行政書士の民法が得意になる勉強法のコツ|科目の特徴や解答のポイントまで解説!
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行政書士
宮城彩奈
「行政書士を目指して勉強しているけど、民法が難しすぎる・・・」
「民法って結局どうやって勉強すればいいの?」
そんな悩みをお持ちの方も多いかと思います。
数ある行政書士の試験科目の中でも民法は特に難易度の高い科目です。
一方で民法の配点は76点と行政書士試験の中でも非常に大きな割合を占めており、民法の攻略なくして行政書士試験の合格はありえません。
そこでここでは行政書士の民法の勉強法について要点を押さえつつ具体的に解説します!
これを読めば民法対策の基本はバッチリです!
行政書士試験の民法の対策方法をざっくり説明すると
- 民法は難易度が高いが、同時に配点が大きく重要な科目でもある
- 民法の勉強の基本は条文理解である
- 民法は暗記科目ではない
- 記述式問題では、解答を作る前にまずは要点を図などで整理する
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行政書士試験の民法で勉強する内容
民法は私たちの私生活に非常に深く関わる重要な法律であり、人の権利や義務を規定している法律だといえます。
行政書士試験では民法は全部で11問出題され、行政書士試験の問題の中では行政法の次に出題数の多い科目となっています。
民法の出題のほとんどは「民法の規定および条文に照らし〜」という問いになっているのが特徴です。
そのため民法の勉強ではまず条文を理解することが基本中の基本となります。また出題パターンが決まっているので、様々な問題が出題されるものの解答の基本や勉強法は一貫しています。
参考書は条文の解説である
民法の場合、参考書はあくまでも条文の解説本と思って読み進めて下さい。
何故なら民法の学習においてはそれぞれの条文がどんな意味をしているのか、どんな権利や義務を規定・保護しているのかを理解することが重要だからです。
参考書は条文の示す意味を理解するために存在するので、参考書に書かれていることを丸暗記してもあまり意味はありません。
後ほど詳しく解説しますが、そもそもの前提として民法は暗記科目ではないということは常に念頭においておきましょう。
条文の趣旨を理解する
民法の問題を解く際には、その条文が何故必要なのかを理解することが必要になってきます。
条文を丸暗記したとしても、条文の存在意義が理解できていなければ多くの問題で対処するのが難しくなってしまいます。
何故なら丸暗記で事例をいくつか覚えてしまったとしても、少し表現を変えりシチュエーションが異なる問題が出たら対応できないといったことになってしまうからです。
やはり、何故この条文が必要なのかという、その条文が作られるに至った「背景」を理解しておくことが大切です。
行政書士の民法の出題範囲と配点
民法の出題範囲
民法の条文数は1000を超えており、非常にボリュームのある法律となっていますが、行政書士試験において出題される内容は主に以下の5つに分類することができます。
- 総則
- 物権
- 債権総論
- 債権各論
- 親族相続
基本的にはこれらの出題数はほぼ一定であり、この中でどれが頻出ということはあまりありませんが、親族相続だけは毎年出題数が少ない傾向にあります。
行政書士試験の民法の勉強をする際は、これらの勉強の順番を自分でアレコレ工夫する必要はありません。テキストや問題集で指定された通りに進めれば大丈夫です。
民法の配点
行政書士試験は法令科目で244点、一般知識で56点の合計300点満点の試験となっています。
法令科目は憲法や行政法などの5科目から構成されており、民法はそのうちの1科目になります。
民法の出題形式と配点は次のようになっています。
民法の出題形式 | 問題数 | 配点 |
---|---|---|
5肢択一式 | 9問 | 36点 |
記述式 | 2問 | 40点 |
合計 | 11問 | 76点 |
このように民法の配点は76点と、法令科目の244点のうち3分の1近くを占めています。
また記述式問題も出題されるのが特徴であり、記述式は1問あたりの配点が20点と非常に大きいのでしっかりと対策をする必要があります。
民法の勉強のポイント
勉強を進めていくと、民法で取り扱う内容は身近なケースも多いので馴染みやすいと感じてくるかもしれません。
勉強法のポイントは登場人物の整理です。誰が誰に対して権利行使をするのか、またそれぞれの人物はどんな関係なのかが重要になります。
その点を間違えなければ、問題がどんな解答を求めているかが見えてくるはずです。
小手先のテクニックですが、登場人物を身近な人に置き換えて考えてみると、考えが整理しやすいかもしれません。
