弁理士の実務修習は何をするの?免除制度や会費など登録までの流れを徹底解説!

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弁理士の実務修習ってどんな内容なの?

と疑問をお持ちの方もいるでしょう。

弁理士になるには、弁理士試験に合格した後に実務修習を修了する必要があります。弁理士試験について詳しい方は多いでしょうが、実務修習については不明な点もあるかもしれません。

そこで今回は弁理士の実務修習について、免除制度や会費の支払いなど、登録までの流れを含めて詳しく解説します。

これを読めば、弁理士試験合格後の流れがよく分かるはずです。

弁理士の実務修習についてざっくり説明すると

  • 実務修習は座学とe-ラーニング
  • 実務経験者には、一部免除制度もある
  • 修習後は諸費用を支払い、書類を提出して登録完了

弁理士の実務修習って何?

ホワイトボードにはてな

弁理士になるには、弁理士試験合格後、実務修習を受ける必要があります。

そもそも弁理士の仕事って?

弁理士は、知的財産の専門家です。知的財産とは、アイデアやブランドなどの無形財産を指します。

また知的財産権とは、特許権や実用新案権、意匠権、商標権などです。

弁理士の主な業務は、特許庁へ知的財産権の申請を行うことになります。特許権などを取得した発明者の代理として、この業務を行うのです。これは弁理士の独占業務です。

さらに企業に向けて、知的財産に関するコンサルティングを行うこともあります。

最近は、国内外で知的財産権の保護が重要視されており、国際的に活躍する弁理士も増加しています。

実務修習では何をするの?

実務修習は、日本弁理士会によって実施される研修です。東京、大阪、名古屋で開催されます。申し込み時期は11月です。

実務修習では、座学(集合研修)とe-ラーニング、2種類の研修を受ける必要があります。

座学は原則として、欠席が認められません。そのため、座学に時間通り毎回出席することが、実務修習における一つのハードルになります。

また、座学には事前課題の提出もあるため、大変な研修であると言えます。

e-ラーニングとは?

実務修習のe-ラーニングは、テキストを手元に置き、講義の映像を見る受講形式を指します。

映像の途中には問題も出題され、正答率が8割を超えないと次に進めない仕組みになっているのです。そのため、適当に飛ばしながら見ることが許されません。

e-ラーニングによる修習は、ある程度まとまった時間をとって行う必要があり、受講時期は12月から2月頃です。

その時期は、座学の事前課題作成期間でもあるので、弁理士試験に合格した年の年末年始は忙しくなることを知っておくとよいでしょう。

実務修習に免除はあるの?

基本的に弁理士実務の未経験者は、全ての単位を揃えなければなりません。

一方で、特許事務所での実務経験がある者に関しては、修習の一部が免除になります。

座学には事前課題の提出があるため、座学の授業が免除になれば、事前課題も同時にやらなくて良いということです。

免除制度を使えば、実務修習の負担をかなり軽減することができるので、該当者には積極的な利用をおすすめします。

ただ免除を希望する場合は、事前に申請が必要であるため、その点は注意が必要です。

実務修習は何が大変?

会談する二人 実務修習の座学には、事前課題の提出があります。そのため年末年始は、e-ラーニングの受講ともに、その作成に追われることになるでしょう。

また、事前課題はただ提出すれば良いというのではなく、完成度が不十分であれば再提出となる場合もあります。

実務経験者であればすんなり作成できることもありますが、未経験者は何度も再提出になる場合もあるそうです。

さらに、座学は原則欠席ができず、約27時間程度ある研修全てに参加しなければなりません。

東京は参加者も多いため、いくつかの時間別コースは設定されているようですが、大阪、名古屋に関しては土曜コースのみのようです。東京近郊の在住でなければ時間の融通はきかないため、厳しい研修だと言えるでしょう。

