税理士は行政書士登録ができる?ダブルライセンスのメリットや仕事の違いを解説!

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行政書士

宮城彩奈

「行政書士と税理士のダブルライセンスにはどんなメリットがあるの?」

税理士資格を持っていれば無試験で行政書士にもなれるってご存知でしたか?

士業におけるダブルライセンスには大きなメリットがあります。

税理士として業務を行っていてダブルライセンスを検討している方には、是非この記事を読んで行政書士業務について検討して頂きたいと思います!

税理士の行政書士ダブルライセンスについてざっくり説明すると

  • 税理士なら無試験で行政書士になれる
  • 税理士事務所とは別に行政書士事務所として表札を掲げる必要がある
  • 行政書士登録費用はそれなりにかかる。提出書類も多い
  • ダブルライセンスとなることで集客層が広がり、顧客からの信頼も増す

行政書士資格を取得するには?

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行政書士になるにはいくつかの方法があります。下記のいずれかをクリアすれば、行政書士資格を得ることが出来ます。

  • 行政書士試験に合格する
  • 公務員として17年以上の業務経験がある
  • 税理士や弁護士など、規定の国家資格を取得する

行政書士試験を受けてそれに合格し、登録資格を得るのが最も一般的です。

公務員試験を受けて公務員となり、国家公務員または地方公務員として通算で17年~20年以上、行政事務に携わることでも政書士資格を得られます。

また、国家資格の中には、それを取得すれば行政書士としての資格も得られるものがあり、弁護士・弁理士・税理士・公認会計士が該当します。

つまり、税理士資格を持っていれば、無試験で行政書士登録ができるということです。

税理士が行政書士登録をするときによくある失敗

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税理士資格を持っていれば、試験を受けずとも行政書士登録ができますが、登録の際にはいくつか注意点があります。

税理士事務所だけでは行政書士として働けない

行政書士法では行政書士としての在り方(属性)は3パターンとなっています。

  • 個人開業行政書士・・・個人で開業して活動
  • 社員行政書士・・・行政書士法人の社員として活動
  • 使用人行政書士・・・個人行政書士または行政書士法人の使用人として活動

行政書士として活動するためには開業するか、法人を持つか、個人や法人行政書士の従業員となるかのいずれかを選択することになります。この記事を読んでいる人は現在税理士であって、行政書士業務を行うかどうか悩んでいる人が多いと思いますが、多くは「開業する」を選択することになるはずです。

その場合、行政書士事務所を持つ必要があり、行政書士法施行規則第2条の14(事務所の表示)の規定によって、そこが行政書士事務所であることを明らかにした表札を掲示しなければなりません。また、事務所の名称には「行政書士」の文言が必ず入っている必要があります。

つまり、今持っている「税理士事務所」だけでは、自分が行政書士資格を持っていても行政書士業務は行えないといけないということです。

尚、行政書士法では他士業との兼業の場合、事務所は同一の場所でなければならないとされています。その場合でも、事務所の名称に他資格が含まれるのは不可となっているため、税理士事務所とは別に行政書士事務所としての掲示が必要です。

行政書士登録には手間も時間もかかる

行政書士として活動するためには、日本行政書士連合会(日行連)が備える名簿に名前を登録する必要があります。

行政書士として活動する予定の都道府県の行政書士会に登録し、そこが本人に代わって日行連に登録申請を行います。

税理士事務所がそのまま行政書士事務所にもなるのであれば、現状税理士事務所を置いている都道府県の行政書士会にまずは登録を行いますが、登録には手間も、時間も、お金もかかります。

登録申請時に必要な書類はかなり多くなっています。申請届けの他、所定の様式の履歴書、誓約書、身分証明書、事務所の位置図や平面図、写真などの提出の必要があります。

また、登録費用もそれなりにかかります。都道府県毎に微妙に金額は異なりますが、東京都行政書士会を例に挙げると概ね25.5万円が登録費用として必要になるため、あらかじめ覚えてきましょう。

  • 登録手数料(事前振込) 25,000円
  • 入会金(事前振込)   200,000円
  • 前払い会費3ヶ月分(窓口納付)   18,000円
  • 政治連盟前払い会費3ヶ月分(窓口納付 ※任意) 3,000円

この他、登録免許税として30,000円分の収入印紙が必要になります。

登録費用の詳細な金額は各都道府県の行政書士会のHP等で確認してください

欠格事由も存在する

行政書士になるための資格については最初の項でのべましたが、それらを有していたとしても法律上「行政書士になる資格」がないとされる欠格事由というものがあります。

例えば「未成年」や「成年被後見人又は被保佐人」、「破産者であって復権を得ない者」などですが、これらに該当する場合は、前述の「行政書士になる資格」を持っていたとしても、法律上その資格がないとされるため、行政書士として働くことはできません

