公認会計士は簿記何級レベル?難易度の違いや関連資格まで徹底調査!
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公認会計士
白井敬祐
公認会計士を目指して、簿記を勉強している人は多いでしょう。 しかし、公認会計士と簿記には、具体的にどのような関係性があるのかご存じですか?
また、それぞれの試験の難易度に差があることも理解していますか? これらをしっかりと理解していないと、公開してしまいかねません。
そこで、この記事では、公認会計士と簿記の関係や試験の難易度などを解説していきます。
公認会計士と簿記検定の違いについてざっくり説明すると
- 公認会計士は簿記の延長線上にあるような資格
- 簿記の知識があると、公認会計士の勉強がスムーズになる
- 公認会計士の試験は2種類ある
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公認会計士は簿記何級レベル?
公認会計士の試験に合格するためには、どれくらいの簿記レベルが必要なのか、気になる部分の1つです。
ズバリ答えるなら、簿記1級相当の知識は必要といえます。
ある公認会計士の専門学校のカリキュラムを見ると、簿記3級から始まって、2級、そして公認会計士講座の簿記と順次学んでいきます。
そのため、公認会計士になるためには、簿記1級相当の知識を身につける必要があるといえるでしょう。
私も簿記1級は保有していますが、合格するまでに苦労しました。結局、会計士試験に合格する年に簿記1級も同時に合格したので、簿記1級は会計士試験なみには難しい試験だと思います。
しかし、公認会計士と簿記検定には違いもあるので、具体的に説明していきます。
簿記検定について
簿記検定とは、日本商工会議所が実施している検定です。
簿記初級・原価計算初級から1級までの4段階にレベルが分かれていて、一般的に履歴書に書いて評価される2級と1級の難易度は以下の通りです。
- 簿記2級
経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。 高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。
- 簿記1級
極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。 合格すると税理士試験の受験資格が得られる。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。
公認会計士試験と簿記検定の違い
公認会計士試験では、正しい財務諸表を報告できるかどうかが試される試験です。
例えば、掛け売りをした場合、すぐに儲けとするか、お金を回収してから儲けとするか。 1つの取引にもさまざまな見方ができます。
公認会計士の試験では、どのような考え方があるか、あるいは採用するかが問われるのです。
一方、簿記検定では、正しい財務諸表を作成できる技術を持っているかを試されます。
簿記は取引が行われれば、借方と貸方の2つに分けて記録していきます。
簿記の試験では、「財務諸表の作成」が目的ですので、記録を正しくできているが問われるのです。
財務諸表を正しく報告するには、しっかりと作成できなければなりません。 つまり、公認会計士試験では簿記の知識が必要となるので、簿記の延長線上に公認会計士があるといえます。
実際に、公認会計士の試験では、「会計学(財務会計論・管理会計論)」「監査論」「企業法」「租税法」という分野の試験問題を解くためには簿記の知識が必要です。
公認会計士試験・簿記の受験資格
公認会計士試験は誰でも受けられる試験です。 医師や司法試験、税理士試験のように、受験資格はありません。 受けようと思ったときに、いつでも申し込めます。
ただし、税理士試験の合格者や会計専門職の大学院修了者に関しては、一部試験の免除を受けることができます。
また、簿記も公認会計士と同様に、受験資格はありません。 誰でも初級から1級までどれでも受けたい級を受けられます。 そのため、飛び級も可能です。
自分のレベルに合わせて、すぐに上の級を挑戦することができます。
公認会計士試験で求められる簿記レベル
基本的に、公認会計士試験で求められるレベルは、簿記1級相当です。 公認会計士の試験では、財務諸表を正しく報告できる力が試されます。
そのため、高度で専門性の高い簿記の知識が必要です。計算の部分では、簿記1級の試験でも、かなり難易度の高い問題も出題されます。
しかし、公認会計士では短答式や論文式など、問題のバリエーションが多く、論点もより広いので難易度が高い傾向にあるといえるでしょう。
ただし、公認会計士試験は簿記の延長線上にある部分が多分にあります。 そのため、簿記2級や1級を合格しておけば、基礎が固められるので、公認会計士の試験に応用可能です。
もちろん、公認会計士の対策をする上で、簿記をわかっていると理解しやすい科目が増えるので、スムーズに学習しやすくなります。
