弁理士の独立は失敗しやすい?廃業の主な原因や開業後の収入・給料事情まで解説!
「弁理士として独立すると稼げるの?それとも開業は失敗しやすくてリスクがあるの?」
士業系資格の取得を目指す目的は人によって様々ですが、一国一城の主として仕事ができて高収入も狙える独立開業を夢見て資格試験にチャレンジしている人も多いと思います。
その一方で独立のしやすさや開業後の廃業リスクの度合いは資格ごとに異なるので、弁理士の場合は実態がどうなのか詳しく知りたい人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は弁理士の独立開業について解説していきます。弁理士として独立する際に大事になるポイントを紹介するので、弁理士資格を目指す上でぜひ参考にして下さい。
弁理士の独立開業についてざっくり説明すると
- 弁理士のうち独立して事務所を経営している割合は約4人に1人であまり多くはない
- 特許事務所に就職すると安定収入が得られるなど独立をためらう理由がいくつかある
- 高収入を狙って独立する場合は失敗事例や成功に必要な要素を理解することが大切
弁理士資格取得後は独立は多い?
弁理士の働き方としては独立開業型もありますが、将来的に独立する場合でもまず最初に特許事務所に就職して経験を積むのが一般的です。
社労士などと同じく企業に勤める企業内弁理士という働き方もあり、弁理士の就業形態は次のようになっています。
弁理士の就業形態 | 弁理士数 | 割合 |
---|---|---|
特許事務所経営 | 3,175人 | 26.8% |
特許事務所勤務 | 2,242人 | 19.0% |
企業 | 2,924人 | 24.7% |
弁理士法人勤務 | 2,028人 | 17.1% |
その他 | 1,457人 | 12.4% |
全体 | 11,826人 | ー |
[出典:日本弁理士会ホームページ / 2023年5月31日時点の会員数]
上記の表からも分かるように「特許事務所経営型」「特許事務所勤務型」「会社勤務型」の割合はほぼ同じです。
特許事務所で経験を積んだ後に一般企業へ転職したり、自ら事務所を開いて独立開業型弁理士として働くケースも見られます。
勤務型であれば安定した収入を得られるでしょうし、独立して成功できれば高収入を狙えて労働時間の調整もしやすくなるなど、就業形態ごとにそれぞれメリットがある点は他の士業系資格と一緒になります。
ただし独立開業には廃業リスク等もあるのでメリットばかりではありません。
独立して特許事務所を経営している弁理士は約4人に1人しかおらず決して多くはないのが実情です。
弁理士の開業で大変なことは?
特許事務所で実務経験を積んだ弁理士であっても、いざ独立開業してみると「開業すると自分でこんなこともやらないといけないのか…」と色々なことで苦労します。
弁理士として業務を行う点では同じなのに勤務型と独立開業型では一体どんな違いがあるのでしょうか?
開業する前に押さえておきたいポイントを確認しておきましょう。
クライアントの獲得
まず最初にやらなければいけないのがクライアントの獲得です。仕事がなければ収入を得られないので、業界の集まりや異業種交流会に参加して人脈を作ったり事務所HPを開設して集客を行うなど地道な努力が 必須でしょう。
開業前に勤めていた特許事務所のように事務所が懇意にしている企業から定期的に仕事の依頼が入るわけではなく、顧客との関係はイチから築き上げなければいけません。
申請書類の作成のような「事務スキル」は特許事務所で経験を積んで身につきますが、それとは全く別の「営業力」「顧客獲得力」が試されます。
開業後に慌てないためにも集客方法は事前にしっかりと検討して、ある程度の方向性を確立することが大切です。
忘れると危ない!事務的業務
新規の申請や更新の手続きに関する期限管理や特許料の納付などの年金管理も弁理士として大切な仕事です。
特許事務所で働いているとこれらの事務的業務を経験しないことも多いのですが、弁理士として独立した場合には全て自分でやらなければいけません。
期限をうっかり忘れると申請ができなくなったり顧客の特許権などの権利が消滅することさえあるので注意が必要です。
特許事務所に勤務する中で培ったスキルや知識だけでなく、独立前には経験しなかった業務にも対応していく姿勢や能力が求められるのです。
海外の特許事務所と連携するための英語力
近年は海外への特許出願や海外からの特許出願が増えていて、内外業務(日本から外国への出願)や外内業務(外国から日本への出願)を行う際の英語力が欠かせません。
外国で特許出願する国内企業のために現地の外国人弁理士との間に入って仲介役を務めたり、外国企業からの依頼を受けて出願内容を日本語に翻訳するなど、英語ができればこれらの仕事を獲得できて開業後に成功できる可能性が上がっていくでしょう。
逆に英語に対応できないだけで仕事を得るチャンスを逃すことになるので、弁理士として成功するためにも英語は見に付けておいたほうが良いでしょう。
国内の特許業務でも英語は役に立つ!
