【社労士】合格後にある事務指定講習とは?講習の仕組みや内容を解説
この記事は専門家に監修されています
社労士
のんびり社労士いけい
「社労士の事務指定講習って一体どんな制度なの?」
こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実は社労士の国家資格取得後も社労士となる為の資格要件として所定年数の実務経験が必要になります。
しかし、社労士の資格を取得した段階で既に実務経験がある人は多くありません。その場合は事務指定講習を受けることで所定の2年以上の実務経験に代わる資格要件を満たすことができるようになっています。
この記事では、そんな社労士の事務指定講習の仕組みや内容について詳しく紹介していきます。
読み終わる頃には試験合格後の社労士としての道筋がはっきり見えているはずです!
社労士の事務指定講習についてざっくり説明すると
- 社労士としての登録には実務経験が必要
- 事務指定講習を受けることで実務経験が免除される
- 講習の内容は通信指導課程・面接指導課程の2種類
社労士の事務指定講習とは?
社労士の事務指定講習とは一体どんなものなのでしょうか。
ここでは事務指定講習の概略を説明していきます。
講習を行う目的
そもそも事務指定講習はなんのために行われるのでしょうか。
社会保険労務士法第3条第1項が定める規定が定めているように、社会保険労務士となる為の資格として以下の2つの要件があります。
- 2年以上の実務経験
- 厚生労働大臣がこれと同等以上の経験を有すると認めるもの
この実務経験と同等以上の経験が、事務指定講習になります。この事務指定講習を修了することで社会保険労務士として登録する要件を満たすことができるということです。
講習で習う内容
事務指定講習で実施される講習は大きく分けて以下の2つになります。
- 通信指導過程
- 面接指導過程
以下ではそれぞれの指導過程の概要を見ていきましょう。
通信指導過程
通信指導過程は2月~5月末までの4か月間で通信指導を受講します。読んで字のごとく、通信なので、場所を問わず自分のペースで講習を進めることができます。もちろん、後に溜めると大変になってきますので計画を立てて受講しましょう。
講習内容としては、社労士の実務に必要な29の事例について実際の用紙に記入していく形を取ります。
これらは基本的な事項ではあるのですが、障害年金の用紙の記入などはやったことがない人も多いかと思います。よく確認しながら記入しましょう。
また、記入漏れが多く発生してしまいますので、細かい部分までよく事例を読んで記入することが大切です。
たとえ記入漏れがあったとしても事務指定講習を落とされることはありませんが、今後必ず記入する事例が多いですので、この機会によく勉強していきましょう。
面接指導過程
面接指導過程は7月~9月にかけて東京、大阪、愛知、福岡の4都市で計5回開催されます。実施は東京で2回、残りの都市で1回ずつです。
原則、火曜日から金曜日の4日間開催され、9:30~16:30まで社労士による講習があります。
面接指導の内容は、以下になります。
- 労働基準法・労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
- 裁定請求等の手続
社労士の試験合格後に受けるので、再度勉強するつもりで講習を受講するのが良いでしょう。
社労士合格後年数が経ってから受講する人は、思い出す為にもよく話を聞いて勉強してください。
講習を通じた繋がりも!
講習では、大きい部屋でも隙間のないくらい人がいますから、横の人や前後の人と勇気をもって話かけてみてはいかがでしょうか。何か新しい繋がりが開けるかもしれません。
社労士は人との繋がりも大事になってきます。事務指定講習は人脈形成の絶好の機会です。積極的に交流を図っていきましょう。
また、事務指定講習後にも、社労士同士の繋がりを作るような交流会が行われているため、そちらにも積極的に参加するようにしましょう。
事務指定講習の注意点
ここでは、事務指定講習の注意点について紹介していきます。
通信指導過程では所定の期間内に研究課題の提出をしないといけません。
事例は多くありますが、どれをいつ出すかは個人のペースに委ねられます。直前になって慌てることのないように、余裕を持って課題を進めるようにしましょう。
面接指導過程では4日間の面接指導を全日程受講する必要があります。
期間中は毎朝受付をする必要があり、遅刻・早退・講義中の無断外出は認められていません。交通機関の遅延は、遅延証明書を提出する必要があります。
また、どちらか一方を受講後、もう一方を翌年に繰り越すことができない点にも注意が必要です。事務指定講習は2つの過程で一対となっているのです。
事務指定講習はどのタイミングで受けるの?
