弁護士が食えないのは本当なのか?悲惨な弁護士事情や人数増加の実態を解説
「弁護士は食えないとか仕事がないとか言われることがあるけど、本当?」
「弁護士の人数が増えているって聞いたけど、将来性はどうなの?」
弁護士を目指している人でこのような疑問をお待ちの方、いらっしゃいませんか?
せっかく難関資格である司法試験に合格しても、仕事がなければ悲惨ですよね。
また、これまで自己投資してきた額よりも儲からないと、せっかく弁護士を取得した意味もなくなってしまいます。
こちらの記事では、弁護士の将来性や様々な書き込みで目にする悪評について検証していきます。
弁護士の将来性についてざっくり説明すると
- 「食えない」「オワコン」などと言われているが、それは間違い
- 弁護士人口が増えているのは確かである
- 本当に仕事がない弁護士は一部に過ぎない
- 自分の努力次第でビジネスチャンスは多くある
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弁護士は食えないと言われるのはなぜか?
弁護士は国家資格の中でも最高峰の難易度を誇ります。
非常に多くの法律知識を有しており、登記や訴訟手続きなど幅広い業務に対応することができる、法律の専門家です。
一昔前までは、弁護士になることができれば食いっぱぐれることはあり得ず生涯安泰と言われていました。
しかし、近年ではそういった評価が一変し、インターネット上では「食えない」「仕事がない」など言われるようになってしまっています。
こちらのトピックで、その噂の理由などを検証していきます。
人数が増えすぎて余っている?
国に法曹人口を増やしたいという思惑もあり、弁護士の人数は近年右肩上がりで増加しています。
当然、人数が増えれば仕事の取り合いが発生し、1人あたりの仕事の量は減っていくため、収入減に直結してしまいます。
つまり、弁護士の数が増えていることにより、世間で弁護士の余りが発生し、以前よりもネームバリューは低くなっているのです。
このような背景もあり、「弁護士は食えない」「オワコンである」と言われることが増えているのです。
弁護士の年収の低下
弁護士は、かつて医師資格と同じくらい稼げる資格として有名でした。
しかし、今は仕事の取り合いなどが発生したせいか、以前よりも年収が低くなっているというデータがあります。
弁護士の増加に伴う仕事の減少により、その結果せっかく苦労して司法試験に受かったのに相応に稼げていない弁護士がかなり多くいるのです。
このように、統計上は全く稼げていない悲惨な弁護士も存在していることは見逃せません。
AIの登場
近年のITやAIの発達は目覚ましいものがあり、これらが今後人間の仕事を奪っていくだろうと言われています。
実際に、これまでの訴訟の過程で多くの時間がかかっていた業務が、AIの導入により節約できることになっています。
それにより、仕事の生産性は大幅に引き上がった反面、多くの弁護士が不要になってしまうという懸念も想定されています。
このように、AIの登場と今後の発達が弁護士の存在を脅かすものであると議論されています。
裁判件数が減ってきている
近年は裁判の件数そのものが減ってきています。
例えば、民事第一審通常訴訟事件(地方裁判所)の新受件数は、2009年には23万件以上あったものの、現在では15万件程度まで減少しています。
そもそも、従来は一般の人たちは法律問題に関して全くの無知であり、その無知な人たちをサポートしたりアドバイスすることが弁護士の役割でした。
つまり、弁護士と一般の人たちの間に大きな情報格差と法律の知識の差があり、その格差が弁護士の存在意義だったのです。
しかし、現在ではネットの普及により情報格差がなくなりつつあり、こうした伝統的な存在意義は間違いなく失われつつあります。
今では簡単に法律相談がネット上でできるようになり、また事例を交えつつ分かりやすく説明できる人も増えたため、弁護士の出る幕が減りつつあるのです。
法科大学院の数も減少
司法試験の受験資格の一つでもある、法科大学院の数が以前と比べて半減してしまっています。
その背景には、法律実務家の志望者が減少していることがあります。
学校としても生徒数が少ないと採算が取れないため、自然と学校の数も減ってしまうのです。
具体的な例では、横浜公立大学などが法科大学院の募集を停止する措置を行っており、今後も法科大学院の減少は進んでいくと考えられています。
法科大学院に行っても留年の可能性
法科大学院にいる3人に1人が留年しているという実態も、法律実務家の減少の一因となっついます。
法科大学院を出るのも簡単ではなく、また勉強する際の時間とお金がかかってしまうため、コスパが良いとは言えないのです。
法科大学院に興味がある人は、必ず学校卒業後の進路のデータなどを確認するようにしてください。
弁護士は「仕事がない」が嘘である理由
弁護士についてネガティブな話題を述べてきましたが、法律家の人たちはもう活躍の場は無いのかと言われれば、もちろんそんなことはありません。