内内業務(日本国内での国内企業の出願)でも英語が重宝される場面があります。例えば日本企業が国内で出願する際の明細書の作成業務がその一例です。
難解な日本語を使わずに英語に翻訳しやすい内容で文章を作成すれば、もしも企業が後々に外国で特許申請をする際に英語の資料を作りやすくなります。
近年では内内業務を担う際にも英語力が間接的に試されることも多く、その意味でも英語力は必須の状況です。
事務所の経営
独立した直後は仕事も少なくて自分1人で全て出来ていても、事業が軌道に乗って仕事が増えてくれば新たな弁理士や事務スタッフを雇う必要も出てくるはずです。
職員の給料の額を決めて支払いを滞りなく行ったり事業の拡大に伴って事務所の移転を検討するなど、事務所のトップとして経営に関わることを決めなければいけません。
独立前に特許事務所に勤務していた頃とは違い、逆に自分の特許事務所に勤務する人たちを雇用する経営者としてのマネージング能力や経営能力が求められるのです。
弁理士の独立開業がためらわれる原因は?
特許事務所や企業に勤める弁理士が半数近くを占めていて、独立開業型の弁理士があまり多くない理由は一体何なのでしょうか?
以下では弁理士の独立開業がためらわれる原因について解説していきます。
勤務弁理士でもそれなりの給料は得られる
特許事務所に勤務する弁理士の平均年収は700~800万円程で、特許事務所に長年勤務して昇進すればそれ以上の収入を得ることもできます。
これは一般の会社員などの平均年収を大きく上回る金額であり勤務弁理士でもそれなりに稼げるということになります。
もちろん独立すれば1,000万円以上の年収を狙える可能性はありますが、誰もが高年収を実現できるとは限らないので開業しようというインセンティブは必ずしも高くありません。
さらに独立開業すると事務や雑務も自分でやらなければならず、それに比べて特許事務所勤務であれば特許業務だけやれば安定収入を得られるでしょう。
こういった収入面に関する要素が弁理士の独立開業がためらわれる原因の1つになっていることは間違いありません。
弁理士のリアルな年収事情について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
開業することのリスク
開業して夢を追いかけることはできても、それと同時に廃業リスクというリスクも背負うことになります。
特に弁理士の場合は報酬の相場が以下のようになっていて、高収入を達成するのが簡単ではなくリスクが伴っていくため注意が必要です。
業務 | 報酬の目安額 |
---|---|
特許出願 | 25~30万円 |
意匠出願 | 10~12万円 |
商標出願 | 6~8万円 |
審査官面接 | 3~4万円 |
単純に計算すると単価の高い特許出願を月に数件受注できれば年収1,000万円に達しますが、逆に特許出願の仕事を獲得できないと高収入は全く期待できないとも言えます。
さらに国内の特許出願の件数が近年は減少傾向にあり、高収入を見込める特許出願業務を取りに行くのは決して簡単ではありません。
単価の高い特許出願業務の依頼がなくて特許事務所に勤務して得られる平均年収700~800万円を大きく下回る可能性もあります。
開業しても逆に収入が減るリスクがあり、これも弁理士が独立をためらう原因の1つとなっているのです。
弁理士の開業が失敗する4つの主な原因
独立後に失敗する理由は弁理士ごとに様々ですが、その一方で失敗した弁理士には共通点も見られます。失敗の原因として特に多いのがここで紹介する4つの原因です。
失敗しやすいケースを事前に把握した上で開業準備をすれば独立後に失敗する確率を低く抑えられます。開業して失敗しないためにも4つの原因について確認しておきましょう。
問題を全て自分で解決する
失敗する最も多い理由が全てを自分で抱え込んで解決しようとするパターンです。
独立開業すると全ての責任を自分で負うことは確かですが、これは必ずしも「全ての仕事を自分でやらなければいけない」ということと同じではありません。
人手が足りなければ職員を雇って仕事を分散させるべきですし、弁理士ごとに得意分野が異なるので苦手分野の依頼が来た場合は他の弁理士にお願いするのも1つの選択肢となります。
他の弁理士とのネットワークを作っておけば話も聞けて色々な面で役立つのです。
事務所や企業に就職すれば自分の仕事量を上司が調整してくれることがありますが、独立開業した場合には自分も職員も含めて1人当の仕事量を調整する能力が重要でしょう。
プライドが邪魔をして独りよがりに
独立して一国一城の主になっただけで根拠のない自信を身に付けたり不必要なプライドを感じるのも良くないケースです。周囲の助言を聞き入れず独りよがりになって失敗することがよくあります。
