行政書士のビザ業務とは?在留資格や申請取次について解説!
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行政書士
宮城彩奈
「外国人受け入れ拡大需要を狙い、ビザ関連の業務を専門にしてみたい」
「ビザ関連の業務にフルで対応するために準備しておきたい」
行政書士の方にとって、数ある業務の中でも特化した部分を持っておくことは、差別化を図ることができ、同業者と差をつけることができるため、とても重要なことです。
我が国は2018年より外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切ったため、多くの行政書士はビザ関連の業務の需要が高まるのではと注目しています。
この記事では、行政書士が実施することができるビザ業務について、ビザ業務に特化した申請取次者との違いについて解説していきます。
外国人労働者のビザ業務についてざっくり説明すると
- 外国人のビザ申請については、行政書士が代理業務を行っている
- 就労、結婚、留学など目的に合ったビザ申請が必要
- 外国人労働者受け入れ拡大により、外国人移住者が増えている
行政書士のビザ業務
外国人の在留資格も行政書士の業務
行政書士の仕事は、主に官公庁へ提出する書類を依頼者の代理で作成したり、依頼者の代わりに役所へ書類提出することが主な仕事です。そういった仕事柄、行政書士は別名「代書屋」という呼ばれ方もします。
そんな行政書士ですが、外国人のビザ申請に関する業務も行っています。 ここではビザ業務に関する内容について詳しく解説していきます。
そもそもビザとは何か?
ビザとは渡航先の大使館や領事館から発行される入国許可証のことを指します。ビザは、観光・商用・就労・留学など目的によって適切な申請を行う必要があります。もし外国人が業務に対応するビザを所有しないままに働いてしまった場合、不法就労に該当します。外国人労働者だけでなく、雇用した事業者も処罰の対象となります。
不慣れな異国で知らなかったでは済まされないため、外国人が日本へ仕事を求める場合、ビザ業務については行政書士へ委任する場合が多いです。
ビザとパスポートとの違いは?
パスポートとは、住んでいる国が国籍や身分を証明するために発行してくれるものです。ビザは渡航先が入国してもいいよと発行してくれる証書なので、発行元も違えば発行する目的も違います。
行政書士ができる仕事は?
行政書士がビザ関連でできる仕事は多岐に渡ります。
「短期滞在ビザ申請」「短期滞在ビザの延長」「経営管理ビザ」「技能ビザ」「日本人の配偶者等ビザ」「定住者ビザ」「就労資格証明書交付申請」「在留資格取得申請」「資格外活動許可申請」「帰化申請」「在留特別許可」「上陸特別許可申請」「国際結婚」など、就労や結婚、留学に至るまで、目的に応じてビザ申請を行う必要があります。
外国人が日本に滞在したり国籍を取得したりする上で必要になる申請のほとんどは、行政書士で取り扱うことができます。
需要が増えていく市場
2018年11月に外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が閣議決定されました。
この法改正により、外国人で日本に仕事を求める人、家族で移住を求める人が増えてきているため、今後数年間はビザ関連業務をこなせる行政書士の需要が大きくなっていくことが予想できます。
そのため、ビザ関連の申請業務は早めに参入することができれば、「儲けられる」分野だといわれています。
実際どのくらい増えているのか?
近年の外国人労働者数の推移を表にまとめてみました。
年度 | 労働者数 | 前年比 |
---|---|---|
2014年 | 78.8万人 | 110% |
2015年 | 90.8万人 | 115% |
2016年 | 108.4万人 | 119% |
2017年 | 127.9万人 | 118% |
2018年 | 146.0万人 | 114% |
2019年 | 165.9万人 | 114% |
2020年 | 172.4万人 | 104% |
2021年 | 172.7万人 | 100% |
2022年 | 182.3万人 | 106% |
コロナ禍の影響により2020年からは外国人労働者の数は一時的に減ってはいるものの、外国人労働者の数が上昇していることがわかります。
厚生労働省によると、外国人労働者数が増加した要因としては、
-
外国人労働者の受け入れ拡大政策が進んでいること
-
雇用情勢の改善が進み、永住者や日本人配偶者が増えていること
-
技能実習制度の活用により技能実習生の受け入れが進んでいること
と分析しています。この流れは今後も続いていくことが予想されています。
申請取次者とは?
出入国管理に関する一定の研修を受けた行政書士を「申請取次者」 と言います。普通の行政書士と、申請取次者資格を持った行政書士では、ビザの申請において対応できる業務の範囲に差が出てきます。ここでは申請取次者の業務内容や資格取得方法について詳しく解説していきます。
普通の行政書士との違い
通常の行政書士では依頼者に代わって入国管理局に提出する書類を作成するところまでは対応できますが、入国管理局への書類提出は依頼者本人が行わなければいけません。
一方、申請取次者であれば、入国管理局へ提出する書類作成から入国管理局への書類提出まですべて申請取次者が代行することができるため、申請取次者へ仕事を依頼すれば外国人本人がわざわざ入国管理局まで足を運ばなくてもよくなるというメリットがあります。
申請取次者ができること
申請取次者が行うことのできる業務としては、
- 在留資格認定証明書交付申請
- 資格外活動許可申請
- 在留カードの住居地以外の記載事項変更届出
- 在留カードの有効期間更新申請
- 在留カードの紛失等再交付申請
- 在留カード汚損等再交付申請
- 在留カードの交換希望による再交付申請
- 在留カードの再交付申請命令による再交付申請在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
- 在留資格の変更による永住許可申請
- 在留資格取得許可申請
- 在留資格の取得による永住許可申請
- 再入国許可申請
- 就労資格証明書交付申請
- 申請内容の変更申出
- 在留カードの受領
の16種類があります。
逆に「書類に不備があった際の入国管理局のその場で書類の訂正」は実施することができません。
申請取次者になるには
申請取次者になるためには、行政書士試験に合格して行政書士となったうえで、「申請取次事務研修会」に出席する必要があります。
この研修会の最後には「効果測定」と呼ばれるテストがあり、一定以上の点数を取らないと合格することができません。
報酬額の相場はどれくらい?
行政書士の外国人関連の業務について解説してきましたが、実際のところ報酬はどのくらいもらえるのでしょうか?
外国人関連の業務書類についての相場をまとめましたので、取得する価値があるかどうか判断する参考にしてみてください。
相場は書類で異なる
ビザ関連の書類作成の報酬は、作成する書類の種類や申請者の家族構成などによってことなるもののだいたい在留資格の更新申請が2~4万円くらい、帰化申請が10~13万くらいが相場です。
外国人需要が増える今、ビザ業務はチャンス!
外国人労働者のビザ業務についてまとめ
- 外国人のビザ申請については、行政書士が代理業務を行っている
- 申請取次者になれば、ビザ申請業務の囲い込みができる
- 外国人受け入れが増える今、ビザ業務の需要は増えている
行政書士のビザ業務について解説してきました。
我が国が外国人受け入れ拡大を決めた今、多くの外国人が日本での仕事を求めてやってきます。
右も左もわからない異国の地で、皆が通らなければならないのはビザ申請です。ここで不備があっては、本人に悪気はなくても不法就労として罰せられてしまい、強制退去させられてしまいます。
そういったことを防ぐべく、行政書士へビザ申請依頼をする外国人の方は増えていくことでしょう。
ビザ申請業務は今大きなビジネスチャンスを迎えています。周りに先を越されないように動いてみるのもアリなのではないでしょうか。