行政書士の試験合格後の登録は要熟考!登録手順や必要費用・メリットを解説!
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行政書士
宮城彩奈
「試験に合格しただけでは行政書士の業務を行えないの?」
「登録をしないなら試験に合格しても意味はない?」
そんな疑問を抱いている方はいませんか?
行政書士試験に合格したとしてもいくつかの諸手続きを行わないと、行政書士としての独占業務を遂行することは出来ません。
しかし中には試験に合格しても行政書士の登録をしない人もいます。
本記事では、行政書士登録の手順や費用、登録するメリットに加えて、登録が不要なケースについても丁寧に解説を進めていきます。
この記事を読めば、自分が行政書士としての登録を行うべきか否かを正しく判断することができるでしょう!
行政書士の登録についてざっくり説明すると
- 試験合格後、行政書士登録をしないと行政書士としての業務が出来ない
- 行政書士登録するためには30万円程度かかる
- 申請から登録まで1~2ヶ月かかることもある
- 資格を取得しても、行政書士登録しない人もいる
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行政書士の登録をする必要はあるのか
せっかく行政書士試験に合格しても、行政書士登録と行政書士会への入会を済ませなければ行政書士と名乗ることは出来ませんし、もちろん行政書士の独占業務を行うことも出来ません。
行政書士として独立開業を目指すなら行政書士登録は必須になるのです。
一般企業勤務の場合は行政書士業務は遂行できない
一般企業に勤めている場合は、行政書士登録していても、その会社の中で行政書士としての独占業務を遂行することは出来ません。
行政書士登録の際には、「個人事業主として登録」「行政書士法人として登録」「行政書士事務所の雇われ行政書士として登録」の3種類から選んで登録をします。
例えば個人事業主として行政書士登録したのに、所属する一般企業のために行政書士として行政書士の独占業務をおこなって会社の売り上げにすると 行政書士会の規則違反となり登録抹消となるため、注意が必要です。
行政書士登録をしなくても良い場合
上記のように、一般企業に勤めている人で行政書士として独立開業する意思がなければ登録の必要はありません。
実際に行政書士試験に合格して資格を取得しても、登録申請をしないで行政書士にはならずに一般企業に就職・転職する人もいます。
行政書士の資格は難関資格なので持っているだけで評価されることも多く、また独占業務は出来なくても法律の知識があるとみなされて重宝されやすいという大きな魅力があるのです。
行政書士会に入会する手順
まず、行政書士会に入会するための流れをざっくり説明します。
- 行政書士登録申請書を入手する
- 申請書の必要事項を記入し、必要書類をそろえる
- 行政書士会に申請書類を提出、登録費用の支払いをする
- 登録完了
入会までの手順はおおまかに言うと上記の通りです。以下ではそれぞれの手順や注意点について細かく見ていきましょう。
行政書士登録申請書を入手する
行政書士会に入会するためにはまず「行政書士登録申請書」などの用紙を入手する必要があります。
申請書の入手には、
- 日本行政書士連合会のホームページからダウンロードする方法
- 事務所を開設する予定の都道府県行政書士会の窓口でもらう方法
の2つがあります。
基本的にどちらの方法でも構いませんが、行政書士会に直接もらいに行けば分からないことを質問出来る、開業前に挨拶する機会となり、顔を覚えてもらいやすくなると言った対面ならではのメリットがあります。
ダウンロードした書類には申請に関する質問をする欄はないので、質問したいことがある場合は直接受け取りに行くことをおすすめします。その際悪い印象を与えないよう、質問事項はあらかじめまとめておきましょう。
行政書士会に申請書を提出する
