行政書士の年収は低い?平均年収や業務別の給料まで実態を徹底調査!
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行政書士
宮城彩奈
「行政書士の平均年収の実態が知りたい!」
「行政書士の年収は低いって聞いたけど本当なのかな・・・」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
行政書士といえば街の法律家としての知名度も高い人気の国家資格ですが、一体どれくらいの収入を得ているのでしょうか。
ここでは行政書士の年収やその将来性について、様々なデータに基づいて具体的に解説します!
これを読んで行政書士の年収の本音を確認し、行政書士の仕事の魅力を再確認しましょう!
行政書士の年収についてざっくり説明すると
- 行政書士の平均年収は600万円
- 働き方や取り扱う専門分野による年収の差が大きい
- 士業事務所に勤務すると年収は低いがメリットもある
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行政書士の平均年収は600万円
厚生労働省、国税庁および日本行政書士連合の調査結果を見ると、行政書士の平均年収は600万円と推定されます。
国税庁の民間給与実態調査によれば、日本国民全体の平均年収は平成30年度で441万円となっているので、行政書士の年収は国民の平均よりも150万円ほど高いことが分かります。
行政書士 | 日本国民の平均 | |
---|---|---|
平均年収 | 600万円 | 441万円 |
平均月給 | 50.0万円 | 30.9万円 |
平均賞与 | - | 69.7万円 |
行政書士の基本的な業務形態は独立開業となるので、賞与などは特になしと考えて良いでしょう。そのため平均月給は600万円を12ヶ月で割った数値となります。
表を見ても、行政書士の年収は一般の会社勤務の方と比べて高い水準にあると言えます。
600万円という数値が示す意味とは
日本行政書士連合会が行ったアンケートによると、行政書士の年収分布は以下のようになっています。
グラフを見ると年収1000万円以上が10%以上、年収3000万円以上が4%近くにも上ることが分かります。
行政書士の働き方は独立開業が主流であるため、このように超高収入の層が割合として大きく、こうした方々によって平均年収があげられているのが実態となるのです。
したがって行政書士の600万円という平均年収は、給料の振れ幅にそこまで差がない通常の会社員の平均年収とは多少意味が異なってくると言えるでしょう。
行政書士の年齢階層別年収
上のグラフは行政書士の年齢ごとの年収の推移例を示しています。グラフを見ると、行政書士の年収は20代で最も低く約320~330万円、年収のピークは50代の約720万円だということが分かります。
年を重ねるごとに、直線的に平均年収が伸びているのが見て取れます。
あくまでこのグラフは国税庁および厚生労働省の統計データに基づいて作成された一例となっています。参考程度にご覧いただければと思います。
行政書士の年収は個人差が大きい
先ほども触れましたが、行政書士として働く場合は基本的に独立開業という形を取ることになるので、年収の個人差がとても大きいのが実情です。
独立がメインとなっているのは、行政書士は社労士などのように一般企業に雇われて企業内で行政書士業務を行うことが法律で禁じられているからです。
そのため行政書士として活動するためには独立するか、行政書士事務所などの士業事務所で勤務するしか選択肢がありません。
士業事務所の平均年収は比較的低い水準にありますが、もちろん行政書士の資格を取得した人の中には、行政書士としてではなく普通の社員として一般企業に就職・転職する人も多いです。
そういった方々は企業で活躍されて士業事務所で働く場合よりも高い年収を得ている場合が多いので、「行政書士の資格取得者」の平均年収は600万円よりも高くなってくるでしょう。
士業事務所に勤務する行政書士の年収
「求人ボックス」が2019年に発表したデータによると、士業事務所で働く行政書士平均年収は393万円となっています。
こちらの数値は掲載されている求人情報にある給与水準の中央値を利用して算出されています。
