税理士試験の財務諸表論の難易度は?科目の特徴や出題傾向・対策法まで徹底解説!
「税理士の財務諸表論ってどんな科目なの?」「試験の難易度はどのくらい?」「どうやって勉強すれば良いのだろう?」
財務諸表論の勉強に頭を悩ませている受験生も多いかと思います。
税理士試験は難関の国家試験といわれています。財務諸表論は必須科目であり、税理士になるためには受験、合格することが必要不可欠です。
ここでは税理士試験の財務諸表論の難易度について、科目の特徴や出題傾向・対策法まで徹底解説します!
この記事を読み終わる頃には、財務諸表論という科目についてはバッチリです!
税理士試験の財務諸表論をざっくり説明すると
- 税理士試験の財務諸表論の難易度はとても高い
- 財務諸表論の平均合格率は約18%
- 勉強時間の目安は500時間
- 簿記論と同時に勉強を進めるのが一般的
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税理士試験の財務諸表論の概要
税理士は誰もが知っている士業であり、その資格は国家資格の中でもトップクラスに難易度が高いといえます。
税理士になるためには、税理士試験の科目である11科目のうち5科目に合格することが必要です。
財務諸表論は2科目ある必須科目の中の1つであり、簿記論と併せて必ず受験しなければならない科目です。
以下では財務諸表論とはどんな科目なのか、詳しくみていきたいと思います。
財務諸表論で学ぶ内容
財務諸表論では、法人の帳簿を作成する際の計算方法や財務諸表の作成方法について学びます。
財務諸表とは企業の財政状況や経営成績を記したもののことであり、株主や債権者など、その企業と利害関係のある人物に読まれることを想定して作成されます。
財務諸表には企業が物を買ったり売ったりなど、経営活動に関する内容が記録されています。財務諸表を読むことで、その企業の経営が上手くいっているのかどうかの実態を掴むことができます。
また簿記論で学ぶ計算の理論的な背景を学ぶことになるので、簿記論と平行して学習を進める人が多いです。
財務諸表論の科目の特徴と受験者数
財務諸表論は税理士の必須科目であり、実際に財務諸表論の知識がなければ実務の面で困るケースもあります。
税理士として仕事をするときに決算書に触れたり、ルールに沿って正確な書類を作成する際に重要となります。
財務諸表論は必須科目なので、もちろん税理士試験の科目のなかでもかなり受験者数が多く、簿記論に次いで2番目となっています。
出題範囲
財務諸表論の出題範囲は以下のようになります。
- 会計原理
- 企業会計原則
- 企業会計の諸基準
- 会社法中計算等に関する規定
- 会社計算規則(ただし、特定の事業を行う会社についての特例を除く。)
- 財務諸表等の用語・様式及び作成方法に関する規則
- 連結財務諸表の用語・様式及び作成方法に関する規則
財務に関することを中心に幅広く出題されます。仕訳や勘定科目について理解していること、情報を読み取ることができる力も大切になってきます。
出題形式と配点
財務諸表論では理論問題が50点、計算問題が50点の100点満点で、計算問題がほぼ全てを占める簿記論とは毛色の異なる出題となります。
例年3問出題され、第一問と第二問が理論問題で配点はそれぞれ25点、第三問が計算問題で50点となっています。理論問題はそれぞれ学者試験委員が担当、計算問題は実務家試験委員が担当しています。
理論問題では論述問題が出題されますので、問われていることに対して的確な答えが導き出せるように対策をするなどして、備えておくことが大事です。
財務諸表論の難易度
財務諸表論は非常に難易度が高い科目です。選択必須科目の2科目が税理士試験の最も難しい科目ですが、財務諸表論はそれに次いで難易度が高いといえます。
実際のデータから、財務諸表論が本当に難しいのかをみていきます。
財務諸表論の合格率
財務諸表論の合格率の推移は以下のようになっています。
年度 | 合格率 |
---|---|
2009年 | 15.98% |
2010年 | 13.10% |
2011年 | 16.63% |
2012年 | 20.74% |
2013年 | 22.38% |
2014年 | 18.40% |
2015年 | 15.62% |
2016年 | 15.32% |
2017年 | 29.56% |
2018年 | 13.37% |
2019年 | 18.91% |
2020年 | 19.0% |
2021年 | 23.9% |
2022年 | 14.8% |
財務諸表論は11科目ある税理士の試験科目のなかでも飛び抜けて合格率の振れ幅が大きく、高い年では29.56%と異常とも言える合格率を記録したこともあります。
合格率の振れ幅は大きいものの総じて合格率は高めであり、平均合格率は約18%です。
特に同じ必須科目である簿記論よりも例年合格率は高く、他の科目と比較しても財務諸表論の合格率は高めだといえます。
財務諸表論の合格ライン
税理士試験の合格基準点は、科目にかかわらず60点と定められています。つまり名目上は絶対評価の試験ではありますが、実際は他の受験生と競い合う相対評価の試験だといえます。
そのため、合格率を鑑みれば、全受験生のうち上位17%に入れば合格することができるということです。上位17%に入るための得点は問題の難易度によっても異なりますが、財務諸表論の場合は、毎年大体50~60点前後です。
6割を得点することが難しいと感じる人もいらっしゃるかも知れませんが、税法のなかには7割以上得点しないと合格できない科目も多いので、合格ラインが極端に高いというわけではありません。
財務諸表論が難しいと感じる理由
財務諸表論に対して苦手意識を持つ原因のひとつに、試験範囲が膨大なことがあげられます。その範囲の広さにはかなり衝撃を受けるのではないのでしょうか。
また、暗記すれば良いというわけではなく、ポイントを押さえて内容を正しく理解することが求められます。
さらに基本論点については他の受験生もかなりの得点を叩き出してくるので、ミスなく解答することが求められます。
暗記と理解の両方が大切で、知識も偏りがないように地道に勉強し続けることが肝心です。
簿記論と財務諸表論はどっちが難しい?
