通関士のおすすめ勉強法は?勉強時間の目安から独学の可否まで解説
「通関士のおすすめ勉強法ってある?」
「勉強時間はどのくらい?独学は可能?」
などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。
通関士試験は、行政書士や宅建士と肩を並べるような比較的難易度の高い試験です。事前知識がある場合は独学でも対策可能ですが、初学者は独学だと苦労するでしょう。
今回は通関士のおすすめ勉強法について、勉強時間・勉強期間の目安や独学での勉強法などを解説します。
これを読めば、通関士試験に合格するためのより良い勉強法がよく分かるはずです。
通関士のおすすめ勉強法についてざっくり説明すると
- 勉強時間は400〜500時間
- 半年程度の勉強期間が必要
- 初学者の場合は予備校や通信講座を利用するのがおすすめ
このページにはプロモーションが含まれています
通関士の勉強法の前に知っておきたいこと
通関士の勉強法の前に、まずは試験内容や勉強の基本スタンスを解説します。
試験内容を詳しく押さえよう
通関士試験の出題科目は通関業法・関税法等・通関実務の3つです。通関に関する法令知識と実務的な知識を理解度が試されます。
各科目の出題例は以下の通りです。
科目 | 例 |
---|---|
通関業法 | 通関業法(通関業者や通関士に関わる規制) |
関税法等 | 関税法・NACCS法・外国為替及び外国貿易法など |
通関実務 | 課税価格の計算・貨物の分類・輸出入通関など |
上記の中でも通関実務は出題パターンが豊富で、法令を実務に応用する力が求められるので難しいとされています。
試験勉強の際は、この通関実務により多くの勉強時間を割くべきです。
令和6年度試験の出題形式・配点
令和6年度の通関士試験は、令和6年10月6日(日)に実施予定です。出題形式及び配点は以下の通りです。
科目 | 選択式 | 択一式 | 計算式 | 選択式・計算式 |
---|---|---|---|---|
通関業法 | 35点(10問) | 10点(10問) | - | - |
関税法等 | 45点(15問) | 15点(15問) | - | - |
通関実務 | 10点(5問) | 5点(5問) | 10点(5問) | 20点(2問) |
なお、「選択式」は文章の空欄に当てはまる語句を選ぶ形式や、五肢の中から「正しいもの」もしくは「誤っているもの」を複数選ぶ形式のことを指します。
ちなみに試験はマークシート方式で実施されます。
また各科目の試験時間は以下の通りです。
科目 | 試験時間 |
---|---|
通関業法 | 50分(9:30〜10:20) |
関税法等 | 100分(11:00〜12:40) |
通関業務 | 100分(13:50〜15:30) |
試験は年に一回しか実施されないため、後述する勉強法を参考に一発合格を目指しましょう。
通関士試験に受験資格はない
通関士試験に受験資格はありません。そのため、学歴や実務経験に関わらず、誰でも受験することができます。
ただし、通関士として働くには通関業者による登録(厳密には税関長による確認)が必要です。
基本的には通関士試験の合格者であれば誰でも確認が受けられますが、通関業者で半年程度の実務経験を積んでから確認申請をしてもらうのが一般的です。
通関士の勉強の基本スタンス
通関士試験に合格するには、3科目全てで6割以上の得点が必要になるため、各科目の試験勉強を満遍なく行わなければなりません。
苦手な科目を捨てて、他の科目でカバーするというようなことはできないため、比較的厳しい試験と言えるでしょう。
また通関実務は難易度が高いため、他の科目以上に勉強時間が必要になります。
勉強法のさらなる詳細については、後述の内容を参考にしてください。
通関士の難易度は高い
以下のグラフは通関士試験の過去10年分の合格率を表したものです。
通関士試験は合格率が低く、比較的難易度の高い試験と言えます。例えば、2023年度試験の合格率は24.2%でした。
上記を見ると、年度によって若干の変動はあるものの、合格率は概ね10〜20%で推移していることが分かります。2016年までは10%前半で推移することが多かったですが、2017年以降は10%後半から20%前半で推移しています。
一般的に難易度が高いと言われている資格試験の合格率と比べると、宅建士が15%程度、行政書士が10%前後なので、通関士試験はそれらと遜色ない難易度だと言えるでしょう。
合格のために必要な勉強時間
通関士試験に合格するためには、400〜500時間の勉強が必要と言われています。そのため、特に働きながら勉強するという場合は、長期間コツコツ勉強しなければなりません。
また先述したように、通関士試験では3科目を満遍なく対策する必要があります。時間配分としては通関業法:関税法等:通関実務=1:1:3で行うのがおすすめです。
試験勉強を始める前には、あらかじめ科目ごとの時間とその内訳(勉強内容)を決めておくのが良いでしょう。
勉強期間は6か月が目安
勉強期間は人によって異なりますが、一般的には半年が目安になります。試験は10月上旬なので、4月頃から勉強を始めるのが良いでしょう。
