公認会計士の受験資格とは?試験免除制度から資格取得後の流れまで徹底解説
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公認会計士
白井敬祐
公認会計士は国家試験です。国家試験の中には受験資格があるものが多く、受験資格を満たさなければ試験を受けることができない場合があります。
それでは、公認会計士はどうなのでしょうか?資格取得を目指したいけれど、受験資格の有無が気になるという人もいるでしょう。
この記事では、公認会計士の受験資格はもちろん、公認会計士になるまでの流れについても解説します。
公認会計士についてざっくり説明すると
- 公認会計士の国家資格に受験資格はない
- 国家試験には条件によって免除される科目がある
- 国家試験合格後、実務経験と修了考査合格が必要
公認会計士に受験資格はいるの?
公認会計士試験に受験資格はありません。
試験によっては受験資格と言って、一定の学歴(例えば社労士試験では大卒であること)などの要件があります。
一方で公認会計士にはそのような受験資格が存在せず、受験するうえで年齢・性別・国籍関係なく、20歳未満の未成年者でも受験可能です。
年齢制限もなく、誰でも受験できるのだから、試験内容は簡単かと思う人もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。公認会計士は数ある国家資格の中でも大変難しく、その合格率は10%前後です。
ただ、試験に合格して資格取得ができれば就職活動などでも大変有利になります。
試験免除要件もあり
公認会計士は大変難しい国家資格ですが、試験科目の免除制度が設けられています。試験免除要件を満たすことで、科目の一部が免除されるというものです。
具体的には学歴やすでに取得している資格によって財務会計論などのような短答式試験の一部の科目または全科目が免除されたり、租税法などの論文式試験の一部が免除されたりします。
取得している資格の主な例としては税理士や不動産鑑定士の資格取得者、司法試験合格者が挙げられます。学歴では、会計専門職大学院で簿記や監査論について研究し、学位を授与された人というのが条件です。
公認会計士試験の免除制度について詳しく知りたい人は以下の記事を御覧ください。
他の国家資格の受験資格と比較
公認会計士は医師、弁護士と並んで三大国家資格と言われています。ですが、その中でも公認会計士は受験資格が比較的少ない国家資格です。
他の2つの国家資格と受験資格を比較して解説しましょう。
医師
受験取得するには、まず医大で6年の教育課程を修了し、更に2年以上の臨床研修医の経験が必要です。受験資格に年齢制限はありませんが、これらの条件をすべてクリアする必要があるため、必然的に年齢制限が生まれます。
また、医師国家試験自体には絶対に間違ってはいけない問題がいくつかあり、4問以上間違うと例え点数が合格点に達していても不合格になります。
弁護士
弁護士の司法試験に年齢制限はありませんが、受験回数制限が設けられています。決められた回数の間に合格しなければ、弁護士としての道は断たれてしまうということです。
具体的には、法科大学院卒業後もしくは司法予備試験の合格発表後から5年以内に3回まで司法試験に挑戦できるのでその間に合格する必要があります。
更に、司法試験合格後は約1年の司法研修を経たのち、司法修習考試に2回合格する必要があります。
弁護士の詳しい受験資格については以下の記事を御覧ください。
公認会計士
公認会計士の受験資格は年齢制限も受験回数制限もありません。誰でも何回でも受験することができます。ただし、試験自体は短答式試験と論文式試験の2回あり、どちらにも合格する必要があります。
また、国家資格取得後は2年間の実務経験が必要です。その上で実務補習所で単位を取得し、修了考査を受験します。この試験に合格してようやく公認会計士としての資格取得完了です。
公認会計士を目指すタイミングはいつがいい?
公認会計士は年齢制限も受験回数制限もありません。誰でも受験できるように門戸が開かれています。言い換えるなら、目指すタイミングはいつでも良いということです。
ただ、自分の置かれている状況をしっかり見極めて目指すタイミングを決める必要があります。試験自体は大変難しいため、落ち着いた環境で勉強できる大切を整える必要があるのです。
大学生から目指す場合と、社会人になってから目指す場合に分けて、それぞれ解説します。
大学生
大学生の間に公認会計士を目指すのは最もメジャーなタイミングと言えます。大学生は社会人に比べて時間の自由が利くため、勉強しやすい環境を作ることが容易です。
国家資格合格までの学習時間の目安はだいたい1年半から2年とされています。このことから、大学1年や2年で目指して勉強を始める人が最も多くなっています。
大学生の間に公認会計士のを目指すのであれば、当然学校の勉強とは別の勉強時間を作る必要があります。サークル活動を行なったり、アルバイトを始めたりする人もいるでしょう。それらといかに両立させるかがポイントとなります。
学部によって有利・不利はあるの?
結論から言うと、学部によって有利・不利はありません。公認会計士の試験内容は大変幅広く、会計はもちろん法律面でも多様な知識が必要です。
ただ、一般的には経済学部や商学部が有利だとされています。これは、学習内容が公認会計士の試験内容と重複する部分があるからです。
公認会計士に強い大学や学部に関しての情報が知りたい方は以下の記事をご覧ください
社会人
社会人は勉強時間を確保するのが大変です。勉強時間を確保しづらい大きな要因として学生と異なり、平日は日中仕事をしていることが挙げられます。
スキマ時間を活用しながら勉強することになるため、体力勝負という一面もあります。
社会人になってから公認会計士を目指す人の多くは、仕事の中で会計や経理職に魅力を感じ、目指そうと決心します。更なる知識を増やして将来の仕事に役立てたいと思うのです。
ただ、勉強時間を確保することは大変難しいため、長期でスケジュールを立てて勉強する必要があります。大学生の場合は1年半から2年が合格の目安ですが、社会人の場合は2~3年が目安とされています。
社会人から公認会計士を目指す人は以下の記事も御覧ください。
公認会計士の試験形式・内容
公認会計士になるための国家試験は2回あります。そのどちらも合格しなければ、合格したことにはなりません。
具体的にはどんな試験形式や内容なのか詳しく掘り下げて解説します。
試験は2つに分かれる
試験は短答式試験と論文式形式の2種類に分かれています。どちらも必須試験となっているため、試験に合格しなければ公認会計士の国家試験に合格したことにはなりません。
短答式試験は4科目あります。これらはすべてマークシートの択一式で行なわれますが、試験の範囲は大変広いため、決して簡単な試験ではありません。しっかり勉強をして下準備をしておくことが必要です。
論文式試験は5科目あり、今まで学んできた知識を自分の言葉で表記する筆記試験です。マークシートのようにあらかじめいくつの選択肢が示されているわけではなく深い知識が要求されます。
どんな内容が出るの?
