弁護士の企業法務とは?新エリート像の実態や注目のjsox法・口頭契約まで解説!

企業内弁護士に興味があるけど、実際どうなんだろう?

会社に企業内弁護士を雇うべきかどうか分からない

などの悩みを抱えている方もいるでしょう。

実際、企業内弁護士については一般にはまだ知られていないことも多いです。

今回は弁護士の企業法務について、新エリートと呼ばれるその実態を、話題のjsox法や口頭契約の話も交えながら詳しく解説します。

この記事を読めば、企業内弁護士の実態についてよく分かるでしょう。

弁護士の企業法務をざっくり説明すると

  • 企業内弁護士は法曹界の新エリート
  • 企業は雇用することで色んなメリットがある
  • 司法試験合格には予備校や通信講座の活用がおすすめ

弁護士の企業法務とは?

悩む人 弁護士には法律事務所の弁護士と企業内弁護士が存在します。

企業内弁護士は企業の社員として雇用され、企業活動に関わる法律関係の業務やトラブルに対応することが仕事です。

新しい弁護士のエリートモデルとして近年注目されています。

企業内弁護士はインハウスローヤーに分類されます。インハウスローヤーは本来、行政で法務を行う弁護士も含む用語です。

企業内弁護士は2000年前後から増え始め、近年も増加傾向にあります。企業の海外活動が増えたことやコンプライアンス意識の高まりがその背景です。

弁護士事務所に所属する、独立して弁護士事務所を開業する以外にも、弁護士としての働き方があるということです。

インハウスローヤーの仕事内容

インハウスローヤーは、特定の企業に雇用されながら、その企業専属の弁護士として働く人を指します。

普通の弁護士に比べて、企業内の事情に深く関われることが魅力です。

業務には、書類の作成や提出などの代理をする契約審査業務と海外案件を中心とした業務があります。

また企業は日々多くの契約を締結しています。当事者のいずれかが口頭で行った契約を取り消したい場合やjsox法に関わる案件の取り扱いなどで、特にインハウスローヤーの活躍が注目されています。

ちなみにjsox法とは財務報告に関わる内部統制報告制度のことです。

日々の口頭契約は企業内弁護士の法務

企業はその都度書面で契約を結ぶのではなく、口頭で契約を結ぶ場合が多いです。

こうした場合、口頭契約だけで成立する内容なのか、書面を要する契約なのかの判断が必要です。

契約には、口頭契約のみで成立する売買契約や賃貸借契約といった諾成契約と、書面によらなければならない要式契約が存在します。

これらの区別を契約者当人が毎回正確に行うのは困難です。

そのためそれらの契約処理に際して、企業内弁護士の専門知識が求められることが多いのです。

契約審査業務はインハウスローヤーの主な仕事

企業内弁護士は様々な事業部から契約審査業務を頼まれます

多種類の契約があるためインハウスローヤーが必要とされるのです。そのため契約審査業務は主業務の一つになります。

契約審査業務では、その契約が自社の不利益にならないかという点を中心に、先方のことも踏まえながら契約を多角的に検討します。

海外案件の処理にも企業内弁護士がカギ

近年、日本企業の海外進出が盛んです。その際の契約書作成も企業内弁護士の仕事です。

あまりに高度な海外案件では、五大法律事務所などの大手事務所の力を借りる場面もあります。

しかし、中小規模の海外案件は自社内で処理したいと考える企業が多くなっています。

jsox法への対応も必要

jsox法は2008年より運用が開始された財務報告に関する内部統制制度です。アメリカのsox法にちなみ、そう呼ばれています。

金融商品取引法第24条の4の4や第193条の2第の2項に規定された内容です。あくまで同法が定める制度のことであり、「jsox法」という単独の法律が存在するわけではありません。

jsox法は評価手続きや報告などの実施による、財務報告の信頼性の確保を目的とした制度です。

全ての上場企業に適応され、内部統制書類の記載内容が適当でない場合、罰金が科されることもあります。

手続き面で煩雑な処理を伴うため、jsox法導入以降は企業内弁護士にそれに関連した法務を担うことが求められています。

弁護士が企業法務に特化した際のシュミレーション

たくさんのはてな 弁護士が企業法務に特化した場合、本人にはどういうメリット・デメリットがあるのでしょうか。また企業にとってはどうでしょうか。

弁護士側のメリット

まずあげられるのが、収入の安定です。企業の一員となるため、毎月基本給は確実に得られます。

企業内弁護士の需要は多いため、その収入は一般企業の社員プラスα程度の高水準です。

また企業の就業規則に従うため、平日に1日8時間程度働いて、土日は休みとなる場合が多いでしょう。そのためワークライフバランスが取りやすくなります

企業の福利厚生をしっかり受けられることもメリットです。

企業内弁護士は法務以外に、M&Aやマネジメントなどを行う場合もあります。弁護士の仕事以外にも、企業の一社員として色々な仕事ができるため、会社に貢献する充実感が味わえることも魅力と言えます。

