税理士は本当に「食えない」資格なの?将来性や独立開業のリスクを検証!

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税理士

脇田弥輝

「税理士は仕事がないって本当?今後はなくなる?」

「税理士の将来性が不安で開業するのが怖い…」

このような疑問や不安をお持ちの方、いらっしゃいませんか?

税理士はその知名度の高さもあり、「食えない資格」や「仕事がない」などと言われることもよくあります。

しかし、こうした言説は噂程度のものであり、今でも税理士は貴重な人材として様々な場面で活躍できる将来有望な資格です。また、独立開業すれば高収入も狙えるため、非常に夢のある職業だと言えるでしょう。

ここでは税理士の将来性や独立開業の実態を解説します!

税理士は食えない資格なのか

  • 実際に開業してすぐに廃業する税理士や、開業しても収入が低い税理士もいる
  • 会計ソフトやAIの登場、税理士数の増加など、税理士を取り巻く環境にはネガティブな側面も多い
  • 食えないという意見は税理士の一部の側面しか見ておらず、事実として税理士の平均年収はかなり高い

税理士は「食えない」資格なの?

笑顔の女性

そもそもなぜ税理士は食えない資格として取り上げられるようになったのでしょうか。

ここではまず税理士が食えないと主張する人たちの掲げる理由を確認していきましょう。

事務所から独立開業したが、廃業も…

事実として、個人事務所などに雇われている税理士の年収はあまり高くありません。

そのため、高年収を狙って将来的に独立・開業を考える税理士がとても多いです。

しかし、開業しても全員が成功するということはなく、開業税理士のなかには年収500万円以下の人が20~30%程度います。

さらに、5%前後の人がなかなか仕事を受注できず、廃業へと追いやられています。

これらの事実が「食えない資格」と言われてしまう原因です。

1年を迎えずに失敗する未来

開業しても失敗する税理士は、1年も経たずに廃業してしまう人もいます。

税理士事務所を開業して成功するかどうかは、個人の営業スキルや実務経験・人脈量や業界の経済動向などに大きく左右されます。

そのため、事務所の経営が軌道に乗るまで個人差があり、早くて数ヶ月、遅ければ数年間もかかってしまうケースもあります。

仕事をなかなか受注できない場合、1年ほど経った時点で準備していた貯金が底をつき、廃業してしまうでしょう。

転職・就職市場の厳しい現実

税理士が転職を行う際、資格を持っているがゆえに不利になってしまうケースもあります。

それは、企業として将来的に独立開業してしまう可能性のある人を雇うことを躊躇しがちなためです。

特に、税理士業界の経験しかない人は近寄りがたい雰囲気を感じて敬遠されてしまうこともあり、税理士は就職や転職ですら厳しいと言われているのです。

そのため、税理士資格が原因で就職できないという最悪の事態が想定され、嘆かれる原因となっています。

なぜ税理士は「食えない資格」だったのか

儲からない画像

上記でお伝えしたネガティブな情報は全て事実であり、実際に苦しい思いをしている税理士の方もいらっしゃいます

それに加えて、税理士を取り巻く環境も厳しくなっているという見方もあります。

税理士の増加で仕事がない

ここ10年で税理士の登録者数が増えており、それに比べて顧客となる中小企業の数は減少しているため仕事の取り合いが発生しています。

これにより、仕事を受注できる件数が減っているため、「食えない資格」と言われてしまうのです。

さらに、税理士業界では基本的に独立・開業してしまえば定年という概念が無くなるため、ベテラン税理士が引退せずに業務案件を独占している背景もあります。

そのため、若い新米税理士になかなか仕事が回って来ずに、若手が顧客の獲得にとても苦労しているのです。

公認会計士に仕事を奪われている

税理士の仕事を奪っている代表的な他士業は公認会計士です。 公認会計士の試験に合格すれば、申請するだけで税理士の資格を取得することができます。

高年収が期待できる公認会計士でも、監査法人などに就職できる人はそう多くはありません。

一般企業に勤めたり、自身の会計事務所を設立している公認会計士の中には、税理士の業務でもある税務に関する仕事を請け負っている人も多いです。