民法は長文の問題も多いですから、読解力や国語力が大事になります。
長文読解に苦手意識がある人は登場人物間の関係図を描くことをおすすめします。特に登場人物が3人以上になった際にはかなり有効な手法なので覚えておきましょう。
以下ではこうした勉強法のポイントについて、より具体的に見ていきましょう。
法律用語の意味を正確に覚える
行政書士試験の民法では、用語の意味を問う問題は出題されません。
とは言え、用語が分からなければ解答することもできません。
そこで、民法の難しい専門書を買って、一から覚えようという人もいるでしょう。
しかし、これは勉強法としてはおすすめできません。そこまでしては時間の無駄だからです。
基本的な用語はテキストか、過去問題集に書かれていますので、そちらを参考にした方が効率的です。
それに、今ではインターネットで情報も簡単に手に入りますので、大学の法学部で使うような難しい専門書は必要ないでしょう。
要件と効果を押さえる
過去問題集を進めていくと、例外的な問題も出てきます。
相対効が原則の場面なのか、例外の場面なのかを判断しなくては解けないような難しい問題です。
要件と効果は、原則条文にありますが、形式的にそれを当てはめればいいという訳ではありません。
その条文の文言に隠された意味を、理解しなけてはいけないのです。
このように、条文の文言の隠された意味を確定していくことを、「解釈」と言ったりします。
要件と効果は重要なポイントですので、理解を深めるためにも、普段から重点的に覚える癖をつけて下さい。
第三者を押さえる
民法においては「第三者」という考え方が177条で登場します。
民法177条で規定している第三者とは、「不動産物件変動」において誰が当事者で、誰が当事者でないのかを規定する考え方です。
「不動産物件変動」とは、物件を取得したり、喪失したり、変更したりする場合に、民法177条が適用させることです。
ここで言う「第三者」ですが、これは文字通り当事者以外の人のことです。
全く関係ない人、例えば通りすがりの人が、土地の登記に巻き込まれることはありません。
このように民法でいう「第三者」とは、一般的に使われるように全ての人を対象にするのではないので注意しましょう。
判例・通説では、「第三者」とは、当事者又は一般承継人以外の者ということで、登記の不存在を主張する正当な利益を有する者と定義されています。
第三者という言葉の意味を一般的な意味で捉えると、不動産物件変動に関わる問題で混乱することになります。
まずは過去問集などを使って、第三者との関係性を掴む癖をつけましょう。
民法大改正の内容もしっかりと押さえる
民法を勉強するうえで、2020年に施行された民法大改正は外せないトピックの一つとなります。
200余りの項目が改定されており、その改正の影響は行政書士試験にも及んでいます。
例えば、行政書士試験で肝となる財産法では多数の変化が起こっており、これらは2020年度の試験で狙われる可能性が十分にあります。
他にも、
- 債権法
- 相続法
- 成年年齢の改正
など、多数の分野で改正がなされているため、勉強の際には最新の参考書を使って、重要項目を理解することが必須となります。
狙われやすい部分であるため、この部分も忘れずに対策するようにしましょう。
行政書士の民法の効率的な勉強法
初めて法律の勉強をされる方にとっては、民法の条文に書かれている意味がなかなか理解できずに、一つの問題に長い時間をかけてしまうこともあるかと思います。
そんな時は、その部分は飛ばして次の問題に移りましょう。一つの事にこだわりすぎず、一旦そこから離れてみることも大切です。
最初はあまり理解できなくても、今まで学習してきたことを思い出したり、別の形で同じ論点に繰り返し触れることで理解出来るようになっていきます。
以下では民法の効率な勉強法について、より踏み込んで見ていきましょう。
暗記では太刀打ちできない
民法の問題の多くは、規定や判例に照らして正しいか誤っているかを選ばせる形式です。
しかし1,000項目以上と言われる民法の条文を試験までの1年弱で覚えることは不可能に近いです。
また、仮に覚えることが出来たとしても、その条文の背景や目的を理解していなければ実際の問題には太刀打ちできません。
まずは民法は暗記科目ではなく理解重視の科目であるというところを認識するところから民法の学習はスタートします。
以下では民法の条文を正しく理解するために、要点の押さえ方や意識してチェックするべきポイントを見ていきましょう。
原因と結果を押さえる
民法の条文を読む際の基本は原因と結果を正しく押さえることです。
このうち結果の部分である「〜である」という部分は多くの人が無意識に覚えているのですが、なぜそのようになったのかの原因もセットで覚えることが大切です。
