行政書士に相続相談するのってアリ?相続手続きや司法書士との違いも解説
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行政書士
宮城彩奈
「相続相談は弁護士・司法書士・行政書士の誰にすべきだろう?」
「行政書士に相続相談をするメリットには何があるのだろう?」
相続は誰にでも訪れるものですが、手続きが複雑でほとんどの人が初めて経験します。そのため専門家へ相談する人も多いはずです。
しかし実際に依頼しようとして困るのが、相続業務を行える専門家には色々な士業がいて、誰に依頼すべきか悩むことでしょう。
そこで今回は行政書士に相続相談をするメリットを解説します。
相続関連業務を行える弁護士・司法書士・税理士との違いを紹介し、併せて行政書士という資格ならではの魅力もお伝えします!
行政書士に相続相談するメリットについてざっくり説明すると
- リーズナブルな価格で広範囲に渡る相続業務を提供してくれる
- 登記や交渉代理はできないが、相続手続全般を扱うことが可能
- 士業ごとに職務領域があるので適切な相談先を選ぶことが大切
相続問題は誰に相談する?
相続に詳しそうな士業として弁護士・司法書士・税理士・行政書士を思い浮かべる人は多いはずです。しかしその一方で、これらの士業の業務内容の違いまで理解できている人は決して多くありません。
同じ相続のプロでも各士業には専門分野や得意領域があり、違いや特徴を理解した上で適切な依頼先に相続相談をすることが大切です。
以下では士業ごとの違いを解説していくので、適切な依頼先に相談をして的確・迅速な相続手続きをできるようにしていきましょう。
どの専門家に頼むかはケースバイケース
どの士業に相談をすべきかは、相続問題の中身により異なります。
例えば相続人同士で揉めたり裁判で争う可能性が高い場合には、他の相続人との交渉や裁判所での手続きを行う代理権を持つ弁護士の力が必要です。これは弁護士以外の他士業にはない権限になります。
また登記が絡む場合には司法書士に依頼することになるので、相続財産に土地や建物が含まれるならば司法書士への相談が必要です。
そして相続税に関連して納税資金準備や延納・物納などの税金対策を検討したい場合には税理士に相談しなければいけません。
その一方で裁判や登記、税金などの個別の問題が起きる可能性が低いのであれば、相続手続き業務をリーズナブルな価格で広範囲に渡って提供してくれる行政書士がおすすめです。
ただし登記や税金の問題が絡むのかさえ分からない場合もあるはずです。その場合は相続が得意な行政書士に依頼すると良いでしょう。
相続を手掛けたことがある行政書士ならば他士業とも提携していることが多く、必要に応じて弁護士や司法書士などを紹介してくれます。各士業を個別に探す手間も省けてスムーズな相続相談が可能です。
相続手続きでの行政書士と司法書士の違い
数ある士業の中でも混同しやすいのが行政書士と司法書士です。
どちらも役所に書類を提出して手続きを行う資格なので、イメージが似通っていて違いが理解しにくいと思います。
しかし行政書士と司法書士は担当する職務領域が明確に異なります。いざ相続が発生した時でも相談先を間違えないために、両士業の違いについて確認していきましょう。
行政書士は書類作成がメイン
行政書士は行政手続きに関係する書類の作成・申請を行う資格です。
代書屋とも言われ、「官公署に提出する書類」「権利義務に関する書類」「事実証明に関する書類」の作成・提出を行います。これらの書類の作成に関する相談やコンサルティングも行政書士の仕事です。
扱う書類の種類は1万以上にもなり、この中には相続に関する書類もほぼ含まれています。書類作成のプロとして相続関連書類の作成にも携わっているのが行政書士という資格です。
司法書士と行政書士の違いは?
司法書士の主な業務は不動産の登記や会社・法人の設立登記の申請です。また、司法書士は法務局や裁判所への書類提出も担当しますが、行政書士はこの業務を行うことはできません。
しかし、相続人調査など、行政書士・司法書士ともに対応可能な業務も存在します。このように、各資格保有者が取り扱える業務が異なるため、共同で事務所を開設するケースが増えています。
この共同事務所では、相続人調査、相続協議書の作成、相続登記申請など、一貫したサポートが可能で、顧客にとっては便利です。一つの窓口で司法書士と行政書士の両方のサービスを受けることができるため、相続が発生した場合には共同事務所への相談が良い選択肢となるでしょう。
また、このような連携は、専門的な知識や技術の共有を促進し、クライアントに対してより高品質なサービスを提供する機会を拡大します。専門家同士の協力は、業務の効率化だけでなく、サービスの質の向上にも寄与する重要な側面となっています。
行政書士に頼むメリット
士業ごとに仕事内容が異なり強みも違う中で、行政書士に相続相談をするメリットとして何があるのでしょうか?
