行政書士試験が簡単って本当?難易度や独学のための勉強法も解説
この記事は専門家に監修されています
行政書士
宮城彩奈
「行政書士なんて簡単だって話を耳にしたけど、本当なのかな・・・」
「行政書士試験の難易度が知りたい!」
行政書士試験を受けようと考えている方であれば、試験の難易度は非常にきになるポイントだと思います。
行政書士は簡単に合格できるというイメージを持たれていることがありますが、そのイメージを持ったまま試験に臨むのは危険かもしれません。
ここでは行政書士試験の難しさの実態を分かりやすくお伝えします!
行政書士試験の本当の難易度を知り、受験に向かって前向きに進んでいきましょう!
行政書士の難易度についてざっくり説明すると
- 行政書士試験は決して簡単な試験ではない
- 合格までに必要な勉強時間はおよそ600時間で、合格率は12%ほど
- 難易度は高いが、独学での合格も目指すことはできる
このページにはプロモーションが含まれています
「行政書士試験は簡単」といわれる理由
行政書士試験は「誰でも取れる」「簡単な試験」と言われることがあり、世間的な評価があまり高くないこともあります。
このようなイメージになってしまったのには理由があることをご存知でしょうか。いったいなぜなのか、その背景を解説します。
他の士業に比べて勉強時間が少ない
行政書士は「士業」に含まれますが、他の士業に比べると試験勉強にかける時間が少なく、合格率も高い傾向にあります。
資格 | 合格に必要な勉強時間 | 合格率 |
---|---|---|
公認会計士 | 3000時間以上 | 10.7% |
税理士 | 3000時間以上 | 2.1% |
司法書士 | 3000時間 | 3~5% |
不動産鑑定士 | 2000時間 | 11.5% |
中小企業診断士 | 1000時間 | 約4% |
社会保険労務士 | 1000時間 | 約6% |
行政書士 | 600時間 | 10%前後 |
このように、主な士業の中では比較的勉強時間が少ないにも関わらず合格率も高いため、簡単に受かる試験だというイメージがついてしまっています。
昔の試験は簡単だった
昔の試験が実際に簡単だったことも、現在も行政書士試験が簡単だと思われている理由の一つです。
もともと行政書士試験は、選択問題や穴埋め問題ばかりだったため、中には「鉛筆を転がしていれば受かる」といったように、運任せで適当に受験しても誰でも合格する意味のない試験とさえ言われていました。
また、地方公務員や国家公務員を17年以上勤めていれば自動的に行政書士の資格が与えられ、行政書士として登録できるという制度があります。
このようなことから、行政書士は次第に「簡単だ」「誰でもなることができる」というイメージを植え付けられてしまったのです。
行政書士の仕事自体が馬鹿にされる
以前の行政書士は「代書屋」という俗称で知られており、特に免許センターの近くに事務所が多くありました。
高度経済成長期になると中学卒業後に働きに出る人が多かったため、免許更新などの書類の記入や役所の手続きをすることが難しい人も多かったのです。
そのため、代書屋は彼らに変わって免許更新のような書類作成を代行していました。
しかし、その後高校・大学への進学率が上がるにつれ「誰でもできる書類作成でお金を取るとは」「教育を受けられない人を食いものにしている」といった批判が増えていき、行政書士の仕事は社会的に厳しい眼差しを受けるようになりました。
また、行政書士の客層はブルーカラーの人が多かったため報酬も低めになり、収入があまり高くはありませんでした。
そのため、昔は仕事としてあまり人気がなかったのでレベルの高い受験者が少なく、試験のレベルが低かったという過去があります。
それでも行政書士は簡単には受からない
以上のような理由で行政書士は誰でも受かる」というイメージができてしまいましたが、実際には行政書士試験の難易度が低いということは全くありません。
試験自体が難化した
総務省により行政書士試験が改革されてきたことで、試験が難しくなってきています。
それまでの試験は選択式、穴埋め問題、時事問題について記述するというものでしたが、2000年には法令についての記述問題が採用されました。
また、2006年には「理解力、思考力等の法律的素養」という観点が重要視され、多肢選択肢の導入、記述問題の字数が40字になるなどさらに難易度が上がっています。
司法書士の受験者が増えた
先ほど表で示したとおり、行政書士は他の士業に比べて勉強時間が少なく、合格率も高い傾向にあります。
その中でも特に司法書士は合格率が3.6%という難関資格であり、以前は司法書士試験の合格者が行政書士試験を受けるなどありえないという風潮がありました。
しかし、行政書士が主役の漫画「カバチタレ」がヒットしドラマ化もされたことで行政書士が注目されるようになり、司法書士合格者たちも行政書士試験を受けるようになったのです。
また新司法試験の「三振制度」も影響しています。
これは法科大学院を修了後、5年間で司法試験を3回受験することができますが、3回目でも落ちてしまったらその後は司法試験を受けることができなくなるというものです。
このことにより、資格予備校では保険として行政書士を受験するようにとの対策を打ち出したため、法律関係の仕事を希望する人々の受験者数が増加し、受験者全体のレベルが上がっていきました。
試験範囲が増えた
昔と比べると、最近は行政不服審査法などの行政法が相次いで立法され、行政制度が整いつつあります。
それに伴い、行政書士も行政法に関する知識が必要だということで行政書士試験が改正され、試験科目の変更や出題範囲の拡大などがありました。
そのため、以前よりも勉強時間を増やさなければ受からないのが現状です。
行政書士試験の難易度と合格率の実態
実際の試験では、どのくらいの点数を取れば合格できるのでしょうか。また、合格率の実態についても詳しくみていきましょう。
6割で合格
合格ラインは試験の難易度や受験者数に関係なく、法令等科目が5割、般知識等科目が4割、そして全体の点数は6割(180点)と毎年固定されています。
問題が難しすぎたと判断された場合には補正的措置といって合格ラインが下げられる場合もありますが、2015年に1度行われたのみであるため、基本的には6割正解することを目指すのがよいでしょう。
合格率は低い
一般財団法人行政書士試験研究センター発表の合格者の割合をグラフにすると以下のとおりになります。
出典:行政書士試験研究センター
合格人数は毎年ほぼ一定数であるので、近年は受験者数が減っていることもあり合格率は全体の傾向として上昇傾向にあります。
しかしそれでも受験者のレベルが上がってきていることや、毎年9割の受験生が落ちてしまうことを考えれば、難易度の高い試験だと言えるでしょう。
何年もチャレンジしている人も
行政書士試験は簡単だと言われがちですが、実際には難易度の高い試験です。
受験者の中には合格するために2~3年ほど勉強する人や、3回以上と受験している人もいるほどです。
よって、複数年かけて受験するほど難しい試験であり、試験を甘く見ることはできません。
こうした現状を鑑みれば、決して簡単に受かる試験ではないと言えるでしょう。
行政書士は独学での合格は可能?