上記で説明した申請書とその他の必要書類を揃えて事務所開設予定地の都道府県行政書士会に提出し登録費用の支払いをすると、行政書士登録と都道府県行政書士会への入会の申請をしたことになります。
必要書類の中には、住民票などすぐに用意出来る書類もありますが、中には成年被後見人でないことを証明する「登記されていないことの証明書」や破産者でないことを証明する「身分証明書」など聞き慣れないものもあります。
その他にも事務所の写真や賃貸借契約書のコピーなど、とにかく色々な書類が必要なので揃えるのが大変ですが、書類の不足があると審査が長引きます。事前にしっかり確認してきちんと揃えるようにしましょう。
提出書類一覧
書類名 | 備考 |
---|---|
行政書士登録申請書 | 規定用紙あり |
履歴書 | 規定用紙あり |
誓約書 | 規定用紙あり |
都道府県行政書士会への入会届 | 規定用紙あり |
行政書士試験合格証 | |
戸籍抄本 | |
住民票記載事項証明書 | |
登記されていないことの証明書 | 法務局の本局で取得 |
身分証明書 | 本籍地の市区町村役場で取得 |
事務所の使用権限を証する書面 | 賃貸借契約書など |
事務所の写真・位置図 | 各行政書士会によって異なる |
本人の証明写真 | 書類の指定の部分に添付 |
主な提出書類は上記の通りですが、各都道府県行政書士会によって異なることがあります。
必ずそれぞれの枚数なども確認して揃えるようにしましょう。
申請から登録までにかかる日数
「登記されていないことの証明書」や「身分証明書」などは郵送でも取り寄せることが可能ですが、そもそも全ての申請書類を揃えるのに2週間ほど掛かると見ておいてください。
書類提出は予約制で一日に数名しか受け付けられない上に、申請してから登録完了するまでは更に1~2ヶ月かかります。
開業予定がある人は機会損失を防ぐためにも開業スケジュールを考えて早めに登録するようにしっかりと準備を進めましょう。
登録が拒否されることも
都道府県行政書士会で受理された申請書は、その後日本行政書士会連合会に送られ、連合会での審査を受けたら行政書士登録完了となります。
支部によりますが、この審査の段階で役員の方が行政書士会に提出した申請書類のコピーを持って現地調査に来ることがあります。
実際に事務所を見ながら「申請書類の記載に誤りがないか」「守秘義務が保てるようになっているか」「職務を遂行できるようになっているか」など、欠落事由がないことを確認されます。
申請書類に誤りや虚偽記載がみつかると登録が遅れたり拒否されることもあります。 提出した申請書類の記載内容と実際の事務所に相違がないことを再度確認してからお迎えするようにしましょう。
事前説明会で情報を得ることも可能
毎年2月頃に各都道府県行政書士会が事前登録説明会をおこなっています。
もし登録するのが事前登録説明会を聴いたあとでも構わない人は、そちらに参加した後、申請手続きを進めるのも良いでしょう。
「2月まで待てない」と言う人は各都道府県行政書士会のホームページから情報を得ることが出来ます。
リスクを極力減らし、安全に登録を進めたい方にはおすすめの選択肢です。
行政書士の登録料と月会費
行政書士として登録するためには、登録料や月会費など諸々の費用が必要です。さらに独立開業後にも備品や宣伝費などの費用が必要となります。
それぞれどのくらい必要になるのか、しっかり確認しておきましょう。
行政書士の登録料
行政書士の登録をおこなうためには、登録手数料と入会金を合わせた登録料を自分が所属する予定の行政書士会に一括で支払わなければいけません。分納はできないので注意が必要です。
この登録料は都道府県によって差があるので、所属予定の行政書士会の登録料を確認するようにしましょう。
ちなみに東京都行政書士会の登録料は、登録手数料25,000円と入会金200,000円で合計225,000円となります。
行政書士登録にかかる費用の合計は?