あるいは企業で働くことを通じて、経営的な観点が身に付くため、独立して法律事務所を開業するための修行期間と捉えることもできるでしょう。

弁護士側のデメリット

社員として働くため、収入は所属する企業の就労規則に従うことになります。そのため収入は安定するものの、大きくアップすることは期待できません。

開業型のように頑張りや結果次第で莫大な額を稼ぐことができないのは、デメリットと言えます。

また一企業の専属となるため、同じような仕事をこなすことが多くなります。そのためどうしても仕事内容が単調になりがちです。

法律事務所に所属する一般の弁護士の方が、様々な民事事件や刑事事件を扱うため、多種多様な仕事ができるでしょう。

また企業内弁護士が扱う法律は、経営関係のものが中心になるので、幅広く法律の知識を深めたい人には不向きでしょう。

企業内弁護士を採用する企業側のメリット

専属の弁護士を抱えることで、企業内に法律上の問題がないかという判断を迅速に行えるようになることが第一のメリットです。

また企業内弁護士を雇用していることは、その企業がコンプライアンスに力を入れているという対外的なアピールにもなります。これは企業の社会的信頼度の向上に寄与するでしょう。

さらに迅速な法律判断が可能になることは企業の発展にも良い影響があります。素早い判断のもと、すぐさま新規事業に着手することができるからです。

先述したように、企業内弁護士がいれば海外案件へのハードルも下がります。

企業内弁護士の存在によって生産性は上がり、利益拡大が期待できるでしょう。

コンプライアンス重視の傾向

有名企業の不正取引など、不祥事がたびたび発覚している背景から、企業内でもコンプライアンスへの意識が高まっています。

そのため法律を重要視する企業は多いです。そうした企業は法的リスクに専門的に対応できる人材の確保を急務としています。

近年、企業内弁護士の数が増加傾向にあるのは以上のような理由があります。

企業内弁護士を雇うことで、コンプライアンスに関する社員教育を実施することもできます。

こうした取り組みは世間に対するアピールとなり、企業の信頼度を向上させる契機となります。ゆくゆくは売り上げへと繋がることもあるでしょう。

企業弁護士採用のコストが低下している

欧米のように市民が身近に司法サービスを受けれるように、日本でも司法制度改革が行われました。改革内容は、弁護士報酬の完全自由化や法曹(特に弁護士)人口の拡大などです。