実際には難しい試験であるため、独学で合格できるかどうかが気になるところです。
そこで、実際に独学できるものなのかについてご説明します。
独学で合格する人も一定数
実際の難易度は高い行政書士試験ですが、資格予備校などに通わずに独学で合格する人もいます。
その理由としては、行政書士の勉強時間が600時間ほどであり、このくらいの勉強時間であれば、独学で出来ないほどではないことが挙げられます。
また、法学部出身者などもともと法律の知識を持っている方も独学合格しやすくなっています。
中には仕事や育児と勉強を両立させ合格できたという人もいますので、独学が不可能というわけではないのです。
正しい勉強法が重要
独学で合格するためには正しい勉強法で勉強することが重要です。
例えば、勉強を始めるにあたってはまず民放や行政法からがよいとされています。
また、記述式問題の対策は最初に手を付けるのではなく、まず選択問題の対策が終わってからの方が効率的です。
そして、テキストは何冊も一気に読むのではなく、基礎的な内容のテキストを何周もして知識をしっかり落とし込むことも大切です。
以下の記事ではでは勉強法の基本的な注意点などを紹介していますので、ぜひご確認ください。
結局は合格してからが勝負
行政書士は試験が簡単だと言われてしまうこともありますが、試験だけを考えるのではなく、合格してからが勝負であるのが実際のところです。
独立開業することができる行政書士は、やり方によっては年収1,000万円以上になるのも夢ではありません。
どれくらいお金を稼げるかが勝負
行政書士試験は受かったら自動的に仕事の依頼がくるというものではありません。
何も対策をせずにいると、収入が全く得られないというケースもあります。
そのようなことにならないために、日頃から努力することが大切です。
例えば、各都道府県、市区町村には行政書士会の支部があり、定期的に懇親会を開いています。
この懇親会に積極的に参加し人脈を作っていくことは必須です。また、セミナーに参加してスキルアップしていくことも欠かせません。
チャンスを待っているだけでなく、自ら動いて自己研鑽に励むことができる人のみが稼いでいくことができる厳しい仕事だと言えるでしょう。
実務経験なく廃業してしまう方も
合格後に営業や交流が上手くできなかったため、せっかく合格したにもかかわらず実務経験を積むことができず、独立してもやむなく廃業してしまうという方も中にはいます。
そうならないためには、独立後も気を抜かずに実務の勉強や他の行政書士との交流を欠かさないことが大切となってくるでしょう。
行政書士は将来性の高い士業
もちろん士業といえど競争のある厳しい世界であることは確かですが、行政書士は将来性がある職業だと言えます。それは何故なのかでしょうか。
仕事の幅が増えている
2014年に行政書士法が改正され、特定行政書士という資格ができました。これは行政に不服がある場合の申立てを代理ですることができるというものになります。
不服申立ては弁護士しかできませんでしたが、特定行政書士になればすることができるようになったということで、仕事の幅が増えたと言えるでしょう。
研修を受けたあとに試験に合格すると特定行政書士になることができますので、興味のある方はぜひ目指してみてください。
新たな申請が増えつつある
これまでの業務に加え、最近では新たな申請業務やこれまでより案件が多く見込まれる申請業務が増えつつあるのもビジネスチャンスだと言えます。
例えば、民泊の営業許可申請、ドローンの飛行許可申請、外国人のビザ申請などのチャンスが挙げられます。
特に注目なのは外国人のビザ申請です。近年外国人の方が日本に移住する数が増えつつあり、特に2019年4月から入管法が改正されたことによって、外国人労働者の数はこれまでよりも多くなります。
そこで、就労ビザ申請の業務が増えてくるため、外国語を話せる方は特に仕事の幅を広げるチャンスなのです。
よって、行政書士が英語を話せることによるメリットは今後どんどん増えてくるといえるでしょう。
行政書士試験難易度まとめ
行政書士試験難易度まとめ
- 昔の行政書士試験は簡単だった
- 現在ではさまざまな理由で試験のレベルが上がっている
- 独学で合格を狙う場合は勉強法を工夫する必要がある
行政書士の難易度について解説しました!
実際に行政書士を目指して何年も不合格になってしまう方も少なくありません。資格取得を目指される際は気を引き締めて万全の準備のもと試験に臨まなければならないでしょう。
ただし、難易度の高い資格だからこそ、資格取得後の未来は明るいと言えるでしょう。
試験を受けようか迷っている方も、今日から勉強を始めてぜひ夢を叶えましょう!