必須科目である簿記論と財務諸表論の2科目を同時に勉強する人も居ますが、どちらもボリュームが多いので、片方ずつ受験する人も多いです。
基本的には計算スピードや正確性など、高度な計算力を終始求められる簿記論のほうが難易度は高いです。
それでは先に財務諸表論の合格を目指すべきかと言われればそうではなく、先に簿記論で計算の基礎を固めたほうが、財務諸表論の勉強もしやすく効率的だといえます。
簿記論と財務諸表論の関係
この2科目は全く別の内容というわけではなく、相互に関連性があります。
簿記論で計算のルールや方法を押さえておくと、財務諸表論の勉強に大いに役立ちますし、理解が深まります。
簿記論は計算問題が中心なので、電卓を使って机の上で勉強する場所、手間、時間が必要になります。簿記論を先にクリアしておけば、財務諸表論に割く時間も労力も少なくて済むといえるでしょう。
時間に余裕がある場合は2科目を同時に受験するという方法もあります。どちらかが不合格でも、もう一方が合格という可能性もありますし、知識と経験をもって翌年につなげることができます。
財務諸表論向けのおすすめ勉強法
先述の通り、財務諸表論は理論と計算がありますが、どうやって勉強を進めていくのが良いのでしょうか?
ここでは勉強時間や学習の論点など、おすすめの勉強法をいくつかご紹介します。
勉強時間の目安
勉強時間としては500時間が目安です。1日3時間、財務諸表論の勉強に割けるとしたら、5-6ヶ月が学習期間の目安になります。
ただし、上記の学習期間については、内容の重複の大きい簿記論と並行して学習を進める、あるいは簿記論の合格後に勉強をすることが前提で、全くの知識ゼロからスタートするわけではありません。
そのため、ゼロの状態から500時間というよりは、簿記論の知識ありきで500時間ほど必要だということです。もちろん勉強時間には個人差があり、簿記などの関連知識があるかどうかによっても変わってきます。
計算問題で得点を稼ぐ
先述の通り、財務諸表論では計算問題で点数が取りやすく、試験本番では計算問題をいかに得点できるかが重要になります。40点を目標にすると、理論問題の勉強にも余裕が出てきます。
試験時間は120分です。時間配分は理論40分、計算70分、見直し10分を目安にすると良いでしょう。問題を解く順番は計算問題を先に解くことがおすすめですが、理論が得意な人はそこからでも良いです。
難問やわからない問題は後回しにして、取れそうな問題から先に解いていくことが大切です。ケアレスミスなどがないように落ち着いて取り組みましょう。
理論に対する苦手意識をなくす
計算問題については幸い厄介なひっかけ問題や難解な出題は少ないので、いったん知識を身につければ安心して高得点を狙うことができます。
財務諸表論では計算よりむしろ理論問題に対して苦手意識を持っている人が多いです。暗記が得意でない人にとっては苦痛かも知れませんが、適切な方法で対策することで得点に結びつきやすくなります。
初見では理解するのが難しい内容も多いので、まずは計算問題である程度概要を把握した上で、理論の理解に入ることがおすすめです。計算と理論を関連付けて勉強することを意識すると良いでしょう。
繰り返し行うことが大切
覚えてもすぐに忘れてしまうとお悩みの人も多いでしょうが、勉強をしていくなかでは、忘れたことを思い出すという過程を大事にすると良いです。反復していくうちに知識として定着します。
一度学んだだけで解答レベルまで理解することはなかなかできないので、繰り返し学習することが求められます。
テキストは一回読むだけではなく、何度も読んでいくうちに前には意味が分からなかった部分が頭に入ってくることもあり、理解が深まってきます。
模試は会場受験がおすすめ
税理士受験生であれば模擬試験を受ける機会も多いでしょう。
模試は自宅受験より会場受験をおすすめします。受験生が集まり、試験本番と同じような雰囲気を味わうことができる点で有意義です。
