行政書士登録をしないのはアリ?年会費や登録料はどれくらいかかる?
更新
この記事は専門家に監修されています
行政書士
宮城彩奈
「行政書士試験に合格したけど、行政書士登録すべきだろうか…」
「行政書士登録の費用って高くない?」
この記事を読んでいるあなたは、きっと上記のようなお悩みをお持ちではないでしょうか?
晴れて行政書士試験に合格したら、次は行政書士会に登録するかどうか判断しなければなりません。
行政書士として働いていくのであれば登録は必須なのですが、行政書士として働くかどうかまだ決めかねている方も多くいらっしゃると思います。
そこでこの記事では、行政書士登録をしない場合のメリット・デメリット、行政書士登録をしなくてもいい場合や節約できるお金について解説していきます!
これを読めば自分が登録すべきかどうかが明確に判断できるはずです!
行政書士登録をすべきかどうか
- 登録をしなければ行政書士として業務を遂行できない
- 登録をしなければ行政書士会から会報を入手できない上に、同業者と人脈形成をする機会が減る
- 登録しないことで20万円以上のお金が節約でき、登録の手間もなくなる
- 登録をしないことで行政書士業務に縛られることがない
このページにはプロモーションが含まれています
行政書士登録をしない場合の注意点
行政書士の資格を取得しても、行政書士登録しない人は一定数います。 ですが行政書士登録しないことによるデメリットも存在します。
登録するメリット・デメリットをしっかり理解し、自分にとって登録する、登録しない、どちらに利があるのか判断して決めるようにしましょう。
行政書士としての業務を遂行できない
晴れて行政書士の資格を取得したとしても、行政書士登録をしなければ、行政書士としての仕事を行うことはできません。
行政書士として仕事をするには、所属する地域の行政書士会へ登録する必要があります。これは行政書士法の第6条で以下のように定められています。
行政書士となる資格を有する者が、行政書士となるには、行政書士名簿に、住所、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他日本行政書士会連合会の会則で定める事項の登録を受けなければならない。 行政書士法 第6条
行政書士登録しないにも関わらず、行政書士を名乗って仕事を行うのは違法になるということです。
行政書士会からの情報が得られない
行政書士会に登録すると法改正に関する新法のマニュアルを受け取ることができます。
行政書士は法律のスペシャリストとして仕事を行う以上、最新の法律事情には常に敏感であり知識として備え続けていく必要があります。
行政書士登録しない場合はこの会報を入手することができないため、最新の法改正についての情報の入手が遅れたり、法改正されていたことを知らなかった!といった事態にもなりかねません。
もし将来的に行政書士として独立するとなった場合、最新の法律事情に合わせていくことに労力が必要となってくることが考えられるのです。
人脈が広がりにくい
行政書士会に登録すると会員向けの研修会・勉強会や懇親会といった各種イベントに参加することができます。
これらは行政書士として実際に働いている人や、他士業の方とコミュニケーションを取ることができる機会になります。
行政書士登録しない場合は、こういった会合に参加することができないため、行政書士として必要な人脈作りの機会がどうしても少なくなってしまうのです。
行政書士として独立する場合は、行政書士同士の横の繋がりであったり、他士業の方と連携を取って仕事を獲得することが多いです。
法律の知識があったとしても仕事が獲れなければ話になりませんので、ある意味人脈作りが独立における最大の肝であると言ってもいいでしょう。
名刺・履歴書にはどのように書けば良い?
行政書士法の19条2には以下のような記載がなされています。
行政書士でない者は、行政書士又はこれと紛らわしい名称を用いてはならない。 行政書士法 第19条の2
そのため、登録していない場合、名刺や履歴書を書く際には注意が必要です。
「行政書士〇〇」や「行政書士有資格者」のように書くのはマズいですが、「行政書士試験合格者」のように記載すれば基本的に大丈夫です。
なお、第19条に違反した場合、百万円以下の罰金を支払う必要があるため、この書き方を必ず覚えておいてください。
行政書士登録をしないメリット
行政書士登録しないメリットもあります。行政書士試験に合格したとしても、行政書士登録していない人も実際多くいます。
登録しないメリットについてそれぞれ解説していきます。
登録料や会費といった費用を支払わなくて良い
何と言っても行政書士登録料や会費といった費用がかからないことでしょう。これは行政書士登録しない上で最も大きいメリットと言ってもいいです。
近年はこの登録料が高くなってきている傾向にあります。また登録料だけではなく、年会費も毎年支払わなければなりません。他に行政書士バッジや名刺、職印など細かな費用がかかってきます。
登録料・年会費は決して安い金額ではないため、登録する必要性があるかどうかしっかり判断しましょう。
登録の手間や時間をなくせる
行政書士登録にかかる手間や時間をなくすことができます。行政書士の登録は必要な書類が多く、申請から登録が完了するまで非常に手間で長い時間がかかります。
行政書士登録までの流れをざっくり説明いたしますと、まず開業を予定している所在地の都道府県行政書士会へ必要な登録書類を提出・入会します。
次にその登録書類は日本行政書士会連合会へ送られて審査を受け、問題なければ行政書士登録が完了されることになります。書類提出から登録完了まで約1ヵ月程度かかります。
行政書士登録の際に必要な書類としては、行政書士登録申請書、履歴書、誓約書、行政書士会入会届、事務所写真に加え、戸籍抄本や身分証など数多くの書類を取り揃える必要があり、多くの手間がかかるのです。
事務所調査の手間が大きい
行政書士登録の際には事務所調査というものありがあります。開業を予定している事務所に支部会役員の方がチェックされるのですが、これも手間がかかります。
事務所調査の実質目的は、①守秘義務を保てる環境かどうか、②業務を遂行できる環境かどうか、の2点になります。
開業当初は自宅を事務所として申請する人も多いと思いますが、依頼者の相談内容が他人に聞こえないような配慮がされているかどうか、個人情報が厳重に保管できる環境かどうか、といった点をチェックされることになります。
登録申請する段階で即仕事ができる環境にまで整えておかなければなりません。
独立開業について検討する時間を得られる
行政書士として独立するかどうか時間をかけて検討することができます。当然ですが、行政書士の資格を取得したとしても、行政書士として独立するかどうかまで決めていないという人もいます。
働きながら行政書士の資格を取得したような人の場合、今の仕事との兼ね合いも影響してくることでしょう。
将来的には行政書士として独立するにせよ、今は実務経験を積んでから考えていきたい、今の仕事の退職タイミングを見計らったりする場合も多いです。
人生を大きく左右する判断になりますので、その場の勢いに任せてしまうのではなく、じっくり検討した上で後悔の無い判断をしてください。
登録料や会費はどれくらい節約できるの?