この数字を見ると「行政書士の平均年収ってこんなに低いのか!」と誤解してしまいそうになりますが、あくまで「士業事務所に勤務する」行政書士の平均年収であることに注意してください。
そもそも士業事務所の行政書士求人の数はかなり少なく、事務所に勤める行政書士は全体のほんの一部にすぎません。
繰り返しになりますが、ほとんどの行政書士は独立しているか一般企業に勤務しているので、この数字だけを見て行政書士の平均年収は400万円前後と勘違いしてしまわないようにしましょう。
士業事務所での年収が低くても問題ない
士業事務所の年収の低さにガッカリしてしまわれる方もいらっしゃるかと思いますが、実は士業事務所に勤めるのには収入以外のメリットの方が大きいのです。
無事に行政書士試験を突破したとしても、試験勉強で得た知識だけで独立して上手くいくはずもなく、独立を成功させるには必ず実務経験が必要となってきます。
士業事務所に勤務することで行政書士としての実務力を働きながら身につけることできる上に、事務所運営のノウハウも学ぶことができます。
さらに、先輩行政書士の方を中心に士業の人脈も増えるので、独立後に顧客を紹介してもらったり、困った時に助けてもらうことも可能です。
このように行政書士事務所で働くことは将来的に独立するための準備として非常に有効であり、収入だけが目的で勤める人は少ないでしょう。
独立開業している行政書士の年収
一般に開業行政書士の年収は200万円から3000万円以上だと言われており、非常に個人差が大きくなっているのが現実です。
行政書士として独立することで、時間の制約に絞られず自分の裁量で労働量を決めることができます。
また、もちろん被雇用者と比べると収入は不安的になりますが、頑張れば頑張った分だけ年収が増加するのも魅力的です。
ここではそんな開業行政書士の年収の実態を見ていきましょう。
最初の数年間は収入が低いことがほとんど
基本的に開業直後はなかなか顧客を集めることができず、資金繰りに苦労するのが普通です。
開業1年目は収入がほとんどないという場合も珍しくないので、独立する前にはある程度の貯金をしておくことは必須でしょう。
開業行政書士にとっては最初の1~2年が山であり、実際廃業してしまう行政書士のほとんどが開業から3年以内の廃業です。顧客の少ない期間をいかに乗り越えられるかが勝負になってくると言えます。
年収1000万円も十分視野に入る
上述の行政書士の年収分布にもあるように、行政書士のなかで年収1000万円を超えているのは全体の10%にもなります。
さらに、年収500万円以下の人たちは士業事務所勤務の人も多いことを考えれば、独立している人で1000万を超えている人は全体の10%よりもかなり高い割合存在するということが推察されます。
企業に勤務している場合ではなかなか難しい年収を得られるのも、行政書士の魅力だと言えるでしょう。
行政書士業務の報酬単価はとても高い
開業行政書士として高年収を狙うのであれば、当然なるべく多くの業務をこなす必要があります。
それでは、月にどれくらいの契約を結べば行政書士として食っていけるだけの収入を得られるのでしょうか。
以下の表は行政書士の業務別の報酬単価の相場を示しています。
仕事内容 | 報酬額 |
---|---|
建設業許可申請 | 100,000~200,000円 |
遺産分割協議書の作成 | 50,000円 |
契約書作成 | 30,000円 |
NPO法人設立認証申請 | 200,000円 |
宅地建物取引業者免許申請 | 50,000~200,000円 |
旅行業登録申請 | 150,000円 |
風俗営業許可申請 | 100,000~300,000円 |
介護保険施設開設許可申請 | 500,000円 |
医薬品製造販売許可 | 500,000円 |
会社設立 | 100,000円 |
ここに掲載しているのは行政書士の業務の一部にすぎませんが、報酬額の相場はかなり高いことがわかるでしょう。
行政書士の業務の報酬単価は10万円前後なので、実は月に2、3件の業務をこなすだけで十分食っていけるだけの収入を得ることができます。
月に10件の依頼をこなせば月商1000万円ほどになります。もちろん顧客を獲得するのは簡単ではありませんが、行政書士になれば超高年収が狙えるというのも納得です。
ダブルライセンスで年収は上がる?
