通関士の年収は高い?男女別・高卒などの給料から就職状況まで徹底解説!

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「通関士の年収ってどれくらいなの?」

「通関士ってどのような仕事をしているの?」

通関士を目指している人の中には、このような疑問や不安を感じている人もいるでしょう。

結論から申し上げますと、通関士の年収はどこに勤めるかで大きく変わるというのが現状です。また、通関士のニーズは高く、門戸も広いというのが現在の就職状況です。

そこで、これから通関士の年収はもちろん、就職状況や勉強の仕方に至るまで詳しく解説します。この記事を読めば、通関士で年収を上げる方法もわかりますから、ぜひ参考にしてください。

通関士の年収や就職状況についてざっくり説明すると

  • 通関士全体で見ると一般企業と比べて年収は低め
  • 通関士のニーズは高まっており、勉強中でも携わることができる
  • 通関士の資格は独学でも取ることが可能

通関士の年収は高い?

コインやお札 通関士を目指している人の中で、特に気になるのは年収でしょう。一般的な年収と比べた場合、通関士の平均年収はどれくらいなのでしょうか。

まずは多くの人が知りたいと思っているであろう通関士の年収についてご紹介します。

通関士の基本情報をまずは押さえよう

通関士は、輸出入手続きのプロフェッショナルといわれており、この手続きに関しては通関士試験に合格した人だけが行うことができます。

具体的には2つの独占業務である「通関書類の審査」「通関書類への記名・捺印」が大きな仕事の柱となっており、その専門性から貿易業界での信頼性も厚い資格です。

就職先は通関業者がメインとなりますが、他にも海運や商社・メーカーなど、輸出入に関わる業者に幅広く就職できることも大きな魅力であるといえるでしょう。

通関士の平均年収は450万円前後とあまり高くない

通関士の年収は、平均450万円前後といわれています。これだけみるとあまり高くないと感じるかもしれません。全体的な平均年収は441万円なので、この数字と比べると平均的と言えます。

ただ、通関士の平均年収はボーナスの額によって大きく差が生まれます。ボーナスの金額が高いところは当然年収も高くなりますし、ボーナスが少なくなれば年収は低くなります。

また、通関士には特別手当が支給されることが多くあります。この手当ての金額が多い、または手当の種類が多い場合は、ボーナスの金額に関わらず年収は高くなります。

ボーナスや手当の額で通関士の年収は多少前後しますが、それらを考慮すると年収の幅は400~500万円というのが相場です。

通関士の年収はイメージよりも低いと捉えられやすい

通関士はいわゆる「士業」です。士業は年収が高いと考えてる人が多いため、通関士もきっと年収は高いと考える人が多いようです。そのイメージから比べると、平均年収は低いと感じるかもしれません。

国税庁が発表した日本人全体の平均年収は441万円ですから、これと比べた場合、士業である通関士の年収は低いと感じるのは、当然と言えるかもしれません。士業なのにサラリーマンと変わらないとがっかりする人もいるでしょう。

給料や年収だけで通関士を見た場合、通関士そのものの魅力や好待遇は期待しにくいのが現状です。

外資系や海外勤務だと給料は高め

通関士の平均年収は450万円ですが、これは通関士全体で見た場合です。実は通関士の年収は勤務先によって大きな差が生まれます。

外資系や海外勤務となると、年収は600~800万円程度に跳ね上がります。仕事ぶりによっては1000万円をこえている人もいます。

また、海外勤務は通常支払われる給料以外にも、駐在手当や危険手当が支給されます。これらの金額は大変高いため、年収も高くなるのです。

年齢ごとの給料

通関士の年収は、他の業種と同じように年齢と共に増加する傾向があります。どのように年収が上がっていくのか、一覧表で見てみましょう。

年代 年収 月給
20代 300~380万 25~31.7万
30代 420~480万 35~40万
40代 530~600万 44.2~50万
50代 600~650万 50~54.2万
60代 450~500万 37.5~41.7万

