税理士になるには?受験資格や難易度・仕事内容まで徹底解説!
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税理士
脇田弥輝
「税理士になるにはどうすればよいのだろう?」
「試験の受験資格や求められる実務経験が知りたい!」
こうした疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
税理士になるには試験に合格するのがスタンダードなルートです。しかし、税理士試験には受験資格が設けられており、誰でも受験できる試験ではありません。
さらに、試験に合格する以外にも税理士になる方法はあるというのは、あまり知られていない事実です。
そこでここでは税理士になる方法について分かりやすく解説します!
この記事を読めば、どうすれば税理士になれるのかや、税理士になるのはどれくらい難しいのかまでバッチリ分かるはずです!
税理士になる方法についてざっくり説明すると
- 税理士になるには税理士試験に合格しなければならない。
- 受験資格を満たすのは簡単ではない。
- 学歴や実務経験で試験科目が免除される。
- 税理士登録を行うには試験以外に実務経験も必要になる。
税理士になる方法は3種類
税理士は広く世に知られた士業の一つです。すべての国民の生活に深くかかわる税金・税務のプロフェッショナルであり、幅広い分野で活躍できる職業です。
法人や個人事業者の納税を代行したり、相談に乗ったりするのが主な仕事です。また、納税に関わる手続きだけでなく、経営に関するコンサルティングを行うこともあります。
以下では税理士になる3つの方法を確認していきましょう。
税理士試験に合格する
税理士になるには、税理士試験に合格し、税理士登録するのが最も一般的な方法です。ほとんどの税理士はこの方法で税理士資格を手にしています。
税理士試験が行われるのは一年に一回だけであり、数ある国家試験の中でもトップクラスに難易度の高い試験です。
試験では会計学に関する科目を二つと税法に関する科目を三つ、合計五つの科目で合格しなければなりません。それぞれの科目合格率は15パーセントほどです。試験は1科目ごとに合格しても良く、実際数年かけて合格を目指す人がほとんどです。
また、受験資格も制限されているので誰でも気軽に受験できる試験ではありません。多くの方はまずは受験資格を得るところから始まります。
登録には2年の実務経験が必要
実は、税理士試験に合格しただけでは税理士にはなれません。試験に合格した後、税理士名簿に登録して初めて税理士になれます。
しかし、税理士名簿への登録もまた、試験合格だけではできないのです。税理士名簿への登録には二年間の実務経験が必要です。
つまり、税理士試験の合格と二年間の実務経験の後に名簿への登録を行ってやっと税理士になれるということです。このように、税理士になるには長い道のりを歩む必要があります。
他の国家資格による税理士登録
税理士試験に合格する以外にも税理士になる方法があります。たとえば、指定されている国家資格を取得している場合は、税理士試験に合格していなくても税理士になることができます。
税理士に登録できる国家資格には弁護士と公認会計士があります。これらの資格を取得している人は本業の仕事に加えて、税理士業務もできるようになります。
とはいえ、税理士になるには登録費用を支払い、手続きと研修を済ませねばなりません。そのため、資格を持っていても登録しない人も多いです。
23年または28年以上の税務署勤務
税務署での勤務経験もまた税理士になる方法の一つです。10年または15年の勤務で税法関連の科目が免除となります。そして、23年または28年の勤務で会計関連の科目が免除されます。
税理士試験に合格する条件は会計科目二つと税法関係の科目三つに合格することです。したがって会計科目まで免除されることで税理士試験のすべての科目が免除されたことになります。よって、税理士として登録可能になるのです。
なお、10年または15年や23年または28年となっているのは業務内容によって変わるためです。自分の業務がどちらに当たるのか、あらかじめ関係法でしっかり確認しておきましょう
税理士試験の受験資格
税理士になるには税理士試験に合格するのが一般的な方法です。しかし、税理士試験は受験資格がなければ受験できません。
この受験資格を得るのが少しばかり厄介です。受験資格の取得方法はいくつかあります。これから紹介する要件のうち、どれか一つを満たせば大丈夫です。
学歴によるもの
学歴によっては税理士試験の受験資格があります。この要件は大きく三種類に分かれます。
まず、「大学や短大、高等専門学校を卒業した人」の場合です。この場合の要件は、法律学または経済学に関する科目を1科目以上履修していることです。
次に、「大学三年次以上に在学中の人」の場合を見てみましょう。この場合は、法律学または経済学に関する科目1科目以上の履修および取得した単位数が62単位以上であることです。
また、「一定の専修学校の専門課程を修了した人」も対象です。この場合も、法律学または経済学に関する科目を1科目以上履修していることが求められます。
まとめると、法律か経済のどちらかの科目を1科目は履修することと卒業することの両方を満たす必要があります。ただし、大学に限っては条件付きで在学中に受験資格が得られることもあるということです。
学歴が高くないと試験で不利?
上記のように、大学や短大を卒業している人が税理士試験の受験資格を手にしやすいといえます。では、高卒の人が不利になるような試験なのでしょうか?
