中小企業診断士の企業経営理論の勉強法は?対策ポイントや勉強時間を紹介!
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中小企業診断士
平井東
「中小企業診断士試験の企業経営理論の勉強法が知りたい!」
今まさに中小企業診断士の資格試験の取得を考えて勉強している人も多いかと思います。その中で、中小企業診断士の企業経営理論が苦手と感じている人もいるのではないでしょうか。
そこでここでは中小企業診断士の企業経営理論の科目範囲や勉強方法や対策ポイント、勉強時間を紹介していきます!
これを読めば企業経営理論の科目特性を掴み、効率的な勉強ができるはずです!
企業経営理論についてざっくり説明すると
- 実務の場面で大きく関わる経営における問題解決法について学べる科目
- 1次試験だけでなく2次試験でも出題される重要度の高い科目である
- 科目難易度は比較的高く、150時間前後の勉強時間が必要
- 1次試験対策の段階から2次試験を視野に入れた学習をすることが大切
中小企業診断士試験の企業経営理論の概要
まずここで中小企業診断士の企業経営理論の概要について紹介します。
企業経営理論の概要をしっかり把握して、試験対策に役立てましょう。
企業経営理論の科目の意義・目的
中小企業診断士の試験要綱では、企業経営絵理論の科目設置の目的は以下のように示されています。
企業経営において、資金面以外の経営に関する基本的な理論を習得することは、経営に関する現状分析及び 問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたり、必要不可欠な知識である。また、近年、技術 と経営の双方を理解し、高い技術力を経済的価値に転換する技術経営(MOT)の重要性が高まっており、こうした知識についても充分な理解が必要である。
企業では、急激な市場環境変化に対して、生き残りをかけて明確な企業戦略を立てなければなりません。
経営者のリーダーシップのもと、ヒト、モノ、カネの経営資源の選択と集中が実行されています。
企業経営理論は、こういった企業の将来を方向づけるための枠組みであり、企業経営を舵取りする為の必須のツールなのです。
配点
科目 | 時間 | 配点 |
---|---|---|
経営学・経営政策 | 60分 | 100点 |
財務・会計 | 60分 | 100点 |
企業経営理論 | 90分 | 100点 |
運営管理 | 90分 | 100点 |
経営法務 | 60分 | 100点 |
経営情報システム | 60分 | 100点 |
中小企業経営・政策 | 90分 | 100点 |
科目別の時間と配点は以上のようになります。配点等は毎年変わらず、2日間に分けて試験が行われます。
企業経営理論で学ぶこと
次に、企業経営理論の出題範囲や範囲の中の各項目について具体的に見ていきます。
出題範囲
企業経営理論の出題範囲を並べると次のようになります。
- 経営計画と経営管理
- 企業戦略
- 成長戦略
- 経営資源政略
- 競争戦略
- 技術経営(MOT)
- 国際経営(グローバル戦略)
- 企業の社会的責任(CSR)
- その他経営戦略論に関する事項
- 経営組織の形態と構造
- 経営組織の運営
- 人的組織管理
- その他の組織論に関する事項
- マーケティングの基礎概念
- マーケティング計画と市場調査
- 消費者行動
- 製品計画
- 製品開発
- 価格計画
- 流通チャンネルと物流
- プロモーション
- 応用マーケティング
- その他のマーケティングに関する事項
以上が試験範囲です。
このように見てみるとかなり試験範囲が広いと感じます。企業経営理論は2次試験にも関わってくる重要な科目なので、気負いせずにしっかりと学びきりたいところです。
大きく分けて、経営戦略論、組織論、マーケティング論の3つを学んでいきます。
経営戦略論
経営戦略論では、以下の内容が問われるようになります。
- 企業活動の全体像
- 企業の目標やビジョンの立て方
- 自社の弱み・強みや、自社を取り巻く環境の分析方法
- 分析した結果をもとに、自社の経営を向上させる経営戦略の策定
- 経営分析や経営戦略の策定の為のツール(フレイムワーク)
経営戦略論では、自社の取り巻く環境や資源を分析し、目標である経営戦略を立てる方法を学びます。
その上で、自社の製品の強み・弱みを知り、資源配分の為の枠組みであるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)を学びます。
また、業界の競争構造や地位別戦略、技術戦略や研究開発管理等を学んでいきます。
組織論
組織論では、以下の内容が問われてきます。
- 経営組織の形態と構造
- 経営組織の運営
- 人的資源管理
- その他組織論に関する項目
組織論では、経営戦略で定めた目標に対して、経営資源である人を束ねて能力を発揮できるようにすることを学ぶことになります。
