となる設問が多く、後半では投資に関する知識が必要となる問題が中心に出題される傾向です。

また、近年難問と呼ばれる出題は多くないです。電卓を利用できるという点を含めると、そこまで複雑すぎる計算が出題される問題は少ないと言えるでしょう。

財務・会計のおすすめ勉強法

ノートと鉛筆の写真

財務会計の勉強をどのように進めたら良いのでしょうか?

ここでは勉強時間やその方法、さらには簿記の勉強法も交えた財務会計のおすすめ勉強法を紹介します。

どれくらい重点を置くべきか

財務会計は2次試験にも必要な科目であり暗記科目でもないので、その場しのぎで覚えるというような短期集中型の勉強法ではうまくいきません。

試験では応用力も問われるので基礎から固めておくことが重要です。そのために財務会計にはかなり重点を置いて勉強して良いでしょう。

勉強する際もなるべく日数を空けずに財務会計に触れておくと良いでしょう。帰宅後など、集中できる時間に勉強することをお勧めします。

基本の理解を大切にする

財務会計の勉強では、基礎を積み上げて体系的に理解することが必要です。

簿記の基本が分からないまま勉強を進めてしまうと後でつまずきやすくなります。

少しでも分からないことがあれば、そのままにせずテキストに戻って基本を確認するような勉強法を意識しましょう。

また、財務会計は計算問題が多く、暗記をせずとも一度理解してしまえば解ける問題が多いです。

しかし簡単に理解できるような科目でもないので、理解することに重点を置いて勉強するべきだといえるでしょう。

簿記の勉強が必要?

合格には簿記2級程度の知識が必要になります。

簿記2級は高校生でも合格できるレベルなので、勉強さえすれば基本的に誰でも習得できるレベルのものです。

しかし、何も知らずに試験勉強を始めても効果が見込めません。

初学者は簿記の資格を勉強するか財務会計の科目別の通信講座や参考書を使って科目の勉強をするべきだといえます。

1分野ずつしっかり極めるスケジュールを

財務・会計はいわゆる「積み重ね型」の科目であり、1分野ずつ深く理解を重ねていくと言った勉強が重要となります。

そのため、一つの分野がしっかりと理解できるようになるまで無闇に先に進まないように、学習スケジュールを工夫することが求められます。

なお。財務・会計の分野を極めるためには問題演習が有効なので、日々の学習スケジュールに積極的に組み込みましょう。

問題演習を繰り返す

財務会計の対策においては日頃からたくさんの問題を解いておくといった勉強法がおすすめです。

財務会計では計算問題が多いので、勉強するときはテキストをただ眺めるのではなく実際に書いたり計算したり手を動かして解いてみると理解が深まります。

多くの問題を経験しておくことで、試験本番では問題を見るだけで解き方が思い浮かぶようになります。

財務会計の対策に必要な勉強時間は?

時間のイメージ画像

財務会計には、一般的に200時間程度の勉強が必要と言われています。

経営情報システムや経営法務などといった他の暗記科目と比較して、2倍ぐらいの勉強時間が必要と考えておくと良いでしょう。

これらの科目と比較して勉強時間が長い理由として、2次試験との関連性が高い点が挙げられます。

財務会計は範囲が広いだけでなく、本質的な理解が必要であり、2次試験にも大きく関係することからしっかりとした勉強時間を設けて取り組んだ方が全体的に見た合格率は高いと言えるのです。

財務会計の対策には、他と比べてかなり長い時間が必要であることを事前に把握しておきましょう。そうすれば焦ることなく、腰を据えて取り組むことができます。

合格に直結するような非常に重要な科目ですので、焦らず少しずつ完璧に近づけていきましょう。

分野別の具体的な対策法

財務のイメージ

ここでは、中小企業診断士の財務・会計で登場する主な内容について、概要と対策のポイントを確認しておきましょう。

B/SとP/L、C/Fなど財務諸表

B/SやP/L等の財務諸表は、簿記や会計士の資格でも学ぶ会計の基本事項です。

財務諸表はそれぞれ以下のような役割を果たします。

財務諸表 役割
貸借対照表(B/S) 企業がお金をどのように運用して利益を上げるつもりかが分かる
損益計算書(P/L) 企業の年間の売上と利益(または損失)が分かる
キャッシュフロー計算書(C/F) 企業の年間のお金の流れが分かる