事前知識がある場合は半年も要らない可能性もありますが、逆に勉強が苦手な場合は8、9ヶ月かかることもあります。そのため、初学者の場合は余裕のある学習スケジュールを立てるのがおすすめです。
通関士試験の偏差値は58前後
通関士試験の偏差値は58前後と言われています。そのため、偏差値で見ても行政書士(偏差値60程度)や宅建士(偏差値58程度)と大差はないと言えるでしょう。
司法書士や税理士、公認会計士などの超難関資格と比べるとまだ易しい方ですが、資格試験全体の中では比較的難しい部類に入ります。
合格点は6割が目安
通関士試験の合格点は、基本的には各科目6割以上になります。ただし、合格点は実施年度によって若干変動する可能性もあります。
例えば、平成30年度試験おける通関実務の合格基準は「満点の50%以上」でした。
合格基準が60点より高く設定されることはおそらくないため、各科目で6割以上得点できれば、ほぼ間違いなく合格できるでしょう。
ただし、1科目でも60点を下回れば不合格になってしまうので注意が必要です。
科目免除を受けられる場合も
通関士試験には、実務経験に応じた科目免除が存在します。通関業者もしくは官庁にて通関業務に携わった経験が所定の年数以上ある者は、以下の免除を受けることが可能です。
実務経験 | 免除内容 |
---|---|
5年以上の実務経験 | 「通関実務」の1科目免除 |
15年以上の実務経験 | 「関税法等」「通関実務」の2科目免除 |
通関士試験合格のための勉強法
通関士試験で出題される3科目のうち、2科目は法律に関する内容です。そのため、合格するには法律の暗記が何より重要になります。
通関業法や関税法に関しては、事前知識がないことがほとんどのはずなので、じっくり地道に知識を習得しなければなりません。
法律を暗記する際は名称だけでなく、法律内容の要点も合わせて記憶しておくと、試験で応用しやすいのでおすすめです。
関税法・通関業法対策は暗記が中心
法律関連の2科目に関しては、大半の出題が条文知識や諸制度の知識を問うものです。そのため、きちんと暗記をしておけば、十分に得点できる科目と言えるでしょう。
馴染みのない用語が多いため、少なくともテキストを2、3周は読み返し、理解を深めるのがおすすめです。
ある程度の知識がインプットできたら、過去問演習も行いましょう。暗記した知識をテストで応用する力を養う必要があります。
過去問も2、3周は繰り返し行うのが良いでしょう。反復して行うことで、試験の傾向や頻出範囲を掴むことができます。
また間違った問題をテキストで復習すれば、知識の穴を埋めることができるので、合格にまた一歩近くでしょう。
常に自分で知識の定着度合いをはかり、徐々に弱点を克服していくことが合格への近道です。
通関実務は時間をかけて勉強することが必須
通関実務は近年難化が進んでいる科目です。インターコムズと呼ばれる難しい貿易用語が多用されたり、一般のテキストには載っていない計算問題が続々出題されることもあります。
そのため、通関実務の対策には最も時間をかけるべきです。
特に輸出申告書や計算問題などで得点を稼げるような勉強をすることをおすすめします。輸入申告書の問題は、年度によって難易度にブレがあるため、対策は一番後回しで良いでしょう。
勉強の流れとしては、輸出申告書・加算・計算・輸入申告書という順番で行うべきです。
テキストとしては「通関士教科書 『通関実務』集中対策問題集 」などをおすすめします。また独学の場合は「通関士ポータル」などの勉強サイトを活用するのも良いでしょう。
通関実務に関しては、過去問を最低3回は解くべきです。問題の解き方のコツや頻出傾向を掴むには、反復学習が必要になります。
問題のバリエーションも多いため、十分な勉強時間を確保しておくのが良いでしょう。
法改正を押さえることも大切
通関業法や関税法等が改正されると、必ずその部分が通関士試験では問われます、そのため、法改正には常にアンテナを張っておくのが良いでしょう。
法改正に対応するためには、最新版のテキストを用いるのがおすすめです。また税関のホームページ等でも法改正の情報をチェックすることができます。
税関の「法律等改正(法律)」はこちらから確認してください。
法改正は頻繁に行われる
通関士関連の法改正は頻繁に行われるため、上記のリンクなどを注意して見ておく必要があります。
過去13年間に行われた通関士関連の法改正は以下の通りです。
年度 | 改正された法律 |
---|---|
2023年 | 関税法等・通関実務 2022HSコード改正 |
2022年 | 関税法等・通関実務 2022HSコード改正 |
2021年 | 関税法・通関業法・EPA比較・NACCS法関連 |
2020年 | 関税法・関税暫定措置法・通関業法・日米貿易協定 |
2019年 | 関税法施行令・関税暫定措置法 |
2018年 | 関税法・関税定率法施行規則・関税暫定措置法 |
2017年 | 関税法・通関業法 |
2016年 | 関税法・通関業法 |
2015年 | なし |
2014年 | なし |
2013年 | 関税法・関税定率法 |