研修で同期の仲間ができる

実務修習の座学は、5日間に及ぶ研修です。プログラムの中にはグループディスカッションもあり、研修の同期と仲良くなることもあります。

研修後に同期同士で集まったり、仕事で分からないことを聞き合う機会もあります。

また、実務修習の時期は転職活動の開始時期と重なるため、実務修習での人脈が、転職情報を集めるのに役立つこともあるでしょう。

欠席ができないため、体調管理も重要な面倒さがある一方で、人脈ができるという大きなメリットも生まれるのです。

弁理士になるまでの流れ

車と道 弁理士になるには、どんなステップを踏む必要があるのでしょうか。

基本は弁理士試験から

弁理士になる方法はいくつかありますが、弁理士試験に合格するのが、最も一般的な方法です。

弁理士試験の難易度は、国家試験の中でも有数と言われています。その合格率は10%以下であり、合格まで2、3年以上かかる人も珍しくありません。

初学者の場合、弁理士試験の合格に必要な勉強時間は、3,000時間以上と言われています。

しかし難易度は高いものの、きちんと試験対策を行えば、十分合格が可能な試験です。何より、弁理士は高収入をはじめ様々なメリットがあり、取得の価値は大いにあります。

ちなみに、弁理士試験合格以外の方法は、以下の2通りです。これらに該当する者は、いきなり実務修習へ進めるため、一度確認しておくことをおすすめします。

  • 弁護士となる資格を有する者

  • 特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者

試験に合格後は実務修習を終了

弁理士試験に合格したら、実務修習を受けることによって、弁理士になる資格を取得できます。実務修習の受講は、他の2つのルートの人も必須です。

実務修習は、座学(集合研修)とe-ラーニングの2つがあり、全ての単位を揃えて初めて修了となります。

座学には事前課題の提出も必要で、その準備とe-ラーニングの受講と共に、年末年始に行うことになるようです。

弁理士試験には長い勉強時間を要するため、年末年始を返上で受験勉強に励む受験生も多いです。そうして受験生は、合格したのちも、もう一度年末年始を返上することになります。

座学は欠席が認められないため、実務経験者は免除制度を使って負担軽減を行うのが得策であるといえるでしょう。

弁理士会に登録

実務修習を終えて、弁理士になる資格を取得しても、日本弁理士会へ登録を行わなけれなば、弁理士として働くことはできません。

登録は実務修習を修了して初めて行えます。登録に期限はなく、タイミングは任意です。

登録するには書類の提出や費用の支払いなど、いくつかステップがあります。それに関しては次のトピックで解説しましょう。

弁理士登録の方法や必要書類は?

疑問を持つ女性 弁理士として活動するには、弁理士会への登録が必要です。ここからはその手順を解説します。

登録申請に必要な書類

登録申請に必要な書類は、作成書類と取り寄せ書類の2種類があります。

作成書類は以下の通りです。

  • 弁理士登録申請書・届出書

  • 誓約書

  • 勤務証明書

  • 履歴書

  • 登録後の会費納付方法について

  • 銀行振込等の写し貼付(*銀行振込のみ)

  • 登録免許税納付証明書(*弁理士登録申請書・届出書に貼付)

なお作成書類は、日本弁理士会のホームページからダウンロードできます。

取り寄せる必要がある書類

取寄せ書類は以下の3つです。

  • 住民票(居住地の市区町村で発行)

  • 弁理士となる資格を証する書面

  • 身分証明書(本籍地の市区町村で発行)

なお、住民票はマイナンバーの記載がないものに限ります。記載がある場合は、受理されないため、注意しましょう。

書類の提出方法は?

書類の提出方法は、持参か郵送の2通りです。しかし、可能な限り郵送での提出が望ましいようです。

郵送の場合は、申請書類一式を事務局会員課まで書留で送付します。封筒表書きには「弁理士登録申請書類」と朱書きしましょう。

持参の場合は、申請書類に押印した印鑑を持っていくようにして下さい。受付時間は平日の午前9時から午後4時45分までです。

申請書類を点検するのに、15分〜20分ほど時間がかかります。

提出書類に不備があれば、受理されないこともあるので注意が必要となります。

登録の費用や登録料・会費

弁理士登録の際には、登録免許税と登録料・会費という2種類の費用が必要です。

登録免許税は、麹町税務署(国)に納める費用になります。金額は60,000円で、銀行や郵便局など、国税を納付できる金融機関ならどこでも納付することが可能です。税務署で納付する場合は、麹町税務署に納付する必要があります。

一方で、登録料・会費は日本弁理士会へ納める費用です。金額は50,800円(登録料35,800円、登録月の会費15,000円)となります。納付方法は、書類持参時に現金で支払うか、申請前に指定の銀行口座へ振り込むかの2種類です。

弁理士登録をする条件は?