財務諸表は一度読み方や書き方のルールを覚えてしまえば、特に難しいことはありません

それぞれの財務諸表のざっくりとした概要を学習の初期に掴んでおくと、非常に勉強が進めやすくなるので、簿記資格の入門書等を活用するのも良いでしょう。

経営分析

経営分析は財務会計の中でも特にしっかりと押さえておきたい内容です。経営分析とは大きく以下の3つに分類されます。

  • 収益性
  • 効率性
  • 安全性

収益性では「儲かっている企業」とはどんなものかを定量的に判断する力をつけます。具体的には「ROE(自己資本利益率)を高めるためには負債比率をどうすれば良いのか」といった内容を扱い、言葉だけでなく計算式と共に理解する必要があります。

効率性と安全性でも、同様に「棚卸試算回転率=売上高/棚卸資産」「流動比率=流動資産/流動負債」といった具合で、新しい言葉を新しい言葉で作られた計算式と共に理解する必要があります

この辺りは語句の意味や計算式が曖昧なまま先に進むと途中から何を言っているのかが一切わからなくなるので、時間をかけてでも1つ1つ丁寧に押さえていくようにしましょう。

財務会計を勉強する際のポイント・注意点

注意のイメージ

初心者はまず簿記の取得を目指そう

初心者がいきなり仕訳の仕組みや電卓の使い方をマスターしようとしても難しいでしょう。そのため、まず簿記3級の資格から取得を目指すことをおすすめします。

簿記3級は1週間程度で取得できる上に、会計知識の基礎をしっかり理解することができます。

また、初心者だけでなく、財務会計に苦手意識がある人も簿記の勉強を始めることをおすすめします。

手順を踏んで丁寧に基礎を学習しよう

上述のように、財務会計の攻略のためにはとにかく基礎を丁寧に習得することが大切です。

基本的にはテキストの順番通りに、丁寧に先に進むように学習をしていきましょう。特に学習初期では、やり直しになってしまうと時間のロスなのでとにかく基礎を磨き上げることが重要です。

どんなものでも、基礎基本がしっかりと定着できていないと積み上げることができないので、まずはしっかりとした土台を作るようにしましょう。

計算の練習もしっかりとしよう

テキストを丁寧に学習すると言っても、読んでインプットをするだけでは太刀打ちできないです。

しっかりと手を動かして計算する練習も行いましょう。このようにして実際に手を動かす練習もしないと、本番でなかなか力を発揮することができません。

自分の手で実際に問題を解きながら、できる限り多くの演習問題触れることが、本番の得点アップに直結します。

問題を解く時のテクニック

時計とペン立ての写真 試験本番に備えて、問題を解く時のポイントを知っておくことが大切です。

丁寧に回答する

財務会計は4点×25問=100点で、1問の配点が4点と大きいです。

ちょっとした計算ミスが命取りになってしまうので、一問一問を丁寧に解答するように心がけましょう

また、一度答えを出しても必ず検算する時間も儲けるようにしましょう。

難しい問題にこだわりすぎない

試験は60分と短く、決められた時間内に解答しなければならないのであまり考えている時間はありません。

難しい問題や時間がかかりそうな問題はいったん飛ばして後回しにする、数分しても判断がつかないときは次の問題へいくなど、時間を取られすぎないことが大事です。

財務・会計対策におすすめのテキスト

中小企業診断士 最速合格のためのスピードテキスト(2) 財務・会計 2023年度版
2860円
中小企業診断士 最速合格のためのスピードテキスト(2) 財務・会計 2023年度版
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中小企業診断士の財務・会計対策には、科目別テキストが出版されている「最短合格のためのスピードテキスト」がおすすめです。

上記のテキストと対応する問題集とセットで勉強することで、財務・会計で合格に十分な知識の獲得と演習量をこなすことができます。

また、大手予備校のTACが出版しているので、テキスト・問題集ともに質は間違いありません。

一方で既に独学で学習を積んできたのに、なお財務・会計に苦手意識のある方は、自己流の学習を止めてプロの講義を受講するのがおすすめです

特に財務会計は2次試験にも関わる大切な科目なので、自信を持って試験に臨めるようにしておくのは極めて重要となります。

仕事で忙しい方の場合は予備校に通うのが難しいかと思いますが、スタディングのオンライン講座であれば通勤時間などの隙間時間を使って学習できるのでおすすめです

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中小企業診断士の財務会計まとめ

中小企業診断士の財務会計まとめ

  • 中小企業診断士の2次試験でも財務会計の知識が重要
  • 時間をかけて基礎から理解できるような勉強法が大切
  • 難問や時間配分も意識して丁寧に解答することが大事

ここまで中小企業診断士の財務会計についてみてきました。

財務会計は中小企業診断士試験の科目の中でも特に重要度の高い科目です。

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