まったく別ものではないので、公認会計士を目指す人でも、簿記から入ると勉強を進めやすくなります。 簿記1級を目指さなくても、簿記を勉強する価値は十分にあるのです。
公認会計士試験と簿記検定について
誰でも受けられる公認会計士試験と簿記検定。 ここでは、それぞれどのような試験なのか、具体的に説明していきます。
試験の内容に触れていくので、目指している人は、しっかりと読んでください。
公認会計士の試験内容
公認会計士の試験には、大きく短答式と論文式の2つの試験があります。 それぞれの試験について説明していきます。
短答式試験
短答式試験とは、マークシート式の試験のことです。 会計の基幹となる専門知識をしっかりと理解しているかどうかを確認する試験です。
短答式試験では、財務会計論・管理会計論・監査論・企業法の4科目が択一式で出題されます。 合格の条件は総得点の70%以上であること。
ただし、1科目でも40%未満であれば不合格となります。 そのため、苦手科目をなくして、網羅的に理解することが求められます。
ちなみに、短答式の合格率は平均すると、20%程度です。
短答式の試験は、毎年12月と5月に計2回実施されます。 申し込みは、試験日から3~4ヶ月前から始まり、インターネットと書面による出願が可能です。
なお、短答式試験は1度合格すると、2年間は免除されます。 この間に、論文式試験に合格するようにしましょう。
短答式試験について詳しく知りたい方は以下の記事も御覧ください。
論文式試験
論文式試験では、公認会計士としての基本的な知識を持っていることを前提とした試験になります。 そのため、応用能力が問われる試験といえます。
論文式の試験では、必須科目4つと選択科目1つの計5つ受験します。 それぞれ以下の通りです。
- 財務会計論(簿記・財務諸表論)、管理会計論、監査論、企業法、租税法
- 経営学、経済学、民法、統計学 (から1つ選択)
合格の条件は、総得点の52%以上であること。
ただし、1つでも40%未満があれば不合格となります。 短答式と同様に、合格のためには網羅的に学習することが必要です。
ちなみに、論文式の合格率は、平均すると、40%程度です。 合格率は高いですが、決して簡単ではないので、注意してください。
論文式の試験は、毎年8月に1度だけ行われます。
簿記の試験内容
簿記検定に関しては、3級から1級までを説明していきます。
簿記検定3級
簿記検定3級は、小規模企業の会計処理を適切に行えるレベルです。
科目は商業簿記のみで、簿記の基本中の基本を理解しているかどうかが問われます。
試験時間は120分で、総得点の70%以上が合格ラインです。 試験は、毎年2月、6月、11月の年3回行われるます。
簿記3級は簿記の基本が問われる試験ですので、公認会計士を目指す人は、まずここから始めるとよいでしょう。
必須の基本知識ですが、すべてにつながっていくものです。 しっかりと理解することで、公認会計士の勉強がやりやすくなります。
簿記3級についてもっと詳しく知りたい人は、以下の記事を御覧ください。
簿記検定2級
簿記検定2級は、財務諸表を本格的に作成するための知識が問われ、より実務に近いレベルです。
商業簿記だけでなく、工業簿記の知識も必要となってきます。 そのため、出題範囲もグッと広がります。
公認会計士の試験に当てはめると、商業簿記は財務会計、工業簿記は管理会計です。
試験時間は120分で、総得点の70%以上が合格ラインです。 試験は、毎年2月、6月、11月の年3回行われるます。
簿記2級は、より本格的な内容になるので、公認会計士の試験を受けるなら、必須の知識レベルです。 しっかりと理解するようにしましょう。
簿記2級についてもっと詳しく知りたい人は、以下の記事を御覧ください。
簿記検定1級
簿記1級は、企業会計を理解した上で、経営管理や経営分析が求められるレベルです。
簿記の理解だけでなく、会計学や原価計算などの知識も必要となります。 簿記1級は公認会計士の登竜門といわれるので、取得できればかなり勉強が進みやすくなるといえるでしょう。
試験は商業簿記・会計学が90分、工業簿記・原価計算が90分の計180分の試験です。 合格ラインは総得点の70%以上。
ただし、1科目ごとの得点に40%未満があれば不合格となります。
試験は、毎年6月と11月の年2回行われます。 3・2級と比べて、1回少ないので、注意してください。
簿記1級についてもっと詳しく知りたい人は、以下の記事を御覧ください。
公認会計士・簿記に関連する資格
公認会計士や簿記に関する資格はいくつもあります。 ここでは、どのような試験があるのかついて解説していきます。
特に、税理士に関しては、少し細かく説明していきますので、参考にみてください。
公認会計士と関連する資格
公認会計士に関連する資格には、簿記検定をはじめとして、税理士、米国公認会計士、公認内部監査人(CIA)などがあります。