40代や50代で月給や年収が高くなっているのは、高い役職についているからだと考えられます。

ある程度通関士としての経験も積み、通関士に付随したさまざまな資格も新たに取得する人も多いため、役職について平均年収が上がるのです。

ただ、60代以降になると役職からは外れる傾向が高くなります。役職手当もなくなるため、月給は年収は下がるのです。

男女別の年収の違いも押さえよう

通関士は男性だけではなく、女性も活躍しています。その比率は男性が6割に対して女性は4割です。

通関士は男社会と思っている人もいるかもしれませんが、活躍している女性も多い職場であるといえるでしょう。

以下は男女別の年収をそれぞれ表した表になります。

年齢 年収(男性) 月給(男性) 年収(女性) 月給(女性)
20-24 290万 24.2万 290万 24.2万
25-29 445万 37.1万 357万 29.8万
30-34 414万 34.5万 367万 30.6万
35-39 428万 35.7万 380万 31.7万
40-44 472万 39.3万 422万 35.2万
45-49 542万 45.2万 487万 40.6万
50-54 601万 50.1万 542万 45.2万
55-59 596万 49.7万 573万 44.8万
60-64 380万 31.7万 340万 28.3万

この表から男性に比べて女性の月給や年収は少なめに感じます。ただ女性全体の平均年収は293万円、平均月給は24万円となっています。

これらの数字と比べた場合、女性の通関士の平均年収や平均月給は、平均~少し高めと言えるでしょう。

また、男性に比べて女性の方が少なくなっているのは、育休や時短勤務をしている人が多いためと考えられます。家庭と両立させている女性も多いため、平均年収や月給が低くなっているのです。

通関士のボーナス・昇給事情

通関士のボーナスは年に2回のパターンが多くなっています。ただし、外資系や海外勤務になると、ボーナスの支給パターンは異なる場合があります。

通関士はサラリーマンと違って、通関士手当なども支給されます。通関士は特別な資格とされているため、持っているだけで特別手当が支給されるのです。相場は3,000~15,000円です。

昇給事情については、日本の一般企業同様に年功序列式のケースが多く見られます。そのため、同じところで長く経験や実績を積めば積むほど、給料も高くなっていきます。

高卒の場合も同等の給料をもらえる

通関士は国家資格ですが、受験資格はありません。そのため、高卒の人でもしっかり勉強すれば取得できる資格です。

高卒で通関士の資格を取得し、会社に入社すればその会社で勤めている人たちと同じ待遇を受けることができます。高卒だから待遇が悪くなるということがないのです。

しかし、多くの会社では大卒を採用条件に入れているところが多く見受けられます。そのため、高卒で通関士の資格を取得することは可能ですが、就職するとなると大卒の人よりも難易度は高くなるというのが現状です。

年収1000万円に近づく方法も存在

通関士は勤める会社や勤め方によって、年収を1000万円にすることもできます。具体的に通関士の年収を1000万円に近づけるためにはどのようにすれば良いのでしょう。その方法について詳細に解説します。

高い役職につく

年収を1000万円に近づける方法として、高い役職につくということが挙げられます。高い役職につけば、それだけ高い役職手当が支給されるからです。部長などの役職につくと、かなりの報酬アップが見込めるでしょう。

会社によっては通関士以外にそれに付随する資格を取得すれば、高い役職につくことができるという条件を設けているところもあります。本人の努力次第で高い役職につくことは可能だということです。

海運業界は他の業界よりも高め

通関士の就職先には一般企業や物流の他に、海運業界が挙げられます。海運業界の年収は他の業界に比べてかなり高めで、平均年収は779万円と言われています。

海運業界が他の業界に比べて高いのは、主に途上国の発展が進んでいるからと言われています。途上国が発展すれば、それだけ物中の流れも激しくなり、海運業界は好景気になるのです。

ただし、海運業界は世界経済の景気に左右されやすいという難点があります。世界的な経済状況が悪くなれば、海運業界の景気も比例して悪くなるのです。このことから、海運業界の好景気が安泰であるとは言えません。

海外で勤務する

海外に勤務するというのも、年収を1000万円に近づける一つの方法です。海外勤務をすれば、駐在手当や危険手当が加算され、月給や年収は高くなります。

ただし、すべての会社で海外勤務ができるというわけではありません。海外に支店を持っている会社に就職する必要があります。

通関士の年収を他の業種と比較

さまざまなグラフ 通関士の年収は、他の業種と比べて高いのでしょうか?それともあまり変わらないのでしょうか?