特に税理士のような相対評価の試験の場合、模試を受験すると自分が今どのくらいの位置にいるのかを客観的に知ることができて試験本番に向けての勉強にも役立ちます。
また、会場に足を運ぶことで、試験の内容だけでなく、移動時間、服装、持ち物、ペース配分、体調管理など、環境を整える意味でも練習になります。
財務諸表論の頻出論点
税理士試験の科目はどの科目も、毎年出題傾向や論点が大きく変わるので、過去問から傾向を探るのは簡単ではありません。
一方で財務諸表論の過去の出題傾向をみてみると「金融商品に関する会計基準」や「固定資産の減損に係る会計基準」など、新会計基準からの出題が中心となっています。
また、近年では新会計基準に関連する伝統的な会計理論の内容も出題されています。
どの問題が出るかが予想しづらいものの全てを掘り下げるのには限界がありますので、重要な論点をおさえるようにしましょう。
出題のパターンを把握して問題に慣れるという意味では、過去問にもしっかりと触れておくことをおすすめします。
財務諸表論対策におすすめのテキスト
財務諸表論は税理士試験科目の中では市販の教材が充実している方であり、独学も不可能ではありません。
特にTACの出版している「みんなが欲しかった!」シリーズであれば、重要論点にしぼった効果的な学習ができるでしょう。
一方でそもそも税理士試験において独学という手段はあまり一般的ではなく、難易度の高さや出題範囲の広さを鑑みると予備校や通信講座を利用した方が良いというのが現実です。
また、独学で教材を揃えるにしても教材費は合計2万円近くかかるので、独学だからといって費用をかけずに合格を目指せるというわけでもありません。
スタディングの通信講座であれば、簿記論と財務諸表論を合わせた「簿財2科目ミニマムセット」を59,800円から受講可能です。
これを利用することで、独学でかける費用とほぼ変わらない値段でプロの講師の方の講義及び良質な教材を利用することができます。
当然通信講座を利用した方が、独学で勉強するよりも圧倒的に合格が目指しやすいので、財務諸表論と簿記論の2科目を受験しようとお考えの方はぜひ一度チェックしてみてください。
財務諸表論を科目免除する人も
税理士試験には科目免除という制度があり、これを利用することで財務諸表論の試験を受けずに税理士試験に合格することも可能です。
財務諸表論を免除する方法としては、以下の2パターンがあります。
-
平成14年4月1日以降に大学院に進学していて、会計学に属する科目等の修士の学位を持つ場合は、簿記論試験に合格することで財務諸表論が免除
-
平成14年4月1日以降に大学院に進学していて、会計学に属する科目等の博士の学位を持つ場合は、簿記論と財務諸表論の両方が免除
※平成14年3月31日以前に大学院に進学した場合は、上位と若干免除条件が異なるので注意
なお、当然ですが大学院に進学して学位をとるためには、かなりお金と労力が必要になります。
そのため、基本的には科目免除を利用せず、財務諸表論の試験合格を目指した方がおすすめと言えるでしょう。
税理士試験の財務諸表論まとめ
税理士試験の財務諸表論まとめ
- 税理士試験の財務諸表論の合格ラインは上位17%、毎年60点前後が目安となる。
- 合格率の振れ幅が大きいが、他の科目よりも比較的合格率が高めである。
- 簿記論を併せて勉強しておくと、財務諸表論の学習に効果的である。
- 理論と計算、それぞれの特徴に合わせて勉強法を工夫することが大切である。
ここまで、税理士試験の財務諸表論の難易度について、科目の特徴や出題傾向、対策法などを踏まえてあらゆる側面から徹底的に解説してきました。
税理士試験は非常に難しい試験です。もし勉強に行き詰まるようなことがあれば、合格後にどんな税理士になりたいかをイメージして、勉強へのモチベーションを高めていってください。
あなたも財務諸表論に合格して、税理士合格への大きな一歩を踏み出してみませんか。