行政書士会に登録するためには登録料の他に月会費などの費用も必要になります。
月会費も各都道府県の行政書士会によって異なります。ここでは東京都の行政書士会を例に説明していきます。
項目 | 費用 |
---|---|
登録免許税 (収入印紙) | 30,000円 |
行政書士会月会費 (3カ月分前払い) | 18,000円 |
政治連盟会月会費 (3カ月分前払い)(任意) | 3,000円 |
バッジ代 (メッキ製の場合) | 3,000円程度~ |
職印 (行政書士の印鑑) | 5,000円程度~ |
諸費用合計 | 62,000円程度~ |
先述した登録料にこれらが加算されるため、最終的に合計30万円程度かかることになります。
会費を払えなかった場合
政治連盟会の月会費は任意ですが、行政書士会の月会費の支払いは義務なので廃業の手続きを行わない限り払い続けなくてはいけません。
これを払わないと、まず行政書士会から催促の通知が来ます。
それでも払わなかった場合は会員の資格の停止となり、研修などに参加出来なくなります。しかし会員の資格が停止となっても、行政書士として仕事をすることはまだ可能です。
さらに5年以上滞納している長期滞納者などに対しては「行政書士を辞めてください」という廃業の勧告がされます。
廃業勧告を受けても、滞納している会費を全額支払えば勧告を解除してもらうことが可能です。
独立開業後にかかる費用は?
行政書士会に登録するまでに約30万円ほどかかることが分かりましたが、さらに開業後にも必要な費用があります。
事務所の家賃や光熱費などの「事務所維持費用」、名刺や帳簿などの「備品代」、ホームページなどの「宣伝広告費」等、月に20万円ほど見積もっておくのが妥当です。
事務所については、応接室と事務所スペースを隔離できるなど、顧客のプライバシーの保護が出来て行政書士業務の遂行が可能だと判断されれば、自宅で開業することも可能です。
独立し開業するためには諸々の費用がかさむため、最初は自宅で開業する人も多くいます。
資格取得後、申請までに期限はあるの?
行政書士試験に合格すれば行政書士資格取得となり、それは生涯有効です。
つまり一度試験に合格すれば行政書士登録申請までに期限はなく、いつでも申請することが出来ます。
行政書士登録が完了すると、行政書士会と政治連盟会の月会費など継続的に支払わなければならない費用がすぐにかかってきてしまいます。
なので、試験に合格したものの独立開業するまでに時間が空く人は準備が整ってから申請する方が賢いでしょう。
行政書士登録をするメリット
行政書士登録をするメリットは、行政書士として業務がおこなえることだけではありません。
「独立開業しないから行政書士登録は不要だ」と思っている人も登録するメリットを知れば単純に「不要だ」とは言えないはずです。
どんなメリットがあるのか具体的に見ていきましょう。
情報を手に入れることが出来る
行政書士会に登録すると定期的に会報が送られてくるので、読めば法改正の概要や会議の開催報告、各事業や制度への取り組みなどの様々な情報を手に入れることが出来ます。
さらに行政書士会からは会報だけでなく、会員に向けた研修会やセミナー、意見交換会などの案内も送られてきます。
人脈を広げることが出来る
行政書士から案内が来た各種イベントに参加することで、知識が深められるだけでなく他の行政書士とも交流できるので人脈を広げることができます。
すぐに独立開業する予定がない人もイベントに参加すれば今後の実務の予習になったり、先輩行政書士に独立開業のアドバイスをもらうことも出来るでしょう。
行政書士の登録者数はどれくらい?
平成元年には35,000人ほどだった会員数は年々上昇しており、現在登録している会員数は令和6年度時点で個人会員で51,619人、法人会員で1,356人にものぼります。
東京の会員数は7,859人と圧倒的に多いですが、その次は大阪の3,729人、愛知の3,302人、神奈川の3,228人と続きます。
行政書士の登録まとめ
行政書士の登録まとめ
- 行政書士として独立開業しないなら、登録しなくても良い
- 申請後、登録が完了するまで時間がかかるので計画的に進めることが必要
- 行政書士の業務遂行以外にも登録するメリットがある
行政書士登録についての流れや必要な費用について様々な角度から解説してきました。
行政書士として独立開業したいというビジョンがあるなら、登録をせずには話が始まりません。開業予定までに登録完了するようにしっかり計画を立てて取り組んでいきましょう!