そもそも独立した後というのは営業力などの開業に必要なノウハウという点では全くの素人であり未経験者です。
先輩弁理士からのアドバイスに耳を傾けて少しでも多く知識を吸収して能力を高めないと、成功できず逆に失敗する確率が高くなってしまいます。
また独立すると自分の事務所の中で少人数で仕事をすることになり、事務所に勤務していた時のように先輩社員が教えてくれるわけでもありません。
外部との意見交換の機会は貴重であり、周囲とのネットワークを大切にして柔軟な対応を心掛けるようにして下さい。
業務内容が自分に向いていない
独立して自分で営業をして仕事を獲れたら、たとえ事務所勤務時代にはやったことがない分野でも積極的に取り組む姿勢が大切です。
対応できる業務分野を増やしてスキルを身に付ければ長期的には収入アップにつながる可能性があります。
しかし人それぞれ得意不得意がある以上、自分に向いていない仕事があることも忘れてはいけません。何でも引き受けてしまって苦手な仕事に時間を取られ過ぎると、逆に効率が悪くなりトータルの収入が下がるリスクもあります。
苦手なものは苦手としっかり判断して時には依頼を断ることも大切です。
独立後の収入が安定しない時期に敢えて仕事を断るのは勇気がいると思いますが、「本当にできる自信があるのか」「不安や心配な気持ちからできると思い込もうとしているだけではないのか」、仕事毎に冷静に判断するようにして下さい。
地道に仕事をこなす事ができない
最初に偶然大きな仕事を獲れたりするとそれだけで自信を付けたり努力を怠ってしまう人がいます。しかし独立して弁理士として成功するためには地道な努力が欠かせません。
仮に周りの知り合いの弁理士に偶然大きな仕事を獲れた人がいても「運よく自分にも仕事が舞い込まないかな?」などと期待すべきではありませんし、コツコツと仕事を続けて持続的かつ確実に事業を拡大させて収入をアップすることが大切になります。
そもそも大きな仕事が偶然に舞い込むのは一見すると運が良いように見えますが、それによって努力を怠って失敗への道をひた走ることになれば寧ろ不運と言えます。
小さな積み重ねこそが成功への近道であることを忘れないようにして下さい。
事業の大きな成功への足を引っ張る要因
開業して経験を積んで仕事や収入が増えたとしても「仕事は増えているのに収入が増えない」「収入は増えているのに獲れる仕事が増えていない」といったことが起こり得ます。
このようなケースでは大きな成功への足を引っ張る要因が含まれていることが多いので注意が必要です。
仕事や収入が増えて一見すると成功に向けて進んでいるように見えますが、改善策を講じないとその後に大きく成功することが難しくなってしまいます。
すぐに値引きをしてしまう
各業務の報酬相場を見てその通りの金額で設定する人がいる一方で、弁理士の中には相場よりも安くすることで集客を試みる人がいます。
値引きをすれば確かに仕事は獲りやすくなりますが、収入が減ってしまうので決して良い方法とは言えません。
相場とは業務の忙しさを考慮した適正な対価であり、それより低い金額で仕事を受けると割に合わない忙しいだけの仕事になってしまいます。
さらに一度値下げをすると後々に値段を上げにくくなり、コスパの悪い仕事を延々と続けることになるので、初めの値段策定は非常に重要であるといえるでしょう。
アルバイト・副業が収入のメインで本腰が入らない
独立した直後の収入が安定しない時期にはアルバイトや副業で資金をつなぐケースも当然あるはずです。
将来的に成功するためにも最初の苦しい時期を副業収入などで乗り越えることは確かに大事なことであるといえます
しかし副業に時間を割き過ぎて弁理士業務に本腰が入らないようでは本末転倒です。
特許事務所を辞めて独立開業したのにアルバイトや副業の収入をメインで生活する状態になっていて、弁理士業務に携わる時間まで減っていては見も蓋もありません。
弁理士として成功を収めるためにも、アルバイトや副業をやる場合には本業とのバランスを考えて計画的に行うように心がけることが吉です。
プロ意識にかける
同じ仕事をこなす場合でも仕事に取り組む際の意識の持ち方によって人の成長速度は大きく変わります。
依頼を受けた仕事を単なる作業として進めるのではなく、仕事をする際にはプロ意識を持って臨むことが重要です。
顧客からお金をもらう以上は責任感を持って仕事をすることが大切ですし、如何に顧客のためになる仕事をして付加価値を生むかを考える努力も必要です。
考える力や顧客に喜ばれる仕事をする力を見に付けることが長期的に安定して仕事を得ることにつながります。
