特定行政書士になるには?仕事内容や研修科目・考査試験の合格率を解説!
「特定行政書士と行政書士では一体なにが違うのだろう?」
行政書士は人気資格であり毎年多くの人が受験しますが、行政書士資格の1つである特定行政書士がどんな資格なのか、気になっている人も多いのではないでしょうか?
この記事では特定行政書士の業務内容や資格取得方法を解説します。
通常の行政書士以上に業務範囲が広い特定行政書士は、魅力に溢れた資格です!
また特定行政書士資格を取得するメリットも紹介していきます!
特定行政書士についてざっくり説明すると
- 不服申し立てを行う権限を持つ行政書士を特定行政書士と言う
- 特定行政書士としての知識を活かすことで活躍の場が広がる
- 法定研修を受講して考査試験に受かると特定行政書士になれる
特定行政書士と行政書士の違い
通常の行政書士が行う業務に加えて特定の業務を行う権限を持つのが特定行政書士です。
専門的な業務を行う権限を持つので活躍の場が広がり、社会に果たす役割も担う責任も大きくなります。そのため特定行政書士になるためには特別な手続きを経る必要があります。
行政書士であれば誰でも特定行政書士になれる訳ではないので、特定行政書士の仕事内容や必要な手続きを理解しておくことが大切です。
普通の行政書士の仕事は?
行政書士は役所に提出する書類を作成するのが主な仕事です。
個人・法人問わず依頼を受けて公的書類の作成や官公署への申請を代行します。
取り扱うことのできる書類は1万種類以上とも言われ、手続き先となる官公署も多岐に渡るほか、独占業務もあるなど業務範囲が非常に広いのが特徴です。
しかしその守備範囲の広さ故に行政書士の仕事をイメージしにくいと感じている人も多いはずです。
まず書類作成業務には大きく3種類あり、「役所に提出する許認可申請に関する公的書類の作成」「民間取引や遺言といった民間の権利義務を明らかにするもの」「事実関係を証明するもの」があります。
そして書類作成や申請だけでなく、行政手続きに関する相談に応じたりコンサルティングを行うことも行政書士の仕事になります。
行政手続き及び法律のプロとして様々な場面で活躍できるのが行政書士という資格です。
特定行政書士にだけできること
特定行政書士は通常の行政書士にはできない不服申し立てという業務を行う権限を持っています。
これは許可申請を出して不許可になった場合に、行政官庁に処分の見直し等を求めるための手続きです。
そもそも不服申し立て業務は弁護士の仕事ですが、平成26年に法律が改正されて特定行政書士が誕生して以降は、特定行政書士も不服申し立て業務ができるようになりました。
通常の行政書士の業務に加えて弁護士領域にまで踏み込んだ資格が特定行政書士であり、法律家としての色合いが強い資格です。
書類作成や提出代行のような事務的な業務が多い通常の行政書士に比べて、特定行政書士は処分の見直しを求めて行政官庁との交渉を行うなど、豊富な知識を活かして幅広く活躍することが求められるのです。
不服申し立てってどんな仕事?