以下では行政書士という資格の特性も踏まえながら、弁護士や司法書士にはない行政書士のメリットを紹介していきます。
リーズナブルで平和的な安心感
係争中の相続問題は弁護士に依頼する必要がありますが、そうでなければ書類作成・手続きのプロである行政書士で対応が可能です。
逆に弁護士は「裁判」や「示談」などのイメージを持つ人も多く、相続協議をする際に最初から相手を刺激してしまう可能性もあります。
行政書士のほうが単なる書類作成屋というイメージもあり、平和的な安心感があって相続の話し合いが円滑に進むことを期待できます。
そして行政書士は相続関連書類全般を扱えるので、遺産相続に伴って必要になる様々な手続きをまとめて依頼できることもメリットです。
手続きに慣れたプロに任せればスピーディーに対応してくれることは間違いなく、遺産分割協議書や相続関係説明図の作成、相続人調査や相続財産調査などの面倒な手続きを一括して任せられます。
そして裁判への対応などで費用が高額になりがちな弁護士などと比べても、行政書士はリーズナブルな価格設定が魅力です。
そもそも親族が亡くなり相続が発生する時には、葬式費用や相続税の納税など何かと経済的負担が増えることになります。他士業と比べて費用を抑えられる点も行政書士の大きなメリットと言えるでしょう。
行政書士ができる仕事、できない仕事
続いて行政書士の具体的な相続業務の内容を確認していきましょう。
行政書士には相続に関して"できる仕事"と"できない仕事"があるので、相続相談をする上では仕事内容を理解しておくことが大切です。
以下で行政書士の相続業務をリストアップしていくので、行政書士に依頼した場合のイメージをより具体的に持つことができるでしょう。
①遺言状作成
事前に遺言状を作成しておくと相続を円滑に進められますが、法律で規定された一定の書式を守る必要があります。
形式不備などの理由で相続発生時に遺言状が無効になっては大変なので、プロである行政書士に相談したほうが良いでしょう。
行政書士は遺言の原案作成アドバイスや必要書類の取り寄せを行い、遺言作成の証人にもなってくれる相続の頼れる専門家です。
②遺言執行人就任
遺言では財産の分配や借金の清算について記載するだけでなく、多くの場合これらの手続きを円滑に進めるための遺言執行人も定めます。
行政書士は遺言執行人になることができるので、遺言の作成から執行までを全て任せることができて安心です。
③遺産分割協議書作成
遺言がない場合には相続人の間で遺産相続について話し合わなければいけません。相続財産のリストアップから分配方法の決定、遺産分割協議書の作成・提出まで、非常に手間の掛かる作業が必要です。
行政書士に依頼すれば1人1人の相続人は負担を減らすことができる上に、遺産分割協議書の形式不備などのリスクも減らせます。
誰が何をどれだけ相続するかを記載した遺産分割協議書には相続人全員の押印が必要で、印鑑証明を集める手間も掛かります。プロである行政書士に依頼するのがおすすめです。
④相続人調査
相続が発生した場合には、そもそも誰が相続人なのかを調べる相続人調査を行います。相続人であることの証明書類も必要です。
個人の出生や死亡を証明するために戸籍を取り寄せることになり、相続人が多い場合には各地の役所への確認が必要なケースもあります。
これは時間も手間も掛かる作業です。しかし行政書士であれば「職務上の請求」として簡単に戸籍を取り寄せることができます。
面倒な手続きをスピーディーに進めてくれるので、費用対効果の観点からも行政書士に依頼してしまったほうが良いでしょう。
⑤財産調査 遺産目録
相続を行うためには、故人の財産を全てリストアップして"相続できるもの"と"相続できないもの"を分類して把握することが必要です。
行政書士は財産調査や遺産目録の作成までできるので、相続業務全般を行政書士に相談する際に財産調査や遺産目録の作成も含めて依頼すれば相続手続きをスムーズに進められます。
⑥相続関係図作成
故人と相続人がどのような関係にあるのか分かりやすく図示したものが相続関係図です。
作成は任意ですが、相続関係図があると相続手続きが簡便になり役立ちます。遺産相続を円滑に行うには"分かりやすさ"も大事なポイントであり、不必要な争いを避けるためにも作成したほうが良いでしょう。
そのため相続関係図の作成を代行できる行政書士に依頼することがおすすめです。
⑦戸籍の取得
相続人を調査して確定させるためには戸籍の取得が必要です。
場合によっては全国各地の役所から取り寄せることになり、手間も時間も掛かります。行政書士であれば戸籍取得を全て任せられるので、面倒な手続きでもスムーズに対応してくれます。
⑧銀行の相続解除
故人が亡くなると銀行は口座凍結を行います。資産の引き出しはできなくなるので、銀行での凍結解除の手続きが必要です。
