社労士試験合格後の流れは?登録・講習の有無や働き方まで徹底解説!
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社労士
のんびり社労士いけい
「社労士試験を合格すれば、明日から念願の社労士に!」
そのようにお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際のところは少し事情が異なります。
社労士試験の合格後には、登録や講習など行わなければならない事がいくつかあり、加えて年会費などといった費用も必要になってきます。
もしこれらの手続きを踏まなければ士業として仕事が出来ないばかりか社労士と名乗ることもできないので、多くの場合登録は済ませておく必要があります。
そこでここでは、社労士試験に合格後した後の流れを紹介すると共に、登録・講習の有無、年会費などの必要な費用、その後の働き方を紹介していきます!
社労士試験合格後の流れをざっくり説明すると
- 社労士としての働き方を決める
- 社労士登録が必要な場合は登録区分に注意して申請する
- 登録には年会費を含め多額のお金がかかる
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社労士合格後には登録が必要?
社労士試験合格後に社労士として働くのであれば、「全国社会保険労務士連合会」(以下全社連)に登録する必要があります。
また、合格後、全社連から「登録のお知らせ」が送付されますが、その通知ですぐに社労士として登録するためには条件があり、場合によっては講習などを受ける必要があります。
では、社労士として働くまでの大まかな流れは、どのようになっているのでしょうか?
社労士の登録の概要は?
社労士の登録の概要は、以下のような流れになっています。
①社労士試験に合格する
当然ですが、まずは社労士試験に合格する必要があります。合格率6%台という狭き門を潜り抜けた人だけが合格を手にすることができます。
この時、合格した人は社労士という扱いでなく、あくまで社労士試験合格者という区分になっています。
②合格後、全社連から「登録のお知らせ」が送付される
合格後は社労士連合会から登録のお知らせをいただくことになります。
この後の流れですが、実務経験が2年以上あれば④を、実務経験がない場合は③を行うことになります。
なお、ここで言う実務経験とは、「労働社会保険諸法令」に関する実務経験を指しています。(社会保険労務士法施行規則第1条の11に基づく)
③事務指定講習を受講
事務指定講習は一般的に「社労士の合格後の研修」と呼ばれ、この講習を修了することで実務経験が2年以内の方でも社労士登録をすることができるようになります。
事務指定講習では「通信指導過程」を4ヶ月程度、「面接指導過程」を4日程度受講します。なお、いずれも申し込み手続き及び費用が必要になります。
④全国社会保険労務士連合会に登録申請
登録申請を行って名簿登録が完了すれば社労士として仕事・起業が出来るようになります。登録せずに報酬を得て仕事をすると法律違反になります!
また、詳しくは後述しますが社労士登録にはいくつか区分が存在するので、どの区分で登録するかを事前によく考えておく必要があります。
合格後に考える社労士としての生き方
社労士として働くには、全社連に登録する必要があり、2年以上の実務経験がなければ、各種講習を受けなければなりません。
しかも、講習や登録には費用や年会費が必要な上に、その金額も安くはありません。では、社労士試験合格後にはどのようにするのが良いのでしょうか?
資格をとったらすぐに登録をするべき?
社労士試験に合格した後、実務経験がない場合は講習を受けなければなりません。この講習は数ヶ月間かかりますが、通信指導過程は約4ヶ月、面接指導過程は約4日です。
もちろん、すぐに社労士として働きたい人はすぐに申し込んで大丈夫ですが、長い講習期間のため、現在の仕事と両立できるか悩む人もいます。実際に、忙しい仕事を理由に講習を受けない人もいます。
ただし、講習をすぐに受けなくても資格は失われません。後で開催される講習にいつでも申し込めます。だから、都合が悪ければ講習を延期して、自分のライフプランに合わせて社労士になれます。
ただし、試験勉強の知識が時間が経つと薄れることもあるため、早めに受講することがおすすめです。
とにかく、社労士試験合格の前後には今後の計画を事前決めておいて、計画的に社労士登録を進めることが大切です。
社労士の登録は安くは済まない
残念ながら、社労士登録にかかる費用は安くありません。特に、講習の費用は大きな負担になりうる金額な上に、場合によっては講習場所(面接指導過程4日間、開催場所は東京、愛知、大阪、福岡)への交通費や宿泊費が必要になります。
大半の合格者は、2年の実務経験(社労士事務所や社労士法人に勤務して補助者として働いていた経験)がない人でしょうから、この講習は避けては通れないものになっています。なお、必要な費用に関しては、最低でも以下の金額が必要です。
項目 | 金額 |
---|---|
登録手数料 | 3万円 |
登録免許税 | 3万円 |
研修費(通信指導課程、面接指導課程) | 7万円 |
入会金 | 平均8万 |
年会費 | 約9万 |
合計 | 約30万 |
※これに、講習に行く為に必要な交通費や宿泊費を入れると40万円近くかかることもあります。
ご覧の通り、社労士に登録するだけで安くない費用が必要になることが分かります。また、年会費は登録後毎年必要になるので、迷っているのであればしっかりと検討することをおすすめします。
ただし、掛かった費用に関しては、資格取得後に仕事で十分取り返せる水準であるので、試験勉強の知識が薄れないうち講習を受けて登録するほうがベターでしょう。
また、毎年の法改正やIT化などで社労士を取り巻く環境も日々変わっていくので、早めに社労士としてのキャリアを積んでおくべきだと言えます。
なお、全社連へ登録後、脱退すると名簿から抹消されますが、社労士試験合格者である事実は変わらないので、また直ぐに登録することが可能です。
社労士としての働き方は?