リーダーシップ論、人員配置・管理、モチベーション管理や能力開発・教育訓練等を学んでいきます。
また、労働基準法などの関連法規もここで学んでいきます。
マーケティング論
マーケティング論では、以下の内容が問われるようになります。
- マーケティングの基礎概念
- 市場調査と消費者行動
- 製品価格計画・開発
- 流通チャンネルと物流
- 応用マーケティング
- その他のマーケティング論に関する項目
マーケティング論では、経営戦略で定めた目標に対して、消費者行動をよく把握して、製品を売る為の戦略を仕掛けていくことを学ぶのがマーケティング戦略です。
マーケティング戦略の目標を達成する為に、プロダクト・プライス・プロモーション・プレスの4つのPを操作していくことを中心に学びます。
この科目を学習することのメリット
企業経営理論は中小企業診断士の1次試験ではもちろん、2次試験の「事例問題」でも問われる重要度の高い科目となっています。
「事例問題」では、経営戦略、組織、マーケティング論をそれぞれ自分の知識として整理し、事例に合わせて応用することで解答を作成する必要があります。
また、企業経営理論を学ぶことは中小企業診断士の資格取得に繋がるだけでなく、資格取得後のコンサルティング業務をする時に大変役に立ちます。
将来の実務を意識して勉強することで、日々の吸収力も上がることでしょう。
企業経営理論の難易度
では企業経営理論の難易度はどのようになっているのでしょうか。
以下は直近7年間の企業経営理論の1次試験の合格率です。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2016年 | 12,659人 | 3,746人 | 29.6% |
2017年 | 12,108人 | 1,091人 | 9.0% |
2018年 | 13,037人 | 927人 | 7.1% |
2019年 | 15,026人 | 1,625人 | 10.8% |
2020年 | 11,462人 | 2,226人 | 19.4% |
2021年 | 15,117人 | 5,253人 | 34.7% |
2022年 | 14,472人 | 2,498人 | 17.3% |
科目合格率が年度によって大きく異なるのは、中小企業診断士試験ではよくあることですが、それでもここ3年間は波があり、10%後半~30%前半で推移しています。
企業経営理論の試験難易度は高いことが多いので、2次試験の勉強もかねて重点的に対策を行う必要があるでしょう。
企業経営理論の勉強法
ここでは、中小企業診断士の企業経営理論の勉強法について具体的に見ていきます。
勉強時間の目安
中小企業診断士の企業経営理論の勉強時間は、おおむね150時間だと言われています。ただ、この科目は2次試験との関連度が高い科目になってきますので、かなり重点的に勉強時間を確保する必要があります。
勉強時間は個人差が大きいものですが、中小企業診断士の企業経営理論は全体に占める時間の割合が大きくなることを覚えておきましょう。
理解と暗記のバランスが大切
中小企業診断士自体の勉強が、かなり覚えるべき重要事項が多いですが、暗記中心の勉強法をしていても2次試験ではなかなか通用しません。
なぜその事実があるのかという因果関係を明確に理解した上で覚えることで、自分の知識として応用することが出来るようになります。
多くの問題を解いて、「自分が経営者ならどうするか」との視点を持って勉強していってください。
問題演習中心の学習をする
勉強の基本中の基本ですが、物事の暗記や理解をするには問題演習量がものをいいます。
インプットにばかり勉強時間を割かないで、問題演習に勉強時間をかけて理解していく勉強法が有効です。
また、問題を解く際は頭の中で解答を完結させるのではなく、必ず紙に書いて思考を文字に起こしましょう。こうすることで、記憶の定着率が大きく変わってきます。
2次試験を視野に入れて学習する
中小企業診断士試験では、1次試験と2次試験の間の期間が非常に短いです。
1次試験が終わってから2次試験の勉強を始めていては、多くの場合十分な学習量をこなすことは出来ないでしょう。
中小企業診断士の企業経営理論の範囲は、1次試験の勉強の段階から2次試験での「事例問題」を視野に入れた勉強法をすることが大切になってきます。
今やっている勉強がどのように2次試験に関わってくるかを意識して参考書を読んでいく、問題を解いていくことが合格への近道となるでしょう。
過去問を重視する
どのような資格試験でもそうですが、中小企業診断士の勉強法も過去問を重視した取り組みが必要になってきます。
問題を解くことで、頻出項目を覚えることができますし、問題の解き方を知ることもできます。
中小企業診断士の1次試験は年々難易度が高くなっています。合格率が1桁の年の過去問が解けなくても焦る必要はありません。
何度も何度も過去問を解いていくことで、しっかり理解していきましょう。
仕事で知識を生かすのが勉強効率を上げるコツ?