結論から言えば、そのようなことはありません。税理士試験で出題される内容は高校までに学ぶ内容とはほぼ無関係です。そのため、必ずしも高学歴の人が有利とはいえません。
ただし、試験を受験する人には学歴要件を満たした人が多いのも事実です。実際、試験合格者の80パーセントは大卒者です。
資格によるもの
特定の資格の保有でも税理士試験の受験資格が得られます。法律学や経済学を履修していない大学生や高卒の人でも可能な受験資格の取得方法です。
日商簿記検定1級の合格者と全経簿記検定上級の合格者には試験の受験資格が与えられます。特に簿記1級は税理士試験の受験資格目的で受験する人も多いです。
その他、司法試験の合格者や公認会計士試験の短答式試験に合格した人にも受験資格があります。
実務経験によるもの
税理士試験の受験資格の取得方法には実務経験によるものもあります。実務経験は大きく三つに分かれます。
- まず、法人や個人事業における会計事務の経験です。
- 次に資金の貸付・運用に関する業務。銀行や保険会社、信託会社での業務ですね。
- 最後に税理士や公認会計士の補助事務です。
上記の三つの実務経験がある人には、税理士試験の受験資格が与えられます。なお、いずれも2年以上の経験が必要です。
学校の学位や実務経験による科目免除も
大学院で会計学や税法に関する研究を行い、学位を得た人は一部の科目試験が免除されます。修士と博士で条件や免除内容が異なるので、分けて解説します。
博士号の場合
最初は博士の学位を持っている場合です。博士号取得者は、研究内容が属する科目の試験がすべて免除されます。
つまり、会計学に関する研究で学位を持っている場合には会計学の科目がすべて免除されるということです。同様に、税法に関する研究なら税法系の科目が免除されます。
そのため会計学と税法それぞれで博士号を取得している場合は試験科目がすべて免除され、試験を受けずに税理士になれます。とはいえ、時間や金銭面での負担も相当なもの。
理論上は可能ではありますが、実際に博士号による科目免除だけで無試験で税理士になる方はほぼいないと言って良いでしょう。
修士号の場合
次に修士号の場合を確認しましょう。修士号の場合は条件が複雑で、学位だけでは免除にはなりません。
一つ目の条件は会計学や税法に関する論文執筆で修士号を取得していること。免除申請には学位論文の写しを提出しなければなりません。
二つ目の条件は該当する科目で1科目合格することです。会計に関する修士号を持っているなら会計の科目で、税法なら税法に属するいずれかの科目に一つは合格しておく、ということです。
上記の条件を両方満たすことで一部科目が免除されます。博士号と同じく、免除されるのは学位を取得している科目だけです。
実務経験の証明方法は?
受験資格や名簿への登録など、税理士になるには実務経験が必要です。
では、その実務経験はどう証明すればよいのでしょうか。また、具体的にどのような経験が実務経験と認められるのでしょうか。
実務経験の証明方法
実務経験の証明には在職証明書という書類が必要です。就業していたことを証明する書類で事業所の責任者の捺印が必須です。企業によっては就業証明書や雇用証明書といった名前で呼ばれることもあります。
就業先や業務内容、雇用形態によっては職務概要証明書や勤務時間証明書が必要なこともあります。複数の業務も兼任している場合に業務内容を説明したり、非正規雇用で労働時間を証明したりする書類です。
実務経験の具体例
税理士になるための実務経験には、簿記会計や税務に関する事務作業が当てはまります。会計や税理の知識が求められる事務作業です。
例えば、仕訳帳から各勘定への転記作業元帳から日計表を作成する業務が当てはまります。一般的な簿記会計ですね。税務なら、企業や官公庁での税務事務が該当します。
ただし、簿記や会計の知識が必要のない事務作業は実務経験に当てはまりません。扱う書類や数字が会計に関するものであっても、コピーを取るような単純事務や電卓をたたくだけの計算は含まれません。
実際には個々のケースが実務経験に該当するかどうか審査員が面接によって審査します。審査は税理士会が行います。
税理士になるのはどれくらい難しい?