行政書士とダブルライセンスの相性が良い資格としては宅建士、社労士、司法書士などが挙げられます。
このうち宅建士であれば行政書士の知識を活かして比較的簡単に取得できますが、社労士と司法書士はかなり難易度が高く、取得にはなかなか苦労します。
そのためダブルライセンスを活かして行政書士として活躍するというよりは、社労士あるいは司法書士として活動して、行政書士の資格を補助として生かす、といった働き方になるでしょう。
つまり、ダブルライセンスをする場合は資格取得によるステップアップになることが多いです。
社労士や司法書士の平均年収はどちらも700~800万円前後と行政書士よりも高いので、資格取得による年収増加は期待できるでしょう。
特に司法書士試験は行政書士試験とかなり範囲が被っているので、まずは行政書士資格を取得されてから司法書士を目指すのもおすすめです。
ダブルライセンスを行う際には、このように試験範囲の重複なども見ながら、戦略的に取得していくことが重要になります。
女性行政書士の年収は?
行政書士として活躍する際には性別による仕事の取りやすさなどの違いは基本的にはなく、年収の差もほとんどないです。
ただし行政書士の資格を取得する女性は男性に比べてかなり少なく、行政書士試験合格者の女性割合は毎年20%程度しかありません。
女性の受験者が少ないのには、行政書士は「サムライ業」である士業系の資格ということで、男性の仕事というイメージが持たれがちなことも影響していると推測されます。
とはいえ近年では女性の社会進出に伴って、徐々にですが女性行政書士の割合も増えてきているようです。
行政書士として独立すれば自由な時間も取りやすいですし、自宅を事務所とすることで自宅勤務することも可能なので、家事や育児で忙しい主婦の方にも向いている働き方と言えるでしょう。
女性行政書士の年収は以下の記事をチェックしてみてください。
行政書士の仕事内容は?
行政書士の業務範囲は極めて広く、扱う業務内容によっても収入が大きく変わってきます。
ここでは行政書士の仕事内容や業務別の年収について見ていきましょう。
行政書士の独占業務
行政書士の仕事内容は以下の3種類に大別することができます。
- 官公庁に許可や認可を求める際に必要な書類の作成代理、および提出手続きの代理
- 権利義務に関する書類の作成
- 事実の内容証明に関する書類の作成
このように見ると行政書士があらゆる書類作成・手続きのプロフェッショナルであることは一目瞭然ですね。
実際、行政書士の取り扱える書類の種類は10,000を超えるとも言われており、新たな法整備が進むにつれてその数はますます増加しています。
高収入が期待できるのは官公庁への書類作成・提出業務
行政書士の業務のうち特に高年収が期待できるものは、やはり「官公庁への書類作成・提出業務」でしょう。
これらの業務は一件あたりの報酬単価が非常に高く、1つこなすだけで20万円から30万円の売上になります。
これが契約書作成といった業務になると、一件あたり5万円前後となってしまうので、高年収を狙うためにはかなりの数をこなす必要が出てくるのです。
とはいえ高年収が狙いやすい仕事は競合の行政書士も多いので、仕事の取り合いになるのは避けられません。
行政書士の仕事の種類は非常にたくさんありますが、独立をする際は自分がどの業務をメインで取り扱っていくのかを慎重に考えることが年収をあげるうえで非常に大切な要素になります。
行政書士の仕事内容についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
行政書士の年収の将来性
行政書士の仕事では書類作成のような事務手続きが主流になっているので、機械やAIにとって変わられやすい仕事だとも言われています。
実際、AIの登場によって20年後には行政書士の仕事の大半が失われてしまうという大胆な予想もされているほどです。
それなら行政書士の仕事は将来性に乏しく、目指すのは避けたほうが良い職業なのかといえば、もちろんそんなことはありません。
まず第一に行政書士の仕事範囲は極めて広いので、現在存在する業務が全て代替されるというのは非常に考えにくく、仮にそうなったとしてももっとずっと先の話になるでしょう。
さらに、そもそも機械による代替というのはそんなに簡単な事ではありません。
たとえ技術的に可能になったとしても実際にそれが実行されるとは限らないでしょう。機械を使うよりも人間が行った方が安く済むのであれば、わざわざ機械を作ろうとする人が現れません。
もっといえば、行政書士の仕事は新しい技術の登場や法律の施行・改正によって日々増加しています。
このように行政書士は今後も一定の需要が見込めるので、報酬単価も極端に下がることはなく、年収も今と同じ水準が保たれると推測されます。
バイトや副業で年収を上げられる?