2012年 | 関税法・コンテナ条約特例法など |
2011年 | 特恵関税制度・関税法など |
上記を見ると、通関士関連の法律はほぼ毎年何かが改正されていることが分かります。
ちなみに令和6年度通関士試験(10月6日実施)では、令和6年7月の第一土曜日までに施行されている法律等が試験範囲になります。
そのため、少なくともそれまでは、通関士関連の法改正に気を配っておく必要があるでしょう。
勉強スケジュールを立てる際に意識すること
試験勉強を始める前に、まずは勉強のスケジュールを立てましょう。通関士の試験対策についてのスケジューリングには以下の内容を参考にしてください。
通関実務は早い時期から対策を練っておく
上記で解説した通り、通関実務は他の2科目に比べて難易度が高く、合格する上での最重要科目になります。
そのため、通関実務の対策により多くの時間をかけるべきです。直前に慌てて始めると手遅れになりかねないので、早い時期から対策を始めましょう。
通関実務の対策は他の2科目の知識がなくてもある程度行えるので、法律の暗記作業と同時並行で進めるのがおすすめです。
最初は解答を見ながらでも良いので、通関実務特有の解法パターンをきちんと押さえることを心がけましょう。
知識が定着したらアウトプットを繰り返す
これは全ての科目に言えることですが、ある程度の知識が身に付いた後は、とにかくアウトプットを繰り返すのがおすすめです。
特に過去問演習は出題傾向や頻出分野を把握するのに有用なので、積極的に取り入れましょう。
何度も反復すれば試験の全体像を掴むことができるので、演習は量をこなすことが大切です。択一式の問題であれば、3回程度繰り返せば十分にマスターできるでしょう。
また間違えた問題や分からない部分はテキストで入念に復習することが大切です。知識をさらに蓄えることで、得点能力の底上げに繋がります。
通関士試験では各科目6割以上の得点が必要なので、過去問演習では7割以上を目指すのが良いでしょう。
復習期間は多めにとるのがベスト
通関士の試験対策には、法律を中心に暗記事項が多いという特徴があります。試験勉強は長期間に及ぶため、序盤で覚えた知識が徐々に抜けていくことは十分想定されます。
そのため、適宜復習を行うことが重要です。しばらく触れていない分野の知識や苦手科目などを中心に、再度テキストの読み込みを行うのが良いでしょう。
中々覚えられない箇所に印をつけておくと、試験直前期の復習作業に役立ちます。
また、復習だけに躍起にならず、過去の試験問題や模擬試験を解いて、自分の知識やスキルの定着度を確認し、目新しい問題の解決能力を向上させる努力も欠かさないようにしましょう。
通関士の独学合格には難しい側面も
そもそも通関士試験に独学で合格する人はいるのでしょうか。
実務経験がある方など、事前知識がある程度あれば、独学での合格も不可能ではないでしょう。確かに合格率は低いですが、受験者のレベルはそこまで高くないので、見かけほど合格しにくい試験ではありません。
また試験範囲もそれほど広くないため、予備知識を持っていれば比較的対策はしやすいと言えるでしょう。
しかし、初学者の独学はおすすめできません。通関士試験はどちらかというとマイナー資格なので、社労士や行政書士などの有名資格に比べて、インターネット等の情報が乏しいからです。
そのため、独学で分からないところが見つかっても、有効な解決法が見つからない可能性もあります。よって初学者の場合は、予備校や通信講座を利用する方が、効率よく勉強できるでしょう。
おすすめの通信講座
通関士試験を勉強する際には、フォーサイトの通関士講座を使って対策を進めるのがおすすめです。
フォーサイトの通関士講座は何といっても、全国平均2.85倍となる68.9%の合格率を叩き出しており、実績の高さが大きな魅力です(2023年度試験実績)。
また、教材は合格点突破に徹底的にこだわったフルカラーテキストやオリジナルeラーニングシステムの「ManaBun」など、フォーサイトが受講生の学習利便性を最大限追求したものとなっています。
他にも、こだわりがたくさん詰まった講座となっているので、確実に試験に受かりたい方はぜひフォーサイトの通関士講座を受講してみてはいかがでしょうか?
通関士のおすすめ勉強法についてまとめ
通関士のおすすめ勉強法についてまとめ
- 通関実務は難しいのでより多くの勉強時間が必要
- 法改正にも注目しておく
- 暗記事項が多いので復習も重要になる
今回は通関士のおすすめ勉強法について解説しました。
通関士試験に合格するには、400〜500時間の勉強が必要で、勉強期間にして半年程度の期間を要します。
中でも通関実務の難易度が高いため、通関業法:関税法等:通関実務=1:1:3という時間配分で対策するのがおすすめです。
法律関係の2科目については暗記が中心になります。覚えるべき事項が多いため、定期的に復習して、確実に知識を定着させましょう。法改正にも要注意です。
また通関実務は問題パターンが多いため、過去問を最低3回は解くことをおすすめします。
事前知識がある場合は独学でも合格可能ですが、初学者は予備校や通信講座を活用して合格を目指しましょう。