見事社労士試験に合格した後には、仕事の選択肢が広がりキャリアアップを見込むことが可能になります。
既に十分社労士としてのキャリアがある人は、すぐに独立開業などを視野に入れても大丈夫ですが、そうでない人は他の選択をすることで収入アップを狙えます。
具体的な選択肢としては、勤務社労士、開業への準備段階としての転職、開業の3つになっているので、ご自分の状況に合わせて検討材料にしてみて下さい。
勤務社労士として企業内でのランクを上げる
社労士の働き方として、勤務社労士というものがあります。企業の総務や人事部に専属の社労士として働く選択肢で、現在既に総務や人事部で働いているのであれば、勤務社労士となって働くのも悪くありません。
勤め先の賃金規定にもよりますが、資格手当が付く場合もありますし、社労士会の会費や登録料を会社側が負担してくれる可能性もあります。
また、資格取得後労務関係のプロとして働け、会社側に積極的にコンサルティング(社会保険の仕事だけでなく労災、年金、セクハラ等の相談が行える)が出来る立場になる訳ですから、昇格や昇進も期待できます。
また、全国各地で頻繁に開催される社労士の勉強会に参加しておけば、情報収集だけでなく他の企業の社労士との人脈が広がり、より高待遇な会社への転職や独立開業のパートナーに巡り会うこともあるので、自分の将来性をより具体的なものとすることも可能です。
以下の記事では勤務社労士について詳しく紹介しています。
社労士として開業する準備段階としての転職
社労士として開業する準備段階の転職検討する場合の選択肢は、企業の管理部門への転職か社労士事務所への転職に分かれます。
企業の管理部門への転職の場合、大企業への転職が最も年収アップが期待できますが、中小企業の管理部門への転職も悪くありません。
なぜならば、中小企業の管理部門へ転職する場合、社労士の業務にあたっている担当者は少ない可能性があり、その反面業務範囲(社会保険や給与計算などの基本業務に加え、労務関係のトラブル解決など)は広くなりがちだからです。
このような企業へ転職した場合、社労士試験の知識が十二分に発揮する事ができ、社労士としてのキャリアも積めるので、その後の独立開業も有利になります。
また、社労士を管理部門へ雇い入れる中小企業は、積極的に労働環境を改善する意欲が高いので、将来的に規模が大きくなる可能性が高く、かつホワイト企業である傾向があるので、働きやすいというメリットも有るのです。
ただし、労災、年金、セクハラ等の相談が増える可能性があるので、コミュニケーション能力は求められます。
一方、社労士事務所への転職の場合、より専門的な能力を養うことができます。
例えば、事務や代行業務を主としている社労士事務所もあれば、就業規則や人事制度に特化しているものもあります。また、そういった何かに特化した業務をやっている社労士事務所ほど、ダブルライセンス以上を推奨しているので、将来独立するのに有利になるでしょう。
また、傾向として社労士事務所は、事務作業メインになっているところが多いので、人と接するのが得意でないのであればおすすめできるかも知れません。
開業する
社労士として独立開業を検討するのであれば、今までの自分のキャリアをふりかえり、強みと弱みを念頭に入れながら、軸をどこに定めるか吟味しなければなりません。
また、社労士の仕事は、3号業務(労務関係の相談などのコンサルティング)で差別化を図るほど有利になるので、ダブルライセンスだけでなく、トリプル、クワッドライセンスなども検討しておくべきです。
独立開業後の年収に関しては、一般的に500万円~800万円となっていますが、業務の展開によっては1000万超えも夢ではありません。
稼ぎ方に関しては、過去の顧客を自分の得意分野でそのまま引き込むのがベターですが、固定客が付くまではハローワークの相談やセミナー、過去の人脈を頼りに新規開拓していくのが良いでしょう。
また、昨今ではクラウドソーシングなど、ネットを介したビジネスや、高齢化が進むことで増える可能性のある年金相談・保険相談、外国人就労者向けのサービスなどといったビジネスチャンスも見込めます。
いずれにしても、独立開業を考えているのであれば、あらかじめ顧客を確保しておくことに加え、今後伸びる分野を見極めて注力するのが重要です。
社労士の開業については以下の記事を詳しくご覧になってください。
試験合格後に社労士登録をする場合
社労士試験合格後は、全国社会保険労務士連合会に登録申請を行い、名簿に登録されることで初めて社労士としての資格を得ます。
しかし、社労士として登録はいくつかの区分に分かれており、選んだ区分で働き方も変わってくるのをご存知でしょうか。
ここでは、その区分とはどのようなものがあるか解説していきたいと思います。
社労士の登録の仕方は数パターンある!