弁理士登録をして弁理士となれるのは、以下のいずれかに該当し、かつ実務修習を修了した者だけです。

  • 弁理士試験に合格した者

  • 弁護士となる資格を有する者

  • 特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者

また、以下に該当する場合は、たとえ上記に該当しても弁理士にはなれません

  • 刑事処分を受けた者

禁固以上の刑に処せられた者や弁理士法や関税法を犯して一定期間が経過していない者が対象です。

  • 業務上の処分を受けた者

処分を受けた公務員や弁理士のうち、処分から一定期間が経過していない者などが対象です。

  • 制限行為能力者など

未成年者や破産手続きからの復権を得ていない者が対象です。

弁理士登録が失われるケースも

弁理士の登録が抹消されるケースはいくつか存在します。

例えば会費を滞納し続ければ、弁理士会を退会となる場合があり、その時は登録も抹消です。

また刑事罰を受けるなど、不誠実行為等の違法行為を行った場合も登録が抹消されます。

さらに弁理士が死亡した場合は、死亡抹消となります。

加えて、抹消理由として多いのが、申請抹消です。これは自主的に抹消することを意味します。企業の知財部員などは、弁理士である必要はないため、自分から抹消するケースがあるようです。

弁理士会に登録した後のキャリア

万歳する両手 ここでは、弁理士の勤務先や今後求められる能力について解説します。

弁理士の勤務先には何がある?

弁理士の働き方としては、士業の事務所に勤務するか、独立開業するケースが多いです。

実務未経験から弁理士になる場合は、ある程度経験を積むまで特許事務所に勤務するというのが、一般的な働き方になります。

独立開業の場合は、超高収入を狙えることや労働時間を好きなように決められることなどが、メリットとして挙げられます。しかし、経営手腕次第では、満足な収入が得られなかったり、場合によっては廃業もあるでしょう。

安定した事務所に比べ、独立開業はメリットと共にそれなりのリスクも抱えています。

特許事務所の業務には何種類かある

弁理士の主な仕事は、特許庁への特許や意匠、商標の出願です。

特許以外は、弁理士の仕事としてあまり認知されていませんが、商標や意匠も重要と言えます。

商標登録は、製品が世の中に出ていく際に行う業務です。また最近は、特許庁がデザイン経営を促進しているため、意匠権は重要視されています。

理系出身の弁理士が多い中、文系弁理士は商標業務に特化して、差別化を図る人もいます。

英語力が生きる!

最近では、知的財産権保護の意識が国内外で高まっているため、海外に関係した案件も増えています。そのため、英語力のある弁理士なら、国際的に活躍することができるでしょう。

海外に関係した業務には、内外業務と外内業務があります。内外業務は国内から外国への出願で、外内業務は外国から国内への出願です。

内外業務の際は、日本企業と外国弁理士の間を仲介するのが弁理士の役割となります。英文での書類等の作成が主な業務です。

一方、外内業務の場合、外国企業の日本への出願をサポートします。そのため、クライアントは外国企業か外国弁理士です。

外内業務では、英文書類の日本語訳や特許庁の文書の英訳などになります。

さらに、将来の海外進出を見越した明細書の作成にも英語力が必要です。日本では明細書があまり重要視されていないようですが、きちんと論理的な明細書を作っておくと、海外進出では役立ちます。

不明瞭な明細書の英訳は困難なため、予め英訳しやすいような構文や語句を使って書いておけば、スムーズに訳出が進むでしょう。

一般企業に就職することもできる

弁理士資格は、一般企業の就職でも活かすことができます

企業の知的財産担当者のうち、弁理士資格を有しているのは全体の10%以です。

そのため、弁理士資格の有資格者は、知財部において重宝されるでしょう。

また10%以下の有資格者は、大手企業に属している場合が多いので、中小企業への就職では、弁理士資格の希少価値はさらに上がります。

一般の大手企業の法務部や総務部では、法令の深い知識が必要です。そのため、採用段階で弁理士資格が良いアピールになるでしょう。

実際に働く上でも、弁理士資格の勉強で得た法律知識が役立つ場面は多いです。

さらに、最近では企業内弁理士として、一般企業に雇用されるケースも増えています。

弁理士の仕事のやりがいは?