これまで税理士になるにはどのような方法があるか紹介してきました。どの方法を選ぶとしても、税理士になるのは非常に難しいといえます。
ほとんどの方が通るであろう税理士試験は国家試験の中でも有数の難関試験です。合格には5年はかかるとさえ言われています。
予備校や通信講座を受講するのが基本
税理士試験は難易度が非常に高いので、独学で合格を目指す人はあまりいません。学習期間が長いので、独学では途中で挫折してしまったり最適な学習方法がわからなくなったりするからです。
そのため、予備校や通信講座を利用する人がほとんどです。プロの指導やカリキュラムを活用する方がスムーズに合格に近づくことができます。
特に近年は通信講座の発展に目覚ましいものがあります。時間や場所の制約の多い予備校よりも、いつでもどこでも学べる通信講座が人気を集めています。
税理士になるための学校も存在
民間の資格学校とは別に、経理や会計関連の資格を目指す専門学校も多数あります。これらの学校の目的は税理士や簿記などの資格取得です。
学校が豊富にあるということは、税理士が人気のある資格であることと同時に、税理士がそれだけ難しい試験であることを物語っています。
税理士になるために必要な素質
税理士は試験合格と実務経験さえあれば誰でもなることができます。一方で、その仕事柄、ある程度の適性があるのも事実です。
数字に苦手意識がない
第一に、数字に苦手意識がないことです。税理士は数字を扱う機会の非常に多い仕事です。数字を見るのも嫌という人や数字を扱うのが苦手という人よりは、数字に強い人の方がより適性があると言えます。
税理士試験はもちろんのこと、受験資格を得るために取得するであろう簿記の資格も数字を扱う資格です。実務経験でも数字を扱うことになるので、数字に苦手意識を持たないことはある意味で必須だと言えるでしょう。
対人スキルの高さ
次に、対人スキルの高さも求められます。もし税理士法人に勤務する場合、同僚とチームになり協力し合って仕事をする機会が多くあります。一般的な社会人以上の対人スキルが望ましいでしょう。
また、顧客の抱えている課題を解決するためにヒアリングを行うことも税理士の仕事の一つです。顧客にとって良き相談相手になれるコミュニケーション能力も税理士には必要です。
正確に仕事をこなす力
そして、正確に仕事をこなす力も大切です。税理士はいわば税に関するプロフェッショナル。専門家としてミスなく仕事をこなす能力が求められています。
税理士は他の士業に比べ細かな数字や計算を扱う機会が多く、正確さは特に必要です。ミスをかぎつける嗅覚が身についているとさらに有利だと言えます。雑な人よりも丁寧な人の方が税理士に適しているでしょう。
倫理観も求められる
最後に挙げられるのは倫理観です。税理士の持っている税法に関する知識は、その気になれば脱税に利用することもできてしまいます。当然、そういった個人的な利益のために役立ててはなりません。
自分自身はもちろんのこと、たとえクライアントから脱税の協力を持ち掛けられたとしてもキッパリと断るだけの倫理観が税理士には必要です。
税理士の仕事内容と年収
晴れて税理士になったなら、どんな仕事ができるのでしょうか。また、その待遇は資格取得の難易度に見合ったものなのでしょうか。
ここでは税理士の仕事内容や年収についてお伝えします。
税理士の主な業務内容
税理士の主な業務は税に関する書類の作成や行政手続きのサポートです。これらの仕事は税理士にしかできない独占業務です。
納税は国民の義務の一つです。しかし税に関する仕組みは複雑で、納税のためには厄介な書類を作成しなければなりません。
不慣れな書類を作る際には、専門家の力を借りるのが一番早いですよね。税理士は素人には難しい税金関係の手続きを代行できる唯一の仕事です。
法人税や所得税だけでなく相続税や固定資産税などを支払う必要ができた時にも助けになります。
また、企業経営に関する相談に乗ることもできます。経営バランスや営業赤字などの問題があった時にも税理士は支えになります。
法人勤務も独立も可能
税理士の働き方は人によってさまざまです。法人に勤務することもできますし、独立して開業することもできます。自分に合ったスタイルを選べるのも税理士の魅力の一つと言えるでしょう。
税理士の転職市場は現在かなりの売り手市場と言われています。近年、税理士試験の合格者が減少してきていますが、その一方で税理士法人は増加傾向にあります。結果、人手不足に陥っているというわけです。
就職先としてイメージしやすいのは税理士法人や会計事務所ですが、一般企業に就職する人もいます。また、経営相談が可能という点からコンサルティングファームで働くことも選択肢の一つに入ってきます。
税理士資格を持っていれば就職・転職先に困ることは稀だと言えるでしょう。
平均年収は1000万円以上
税理士の平均年収は1000万円以上であると言われています。「以上」とあるように、より多く稼ぐことも可能です。
税理士は独立開業している人と法人に雇われている人とで年収に大きな差があります。勤務税理士でも比較的高水準の収入を得られますが、独立開業している人の方がより高収入な場合が多いです。
実際、税理士資格の取得者の8割が独立しており、むしろ被雇用者として働く方が珍しい職種だと言えるでしょう。
開業税理士の正確な収入は把握されていませんが、平均年収はおおよそ3000万円以上ではないかと言われています。
ちなみに、ネット上では税理士の平均年収は500~700万円と言った情報も見かけますが、そのほとんどが開業税理士の収入をほとんど反映できていません。
データが勤務税理士のものに偏ってしまっていることで、比較的低めに見積もられてしまっていることを認識しておきましょう。
税理士になる方法まとめ
税理士なる方法についてざっくり説明すると
- 税理士試験に合格するのが一般的。
- 学歴や職務経験によっては試験が免除される
- 独学は困難。通信講座が人気。
- 登録には合格以外に実務経験も必要になる。
- 税理士は非常に高収入であり、仕事先にも困らない。
税理士なるには非常に難しい道を歩む必要があります。時間もお金もかかるので、なるだけでも大変です。
しかし、税理士は多くの人に必要とされる大切な仕事。資格取得後のキャリアは非常に明るく、目指すだけの価値はある資格なのは間違いないでしょう。