企業経営理論の勉強を現実の仕事に当てはめて考えてみることで、さらに試験勉強を効率的に覚えていくことができるのではないでしょうか。
- 自社の製品の差別化のポイントは
- 会社組織の強みと弱みは
- 従業員のモチベーションをあげるには?
- マーケティングの4Pは?
資格試験合格後の実際の実務では、同じことを考えて問題解決していかなければなりません。
その意味で、仕事でも企業経営理論の勉強を活かしてみてはいかがでしょうか。
企業経営理論の分野別のポイント
それでは、ここでは企業経営理論で学ぶ内容のポイントについて、基本事項に絞って分野別に押さえていきましょう。
SWOT分析
SWOT分析とは企業分析の手段のひとつです。SWOT分析により企業の現状を把握することができるので、適切な企業戦略を策定するのに役立ちます。
SWOT分析では企業の内部環境と外部環境を、それぞれプラスの要素とマイナスの要素に分類します。つまり、以下のように4種類に分類されることになります。
プラス | マイナス | |
---|---|---|
内部 | S(Strength) | W(Weakness) |
外部 | O(Opportunity) | T(Threat) |
それぞれの要素はStrength、Weakness、Opportunity、Threatの4語で表現されるので、頭文字を取ってSWOT分析と呼ばれています。
SWOT分析は企業診断の実務においても最初に行う基本中の基本なので、呼吸をするように出来るようにしておきましょう。
戦略ドメイン
戦略ドメインとは、ある企業の事業領域のことです。戦略ドメインを適切に定義することで、経営戦略を適切に広げていくことが出来るようになります。
戦略ドメインは主に以下の3要素に分解することができます。
- 何を
- どのような顧客に
- どのような方法で
特に「何を」の部分は非常に重要となります。
例えば、マクドナルドを「ハンバーガー」を提供する会社と捉えたなら、今のように世界中に展開することはなかったかもしれません。
マクドナルドは自社の戦略ドメインを「ファストフード店を展開する仕組み」を提供する会社と定義したからこそ、その強みを最大限に発揮し、ファストフード店の王者となることができたのです。
アンゾフの成長ベクトル
アンゾフの成長ベクトルは、企業の戦略策定のためのフレームワークのひとつです。アンゾフの成長ベクトルを利用することで、ある会社がとるべき戦略の方向性をざっくりと定めることができます。
アンゾフの成長ベクトルでは、ある企業の状況を「製品(サービス)」と「市場(顧客)」の二軸に分類し、以下のように戦略を分類します。
既存製品 | 新規製品 | |
---|---|---|
既存市場 | 市場浸透戦略 | 新製品開発戦略 |
新規市場 | 新市場開拓戦略 | 多角化戦略 |
なお、見ての通りアンゾフの成長ベクトルはかなり大まかにしか戦略を定めません。あくまでも具体的な戦略を立てる準備のためのフレームワークだと言えるでしょう。
ファイブフォース
ファイブフォースは特定の業界の競合構造を把握する際に役立つフレームワークです。
ファイブフォースでは競合を以下の5つに分類します。
- 既存業者間の敵対関係
- 新規参入の驚異
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
ファイブフォース分析などのフレームワークは、実在する企業や2次試験の過去問等で実際に使ってみることで、内容が腹落ちすることが多いです。
バリューチェーン
バリューチェーンは企業の活動を「利益に直結する活動=主活動」と「利益には直結しないが必要不可欠な活動=支援活動」の2つに分類し、それぞれをさらに細かい活動へと分類したものです。
それぞれの流れが一連の流れとなるよう分類するため、価値連鎖(バリューチェーン)と呼ばれます。
バリューチェーンでは基本的に以下のように企業活動が分類されます。
分類 | |
---|---|
支援活動 | 全般管理 人事・労務管理 技術開発 調達活動 |
主活動 | 購買物流 製造 出荷物流 販売・マーケティング サービス |