士業系や貿易関係などと比べて、通関士の年収について見ていきましょう。

士業系の資格

資格 年収
通関士 450万円
弁護士 1000万
弁理士 700~800万円
公認会計士 892万円
税理士 700万円
社労士 670万円
行政書士 600万円

主な士業と比べた場合の通関士の年収です。上の一覧表を見てみると、やはり士業の中で通関士の年収は低いことがわかります。

ただし、通関士の就職先は他の士業と比べて大変多岐に渡っています。一言で通関士と言っても、一般企業に勤めた場合と海運業界で勤めた場合とでは、平均年収に大きな差があります。

先ほどの項目で解説したように、同じ通関士でも海運業界だけで見た場合の平均年収は779万円です。これは弁理士や税理士の平均年収に相当します。

通関士全体の年収で考えると低く感じられますが、どの業界で活躍するかによって、実際に得られる年収は変わるということです。

上記で取り上げられた資格の年収事情についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をそれぞれご覧ください。

貿易関連系の仕事

仕事 年収
通関士 450万円(ただし、海運会社の場合は約700万円)
貿易事務 440万円
航空会社事務職 500万円
フォワーダー営業 551万円
海外営業(メーカー) 621万円
海外営業(商社) 1,137万円

上の一覧は、貿易関係で通関士以外の仕事の年収を一覧表にしたものです。この一覧表を見ると、貿易事務よりも少し高めなことがわかります。ただし、それは通関士全体で見た場合の年収です。

通関士が海運会社に勤めた場合の平均年収は700万円ですから、メーカーの海外営業よりも高くなります

通関士の就職や転職の状況

ノートパソコンを使う女性 通関士の就職や転職はどのようになっているのでしょう。これから通関士を目指す人は、給料と同じくらい気になるところです。

そこで、通関士のニーズや求人状況について解説します。

通関士のニーズは高い

通関士の就職や転職先のメインは、通関業者です。通関業者は通関を行なうことがメインですから、当然たくさんの通関士を求めています。

また、それ以外に倉庫会社や商社・メーカーなどが挙げられます。これらは自社で通関業務も行なっているケースが多いからです。

通関業者なら、主な通関士の仕事は通関書類の作成から税関とのやり取りに至るまでが、メインの仕事になります。時には税関検査の立会にも応じることがあります。

商社やメーカーの場合は、通関書類の作成はもちろん、貨物の物流手配まで行ないます。トラックなどの手配も通関士が行なうということです。

これらの仕事は輸出入には欠かせません。専門的な知識も多く必要なので、通関士のニーズは高くなっています。ですが、現在通関士は人手不足に陥っており、就職や転職は比較的しやすくなっています。

通関士の求人状況

通関士の求人の仕方には、さまざまなケースがあります。通関士として募集をしているところもありますが、通関業務のサポートとして募集をしているケースもあります。

通関士として募集をしているところの多くは、通関士としての資格を保有しており、尚且つある程度通関士としての実務経験もあるという条件を設けています。そのため、通関士として転職を希望している人が有利になります。

通関業務のサポートとして募集をしているところは、==通関士の資格を取得していなくても採用されることも多々あります。仕事をしながら通関士の資格を取ってもらうことが目的だからです。

また、サポート業務を募集しているところは、通関士の資格を取得したけれど実務経験がないという人の採用にも積極的です。このため、経験を積みたいという通関士の卵も多く就職します。

通関士の仕事のやりがい

通関士の仕事のやりがいとして挙げられるのは、「顧客に喜んでもらえる」 という点です。通関手続きは大変複雑なので、知識がない人が行なうと大変です。時には不要なお金がかかってしまうこともあります。

通関士は法律の知識もありますから、適正な通関業務を行なうことができます。スムーズに通関業務を進めることで素早く安全に荷物を受け取ることができます。必要最低限の費用で通関するので、顧客に喜んでもらえるのです。

また、通関士の仕事は国の利益や安全に密接に関係しています。高い知識と適切な手順で通関を行なうことで、国の利益や安全を確保することにつながっていることも大きな魅力であるといえるでしょう。

通関士の仕事の大変さ

通関士の仕事で真っ先にぶつかるのは、経験です。通関士の試験に合格して資格を取得しただけでは、正しい通関を行なうことは難しいのです。

通関業務は知識として学んだことだけでは充分とは言えません。ケースバイケースで臨機応変に対応しなければならないことが多々あり、これらは経験を積まなければ身につけることができません。

また、ミスが許されないという点も大変なことの1つです。商品の分類方法を間違えたり、税金の計算をミスしたりするとクライアントにも多大な迷惑をかけてしまうことになります。

よって、職務の遂行には慎重さが求められるといえるでしょう。

通関士の試験は独学で受かる?