社労士の登録区分には、開業登録、事務所勤務の登録、その他の場合の3パターンに分かれています。
区分によって働き方が異なるので、将来的にどのような働き方をしたいのか、社労士試験を受けるにあたってあらかじめ考えておくのが賢明だと言えます。
開業登録
開業登録とは、原則として個人で独立して社労士事務所を経営する登録区分です。
顧客は主に大企業のように専属の社労士を社内に抱えていない中小企業ですが、社会保険労務士法人(開業型の社労士事務所)等に雇い入れされる場合もこの登録区分に該当します。
事務所勤務の登録
事務所勤務の登録とは、いわゆる勤務社労士の事を指し、特定の企業に社員として雇い入れられて社労士として働く区分です。
法律系の士業では珍しい働き方ですが、社労士の知識を活すこともでき、会社員としての立場も守られる働き方なので、安定した収入を得ることが出来ます。
その他の場合
社労士区分のその他の場合とは、独立するでもなく、特定の企業に雇い入れられる訳でもなく、登録するだけの立場になります。
一見すると無意味な区分のように感じますが、会員としての権利を享受する等のメリット(各種勉強会や講習会への参加、社労士○年目と言ったキャリアを積めるなど)があります。
ただし、決して安くない登録の費用や年会費が必要になるので、登録の際には十分に検討する必要があります。
なお、社労士の登録をするときには、勤務先の住所を登録しますが、その他の場合は自宅住所を登録するようになります。
登録の流れは?
社労士登録をするには、試験合格後に全社連の社会保険労務士名簿に登録(2年以上の実務経験もしくは事務指定講習の修了が必須)するようになっています。
登録に必要な書類は?
書類 | 備考 |
---|---|
社会保険労務士登録申請書 | 合格後、全国社会保険労務士連合会から送付されます |
社会保険労務士試験合格証書のコピー | 送られてきたものをコピーするだけです。 |
従事期間証明書または事務指定講習修了証のコピー | 従事期間証明書は、2年以上の実務経験を証明するもので、記載には書式があるので注意しましょう。 |
住民票の写し(原本) | マイナンバーが記載されていないもの1通を用意しましょう。 |
顔写真 | 写真票に貼り付けて添付します。ただし、大きさは縦3cm×横2.5cmで、背景無地で無帽、かつ正面を向いた鮮明な写真(白黒可)で裏面に氏名を記入します。 |
戸籍抄本、個人事項証明書または改製原戸籍 | 3カ月以内のもので、マイナンバーの記載がないものをいずれか1通。ただし、登録申請時の氏名が合格証・従事期間証明書・事務指定講習修了書と異なる場合のみ必要なので、基本的には不要です |
登録に必要な費用は?
項目 | 金額 |
---|---|
登録手数料 | 3万円 |
登録免許税 | 3万円 |
入会金 | 開業型:5~8万、勤務型もしくはその他3~5万円 |
年会費 | 約9万 |
支部会費 | 約1万 |
合計 | 約10万(入会金は平均の8万円で計算) |
以上は、全国社会保険労務士連合会への登録申請に必要な費用です。入会金に関しては、登録の区分によって変わりますが、勤務型でない場合は平均して8万円程度必要になっています。(それぞれの金額に関しては、多少前後するので要確認)
また、社労士の名簿への登録は、都道府県ごとに登録する仕組みになっているので、年会費や支部会費に関してはおおよその金額と考えて下さい。
登録申請書の提出はどこにする?