開業を成功させる為にすべきこと
ここまで紹介した「失敗する原因」や「成功への足を引っ張る要因」などの成功を阻むマイナス面を理解するだけでなく、成功につながるプラス要因も理解することが大切です。
以下では弁理士として成功するための考え方や意識の持ち方について紹介していきます。
基本になる考え方
事務所に勤務していた時よりも収入をアップさせて弁理士として成功するためには、以下の4つのポイントを意識して前向きに仕事に取り組むことが大切です。
成功するための方法を考える
独立した直後で仕事が獲れなかったり収入が増えない時期には何をどう改善したら良くなるのかを考えることが大切です。
なぜ出来ないのかを考えて原因を探るだけでなく、原因に対して今後どう変えていくのか成功するための方法を考えるようにしましょう。
もちろん現状分析をする意識やスキルも大事ですが、現状を把握できても改善策を考えてステップアップできなければ成長や成功は望めません。
実際に成功して稼いでいる弁理士の事例なども参考にしながら、自分なりの方法を模索していくことが必須です。
集客のための宣伝を積極的に行う
特許事務所で勤務していた時のように待っていても仕事が来るわけではないので、独立開業したら集客のための宣伝を積極的に行う必要があります。
どれだけ多くの見込み客にアプローチできるかが成功への鍵を握ることは間違いありません。
名刺交換・ダイレクトメール・HP開設によるWeb集客など集客方法には様々な方法がありますが、自分の得意な方法に注力しつつ複数の方法を活用することで幅広い層の顧客にアプローチするようにして下さい。
過去の成功例をそのまま実行できるわけではない
開業したばかりで自分自身にノウハウや成功体験がない中で、他の弁理士の事例や過去の成功例を参考にすることも多いでしょう。
ただしこのときに気を付けるべきなのが、過去の事例をそのまま当てはめられるとは限らないということになります。
周囲から学び吸収する姿勢は大事ですが、何も考えずに単にコピーをするのではなく自分なりに考えてこれまでの経験も踏まえながらアレンジすることが大切です。
型にとらわれない柔軟な発想が他者との差別化を生み出し成長・成功へとつながっていくのです。
収入が不安定であることを留意する
開業後に収入が途切れる期間が生じたり事業が軌道に乗るまでの間に不安定な時期が続くことは大前提として意識しておくべきです。不安な時期であっても本業である弁理士業務に割く時間をしっかりと確保して成功に向けた土台作りを行うようにして下さい。
人によっては不安感が強すぎて弁理士収入の不安定さをアルバイトなどの安定収入で補う意識が強くなり、副業に多くの時間を割くケースも少なくありません。営業活動や人脈作りが疎かになると弁理士としての成長がいつまで経っても見込めなくなってしまいます。
業務に対する態度
弁理士業務は顧客がいてこそ成り立つものなので業務に臨む際の態度も大切になります。
顧客を最優先に業務を行う
同じ申請業務や作業であっても顧客ごとに要望は少なからず異なります。相手のニーズを汲み取ってクライアントの望む仕事を提供できるかどうかであなた自身の評判や顧客からの印象が変わり、長期的に仕事を依頼してもらえるかも変わってきます。
安く済ませたい人もいれば少しでも早く進めてほしい人もいますし、費用をかけてコンサルティング料を払ってでもアドバイスを受けたい人もいるはずです。営業の時も自分から一方的にアピールするだけでなく、相手に合わせて対応できる柔軟さが求められます。
新しい技術を常に学ぶ
申請業務などの弁理士として行う業務に変化がなくて同じ仕事をする場合でも、時代が変化する中で新しい技術を積極的に学ぶことが大切です。今までに使っていなかった技術を取り入れることで仕事のスピードや効率が各段に上がることも少なくありません。
近年の機械化の進行やAIの登場で弁理士の仕事がなくなると危惧されていますが、新しい技術は上手に使うことで助けにもなります。弁理士として独立して生き残るためにも技術革新の流れに上手く乗って技術を取り入れるようにして下さい。
必要とされていて需要のある仕事を見極める
例えば近年は国内での特許出願件数が減少傾向にあるので、この点を以て特許出願業務にはあまり需要がないと考える人もいるかもしれません。しかし出願の内訳を見ると外国企業による出願件数は寧ろ増えている状況です。
この点に気付ければ弁理士の仕事で英語が役に立つことや英語力を見に付ければ仕事を獲れることに自然と気付くことができます。状況の捉え方一つで新しい仕事や需要に気付けることも多いので、自分から積極的に仕事を探す意識を常に持つようにして下さい。
独立開業に失敗しても転職できる?