税理士の仕事の1つに、納税者の申告の代理や書類作成などがあります。 相手が企業や個人事業主であれば、財務諸表の作成も必要になるので、簿記の知識は必須です。
米国公認会計士は、文字通り米国版の公認会計士です。 日本の公認会計士の基本に簿記の知識が必要であるように、米国公認会計士にも、簿記の知識が必要になります。
公認内部監査人(CIA)は、企業の会計報告に誤りや不正がないかを確認する能力を持った人のことです。 会計報告を調査するので、財務諸表、つまり簿記の知識が必要になるのです。
ここで説明した資格は、どれも簿記の知識がベースにあります。 そのため、公認会計士と一緒に取得を目指してみてはいかがでしょうか。
税理士へのステップアップ
簿記1、2級を合格した後に、税理士を目指す人がたくさんいます。 その理由に、税理士の知識のベースも、簿記で構成されている部分があるためです。
特に象徴的なのは、簿記1級を取得すると、税理士の受験資格が与えられます。
また、税理士の中心業務は、税務署に提出する申告書の作成業務であることです。 簿記の知識があると、申告書、特に財務諸表の作成がスムーズになります。
そのため、簿記は税理士へのステップアップに最適の資格といえるでしょう。
税理士について興味がある方は以下の記事を御覧ください。
簿記検定と関連する資格
簿記検定と関連する資格として、ここまで説明してきた通り、公認会計士と税理士の資格があります。 2つとも国家資格で、かなり難易度が高いです。
しかし、簿記検定の勉強の先に見えてくる資格でもあります。 「会計」「経理」に興味がある人は、簿記から始めるようにしましょう。
ちなみに、お金についての知識を問うものには、ファイナンシャルプランナー(FP)もあります。
ファイナンシャルプランナーとは、年金や資産運用などお金を絡めたライフプランをアドバイスする資格です。
税制や住宅ローン、相続などお金に関する知識が必要なので、簿記の知識があると取得しやすくなります。
公認会計士になるには簿記を取得すべき?
ここまで公認会計士のベースには簿記がある、と説明してきました。
では、公認会計士の取得を目指す前に、簿記を取得すべきかというと、そう簡単ではありません。 その理由は、難易度、資格の待遇が大きく違うためです。
そのため、勉強に取りかかる前によく考える必要があります。 ここでは、簿記を勉強するメリットとデメリットを説明していきます。
簿記検定を受けるメリット
公認会計士試験の合格は簿記検定合格の延長線上にあると説明してきました。 そのため、簿記の勉強をすることは公認会計士試験を受ける上で大きなメリットがあります。
特に、簿記1級は会計学や原価計算などを学ぶので、公認会計士試験の学習の負担を減らせることができます。 公認会計士試験合格への見通しをつけられる人もいるくらいです。
また簿記を学べば、ビジネスマンとして知っておきたい知識が得られます。 さらに、公認会計士に向いているかどうかの判断ができるメリットもあるのです。
まずは自分が公認会計士に向いているかどうかを知りたい人は、簿記2級や3級を受けてみることをおすすめします。
簿記だけで公認会計士に向いているかどうかは正確に判断できません。 しかし、財務諸表を扱うので、大きな判断材料になることは間違いないでしょう。
簿記検定を受けるデメリット
公認会計士試験に出題される会計学は、日商簿記1級の範囲を超えます。 さらに、会計学以外に4科目も勉強しなければなりません。
つまり、簿記1級を取得したとしても、そこからさまざまな勉強をする必要があるのです。
また、簿記1級はそれだけでもかなり難易度の高い資格で、多大な勉強時間と労力を必要とします。
そのため、簿記1級にこだわっていては、公認会計士試験の学習にたどり着けない場合すらありえます。
公認会計士を目指す人にとって、簿記の勉強をするメリットはたくさんあります。
しかし、簿記の資格にこだわる必要はありません。 自分が何をしないのかをしっかりと把握した上で、簿記を勉強し続けるのか、公認会計士の勉強をするのかを判断するようにしましょう。
公認会計士と簿記検定の違いまとめ
公認会計士と簿記の違いまとめ
- 簿記を勉強すると、公認会計士の勉強がやりやすくなる
- ただし、簿記検定にこだわりすぎると、公認会計士の遠回りになることもある
- 簿記1級は4科目であるが、公認会計士は5科目勉強しなければならない
公認会計士と簿記検定には違いがあります。 公認会計士は財務諸表の報告をするのが主な役割であるのに対し、簿記検定は財務諸表の作成が主な目的である点で異なります。
しかし、財務諸表を扱うという大きな共通点があります。そして、財務諸表を正しく報告するためには、正しく作成できなければなりません。
その意味では、公認会計士になるために、簿記の勉強をすることには大きな意味とメリットがあります。
もちろん、簿記を勉強することで、公認会計士に向いているかどうかがわる場合もあります。
このため、公認会計士を目指すなら、簿記を勉強してみてはいかがでしょうか。