上述のことは全て事実ではあるものの、あくまで「従来の」法律家の役割が失われているに過ぎません。
AIが進出できる弁護士の仕事は、証拠探しや契約書の整理のみで、弁護士の仕事の2割程度に過ぎません。
また、法律家の実態というのは日々変化を続けているため、世の中の変化に柔軟に対応していけば弁護士はまだまだ活躍できるのです。
ネガティブな話題は、知識のない人が実態を知らずに語っているケースがほとんどであり、現場で「弁護士はもう不要だ」と感じている人はほとんどいないのです。
なくならない仕事がほとんど
AIの発達や機械化・電子化でなくなる仕事は弁護士の業務の一部です。
そのため、これまでの仕事の中の大半は機械化されずに残ることになります。
例えば、不動産登記に関する業務では申請の際に必ず顧客や役所との直接のやりとりが必要となります。
申請に不備がないように事前に確認などをすることはとても重要なことで、このような細かい仕事はAIにはできません。
また、高度な法的知識が要求される相談に関しては、AIではなくやはり人間相手に相談したいと考えます。
つまり、一部は機械に代替されても、多くの仕事は引き続き残ると考えられます。
弁護士業務の拡大
これまで行っていた書類作成等のつまらない事務仕事を機械やAIに任せられるようになることで、弁護士にとってプラスに作用する面もあります。
例えば、生産性の低い仕事が減り、より付加価値の高い仕事をすることができるようになるため、うまく機械化の波と付き合っていくことで生産性を高めることに繋がります。
世の中のIT化が進行するに伴い、名誉毀損・著作権侵害・プライバシー問題などがより身近になってくるでしょう。
そのため、これまでの常識では通用しないような新たな問題が発生した際にも弁護士は柔軟に対処しなくてはなりません。
そこにAIが介入する余地はなく、きめ細かなサービスや心配りができるのは弁護士しかいません。
近年は企業内弁護士の数が増えており、これは企業内での法律素養を持ち合わせた人間の重要性というのが世に浸透しつつある事を示唆しています。
企業内弁護士がいることで、利益を最大化したり理不尽な名誉毀損を受けた際に、毅然とした対応を取ることができるのです。
このように、弁護士の専門的な知識は既存の業務の枠組みを超えて、より付加価値の高い新しい仕事に生かせるように世の中も変化しているのです。
弁護士の詳しい将来性については下記の記事も併せてチェックしてみてください。
儲からない弁護士ほど暇である
まず留意してほしいのは、暇な人はSNSや書き込みサイトなどを開いたりしません。
つまり、弁護士についてネガティブな情報の発信をしているのは上手くいっていない弁護士や、司法試験に合格できなかった人だと考えてください。
そもそも、順調な弁護士の方は仕事が忙しく無駄な書き込みをする時間が無いのです。
さらに言えば、ネット上で弁護士は「食えない」「仕事がない」という意見が目立つのは、その事実が珍しいから・目を引くものであるからです。
冷静に考えれば、弁護士で稼いでいるという周知の事実はわざわざ発信されないということが分かるでしょう。
目を引くからと言って、デマに流されたり不毛な情報に振り回されたりしないように気を付けましょう。
弁護士の稼ぎの実態は?
平成29年賃金構造基本統計調査によると、弁護士の平均年収は1026万円となっています。
この数字を見ても、一般的なサラリーマンよりも年収が高いのは明白であり「食えない」という評価が誤りであることが分かります。
さらに言えば、年収が極端に低い層は、セミリタイアした人や、開業まもない新人も多く含まれているので、実際の平均はもっと高いことが想定されます。
弁護士の就職先
弁護士の主な就職先には、次の4つに大別されます。
- 4大法律事務所で働く
4大事務所とは、「西村あさひ法律事務所」「長島・大野・常松法律事務所」「西村あさひ法律事務所」「森・濱田松本法律事務所」を指します。
この4大法律事務所で働く際には、初年度から年収は1000万円を越えると言われており、キャリアを重ねるにつれて徐々に年収も高くなっていきます。
役職も高くなるにつれて、5000万円以上の年収を狙えるようになります。
- 普通の事務所で働く
中規模以下の、いわゆる普通の法律事務所などで働く選択肢もあります。
中規模以下の事務所は地域に密着している面が強く、離婚・相続・破産関係などの個人に関する法律問題を扱うことが多いです。
年収はやはり1000万円を超えるケースが多いです。
- 企業内弁護士として働く
企業内の法務の部署で活躍する弁護士もいます。
企業内弁護士は非常に存在価値が高く、資格手当が付くことも多いため、年収は1000〜1500万円ほどが狙えるでしょう。
弁護士として働くだけでなく、会社の一般事務も行うため、弁護士の仕事を専任するケースは少ないです。
- 独立開業する
弁護士として独立開業することも可能です。
この場合、年収は自分のスキルや営業努力次第になるので、数百万円〜数千万円まで幅が広いです。
成功するか失敗するかは全て自己責任のためプレッシャーは大きいですが、自分が頑張った分は収入に反映されるためやりがいは非常に大きいと言えます。