行政書士の業務内容は行政書士法で定められていますが、その中の1つとして以下の業務が規定されています。
「許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し(中略)官公署に提出する書類を作成すること」
これが特定行政書士しか行えない不服申し立て業務です。行政機関の下した処分に不服がある場合に、処分内容の撤回や是正を求めて行う手続きになります。
不服申し立て業務の仕組みと流れ
例えば建設業や運送業、飲食店などの許認可に関する手続きを行政機関に行うケースを考えてみましょう。このときに許可が通るケースがある一方で、残念ながら不許可になるケースも生じます。
通常の行政書士の場合は不服申し立てはできず弁護士に依頼しますが、特定行政書士は可能なので審査請求の手続きに入ります。
不服申し立ては処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内に行う必要があり、処分をした行政庁ではなく上級行政庁に行います。
ただし法律で特別に定められている場合は上級行政庁ではなく処分を下した行政庁に直接請求でき、これを再調査の請求と言います。
また審査請求をしたものの上級行政庁の判断に不服がある場合、その後に個別の法律に基づき行政庁に請求する再審査請求も可能です。
ただしこの場合も期日の制限があり、処分があったことを知った日の翌日から1ヶ月以内に再審査請求をしなければいけません。
そして審査請求に対しては「却下」「棄却」「認容」のいずれかの処分が下されます。
- 却下:審査請求の要件を満たしていない等そもそも不適法な場合
- 棄却:審査請求に理由がないと判断された場合
- 認容:審査請求の内容が認められた場合
不服申し立ての内容が認められれば認容の判断が下されます。しかし認められなかった場合は改めて訴訟を起こす必要があります。
ただし訴訟は弁護士の管轄です。その場合には弁護士に引き継ぐことになるので、特定行政書士としての仕事はここで終了となるのです。
特定行政書士の方が年収が高い?
不服申し立て業務の報酬単価は30万円前後です。例えば許認可申請の報酬相場は10万円程なので、不服申し立て業務を担うことができれば高い報酬を得ることができます。
ただし特定行政書士になって不服申し立て業務ができるようになっても、それだけで単純に年収がアップする訳ではありません。不服申し立ての件数自体が決して多くないからです。
総務省が公表した資料によると、平成28年の審査請求のうち行政書士に関連した「出入国及び難民認定法関係」は約6千件です。
そもそも件数が少ないので特定行政書士になっただけで業務依頼が増えるとは言い難く、年収の増加に直結するとは限りません。
しかし行政書士には単純な手続き以外の仕事もあります。法律のプロとして行うコンサルティング業務や相談業務がその一例になります。
これは持てる知識をフルに活用して様々な提案を行い、個人や経営者をサポートする仕事です。試験で培った知識の活かし方が最大限問われる業務であり、知識が増えた分だけ可能な提案が増えてやり甲斐も大きくなります。
特定行政書士としての知識が身に付けばコンサルティング業務や相談業務でプラスになることは間違いなく、通常の行政書士が担える業務でも質の高いサービスを提供できるようになる点がメリットと言えるでしょう。
特定行政書士になる方法
行政書士の資格を取得した上でさらに特定行政書士になるためには、法定研修を受講して考査試験に合格する必要があります。
考査試験は毎年およそ3割の行政書士が不合格になっている試験です。決して簡単ではなく、特定行政書士を目指す上では研修の内容や考査試験の合格率や難易度を事前に把握しておくことが大切です。
特定行政書士の法定研修の内容
4日間かけて合計18時間の法定研修を受講する必要があり、研修科目の内訳は以下の通りです。
研修科目 | 研修時間 |
---|---|
行政法総論 | 1時間 |
行政手続制度概説 | 1時間 |
行政手続法の論点 | 2時間 |
行政不服審査制度概説 | 2時間 |
行政不服審査法の論点 | 2時間 |
行政事件訴訟法の論点 | 2時間 |
要件事実・事実認定論 | 4時間 |
特定行政書士の倫理 | 2時間 |
総まとめ | 2時間 |
平日4日か土曜日4日を選んで受講できますが、特定行政書士は働きながら取得を目指す人が多い資格です。そもそも18時間全てを受講し切れるようにスケジュール調整できるかどうかがポイントになります。