前提条件である「なになにが・・・なので」という一文を見落とさないように注意しましょう。
- 誰が
- 誰に
- いつ
- なにを
- どのように
といった論理的な考え方が大切です。
条文の中にある因果関係を正しく捉えることで、単なる暗記から条文の理解へと知識の定着度合いをアップグレードすることができます。
テキスト選びには要注意
基本的にはどんなテキストも過去問題集も、試験に必要なことは全て網羅されているはずです。
一方でその内容をどのように解説しているのかはテキストによっても異なります。
条文の因果関係を理解して学習を進めていくためにも、条文の結論しか書かれていないテキストは避けた方がいいでしょう。
今まで説明してきたように、「何故」「どうして」が書かれていないと、結果的に遠回りで非効率な勉強をする羽目になってしまいます。
また、フルカラーで作成されたテキストもおすすめです。論理関係や人物関係を色分けして整理してくれているので、理解しやすく、印象に残って覚えやすいからです。
過去問演習は10年分を目安に行う
民法は非常に範囲が広いので、まずは過去問を解きながら問題文の登場人物や、原因などを整理する訓練をしましょう。
それには、おおよそ10年分くらいの過去問の演習が目安になります。
問題文は3~4行の長文が多いので、しっかり読み解く国語力を身に付けましょう。
どうしても苦手意識がある人は、登場人物を整理することから始めて下さい。
10年分の過去問演習をすれば、大概の問題文のパターンが分かってくるはずです。
問題演習を通じて、そうだったのか、という「気づき」が出てくるはずです。
行政書士民法の解答作成のコツ
問題文の要点を捉える
民法の問題文は総じて長いので、メリハリをつけずに読むと要点をつかむことができず、結局何度も読み直すことになってしまいます。
短い時間で解答作成に取り組み始めるためには、まずは最初の1読で要点となる部分を抽出することが大切です。
問題文を読みながら解答に関係する部分には下線を引いたり書き込みをするのも効果的です。こうすることで次に読むときは下線の部分だけを意識して読むことができるので、要点を整理することができるからです。
記述式問題の対策法は?
記述式の問題は、全部で3問でそのうちの2問が民法です。
民法の記述式は、解答を40文字前後にまとめる問題ですので、知識を全部書きこまないように注意しましょう。
まず登場人物をAやBなどに分け、問われていることに対して、最低限で答えることが大切です。
更に、例外の場合も加えるとしたら、文字数を考えて書き足すか、問われていることに十分解答できているかを考えて下さい。
また知識に自信のある人は、書き過ぎに注意して下さい。40字前後に納める必要がありますから、問われていることだけを簡潔にまとめましょう。
自信がない人も、「何が」「いつ」「どうした」といった基本的なことでいいので、問題文に書かれていることを整理して下さい。
その間を穴埋めしていけば、正解の解答に近づいていくはずです
事例の関係図を作成する
民法の問題文は長文なため、頭の中で考えていても整理できない時があります。
そんな時は、構図を書くことで、問題文を素早く把握することができます。
解答を書き始める前に、まず登場人物や争点を図にしてみましょう。
ぼんやりしていたモノが、書いているうちにハッキリとしてくるはずです。
図を描き出す前にすることは、登場人物や争点、原因と結果などを、予め書き出しておくことです。
そうすることで、よりハッキリと問題文の中身が整理できてきますし、図への描き込みもれも防ぐことができます。
必要な情報だけを解答に入れる
上述したように、民法の記述式問題は、考えながら、書きながらではなく、登場人物を書き出したり、図に描きだしたりしましょう。
そうやって考えを整理してから解答をまとめていくことが、記述式問題のコツです。
考えが整理されていないまま解答作成を開始すると40文字前後を超過してしまい、ダラダラとした文章になってしまいます。
キーワードを書き出したモノを図にして、整理してから書くようにすれば、スッキリとまとまって書けるでしょう。
行政書士の記述式の詳細は以下の記事を詳しくチェックしてください。
行政書士試験の民法攻略法まとめ
行政書士試験の民法まとめ
- 民法の配点は法令科目の配点全体の3分の1近くを占める
- 民法を学ぶ際にはまず法律用語を覚えることが大切である
- 原因と結果を意識して読み込むことで暗記ではなく条文を理解できる
- 解答作成の際はキーワードの抽出、関係図の作成が有効である
行政書士試験の民法の勉強方法について解説しました!
行政書士試験の中でも難関と言われる民法の分野ですが、まずは法律用語に慣れることから始めましょう。
正しい勉強法で民法を攻略すれば、行政書士試験の合格に一気に近づくことは間違いなしです!