独立開業を目指す場合は、いきなり事務所を開くのではなく、大手でも中規模事務所でもいいのでまずは勤務して実務を経験することが重要です。
また、中規模以下の事務所であれば経営のノウハウなども学ぶことができるため、貴重な経験が積めるでしょう。
インターネット上でネガティブな情報を発信する「なんちゃって弁護士」はいきなり事務所を開いて失敗した人もいるでしょう。
このようにならないように気を付けましょう。
弁護士の就職事情については下記の記事をご覧ください。
弁護士の今後の展望と将来性
弁護士の今後の展望や将来性はどのようになっているのでしょうか。資格Timesが弁護士の将来性について調べてみました。
弁護士の将来性はまだまだ高い
前述した企業内弁護士の例はあくまでのほんの一例で、弁護士の仕事は今後も拡大していくため将来性は高いと言えます。
いわゆる「非弁行為」は弁護士の独占業務であり、弁護士にしかできない仕事がまだまだ多くあるため、弁護士の価値は高いのです。
結局、世間一般的には他の法律家よりもより専門性が高い弁護士の方が信頼度は高いのです。
「専門的な法律知識」と「信頼」のある弁護士は新しいビジネスチャンスを掴む上で非常に強く、新しいビジネスチャンスを掴むことが収入アップに直結するのです。
チャンスを掴むのは積極性のある弁護士
弁護士は既存の独占業務だけでなく、信頼と専門知識を生かした様々な仕事をするようになっていくでしょう。
ただでさえ法曹人口の増加で弁護士に余りが発生している状況なので、他の弁護士と差別化したり自分にしかできないオリジナルの強みを作っておくことはとても重要です。
例えば、前述したAIを積極的に取り入れる姿勢や、新たな法改正により発生しそうなビジネスを予測し準備しておくことで、時代の変化に敏感になることができます。
逆に、昔ながらの仕事内容にしか手を出さず、時代の変化に対応できない弁護士は遅れを取っていき、やがて食っていけなくなるでしょう。
今後は、自分を売り込んでいける弁護士や、積極的に情報交換をしてアンテナを張り常に最新情報を取り入れる弁護士が成功していくでしょう。
結局弁護士は目指していいのか
弁護士のこのような現状を見れば、ネガティブな要素よりもポジティブな要素の方が多いため、目指すべき仕事であると言えます。
企業内弁護士やIT化に伴う新たな法律問題への対処など、弁護士の活躍できる領域は従前よりも広がりを見せており、こうした新しい仕事に乗り遅れることなく、むしろ積極的に取り入れることで成功することができるでしょう。
結局のところ、食えない弁護士は単純に自分のスキル不足や営業不足なのです。
本来であれば、高度な専門性と世間からの強い信頼をもつ弁護士は社会的に大きなな価値を持つので、チャレンジする価値は十分ある資格だと断言できるのです。
他の法律士業との差別化をしっかりと図ろう
弁護士以外の法律に詳しい士業として、司法書士・行政書士が挙げられます。
これらの士業は得意分野がそれぞれ違うため、弁護士の専門領域をしっかりと理解しその領域のスキルを磨いていくことが差別化につながります。
このそれぞれの士業の差を理解せずに様々な法律分野に手を出すと、いわゆる器用貧乏になってしまい「食えない弁護士」になってしまうのです。
司法書士の得意分野
司法書士の代表的な仕事は、不動産を売却した時や購入した時に行う名義変更手続きや、会社設立などの登記手続きです。
成年後見人の登記なども司法書士が行うことが多く、「登記に関すること」が司法書士の得意分野と言えます。
このような手続きが必要になった時は、弁護士は司法書士と連携しながら仕事を進めていくのが一般的です。
司法書士の仕事内容については以下の記事を詳しくご覧ください。
行政書士の得意分野
行政書士は街の身近な法律家で、1万件以上の書類を取り扱うことができる「便利屋」さんです。
在留資格の取得代行や、飲食店の営業許可の取得代行などが代表的な業務です。
いわゆる「許認可に関する手続き」は行政書士の得意分野となっており、必要な場合は弁護士と行政書士で連携しながら仕事を進めていくことになります。
行政書士の仕事内容については下記の記事をご覧ください。
弁護士の将来性まとめ
弁護士の将来性まとめ
- インターネット上のネガティブな意見は、食えない弁護士などによるごく少数派の意見の場合がほとんど
- 将来性は相変わらず高く、年収も高い
- 様々な働き方ができるため、取得メリットは絶大
- 時代の変化に敏感になり、弁護士として求められそうなスキルな知識をアップデートしていくことが大事
今後はますますAIが発達していくと思われますが、つまらない事務仕事を機械化し、自分はきめ細かいサービスを提供することに専念するなど、上手な付き合いき方をすれば全く問題ありません。
弁護士は、平均年収は1000万円を超える上に、仕事のやりがいも大きいとても魅力的な仕事です。
悪評に振り回されることなく、司法試験の勉強に集中すれば弁護士資格を取得することができるでしょう。