この解除手続きを行政書士であればできるので、遺産の引き下ろしができる状態にするためにも行政書士に依頼したほうが良いでしょう。
⓽株式の相続手続き
故人が株式を保有していた場合には株式の相続に伴う手続きが必要になります。
相続手続依頼書を書いたり戸籍謄本を揃える必要があり、これらは非常に面倒な作業です。電子株券・タンス株いずれの場合でも、これらの作業を行える行政書士にまずは相談することがおすすめです。
なお名義変更に関しては、対象物によっては不動産のように司法書士でないと変更手続きができない物もあります。同じ名義変更でも財産の種類によって担当する専門家が違うので注意が必要です。
⑩自動車の名義変更
自動車を相続する場合には、陸運局への必要書類の提出や名義変更の手続きが必要です。
行政書士は自動車の名義変更に関する書類作成や申請を行える資格であり、依頼すれば自分で陸運局に行く手間も省けます。
⑪山林の名義変更
山林を相続する場合には、山林を管轄する自治体の役所への必要書類の提出や名義変更の手続きが必要です。
行政書士は山林の名義変更に関する書類作成や申請を行える資格であり、依頼すれば自分で自治体に行く必要もなくなり便利です。
相続放棄は出来ない
これまで見てきたように行政書士は相続に関する様々な手続きを代行できる専門家です。しかし相続放棄の手続きはできません。
申請先が家庭裁判所であり、裁判所が絡む仕事は司法書士の担当領域だからです。
相続放棄や登記のように行政書士ではできず司法書士への依頼が必要な業務があるので注意が必要です。
行政書士に仕事を依頼した時の相場
相続が発生すると手続きや納税が必要になり、時間や労力に加えてお金も掛かります。行政書士の報酬相場が気になる人も多いはずです。
そこで以下では行政書士に相続の仕事を依頼した場合の費用の相場について解説していきます。是非参考にしてみて下さい。
だいたい3~8万円が相場
相続人調査や相続財産調査は3~5万円、遺言書や遺産分割協議書の作成は5~8万円が相場です。相談だけであれば無料という行政書士もいますが、相談料の目安は5,000円程度になります。
そもそも報酬相場自体に幅があるので、行政書士に依頼する際には依頼内容や希望金額を事前に決めた上で相談したほうが良いでしょう。
相続人調査や相続相関図作成、遺言執行など、相続関連の手続きは多岐に渡ります。依頼したい業務の報酬相場を参考にして自分で見積った上で依頼すれば、不要な業務の依頼をすることもなくなります。
適正な費用で遺産相続手続きを依頼するためにも、事前に自分なりに報酬相場を把握しておくことが大切です。
すべて頼むなら相続金額の1~2%
相続全般を扱える点が行政書士のメリットなので、相続関係の手続きを一括して行政書士に依頼するケースも考えられます。
行政書士に限らず士業系資格に業務を依頼する場合には「総額×一定割合」で報酬を決めることが多く、これは行政書士でも同様です。
そしてすべての相続業務を行政書士に頼む場合の報酬は遺産総額の1~2%程度が業界の相場です。そのため相続に伴う手続きすべてを頼む場合の費用は、遺産総額によって変わるので人により異なります。
弁護士を使うなら一括で頼むほうが良い場合も
行政書士に相続相談をする前に既に他士業に依頼している場合もあるはずです。例えば相続人間で争いが生じて弁護士に相談をしているようなケースが考えられます。
この場合に相続関連書類の作成を改めて行政書士に依頼する場合もありますが、書類作成は行政書士以外でも出来る場合がほとんどです。
既に依頼している弁護士に追加で費用を払って手続きを進めたほうが結果的に安く済むことも多く、行政書士への依頼は慎重に判断する必要があります。
もちろん行政書士は書類作成のプロであり相続でも頼りになる専門家ですが、事前に見積りを出して比較し、誰に依頼したほうが安く済むのかを考えることも大切です。
行政書士に相続相談をする場合の注意点
ネットで検索すれば行政書士を簡単に探せますが、行政書士の中でも相続業務を得意とする場合とそうでない場合があります。
行政書士の仕事は非常に幅広く、許認可申請など相続以外の業務が専門の行政書士も当然います。相続相談をする場合には相続を得意とする行政書士を探すことが大切です。
行政書士に相続相談するメリットまとめ
行政書士に相続相談するメリット
- 行政書士であれば相続手続全般を一括して依頼できる
- 行政書士に依頼するメリットはリーズナブルな価格と安心感
- 相続放棄や登記等できない業務もあり、士業ごとに特徴がある
今回は行政書士に相続相談するメリットについて紹介しました!
行政書士は相続を相談する相手として最適であり、資格取得を目指す人にとっても相続問題で人々を支えられる魅力ある資格です!
行政書士への相談や資格取得を是非検討してみて下さい!