行政書士会登録の最大デメリットでもある登録料ですが、一体どのくらいの費用がかかるのでしょうか?東京都行政書士会の場合を例に表にまとめてみましたのでご参照ください。
費用題目 | 金額 |
---|---|
登録手数料 | 25,000円 |
入会金 | 200,000円 |
登録免許税 | 30,000円 |
月会費(3ヵ月分) | 21,000円 |
この他にも行政書士バッジ代や名刺、職印など細かい費用が積み重なり、最終的に合計300,000円ほどかかってくることになります。
とりあえず登録しておこうといった軽い気持ちで出せるような金額ではないことがわかっていただけたかと思います。
手持ちが足りないけど、とにかく行政書士登録をしておきたい!という方は融資を利用するのも一手です。
日本政策金融公庫の操業融資であれば、まだ実績が無い創業主であっても融資を受けることができます。金利も2%台~、返済期間は最大5年と良心的な内容になっています。
とはいえ折角登録しても上手く利用できない、又はまだ利用価値が無い段階なのであれば、もったいないの一言では痛すぎる金額です。登録目的をじっくり考えてから決断するようにしましょう。
行政書士登録をしない人が多い理由
行政書士登録をしない人が多い理由はお金や手間といった理由だけではありません。どのような理由があるのか見てきましょう。
行政書士に登録していない人の具体的な人数
平成28年度行政書士試験合格者、及び平成29年度行政書士登録者のそれぞれの人数は以下の通りです。
平成28年度試験合格者数 | 平成29年度登録者数 |
---|---|
4,084人 | 2,385人 |
このように、登録者全員が前年度合格者であると仮定しても、4割近くもの人が登録をしていないことがわかります。
平成29年度登録者の中には、平成28年以前に試験を合格した方も一定数いらっしゃるでしょうから、やはり合格後すぐに登録をする人はそこまで多くない、と言えるでしょう。
登録を焦る必要がない
そもそも行政書士は資格を取得した後にすぐ登録をする必要がありません。行政書士の資格は他の国家資格のように資格更新期限や登録期限が設けられていません。
試験にさえ合格してしまえば資格は一生有効なので、焦って登録をする必要が無いのです。
とりあえず行政書士の資格取得を目指したものの、まだ独立するかどうか決めていない人も多いと思います。
行政書士として独立するということは、自分で仕事を見つけてこなくてはなりません。言わば個人事業主ですので、やはりそれなりのリスクが伴います。
サラリーマンとして行政書士の知識を活かして働くという選択肢もあります。そういうケースの場合は、行政書士登録をする必要がありません。
ただし冒頭でも述べたように、登録をしないまま行政書士を名乗ると違法になるので、その点は十分注意するようにしましょう。
弁護士や税理士の人は登録しない人が多い
弁護士、税理士、公認会計士などは、行政書士試験に合格しなくても行政書士登録をすることができます。
それぞれの専任だけではライバルも多いため、行政書士登録をすることで仕事の幅を広げることができます。
特に士業の仕事依頼は飛び込みでくることが少なく、既存顧客の紹介などで広げていくことが多いため、資格の多さは有利になります。
とはいえそれぞれの本業に集中していることがほとんどですので、行政書士登録することはできるがあえてしていないという人も多いようです。
メインの業務ではありませんので当然と言えば当然かもしれませんね。
中でも行政書士登録しない理由で最も多いのは、登録料や会費の高さが大きく影響しているようです。それだけの費用をかけて行政書士登録したとしても、リターンが少ないということになります。
登録しなくても資格が評価される
行政書士登録をせずとも、その資格を所有しているだけで職場内、あるいは就職・転職活動においては大いに評価されます。
行政書士資格を取得できれば、株式会社や法人・組合設立の手続きサポート及び代理業務を行うことができるようになります。
具体的には、建設業であれば営業許可更新のための書類作成業務、不動産業であれば公共事業の入札書類作成、一般企業であれば官公署へ提出する書類作成などが挙げられます。
専門性の高い業務になりますので替えが利きづらく、会社からも重宝される存在になることでしょう。その知識を活かして法務部や総務部で活躍することができます。
行政書士の試験合格率は10~15%と非常に低いため、資格を所有しているだけで能力の高さを客観的に示すことができるでしょう。
行政書士登録をしない場合まとめ
行政書士登録についてまとめ
- 行政書士登録は焦らずとも自分のタイミングですれば良い
- 行政書士登録には約30万円必要となる
- 行政書士はたとえ登録しなくても十分評価される資格である
行政書士登録の必要性やメリット・デメリットについて解説しました!
行政書士として独立を決めている人以外は、登録を焦る必要はありません。
自分の将来のキャリアプランをしっかりと立てた上で、しかるべきタイミングで登録をするようにしましょう。