社労士として働くために必要になる事務指定講習ですが、資格試験合格後すぐに受けなければならないのでしょうか。
ここでは事務指定講習を申し込むタイミングや実際に受けるにあたって知っておくと良いことを紹介していきます。
申し込みができる期間と講習の費用
事務指定講習の申し込みは社労士試験合格後の11月中旬から12月初旬に行われます。
社労士として開業を考えている人は、前もって準備しておくのが良いと思います。後述のように翌年以降に受講してもかまわないので、よく計画を立てておきましょう。
講習にかかる費用は、総額7万円程度です。
通信指導過程と面接指導過程を修了した人には修了証が渡されます。
試験に受かった年に受ける必要はない!
社労士合格後に開業して働く人や、企業内の総務人事で資格を生かして働く為に社会保険労務士会に登録しないといけない人以外は、翌年以降に自分のタイミングを考えて事務指定講習を受講できます。
申し込むタイミングも試験合格後すぐである必要はなく、試験合格の翌年以降でも好きな時期に申し込めます。
事務指定講習による負担は日程的にも金銭的にも小さくないので、資格を取ったものの現状社労士として働く気がない人は、どのタイミングで受けるかをよく考えましょう。
事務指定講習の活かし方
せっかく時間とお金をかけて事務指定講習を受けるわけですから、今後のキャリアのためにも講習によるメリットを享受したいですよね。
特に社労士としての独立開業を目指している人は、事務指定講習を自身の能力アップに最大限活かしていきたいところです。
事務指定講習を活かすためには、以下の2点を意識して受講するのが良いでしょう。
1点目は、社労士の手続きの項目について、受験の時に読んだ参考書や教材を使って確認することです。
講習では基本的事項の手続き事例を記入していきますが、知識の抜け漏れがないように一度参考書等で確認してから記入に臨むのが良いでしょう。
2点目は自分の力で考えて回答を作成することです。周囲の社労士にアドバイスを貰うのは構いませんが、最終的には自分の力だけで回答を作成しましょう。人から教えてもらった答えをそのまま書いても、自身の力にはなりません。
分からないことがあった場合は、本屋などで労働社会保険の手続きについて書かれた本がたくさんありますので、それを参考にするのもよいでしょう。
この事務指定講習が、社労士の手続き業務への第一歩になっていきます。
講習内容に含まれない重要知識もある!
労働保険・社会保険と労働基準法の届け出については大まかにカリキュラムに取り込まれています。しかし、講習内容に含まれていないものの重要である知識というのも当然存在します。
ここでは、そんな講習では学べない重要な知識の一例を紹介していきます。
- 就業規則の作成・見直し〈就業規則の記載内容は講義されますが、作成・見直しは対象外です。〉
- 給与計算〈実務上非常に重要ですが、講習には含まれていません。〉
- 助成金申請〈助成金で営業をしていく人もいますが、これも対象外です。〉
- 営業・新規顧客開拓〈開業セミナーで学びましょう。〉
- 料金体験、賃金体系、退職金制度〈これも開業セミナーで学びましょう。〉
以上のように事務指定講習に含まれない内容は複数存在します。事務指定講習はあくまで社労士合格後の登録の為の講習ですので、実務上の重要な事項について十分に学べるわけではありません。
特に社労士としての開業を考えているのであれば上記の知識は必須です。開業セミナーに参加したり、企業に勤務して実務経験を積むことで補完するのが良いでしょう。
今年度の事務指定講習の日程と受験会場
それでは最後に、今年度の事務指定講習の日程と受験会場を確認しておきましょう。
※今年度の事務指定講習の申し込みは終了済みです。
2019年の通信指導過程の実施期間は次の通りです。
2019年2月1日(金)~ 2019年5月31日(金)
面接指導課程の受講地会場と日程
受験地 | 日程 | 時間 |
---|---|---|
東京A | 6/8〜6/11 | 9:30~16:30 |
東京B | 9/15〜9/18 | 9:30~16:30 |
愛知 | 8/25〜8/28 | 9:30~16:30 |
大阪 | 8/11〜8/14 | 9:30~16:30 |
福岡 | 9/8〜9/11 | 9:30~16:30 |
申し込みの受付期間
次回(2022年2月〜)の申し込みは、2021年の11月から受け付けする予定です。
申し込みを検討されている方はお忘れないようお気をつけください。
社労士の事務指定講習まとめ
社労士の事務指定講習まとめ
- 事務指定講習は社労士登録の資格要件を満たすための講習
- 講習は通信指導過程と面接指導過程に分かれている
- 講習で学べる社労士の知識だけでは不十分な場合もあるので、その後も研鑽が必要
社労士試験合格後の事務指定講習について紹介しました。
事例の提出、社労士の講習と、社労士への階段を一歩一歩進んでいく為に事務指定講習はあります。
この記事を読んでいる皆さんが、今後社労士として活躍していかれることを期待いたします。