公認会計士試験では、選択科目ではありますが、「租税法」の科目もあり、税務に精通している人もおり、公認会計士向けの税務の研修会なども行われています。

そのため、公認会計士と税理士の間で仕事の奪い合いが発生し、税理士の仕事が減少しています。

営業ノウハウのない中で開業

税理士の中には、営業活動をしたことがない人が実際多くいます。

そのような、税務についての知識はあるのに営業力がない税理士が闇雲に開業してしまうと失敗しがちです。

営業力が無いと、顧問契約を取ることができなかったり、顧客に税務についての話をわかりやすく話すことができません。

税理士業をしていく上で、顧問契約は貴重な収入源となるため、営業ができないと顧客が獲得できずに最終的に廃業してしまうのです。

低価格競争にまきこまれる

実務経験が少なく、営業力のない税理士がやってしまいがちなのが、「低価格」を売りにした事務所経営です。

開業して間もない頃に、「とりあえず実務経験を積むために」低価格に設定することは大いに意味があるでしょう。

しかし、その後も低価格を強みにして売り出しても、資本で勝る大手税理士法人に勝ち目はありません。

つまり、大手を相手にするときには価格競争はせずに独自のアイデアやきめ細かいサービスで差別化を図らないといけません。

無理な低価格競争をしても継続して仕事を受注できなければ、結局1年以内に事務所を畳むことにつながってしまうのです。

経験豊富な税理士に仕事が集中している

税理士業界には、定年退職の制度などがないために、経験豊富なベテランの税理士が多く働いています。

また、国税調査官や国税査察官などの国税専門官として一定年数以上勤務すると、税理士試験の一部免除がなされる制度があり、この制度を利用して国税専門官から税理士に転職することが多いことも、経験豊富なベテランに仕事が集中する要因となっています。

国税OBの税理士は、税務調査の手法を詳細に知っているために企業などからの信頼が厚く、仕事を獲得していきます。

このため、経験が浅い若手や、異業種から参入した人が税理士としての仕事を得ることが難しくなっています

仕事を融通してくれる仲間がいない

仕事を請け負ったり、顧客を紹介してもらうときには人脈がとても大事になります。

そのため、税理士業界に一定の人脈がない場合は、仕事を回してくれる仲間や先輩税理士がいないため顧客獲得に苦労することになります。

また、人脈が無いと友人の事務所に手伝いに行くなどのことができず、結果的に稼ぐことができません。

さらに、実務でわからないことがあっても聞く相手がいないため様々な面で支障が出てきてしまいます。

独立開業して成功したいのであれば、日頃から人脈や人とのつながりは大切にしていかなければなりません。

会計ソフトやAIの登場で危機?

近年はITやAIの発達が目覚ましく、それにより税理士の仕事が無くなる可能性も示唆されています。

既に、2014年頃から会計ソフトが販売され始め、会計業務や税額の計算・税務申告など経理作業しかできないような税理士は不要な世の中になりました。

加えて、最近ではAIの税理士業界への積極的な導入も検討されているため、導入が実現すれば本当に仕事が無くなるといわれているのです。

もちろん本当は税理士の仕事がなくなるということはありません。AIや会計ソフトが税理士に与える影響についてより詳しく知りたい方は、以下のページを参考にしてください。

開業して失敗しないために

失敗した男性 これまで見てきたように、税理士を取り巻く現状には厳しい側面もあります。

それでは、税理士を開業して失敗しないためにはどのようにすれば良いのでしょうか?

1年間耐えきるだけの貯金を作る

現実として、開業して間もない頃はすぐに仕事を受注することは難しいでしょう。

税理士を開業してから1年間は顧客が付きにくく、全く仕事が回ってこないなどのケースも考えられます。

そのため、最低でも1年間は無収入でも生活していけるような貯金を作っておくと安心です。

この無収入期間でも営業活動をしっかりと行い、顧客を獲得するための種を蒔いておかなければなりません。

また、周囲の税理士を参考にしながら自分の強みとなるサービスを考える準備期間でもあります。誰しも最初は顧客獲得に苦労するものなので、簡単に諦めてしまうのはもったいないです。

顧問契約をとろう!

