税理士試験の法人税法の特徴・難易度は?頻出論点や学習上の注意点まで徹底解説!
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税理士
脇田弥輝
「そもそも税理士試験の法人税法ってどんなことを勉強するの?」
「法人税法の難易度や合格率が知りたい!」
このような悩みや疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
数ある税理士試験科目の中でも法人税法はかなりの鬼門であり、毎年たくさんの税理士受験生を苦しめています。
ここでは税理士試験の法人税法について、科目の特徴や難易度、目安の勉強時間まで徹底解説します!
また、試験の傾向と対策についても具体的にお伝えします。これを読めば法人税法についてはバッチリです!
税理士試験の法人税法についてざっくり説明すると
- 難易度は税理士の試験科目の中で最も高い
- 受験者数が多く、合格率も例年低い
- 実務に直結している科目であり、基本的に避けては通れない
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税理士試験の法人税法の概要
税理士は誰もが知っている有名な難関士業であり、国家資格の中でもトップクラスの難易度を誇ります。
税理士になるためには税理士試験の科目11科目のうち5科目に合格することが必要です。
法人税法は2科目ある選択必須科目の中の1つであり、所得税法とどちらか一方は必ず学習しなければならない決まりとなっています。
法人税法で学ぶ内容
そもそも法人税とは法人の利益に対して課される税金のことであり、所得税や消費税と同じくらい重要度の高い法律です。
税理士試験における法人税法の科目では、法人税法だけでなく法人税に関連のある法律全てを学ぶことになります。
問われる内容の深さを見ると、基本的には法律の範囲内で解答できるものとなっていますが、理論の学習においては単なる条文だけでなく、更に深いレベルの理解が求められるため、勉強を進めていく上でかなり時間がかかるでしょう。
法人税法の科目の特徴と受験者数
税理士は法人を相手に業務を行うのが一般的であるので、法人税法は税理士として実務を行っていく上で最も重要になってくる法律です。
実際、法人税法の受験者数は税法科目の中では消費税法に次いで2番目に多く、選択する人が極めて多いことがわかります。
また、所得税法とどちらか一方は必ず選択する必要がありますが、法人税法の受験者数は所得税法の倍以上であり、重要度の高さが伺えます。
出題範囲
出題範囲は過去問から考えると以下のようになっています。
-
法人税法とその施行令、施行規則
-
租税特別措置法とその施行令、施行規則
-
減価償却資産の耐用年数などに関する省令
このような、法人の経理に関する問題が総合的に出題されます。
具体的には、交際費の算入や欠損金に関する出題なども多く見受けられるため、一つ一つの論点を丁寧に覚えていく必要があるといえます。
出題形式
法人税法の出題形式は、理論問題が50点・計算問題が50点の100点満点です。他の税法科目と変わらず標準的な出題傾向となっています。
理論問題は例年2題出題されます。配点は25点+25点または30点+20点となっており、内容としては1題が論述でもう1題が事例問題であるケースが多いです。
計算問題は総合問題が出題されることが多く、所得金額の計算や税額の計算が出題される傾向が強いです。
また、近年では理論的側面を記述させる問題も頻繁に出題されているため、単に計算問題をひたすら解くだけではなく理論的な面も併せて押さえておく必要があります。
法人税法の難易度
法人税法は、税理士試験の科目の中でも最も難易度の高い科目です。
以下、実際のデータを確認しつつ難易度の高さを見ていきましょう。
法人税法の合格率
年度 | 合格率 |
---|---|
2022年 | 12.3% |
2021年 | 12.8% |
2020年 | 16.1% |
2019年 | 14.72% |
2018年 | 11.58% |
2017年 | 12.06% |
2016年 | 11.61% |
2015年 | 11.07% |
2014年 | 12.40% |
2013年 | 12.38% |
ここ数年の法人税法の合格率の推移はこのようになっています。
合格率は多少ばらつきはあるものの、概ね12%前後で推移しており、他の税法科目と比べてもやや低い水準にあります。
特に同じ選択必須科目である所得税法よりも例年合格率は低く、税理士試験の中でも難易度が高い科目といえるでしょう。
参考までに、所得税法と住民税法のここ数年の平均合格率は13%を超えています。
合格点は60点以上と規定されていますが、上位10%~15%が合格になるように配点が調整されるようです。
法人税法の合格ライン
税理士試験の合格基準点は全科目で共通しており、60点と定められています。
つまり、名目上は絶対評価の試験となっていますが、実際は他の受験生と競い合う相対評価の試験だというのは有名な話です。
合格率を鑑みると全受験生のうち上位10%に入れば合格することができます。
では、上位10%に滑り込むにはどの程度の得点が必要になるのでしょうか?