行政書士として副業をしたりバイトをしたりする際には、いくつか注意しなければいけないポイントがあります。
以下では行政書士として副収入を得ることができるのかを解説します。
行政書士として副業するのは難しい
行政書士として働くためには行政書士登録が必要ですが、実は「登録をしたけど行政書士業務を行わない」ということは認められていません。
つまり、登録したら行政書士として働くのが義務付けられるので、とりあえず登録だけしとこう、といった考え方は通用しないのです。
また、土日などの週末を利用して行政書士とした活動しようとお考えの場合も注意が必要です。
というのも行政書士が書類提出などを行う公的機関は基本的に休日は動いていないので、平日に他の仕事が忙しくて動けない方は業務を完了するのが困難になります。
このように行政書士の業務を副業として行うのはかなり難しいというのが実情です。
バイトは士業事務所が望ましい
行政書士の資格を活かしたバイトをするのであれば、もっともおすすめなのは士業事務所でしょう。
時給は1000円から1500円程度と決して高くはありませんが、行政書士法人であれば行政書士業務を行うことも可能ですし、お金を稼ぐ以上の数多くの利点があるでしょう。
ただし、士業事務所のアルバイトの求人は数に限りがあるので、なかなか探すのが難しいです。
士業事務所以外だと、自分の専門としたい業界とマッチしたバイト先を選択するのが良いでしょう。
例えば飲食店の開業サポートを自分の主力業務にしたいとお考えの方であれば、飲食店でバイトすることでより店舗の実態や内部事情を理解することができるので、開業した際にも役立つ可能性が高いです。
行政書士の副業については、以下のページでも詳しく解説しています。
行政書士になるには
行政書士試験の難易度
平均年収も高く、超高収入も夢じゃないなど魅力の多い行政書士ですが、行政書士になるのはそんなに簡単なことではありません。
行政書士になるためには基本的に年に一回行われる行政書士試験に合格しなければなりませんが、これは合格率10%前後の難関試験です。
合格までには1年弱の勉強期間が必要となるので、試験合格を目指す際はしっかりと腰を据えて勉強することが求められます。
一方で受験資格はないので、やる気さえあれば誰でも目指せる試験ではあります。
行政書士試験の難易度については以下の記事でより詳しく解説しています。
行政書士登録は必須
無事に行政書士試験に合格しても、その後行政書士として働くためには行政書士会への登録が必要です。
入会金に20万円ほどかかるほか、登録の際は「事務所調査」が必要になったりするので、お金と手間がかかります。
ただし行政書士会の開催する勉強会に参加できるなどのメリットもあるので、嫌なことばかりでもないでしょう。
試験を受けずに行政書士になる方法
実は以下の条件を満たした方は、行政書士試験に合格せずとも行政書士登録を行うことができます。
- 弁護士・税理士・公認会計士・弁理士、いずれかの有資格者
- 公務員としての業務経験が17年以上ある人
無試験で行政書士になれるなんてズルい!と思いがちですが、いずれの条件も行政書士試験に合格するよりも遥かに達成困難となっています。
既に公務員として長年働いている場合などを除けば、基本的に行政書士になるには試験に合格する道を選んだ方が良いでしょう。
行政書士の年収まとめ
行政書士の年収についてまとめ
- 行政書士の平均年収は600万円
- 行政書士の年収幅は200万円から3000万円以上と非常に広いので、平均年収の数字はあまり意味がない
- 士業事務所に勤務する場合は年収が400万円前後と低いが、実務が学べるという大きなメリットがある
- 行政書士として副業するのは難しい
行政書士の年収について説明しました!
皆さんもぜひ行政書士の資格を手にして、高収入を目指してみてはいかがでしょうか。