離席が10分を超えると再受講が必要になり、再受講しないと考査試験を受けられません。特定行政書士の資格取得を目指す上では、法定研修の受講がまず最初に超えるべきハードルとなるのです。
考査試験の合格率
法定研修を終えると考査試験を受験します。直近5年間の合格率は以下の通りです。
合格率 | |
---|---|
令和元年 | 71.4% |
平成30年 | 68.3% |
平成29年 | 64.7% |
平成28年 | 65.3% |
平成27年 | 69.0% |
考査試験の合格率は65~70%であることが分かります。費用と時間をかけて受験しても約3割の人が不合格になる試験です。
法定研修の受講でも考査試験の対策でも言えることですが、しっかりと時間を確保した上で特定行政書士の資格取得を目指せるかどうかが重要になります。
特定行政書士試験を受験する際の注意点
特定行政書士になるための法定研修や考査試験には一定のルールがあるので注意が必要です。
そもそも法定研修を全て修了していないと考査試験を受験できず、講義を1つでも受けていないと考査試験の受験資格を失います。
そして試験は毎年10月の1回だけしか実施されません。少ない機会で確実に合格するためには、行政書士試験を受けてから期間を空けずに考査試験を受験したほうが知識を活かせるので有利です。
また研修費用として約8万円が掛かります。不合格になった場合には費用負担の軽減制度があるものの、無料になるのは考査試験の受験のみの場合で、翌年に講座を受講する場合は半額の4万円は掛かります。
不合格を続けて費用負担が増えることは避けるべきであり、考査試験では1発合格を目指して真剣に且つ集中して取り組む必要があります。
特定行政書士の需要と将来性
行政書士は取り扱う書類の種類も業務範囲も広いことが特徴です。全ての業務が許認可や不服申し立てと関係している訳ではなく、特定行政書士資格が役立つかどうかは行政書士ごとに異なります。
どのようなスタイルの行政書士を目指すのかによって特定行政書士資格の必要性は変わるので、特定行政書士の位置付けや需要・将来性を理解しておくことが大切です。
そこで以下では特定行政書士の需要や将来性について解説します。
特定行政書士という資格がどのような場面で必要とされる存在なのかを確認していきましょう。
不服申し立て業務が仕事に直結する行政書士とは?
例えば相続や遺言を主な業務としている行政書士の場合、許認可申請は行わないので不許可に伴う不服申し立てを行う機会もほぼありません。そのため特定行政書士を取得する意味はあまりないと言えます。
その一方で飲食店などの許認可申請に関する業務を手掛ける行政書士であれば、不服申し立て業務を行う可能性も当然高くなります。
このような行政書士にとっては、特定行政書士資格は時間や費用を掛けてでも取得するだけの価値がある資格です。
弁護士にはない特定行政書士としてのメリット
不服申し立ては弁護士でも出来る仕事ですが、顧客心理を考えると行政書士だからこそ不服申し立て業務を依頼しやすいことも確かです。
弁護士に依頼したり裁判に発展させるような大ごとにはしたくないと考える場合も多く、行政書士に依頼したい顧客は多くいるためです。
また許認可申請を行政書士に依頼した場合、不許可になった後に弁護士を探すのは手間が掛かります。不服申し立てまで可能な特定行政書士であれば一連の手続きをスムーズに行える点もメリットです。
特定行政書士になれば信頼度がアップ
どのような資格でも言えることですが、資格保有者の中でも特定の業務を行える場合には拍が付いて信頼度がさらにアップします。
行政書士の場合にはまさに特定行政書士が該当し、特定行政書士であることをアピールしている行政書士も実際に多く見られます。
通常の行政書士が行う書類作成業務は機械での自動入力やAIに代替される可能性がありますが、不服申し立て業務は個別の状況を考慮したり行政官庁との交渉が必要です。
AIに代替される可能性が低い業務なので将来性が高く、そのような業務を担える特定行政書士になればさらに信頼度がアップするでしょう。
特定行政書士まとめ
特定行政書士まとめ
- 特定行政書士は不服申し立てを行う権限を持っている
- 通常の行政書士よりも知識が豊富で業務範囲や活躍の場が広い
- 特定行政書士になるには法定研修受講と考査試験合格が必要
今回は特定行政書士について紹介しました!
業務範囲が広い行政書士は社会貢献度が大きい資格ですが、不服申し立てまで担える特定行政書士はさらに魅力も多く期待が高まっている資格です!
特定行政書士の資格取得を是非検討してみて下さい!