※2021年現在、成年被後見人又は被補佐人は欠落事由から外れました。

税理士と行政書士のダブルライセンスのメリット

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集客の窓口が増える

ダブルライセンスの最大のメリットは、集客のターゲットとなる幅が広がるということでしょう。

税理士の業務は、基本的には既に設立を終えた法人や事業所に対してしか行えませんが、行政書士としての業務が可能なことで、これから会社を設立しようとしている人に対してもアプローチできるようになります。

行政書士として創業のサポートを行い、そのまま顧問税理士として契約)するということも可能でしょう。

また、税理士として顧問契約している顧客の書類作成業務を行政書士として対応するということも出来るようになります。

特定行政書士という道も

行政書士には、特別な研修を受けた「特定行政書士」という存在があります。特定行政書士になると、通常の行政書士業務とは別に、特定行政書士しか行う事の出来ない業務が出来るようになります

それは、行政庁の許認可等に関する「不服申し立て」に係る手続きです。

元々、不服申し立ての手続きは弁護士の仕事でしたが、許認可申請を行政書士が代理で行った場合に不服申し立てもそのまま一貫して行政書士に依頼したいという顧客のニーズ等もあり、平成26年に行政書士法が改正されて、新たに行政書士の業務として追加されました。

特定行政書士になることで、これまで弁護士の顧客であった層も取り込むことが出来るようになったということです。

顧客から信頼を獲得できる

例えば税理士であるということでも十分にその専門家であることは周知できますが、ダブルライセンスでその他の資格を持っていることで、本来の専門の周辺分野についても広く知識・見識があることをアピール出来ます。

特に、行政書士として「会社」についての専門的な知識を持ち、幅広く自社の問題に対応してくれる存在であることで、顧客からさらなる信頼を獲得することができるでしょう。

士業事務所への転職が有利になる

税理士であり行政書士ということで対応できる業務の幅はかなり広がることになります。

また、産業の構造や法律自体は常に変化していきますが、どのように変化しても、変化した内容に顧客に代わって対応する存在として、行政書士には常に需要があります。

万が一、自分が廃業して事務所をたたむことになったとしても、他の税理士事務所や行政書士事務所、法人などへの転職に、知識や経験を生かすことができるでしょう。

税理士と行政書士の違い

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ここまで、税理士である人がダブルライセンスで行政書士業務を行うことを前提に述べてきましたが、ここで両者の違いを改めて確認しておきましょう。

そもそも税理士と行政書士は、仕事内容も取得難易度も大きく異なります

業務内容の違い

税理士は、その名の通り税金の専門家です。行政書士の業務は多岐に渡りますが、基本的には各種書類の作成を専門としています。

税理士の独占業務

「税務代理」「税務書類の作成代理」「税務相談」の三つが税理士の独占業務です。

税金を納めるべき本人の代理として税務を行ったり、それに必要な書類を作成したりすること、それも含めて納税や節税などの相談に乗ったりすると言えます。

税金に関する知識があると、税理士でなくてもうっかり知人の税務代理や書類作成の手伝いなどしてしまいかねないようなことですが、歴とした独占業務になります。

税理士の独占業務は以下の記事で詳しく確認してください。

行政書士の独占業務

例外はありますが、「官公署に提出する書類・権利義務及び事実証明に関する書類」の作成と、官公署への提出代理行政書士の独占業務であると言えます。

役所や警察署、保健所などの行政機関に提出する書類は内容が難しく、手続きも複雑であることが多く、一般の人が自分で行うにはなかなか厳しいものです。

それを、プロとして正確且つスピーディーに滞りなく行うのが行政書士の仕事になるのです。

行政書士の独占業務は以下の記事で詳しく確認してください。

難易度の違い

資格取得の難易度で言えば、税理士の方が圧倒的に高いです。

試験に合格するための勉強時間で言えば、法律等を全く勉強したことのない初学者の場合、行政書士で600~800時間、税理士では短い人で2,500時間、長い人では5,000~6,000時間と言われています。

また、税理士は無試験で行政書士になることができますが、行政書士が税理士になろうとする場合は改めて税理士試験を受けなければならず、かなり難しいと言えるでしょう。

各試験の難易度は以下の記事を詳しくご覧ください。

税理士の行政書士Wライセンスまとめ

税理士と行政書士まとめ

  • 税理士資格を持つ人は行政書士登録をすることができる
  • 行政書士と税理士のダブルライセンスには業務範囲が広がるなどのメリットが多い
  • 行政書士登録や資格の維持にはお金がかかるので、税理士の方でも登録しない人は多い
  • 資格の難易度は圧倒的に税理士の方が難しい

現状税理士資格を持って活動している人であれば、無試験で資格登録できる行政書士とのダブルライセンスで働くことは、効率よく多くのメリットを得る手段であると言えます。

書類を揃える手間や登録の費用はかかりますが、行政書士が税理士資格を目指すことに比べればかなりハードルが低いことがわかります。

行政書士登録をするか迷っている方には是非、行政書士登録をしてダブルライセンスで活躍することをおすすめします。

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