積み重ねられた本 通関士の試験に受験資格はありません。そのため、独学で試験に臨む人も多くいます。実際に独学で通関士の試験に合格することはできるのかについて解説します。

独学は不可能ではないが難しい

通関士の試験に受験資格はありません。専門学校に通い、修了証明書を入手しなければならないということもないため、独学で受験することは可能です。

また、独学で通関士の勉強をし、試験に合格して資格を取得する人もいます。ですが、初学者が独学で合格を狙うのは難しいかもしれません。

通関士資格はインターネット上で詳細な情報があまり公開されていません。そのため、情報不足で試験に合格できない可能性や、わからない点が出てきた場合には解決に時間がかかる危険性も高まります。

独学に向いている人

独学で通関士の試験に合格しやすい人はいます。そのような人はどんな特徴があるのかをご紹介します。

通関士の業務を経験したことのある人

通関士の独学に一番向いているのは、通関士の業務経験者です。特に現役で通関業務に携わっている人は、独学でも通関士の試験を取得する可能性が高くなります。

通関士業務経験者は、科目免除があるため、未経験者や初学者とは勉強の仕方が異なります。勉強しなければならない科目が少なくなるため、勉強しやすくなるのです。

また通関業務経験者は、周囲に資格取得者が存在しています。勉強の仕方やポイントを教えもらうことができるため、自分なりの勉強スタイルを画一しやすくなります。

更に、わからない点は気軽に周囲の人たちに聞くことができるので、自分で調べるという手間と時間が不要です。

法律の勉強が得意な人

通関士としての実務経験がなくても、法律の勉強経験がある人も、独学で通関士の資格取得を目指しやすくなります。

通関士の試験では、法律問題も出題されます。法律は専門用語が多く出てくるため、初学者にとってはわからない点が多くなってしまいます。

ですが、法律の勉強が得意な人や法律の勉強経験がある人は、すでにある程度の知識を持っています。わからない点があっても、自分で解決することができるため、独学で合格を目指すことができるのです。

通関士試験の独学勉強法について知りたい方は以下の記事をご覧ください。

通関士になるまで

道路 通関士になるには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。通関士になるまでのポイントや勉強方法について解説します。

暗記が何よりも大切

通関士の勉強で何より大切なのは暗記です。試験科目は3科目ありますが、これらのほとんどが法律に関することです。法律の知識をたくさん蓄えておくことが、合格には何より不可欠です。

多くの人たちは法律に関する事前知識がほとんどありません。法律の名前とセットでその内容やポイントについても一緒に暗記しておきましょう。すると、試験で応用を利かせることも可能になります。

通関士のおすすめ勉強法

通関士の試験の中でも、関税法と通関業法に関しては、そのほとんどが条文や諸制度の知識を問う問題です。そのため、条文や諸制度の知識を暗記するとともに理解しておくことで、高い点数を取ることができます。

勉強を始めたばかりの頃は慣れない言葉などが多く出てくるでしょう。その場合はテキストを繰り返し読んで内容を頭に叩き込みましょう

通関実務は、貿易用語の多用や計算問題が多く出題されます。毎年難化傾向にあるため、覚悟しましょう。

順番としては輸出申告書・加算・計算・輸入申告書で勉強を進めましょう。輸入申告書が最後になっているのは、難易度が年によって大きく異なるからです。

それよりも輸出申告書や計算問題を優先した方が、合格点に近づきます。

過去問も使って対策するのがおすすめ

通関士の試験対策では、過去問も使った方が良いでしょう。試験の全体像を掴むことができるからです。

問題集は繰り返し演習してください。間違えた問題を重点的に勉強することはもちろん、解けている問題についても時間をおいて繰り返し演習しましょう。

通関士の合格点は6割であることが多いです。確実に合格するためには演習問題の時点で7~8割に設定しておくと良いでしょう。

以下の記事では通関士のおすすめ勉強法についてまとめています。

通関士の年収や就職状況についてまとめ

通関士の年収や就職状況についてまとめ

  • 通関士の年収は勤める業界によって大きな差がある
  • 通関士のニーズは高まっているが、人手不足
  • 通関業務経験や法律に明るければ、独学でも資格取得が可能

通関士の年収や就職状況について解説してきました。年収についてはどこに勤めるかで大きな差が生まれます。また、努力して役職につけば高収入を得ることができます。

現在、通関士は深刻な人手不足に陥っています。そのため、通関士の卵だけではなく、これから通関士の資格を取得しようとする人にも広く門戸が開かれています。

就職や転職は大変しやすい状況ですから、目指している人はぜひしっかり勉強して通関士の資格を取得してください。

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