税理士として最も安定的な収入源となるとは、顧問契約先からの顧問料です。

そのため、安定的な売上を確保するためには顧問先の数を増やしておくことが重要です。

多くの顧問契約を取れれば、顧問先の人脈も増えて、それを介して仕事が回ってくることもあるため事務所の経営を安定化させることができます。

なお顧問料の相場は、年間売上が1000万円前後の企業を顧客とする場合は月2~3万円程度、年間売上3000万円以上になると月額4~5万円程度となっています。

営業スキルを身に付ける

営業活動は、税理士事務所を経営していくうえで欠かせません。

特にコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力は、営業をしていく中でも必須の能力なので、なるべく身に付けてから独立したほうが良いでしょう。

加えて、引退前の税理士と仲良くなっておくと、顧問先を譲ってもらえるケースがあるため、人的なネットワーク作りも必要不可欠です。

独立する前から、独立後のことを見据えて自分のスキル磨きや人脈作りをしておくことが重要なのです。

専門分野をつくり差別化する

ここ数年は税理士の数も増えているため、周囲と差別化した独自のサービスを提供したり、特定の分野を専門的に扱うことも有効です。

例えば、「相続税分野が得意」「固定資産税なら任せて!」というように自分の専門分野を築き上げることで、集客が容易になります。

加えて、単なる税務申告や記帳代理業務だけではなく、節税対策法を提案したりコストカットのやり方について提言するなどのコンサルタント能力もあれば、より顧客を獲得しやすくなるでしょう。

予備校講師などのバイトもおすすめ

開業して最初のうちは仕事がなかなか取れないため、税理士資格を活かした予備校講師の仕事を引き受けて生活費を手に入れる手段もあります。

予備校講師であれば週2回程度から働くことができるため、本業に支障が出ません。また、時給もそれなりに良い場合が多いため、興味があれば求人を探してみると良いでしょう。

また、予備校で「人に何かを教える」行為は、税理士として税金のアドバイスをする際の説明力や提案力を磨くことにも繋がります。

ただの生活費稼ぎではなく、本業を意識しながらアルバイトをすることで、より有意義な時間になるでしょう。

食えるようになった税理士

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上記では散々税理士が「食えない仕事」と言われる理由をお伝えしましたが、実際のところ税理士に対する需要はむしろ高まってきており、食えない税理士の数はかなり少ないです

ここでは税理士が「食える」現状であることをお伝えします。

減り続ける税理士受験者

実は税理士受験者の中でも20~30代の若い層の受験者が減っており、それに伴い税理士業界では20~30代の税理士試験合格者や科目合格者の市場価値が上がっています。

さらに、税理士の平均年齢は60歳と超高齢化が進行しており、40代でも若手として活躍することができます。

若手の税理士受験生の減少により採用する候補者が少なくなっている一方で、会計事務所や税理士法人での税理士の需要は高まっています。

そのため、各事務所や法人が若手の人材を奪い合うような状況になっているのです。

増え続ける税理士の需要

平成13年の法改正で、税理士法人の設立が認められました。

この改正により、数百人の税理士を抱えた大型の税理士法人が相次いで設立され、これらの税理士法人が規模拡大のために若手の税理士を求めています。

新興の会計事務所・税理士事務所も採用を拡大し、事業規模の拡大を狙っており、税理士の需要は今後も高まっていくでしょう。

さらに、アベノミクスなどの影響で経済が好転し、余裕資金のある会社が増えたため税理士にお金を払って税務申告やコンサルティング業務などを依頼するケースが増えました。

これら一連の流れで、今現在は税理士需要が拡大しているのです。

20~30代税理士がアツい

若手税理士は貴重な人材であるために、企業側は20~30代の税理士を必死で確保したい状況です。

そのため20~30代の税理士試験合格者や科目合格者は就職先を選びやすい状況にあります。

今税理士の就職・転職は超がつくほどの売り手市場ですが、単純に条件面だけで決めるのではなく「本当にこの会社でキャリア形成が可能か」「働きながら税理士資格を取得できそうか」など中長期的な視点で考えることが重要となります。