弁理士の主な業務は、特許庁への知的財産権の申請です。そのため、権利化を達成した時にやりがいを感じることが多いでしょう。

権利化には、最低でも1年、長い場合は10年を要することもあります。発明者と二人三脚で工夫や苦労を重ねた結果、権利化につながれば喜びはひとしおです。

また権利化の際は、どのような権利を取得するのか、どのくらいの範囲で権利を取得するのかなどによって、申請結果が変化します。

権利の範囲については、申請する範囲が広すぎると権利化が難しくなり、狭すぎると権利の効果が薄くなってしまいます。適切な範囲を定められるかは、弁理士の腕次第です。

申請の結果には、弁理士の実力が如実に反映されます。権利化の成功は、弁理士の実力の証明です。そのため、弁理士の業務はやりがいのある仕事だと言えます。

弁理士の仕事に将来性はある?

近年は技術の進歩により、簡単な仕事をAIに任せるケースが増えています。弁理士業務においても、簡単な書類作成に関しては、いずれAIに取って代わられるかもしれません。

それだけでなく、20年後には現在の弁理士業務の90%程度が、AIによって代替される可能性があるという言説もあります。

しかし弁理士は、ただ機械的に出願手続きを行うのではありません。クライアントや特許庁の審査官とコミュニケーションを取って行います。これらの意思疎通をAIが完璧に代替するのは困難であり、その点では人が有利であると言えます。

また弁理士会全体でも、こうした機械化やAIの導入に対抗して、日々努力や工夫が重ねられています。そのため、そう簡単に仕事がなくなるとは考えにくいのです。

弁理士試験について

勉強する様子 実務修習を受けるには、弁理士試験に合格することが一般的です。

弁理士試験の難易度

弁理士試験の合格率は7%前後と言われており、国家資格でも難関の部類に入ります。

ただし、弁理士資格に受験資格はないため、勉強不足でも記念受験ができることが、合格率を下げている一因と言われています。

ただ、初学者が合格に要する勉強時間は3,000時間が目安であることから、ハードな資格であることは間違いありません。

しかし、コツコツと勉強を続けていけば、十分合格が可能な試験です。

弁理士試験の勉強法

弁理士試験の勉強は長期間に及ぶため、独学はかなり厳しいと言えます。しかし、独学で合格する人も一定数存在するため、不可能ではありません。

公式テキストは、発明推進会より出版されており、特許庁のホームページではPDF版が無料公開されています。

また、予備校から参考書も出版されており、それらも併せて用いると良いでしょう。

勉強法としては、まずは試験内容のインプットから始めます。そして、ある程度内容が頭に入ったら問題演習に進みましょう。

問題演習には、予備校が出版している問題集や過去問を用います。分からない問題は、テキストでしっかり復習して、確実に知識を増やしていきましょう。

問題演習と復習のサイクルを繰り返すうちに、解答の精度が上がっていくはずです。

過去問を活用しよう

他の資格試験同様、弁理士試験においても、過去問演習が有効です。

過去問を解くことで頻出問題や出題範囲が把握でき、試験対策に特化した、より効率的な学習ができるようになります。

弁理士試験の過去問は、特許庁のホームページから無料で入手が可能です。そのため積極的な過去問演習をおすすめします。

予備校や通信講座もおすすめ

弁理士試験の勉強は、独学では難しい部分があります。試験範囲が膨大で、要点を掴みにくいからです。

そのため、予備校や通信講座を活用して対策を行うとよいでしょう。

特に資格スクエアの弁理士講座は、比較的安価な値段で合格に十分な対策を行える講座として受講がおすすめです。

インプット・アウトプット共に非常に優れた講義クオリティを持つ講座であるため、これ1つで合格まで近づけること間違いなしでしょう。

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弁理士の実務修習についてまとめ

弁理士の実務修習についてまとめ

  • 座学とe-ラーニングがあり、特に座学が大変
  • 実務経験者は免除制度を活用すべき
  • 登録には必要書類の提出と登録料などの支払いが必要

弁理士試験の実務修習について詳しく解説しました。

実務修習は特に座学が大変なため、対象者は免除制度の活用をおすすめします。修習が終われば、登録後に晴れて弁理士となれるので、合格後はもう一踏ん張りが必要です。

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