短答式試験の内容は、財務会計論、管理会計論、監査論、企業論の4科目です。中でも財形論は論文式試験とも深く関わっています。それだけ重要な分野であるということですから、特に重点的に勉強することをお勧めします。
また、論文式試験は会計学、企業学、租税学、監査論とさらに選択科目の5科目です。選択科目の中身は経済学、統計学、経営学、民法の4つあり、この中から1つを選択して受験します。
4つの選択科目の中では、経営学が最もボリュームが少なく、現場で最も活きる知識でもあります。よって経営学が選択科目の中で最も選ばれる科目となっています。
合格後の流れ
公認会計士は、試験に合格しただけでは不十分です。更に実務経験と修了考査という試験に合格する必要があります。
きちんとした手順を踏むことで、ようやく公認会計士として認められ、名乗ることができるのです。
ここではその流れについて詳しく解説していきます。
就職活動で仕事先を見つける
公認会計士として登録するには、実務経験を積む必要があります。最もメジャーな就職先としては監査法人が挙げられます。その理由は求人が多いからです。
リーマンショック時に監査法人では大規模なリストラが行なわれました。その後、景気は回復し、今度は人手不足に陥ります。その状況は現在も変わっていないため、需要が高いのです。
また、監査法人は会社の規模が大きいため、他の証券会社や民間企業に比べて収入が大変多いという特徴があります。同じ就職するなら給料が高い方が良いため、多くの人たちが監査法人に集中しています。
業務補助と実務補助の両方が必要
公認会計士としての登録要件を満たすためには、いくつかの条件があります。その条件とは「実務経験」「実務補習」「修了考査の合格」の3つです。
実務経験は最低でも2年間必要です。また、実務経験にはさらに細かな条件があり、業務補助か実務従事のどちらかが必須条件となっています。公認会計士として実際の仕事に携わらなければならないということです。
また、実務補習は3年間受けることになります。資格取得のための勉強だけでは、公認会計士としての知識は不十分だということです。その後、修了考査を受験して合格すれば、ようやく公認会計士として認められ、名乗ることができます。
業務補助・実務従事
業務補助や実務従事として認められる代表的なのは監査法人で仕事をしたという経歴です。また、一部の金融機関や保険会社での仕事が、実務経験年数としてカウントされることもあります。
これらの就職先で会計・税務書類の作成、報告に最低2年間従事することで、業務補助や実務従事の条件満たしたことになります。
実務補習
実務補習とは、国家資格合格後に行なう座学研修です。公認会計士になるためには国家資格のための勉強だけでは不十分です。実際に仕事をしていく上で必要な技能などを習得する必要があり、そのための補習授業です。
平日の夜と土日で行なわれ、週に1~2回のペースで行なわれます。これを3年間受講して必要な単位を取得します。
修了考査
従来修了考査の合格率は7割ほどありましたが、最近では5割をきっています。
以前なら試験の直前1ヶ月前からちょこっとやるという人が多かったですが、最近ではそれでは通用しなくなってきており、半年前〜3ヶ月前からしっかりと準備することが必要です。
また修了考査対策として予備校に通うこともおすすめします。
公認会計士の国家試験を合格したのち、更なる試験である修了考査が待ち受けています。3年間の実務補習の中で必要な単位を取得すると、受験資格を得ることができます。
合格率は2017年度まで70%程度で推移していましたが、2018年度から急減し、現在は50%弱で推移しています。
試験自体は国家試験ほど難しくはありませんが、実務補習をこなしたうえでしっかりとした対策をとることが重要です。
公認会計士の登録方法について
上記で説明したすべての要件を満たしたからと言って、これで公認会計士を名乗れるわけではありません。
要件を満たすと公認会計士としての登録が可能になります。必要な手続きを経て登録することで、資格取得が完了したことになるのです。
登録には必要な書類を提出する必要があります。主な必要書類は、合格証書、修了証書の写し、履歴書と戸籍謄本です。これらを日本公認会計士協会に提出します。
更に、登録料として登録免許税6万円が必要です。ただこれ以外に入会金約4万円、施設負担金5万円も別途払う必要があります。
これらの手続きと必要な金額を払い、審査が通れば晴れて公認会計士としての資格取得ができるのです。
公認会計士の受験資格まとめ
公認会計士の受験資格まとめ
- 受験資格に制限はない
- 国家資格合格後、更なる実務経験と修了考査の合格が必要
- 登録手続きをして公認会計士を名乗ることができる
公認会計士について受験条件や公認会計士として名乗ることができるまでの流れを解説してきました。
公認会計士は国家資格の中でも受験条件がなく、門戸が広く開かれています。本人の努力次第で取得可能ですし、売り手市場でもあります。自分のスキルアップの意味でも挑戦してみてください。