弁理士として独立開業した場合、失敗しやすいパターンを避けて地道にコツコツ営業活動を続けて努力すれば廃業リスクを低く抑えることができます。しかし独立開業には失敗は付き物なので廃業リスクを完全にゼロにすることはできません。
開業する際は事業をどのように行うのか計画を立てるだけでなく、何らかの理由で廃業した場合にどうするのかを決めておくことも大切です。廃業するケースを最初から考えることは「後ろ向きな姿勢」では決してなく「適切なリスク管理」として必要になります。
開業に失敗した弁理士の転職先
開業したものの失敗して弁理士事務所を閉じる場合、その後の転職先としては特許事務所か一般企業に就職することが多いと言えます。
特許事務所に勤務する
事務所を閉じても弁理士という資格の保持者であることに変わりはなく、資格を活かしやすい就職先として特許事務所に転職するのが一般的です。弁理士としての経験を活かしやすい上に採用する特許事務所側としても経験者は即戦力として期待ができます。
開業に失敗した身で開業に成功している人に雇われることに引け目を感じる場合もあるかもしれませんが、特許事務所であればそれなりの収入を得られる可能性もあるので余計なプライドは捨てて特許事務所への転職活動を行うのが最も良い方法と言えるでしょう。
一般企業に就職することも可能
独立開業に失敗した後に一般企業に再就職する選択肢もあります。そもそも知的財産部門で働く際に必要な知識を持った人材は今でも日本では足りていません。そのため弁理士の資格を保有していること自体が転職活動では大きなアピールポイントです。
また弁理士は法律に関する深い知識を持っているので大企業の法務部や総務部の要員として採用してもらえる可能性があります。要は弁理士という資格の特徴を活かしてアピールできるか次第なので、一般企業に就職することも十分にできると考えて良いでしょう。
転職する際に注意すべき点
士業系資格の有資格者として転職の際に弁理士の資格を活かせる可能性は確かにありますが、弁護士や公認会計士ほどには資格としての知名度がないことも事実です。転職する際には以下の2点には注意しなければいけません。
資格を必ずしも活かせるわけではない
知財部で活躍できる人材がまだまだ不足している点を弁理士が貴重な即戦力になると考えればメリットと言えますが、逆に知名度そのものが高くないために弁理士という資格を正当に評価してもらえない可能性もあります。
自分が就職したい企業が弁理士の資格に興味を持ってくれなかったり弁理士の必要性を理解してくれないことも十分にあり得るので、弁理士以外のことでもしっかりとアピールできるように面接準備をしておくことが大切です。
経歴に空白期間を作らないようにする
独立開業してうまくいかず事務所を畳んで転職する場合でも、経歴に空白期間を作らないようにすべきです。廃業して事務所を閉じてから転職活動を始めるのではなく、事業が上手くいかなかった場合には早めに次の行動を開始することが重要です。
経歴にブランクを作ってしまうと採用する企業側からの見栄えも良くありませんし、その期間中に収入が完全に途絶えて不安感から精神的にも良くありません。独立を計画的に行うのと同様に廃業や転職も計画的に進めることが大切です。
弁理士の独立まとめ
弁理士の独立まとめ
- 独立開業型の弁理士の割合は約4人に1人なので決して多いとは言えない
- 独立しても廃業リスクがあって雑務が増えるなど何かと大変でためらう弁理士もいる
- 失敗しやすいケースや成功に必要な要素を事前に理解すれば独立で成功しやすくなる
今回は弁理士の独立開業について紹介しました。
弁理士として独立すれば高収入を狙える一方で事務所に勤務していた時とは違った大変さを経験することになりますが、弁理士は様々な形で活躍できる魅力的な資格です。弁理士資格の取得を是非検討してみて下さい!