上位10%に入るための得点は問題の難易度によっても異なりますが、法人税法の場合は毎年概ね70点前後となっています。
他科目の税法の中には、9割近く得点しないと合格できない科目も見られるので、法人税法の合格ラインが極端に高いということはありません。
日頃の勉強から8割前後を得点できる学力をつけるイメージで進めていけば問題ないでしょう。
法人税法が難しいと感じる理由
法人税法の難易度が高い理由として真っ先に挙げられるのが、試験範囲が膨大であることです。
法人税法は覚えるべき内容が極めて多く、非常にたくさんの知識を正しく理解し応用する力を身に付ける必要があるため、とても勉強に時間がかかってしまいます。
そのため、日頃から「自分は今ここの論点を勉強している」という意識を強く持っていないと、覚えた知識がどの内容だったか分からなくなってしまうので注意しましょう。
このようなことから、法人税法1科目で難関国家資格1つ分くらいの難しさがあるとも言われています。
計算問題の出題もバリエーションに富んでおり、適切な計算を臨機応変に使いこなさなければならないため、これも難易度を上げている要因となっています。
法人税法向けのおすすめ勉強法
勉強時間の目安
法人税法を合格するための勉強時間としては、700時間が目安となります。
1日3時間の勉強であれば、7~8ヶ月が学習期間の目安になりますが、確保できる勉強時間は一人一人違うので余裕を持った勉強スケジュールを組んでいきましょう。
また、700時間というのは単なる目安であり、700時間程度学習すれば法人税法について一通り学ぶことができる、ということでしかありません。
上述のように税理士試験は相対評価の試験です。他の受験生よりも多くの得点を稼ぐ必要があるので、時間をかけてでも得点力を磨く必要があります。
特に法人税法は本当に難易度が高く、目安の倍以上勉強したという人も珍しくありません。受験の際は気を引き締めて学習に取り組みましょう。
基本論点の得点率が合否を分ける
最近では計算問題でも理論的側面の説明が求められるなど、難易度の高い出題が目立っています。
もちろんそのような難問を解けると周囲と差をつけることができます。
しかし、実は合否を決めるのは難問ではなく「誰でも解ける問題」を確実に得点しつつ「やや難しい問題」を出来るだけ得点する力です。
特殊な論点はそもそも周囲の得点率もかなり落ちるので、そこで合否はほとんど決まりません。
過去に頻出の論点や他の受験生もよく学んでいる内容をしっかり固めて、周りが正解している問題を確実に落とさないようにすることがまず重要です。
個別問題から取り組もう
法人税法で学ぶ内容は膨大ですが、最終的には総合問題に対応する力を身に付ける必要があります。
しかし、そのためにはまずは個別問題で各項目の基礎をしっかりと固めなければなりません。
いきなり総合的な知識を身に付けようとすると必ず無理が出てくるので、じっくりと論点ごとの基礎を押さえることが重要です。
上述の「誰でも解ける問題」を中心に重点的に学習を進め、しっかりと知識の土台を作ることを意識しましょう。
仮に一度勉強したことを忘れてしまっても、焦らずにもう一度テキストや過去問を通じて知識を定着させていけば全く問題ありません。
法人税法の頻出論点
法改正などの影響もあり、税理士試験の科目はどの科目も毎年出題傾向や論点が大きく変わります。
そのため出題のレベルを知る上では過去問はとても有効ですが、過去問から傾向を探るのは簡単ではありません。
一方で、「減価償却」「寄附金」「法人税額の特別控除」など、比較的大きな括りであれば頻出の問題は確認できるため、参考にすると良いでしょう。
予備校・通信講座の講義や過去問演習を通じてこれらの頻出事項は確認しておくようにしてください。
独学で勉強しても合格できる?