データからわかる税理士の活躍と収入

実際に税理士は食えているのかどうか、より具体的に知りたいという方もいると思います。

実際に税理士の年収を調査してみると、事務所勤務の税理士の平均年収は600~700万円、開業税理士の平均年収は3000万円ということがわかります。

こうした数値を知っていれば、税理士が食えないという言説が如何に事実からずれているかが分かります。

税理士の収入事情についてより詳しく知りたい方は、以下のページを参考にしてください。

税理士法人だけじゃない!税理士の転職・再就職先は?

経済誌を読む男性

それでは、税理士の転職・最就職先にはどのようなものがあるのでしょうか?

ホワイト企業への転職という道も

開業税理士は繁忙期と閑散期の差が大きく収入が不安定になりがちで、また廃業するリスクを孕んでいます。

そのため、勤務形態・収入ともに安定しているホワイト企業に転職することも有力な選択肢の一つとなります。

特に税法やファイナンスについての専門知識を持つ税理士は様々な業種で活躍が見込まれており、具体的に「一般企業の経理部門」「コンサル会社」「金融機関」「会計ソフト会社」などが挙げられます。

税理士資格を持っていると、様々な業界で働くチャンスが生まれ自分の視野を広げることにも繋がるのです。

一般企業の経理部

一般企業の多くには経理部や税務を担当している部署があります。

企業としては、税理士と顧問契約を結ぶとその分コストが増えることになるため、税金に関することは自分たちで処理したいという思いがあります。

そのため、税理士を社員として雇用したいと考えている企業が増えており、特に経理部門などでは中途採用されればスピード出世も夢ではないでしょう。

また、経理部門で仕事をしながら、事業主に対して節税に関するアドバイスなどをすることで、より信頼を得られるチャンスもあります。

コンサルタント

今後、AIが発達しても仕事が奪われないであろう仕事に、コンサルタント業務があります。

コンサルタント業務のような相談や助言などはAIには不可能なためです。

また、M&Aや企業再生などの業務には、税務やファイナンスについての専門的な知識が必要不可欠です。

そのため、コンサルティング会社はコンサルタントとして税務に強い税理士を求めていることもあり、今後はコンサルタントに関連する業務で、税理士資格を生かしていけるでしょう。

金融機関

金融機関でも税理士が活躍できることがあります。

金融機関や証券会社で働く税理士たちは、資金融資や投資に関する税務業務などで活躍しています。

金融商品の販売などには税金が絡んでくるため(源泉分離課税と総合課税の違いなどをしっかりと理解できていない銀行の営業マンは実は多いです)、銀行や証券会社、保険会社などでも税理士を自前で雇用する風潮が高まっています。

会計ソフト会社

最近は税務を処理する際に市販の会計ソフトを利用している企業が増えています。

会計ソフトは税に関する知識がないと作成することができない ため、プログラミングについて詳しければ会計ソフト会社に就職することも良い選択肢となります。

このように、会計ソフトを作成する会社としても専門的な税知識を持つ税理士は必要な人材なのです。

税理士は食えない資格なのかまとめ

税理士の将来性に関するまとめ

  • 税理士受験生の減少や景気の好転などの影響で、税理士の需要は高まっている
  • 税理士の高齢化はかなり深刻なので、20代30代は非常に貴重な人材として評価される
  • 税理士資格を活かした就職・転職もしやすい

以前まで、「税理士の仕事はなくなる」などと言われていましたが、今は全く違います。

自分のアイデア次第で様々な可能性が広がる、とても夢のある仕事なのです。

一部の方のネガティブな意見で税理士としてのキャリアを諦めてしまうのは大変もったいないことです。

税理士は高い専門性をもつ一生ものの資格なので、努力して取得する価値は間違いなくあると言えるでしょう。

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