登録申請書の提出は、開業登録(開業型の社労士事務所の社員も含む)、事務所勤務の登録、その他の場合の区分によって以下のようになっています。
登録区分 | 提出先 |
---|---|
開業登録(開業型の社労士事務所の社員も含む) | 事務所所在地の社労士会 |
事務所勤務の登録 | 勤務先の事業所所在地の社労士会 |
その他の場合 | 登録者の住所地の社労士会 |
社労士合格後にある事務指定講習とは?
全国社会保険労務士連合会に登録するには、2年以上の実務経験(社労士事務所や社労士法人に勤務して補助者として働いていた経験)が必要になりますが、大半の人が2年以上の実務経験が無いことでしょうから、この事務指定講習を受講すると思います。
では、この事務指定講習とは一体何なのでしょうか?
講習はなんのためにする?
ハッキリと言ってしまえば、事務指定講習は2年の実務経験を数ヶ月で穴埋めするための研修制度だと言えます。
費用に関しては、研修費(通信指導課程、面接指導課程)7万円+交通費・宿泊代に加えて、トータルで4ヶ月程度の期間が必要になりますが、2年の実務経験を4ヶ月程度の期間とお金で買うと考えると、ある意味お得と言えるかもしれません。
講習で習うことは?
講習は通信指導と面接指導に分かれており、まず通信講座(4ヶ月程度)を受けて面接指導(4日程度)を受講する流れになっています。
通信指導過程
通信指導過程では、文字通り送付されてくる教材を元に自己学習を行い、期間中3回に渡って課題の提出が求められます。
提出する課題は、3回合わせて全部で60枚程度のボリュームがあり、提出後添削されて返ってきますが、不備があれば再提出を求められ、期限内に提出されない場合は修了認定されないので、計画的に取り組む必要があるでしょう。
また内容に関しては、事業所の設置・廃止、従業員の採用・退職に関わる各種手続きなど、実務能力を養う目的のものなので、修了後実際に使えるものばかりになっています。
なお、期間は4ヶ月間で、社労士試験合格の翌年2月~5月末まで実施されるようになっています。
面接指導過程
面接指導過程とは、就職の面接のような形式ではなく、現役社労士の方の実務に関する講義となっています。
質疑応答もあるようですが、基本的には講習をひたすら聞き続ける様になっているので、意外ときつい講義と言えるかも知れません。
期間は通信指導が終わった後の7月~9月の間に東京、愛知、大阪、福岡の各会場で平日の4日間行われ、時間は9時30分~16時30分までとなっています。
なお、面接指導過程の修了証は社労士への登録に必要な書類なので、無くさないように大切に保管しましょう。
講習の概要は?
講習の概要は以下の通りです。なお、講習申込みは毎年11月中旬から12月初旬になっており、合格発表後(例年11月上旬)間もないので、必要であればすぐに申し込む必要があります。
事務指定講習の概要は次のようになっています。
概要 | 備考 |
---|---|
申し込み期間 | 11月中旬~12月初旬 |
講習受講料 | 70,000円(税込75,600円) |
講習内容(期間) | 通信指導課程(2月初旬~5月末の4ヶ月)、面接指導課程(7月中旬~9月中旬の内の4日間の9時30分~16時30まで) |
講習科目 | 労働基準法及び労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、健康保険法、厚生年金保険法、国民年金法、年金裁定請求等の手続 |
面接指導課程の開催地 | 東京、愛知、大阪、福岡のいずれか |
修了の認定の条件 | 通信指導課程の研究課題(期間内計3回)の提出を期間内に完了し、4日間の面接指導課程を全て受講すること |
事務指定講習の詳細は以下の記事をご覧下さい。
社労士試験合格後の流れまとめ
社労士試験合格後にすることまとめ
- 社労士登録するかどうかを決める
- 登録する場合は登録区分を決める
- 書類を提出し、必要であれば事務指定講習を受ける
社労士試験合格後の流れを見てきましたが、試験合格までの道のりもさることながら、社労士として登録するまでも先が長いことがわかります。
なお、社労士合格後すぐに転職する人がいるかも知れませんが、履歴書には「社会保険労務士試験合格」と記載するようにし、雇い入れ後の研修日程もあらかじめ会社側と調整しておく必要があります。
実務経験がない人からすると、合格後もやることが山積みですが、それを乗り越えれば念願の社労士になれますので、あと少し頑張りましょう!