周知の通り、法人税法の対策を独学で行うことは基本的におすすめしません。実際、ほとんどの受験生が予備校や通信講座を使って勉強しています。
予備校や通信講座を活用することで重要度の高い内容に絞って学習することができるので、無駄なく効率的に勉強を進められるでしょう。
逆に言えば、大半の受験生が予備校等を活用して最短経路で合格を目指しているので、独学でこうしたライバル達に打ち勝つのは極めて難しくなっています。
そのため、わざわざ独学という茨の道を選択するのは、よほどの事情がない限り避けた方が良いでしょう。
働きながらの勉強は通信講座で
働きながら法人税法の勉強をされるのであれば、わざわざ校舎に通わなくても勉強ができる通信講座で学ぶのがおすすめです。
特にスマホ学習に特化しているスタディングの税理士講座であれば、忙しい方でも隙間時間に勉強を進めることができます。
さらに講座費用も法人税法コースで49,500円からと他社と比べて圧倒的に安いので、費用を抑えつつ税理士合格を目指したい方は是非一度チェックしておきましょう。
法人税法対策におすすめのテキスト・問題集
既に上でも述べたように、法人税法の学習は基本的に予備校や通信講座を活用して行うので、テキスト等は各社が講座内で提供しているものをそのまま用いれば問題ありません。
ただし、その上でさらに演習量を増やしたいという方であれば、TAC出版の「税理士受験シリーズ 法人税法 総合計算問題集」を利用するのがおすすめです。
TACの「税理士受験シリーズ」は15年連続売上No.1の大人気教材なので、試験対策用の教材として抜群の信頼度とクオリティを誇ります。
こうした問題集も上手に活用しつつ、効率よく法人税法の対策を進めていってください!
法人税法を選ばないのはアリなのか?
法人税法の科目の難易度はあらゆる科目の中でもずば抜けて高いので、実際に法人税法が合格できずに何年もかけてしまう人も多いです。
そのため、「実務に関する能力を身につける」ということは度外視して単に試験合格を主眼に置くなら法人税法は避けた方が良いでしょう。
しかしその一方、法人税法の知識は税理士として活躍するためには必要不可欠な知識であり、あらゆる試験科目の中で重要度は最も高いといえます。
そのため合格後の税理士としてのキャリアを見据えるのであれば、基本的には法人税法を選択せずに避けるということはあまりお勧めしません。
資格を取得してからが本格的な業務のスタートですから、ただ単に合格を目指すだけという理由で法人税法を捨てるのはもったいないと言えます。
実際、実務に直結する内容の方が勉強していて楽しいものです。
実際に自分が税理士として活躍している姿をイメージしながら勉強すれば、モチベーションも保ちやすいでしょう。
法人税の実務を扱う上で重要なこと
法人税を専門的に扱う税理士は、企業に対して法人税に関するアドバイスをしたり、税務処理のサポートをします。
法人税の計算方法は複雑で、また関連する法律も改正があったりするため、一般企業の経理担当者が容易に理解できるようなものではありません。
そこで、税のプロフェッショナルである税理士がサポートすることにより、法人が円滑に税金を支払えるようになるのです。
このことから、税理士を勉強する過程の中で「自分が税理士だったらこのようにアドバイスをする」「ここの帳簿の付け方などは間違えやすいから注意する必要がある」など、実践的な能力を身に付けるような勉強法をしていくと良いでしょう。
税理士試験の法人税法まとめ
税理士試験の法人税法まとめ
- 他の科目と比べると難易度が高く、法人税法の合格だけで何年もかかるケースがある
- 合格率は例年12%前後で、合格までには700時間ほどの勉強が必要
- 難しいが実務的な知識を身に付けられるので、基本的には選択する
- いきなり総合問題の攻略を目指すのではなく、論点ごとに丁寧に勉強していくと良い
税理士試験の法人税法は特に難易度が高く、挫けてしまいそうになることもあるかもしれません。
しかし、その難しい法人税法をクリアしてしまえば他の科目では法人税法ほど苦労することはないでしょう。
税理士のニーズは今後も高い水準を維持していくと予想されるので、実践力が身につく法人税法を合格することは自分の価値を挙げるという意味ではとても魅力的です。
税理士の合格を目指している人はぜひ法人税法の合格を狙ってみてください!