バリューチェーンを用いることで、利益を生み出すそれぞれの要素に対して着目することができるので、戦略の粒度を細かくすることが可能となります。
より詳細な戦略策定の手段・手法
上記で紹介した内容は戦略策定の基本事項とも言える内容であり、企業戦略には他にも様々な打ち手(OEMやM&A、フランチャイズなど)や戦略策定の手法(7S、ブルーオーシャン戦略など)が存在します。
これらを一つひとつ自分の力だけで理解していくのには時間がかかる上に、適切な具体例を探すのも一苦労なので、暗記はしていても具体的に活用することができないといった事態に陥りやすくなります。
そのため、企業経営理論を真の意味で理解し、中小企業診断士として実務でも活躍することを目指すのであれば、独学は避けて予備校や通信講座で具体的な事例も交えて深く学ぶことをおすすめします。
予備校や通信講座で実践的な内容と共に戦略を学ぶことで、単に試験突破に向けて効率よく学べるだけでなく、学んだ知識を実際のビジネスシーンで活用する力も身に付けることが出来るでしょう。
企業経営理論の注意点
ここでは中小企業診断士の企業経営理論の勉強をしていく際の注意点を紹介します。
高得点は狙いにくい
中小企業診断士の企業経営理論は、正誤判定が難しい科目です。
つまり、問題の回答が他の科目の回答ほど明瞭ではないので高得点を狙いにくい科目になります。
企業経営理論の勉強時間を確保して、繰り返し過去問を解くことで正解の解答とはどのようなものなのかを身体に刷り込ませることが大切です。
労働法規は重箱の隅をつついてくる
労働関連法規は、重箱の隅をつつくような問題が多くあります。
社会保険労務士の試験なのかと思うくらいの問題が出てくることもあるほどです。
しかし、そもそも国家試験は100点を取る為の試験ではありません。
自分がどこで点数を稼ぐのかをしっかり決めて、限られた勉強時間を有効活用するのが大切です。
労働関係法規の奇問は解けなくても仕方がないと割り切る気概も必要だと言えるでしょう。
科目合格の利用はよく考えてから
1次試験には落ちてしまったものの、企業経営理論に科目合格した際には、次回試験時に科目免除を活用するかどうかよく検討する必要があるでしょう。
というのも、企業経営理論は2次試験対策にも直結する科目ということで、学習に充てる時間が多くなりやすく、結果として1次試験で高得点を狙いやすい科目だからです。
科目免除をせずに試験に臨んだ方が総得点を底上げできる可能性もあるので、他の科目の得点力を考慮しつつ免除を活用するかしないかの判断をした方が良いでしょう。
企業経営理論対策におすすめのテキスト・問題集
中小企業診断士の企業経営理論対策には、科目別テキストである「最短合格のためのスピードテキスト」がおすすめです。
上記のテキストと対応する問題集とセットで勉強することで、企業経営理論の合格に十分な演習量をこなすことができる上に、解答の正誤判定のセンスを身に付けることが出来ます。
大手予備校のTACが出版しているということで、テキスト・問題集ともにクオリティに心配はいりません。
ただし、これまで自分で勉強してきたがなかなか点数が安定しないという方は、追加でテキストを購入して独学するよりも、予備校や通信講座を受講するなど新しい学習法に切り替えた方が良いでしょう。
予備校に通う時間がないという方でも、スタディングなどのオンライン講座であれば電車内や朝のちょっとした時間にでもスマホで講義を受けることが出来るのでおすすめです。
スタディングは企業経営理論対策の単科講座も実施していますし、価格も14,300円と非常にコスパが良いので、伸び悩んでいる方はぜひ受講してみると良いでしょう。
中小企業診断士の企業経営理論まとめ
企業経営理論まとめ
- 企業経営理論では経営戦略論・組織論・マーケティング論を学ぶ
- 科目難易度は比較的高く、勉強時間は150時間前後必要
- 2次試験を見据えた勉強法を取る
- 勉強の際は暗記と理解のバランスが大切である
中小企業診断士の企業経営理論について説明してきました。
企業経営理論は実務の場でも大いに役立つ、勉強していて楽しい科目の1つでもあります。
ぜひしっかりと知識を自分のものにして、経営コンサルタントとしての第一歩を踏み出してください!