司法試験制度も変更され、法科大学院と予備試験の2ルートが設定されました。

これらの改革の結果、主に弁護士人口の増加により、企業の弁護士に対する採用コストは下がり始めています

そのため企業にとっては、いちいち外部の弁護士を顧問弁護士として雇うよりも、社内で弁護士を雇う方がコスト削減になるのです。

採用コストが低下したとはいえ、収入格差の大きい今の弁護士界において、企業内弁護士はエリートの部類に入ります。

スピーディーな法律面での対応が可能に

企業内に弁護士がいれば、所属する組織や業界について前もって理解している分、トラブルが起きても迅速に対応することが可能です。

また顧問弁護士はすでに起きた問題に対処を行う臨床法務が中心ですが、企業弁護士は企業内に問題がないかチェックする予防法務を行います。

そのため企業内弁護士がいれば、法的なトラブルを未然に防ぐことが可能になります。

さらにM&Aなど大規模な経営判断に関わる企業内弁護士の業務は戦略法務と呼ばれ、その法律知識は、トラブルに対してだけではなく、企業の成長にも役立つものです。

法律事務所から転職して来た場合には、その幅広い知識を活用することもできます。

企業弁護士を採用する企業側が注意したい点

当然、企業内弁護士を採用するにはコストがかかります。

ただし、近年は法曹、特に弁護士人口が増加しているため、企業内弁護士を雇用するハードルは下がりつつあります

採用コストが低下している理由は、弁護士数が増えた一方で、民事事件の案件数が横這いであり、供給過多になっているからです。

企業内弁護士では超大型規模の案件は処理しきれない場合があります。企業内弁護士を雇用したからといって全てを任せられるわけではないということです。

案件によっては外部のより専門的な案件処理ノウハウを持った法律事務所に依頼する場合もあることは知っておくべきでしょう。

企業法務を専門とする弁護士の平均年収は約1,000万円

お札の山 法律事務所の弁護士と企業内弁護士の収入を比較した場合、平均では両者に違いはありません。

弁護士の平均年収は1,026万円と言われています。これに対して、インハウスローヤーの45.6%は年収1000万円超えです。

法律事務所の弁護士は収入に上限がない分、働き方によって大きな格差が生まれます

大手事務所のパートナークラスになれば年収1億円も夢ではありませんが、ノキ弁なら年収は300万円程度です。

また独立・開業しても依頼を集められなければ、年収200万円に満たないこともあり得ます。夢はあるものの、厳しい現実もまたあるのが法律事務所の弁護士です。

一方で企業内弁護士は、1億円プレーヤーの夢はないものの、給与は安定しています。ある程度年功序列型で年収は伸びます。

20代で年収1,000万円は現実的でありませんが、30代になると給与が上がり始めます。40代では年収1,000万円超えが主流です。

このように、高水準で安定した年収を得られるのが企業内弁護士だと言えます

企業内弁護士は増加している

ポーズを決める子供 現代の法務部門業務はかなり複雑化しています。法務リスクの拡大に対応するため、インハウスローヤーを必要とする企業は多いです。

また新司法試験制度により弁護士が急増したことを背景に、弁護士は売り手市場だと言えます。よって企業内弁護士の採用コストも下がっています。

2022年には3,000人弱の企業内弁護士が確認されていますが、この数字は2008年の10倍以上の人数です。

特に有名企業では企業内弁護士は多い

有名一流企業では特に企業内弁護士を多く雇用しています。

ヤフーでは49人の企業内弁護士がおり、総合商社や大手銀行、証券会社などにも20人前後が雇用されています。

また以下のような業種の企業でも、インハウスローヤーを置き、法務部門を強化する動きがあります。

企業内弁護士を採用している業種

  • 製造業
  • 卸売・小売業
  • 情報・通信業
  • サービス業
  • 不動産業
  • 建設業
  • 運輸・郵便業 など

外資系企業では、弁護士としての経験年数の長い企業内弁護士が多いです。

また外資系では、留学経験や英語力、特定分野への高い専門性などが求められます。大手外資系へ所属すれば、企業内弁護士の中でもエリートです。

一方で国内企業には、若手の弁護士が数多く採用されています。実務経験5年以下の弁護士や場合によっては司法修習生の採用もあると言います。

インハウスローヤーになるには

チェックリストの紙 企業内弁護士として働くためには、一般の法律事務所で働く力やスキルとは別の力が求められる場合も多いです。

ただし、法律面以外での力は司法試験合格後の期間や、司法修習の実務の中で高めていくことができます

実務経験は重要

企業で働くためには、企業法務分野について精通していることが必要です。加えて高いビジネススキルも求められます

特にM&Aやマネジメントといった戦略法務を行うには、実務経験があった方が望ましいでしょう。

戦略法務では、法律知識をただ活用するだけではなく、様々な観点から法解釈を行い、企業の発展や収益化のために優れた法務戦略を立案しなければなりません。

そのため法律事務所で民事事件を解決するのとは違ったスキルが必要なのです。具体的には企業にまつわる法律知識に加え、経営のセンスやビジネススキルが求められます。

英語力もあるとプラスに

外資系の企業では弁護士としての経験年数や能力だけでなく、留学経験や英語力が求められます。

また国内企業でも、海外との取引が多い企業においては英文で契約書を作成することになります。そのため英作文の能力は必須です。

外資系の企業は経験豊富な弁護士が雇用されますが、国内企業では若手や修習生も採用されます。

そのため元から英語のスキルを身につけていると即戦力になりやすいため、就職・転職に有利となります。

しかし国内向けビジネスを展開している企業で企業内弁護士を応募しているケースも多く、また英語力のある人材は欲しいがリーガル人材は求めていない企業もあります。

そのため英語力がないからといって、企業内弁護士の採用で不利になることはありません。

企業内弁護士への転職は?

企業内弁護士の求人を探す場合は、基本的には一般的な転職と同じように求人サイトに登録する形を取ることになります。

一方で、一般の社会人の方が使用するような大衆向けサイトでは、弁護士の良質な求人を見つけることは極めて困難です。

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インハウスローヤーは新しいエリート弁護士像

群衆の中で手を挙げる人 企業内弁護士という職業は、かつての弁護士会界隈においては、あまり尊ばれる存在ではありませんでした。

所属する会社の案件しか扱わないため弁護士として幅広い業務を経験できないと懸念が挙げられていたからです。

またいきなり企業内弁護士になると普通の弁護士を経験していないため、転職に不利になるとも言われていました。

しかし現在、企業内弁護士の業務は幅広いものになっています。契約や土地取引、債権回収に加え、グローバル化に伴う法律関係についても扱わねばなりません。

さらに企業内弁護士として働くことにより、コンプライアンス意識や独立した弁護士としての意識が高まるという見解も多く見られます。

法務部門の業務が複雑化していることで企業内弁護士の需要は今後も増していくでしょう。

そのため企業内弁護士の将来性は十分明るいと言えます。

企業内弁護士になるには司法試験合格が必須

本の山 弁護士界の新エリートである企業内弁護士になるには、まずは司法試験に合格しなければなりません。

弁護士は敷居の高いイメージがありますが、実は誰にでもなれる職業です。企業内弁護士にはビジネスセンスが必要なことから、ビジネスマンからの転職も十分できます

司法試験の受験資格

弁護士になるには司法試験に合格し、司法修習という実務研修を受ける必要があります。

司法試験には受験資格があり、資格を得る方法は2種類です。一つが法科大学院の卒業で、もう一つが司法試験予備試験の合格です。

予備試験には受験資格がないため、誰でも受験が可能です。また法科大学院には、法学未修習者向けのコースもあります。

予備試験と司法試験の難易度

予備試験および司法試験は国家試験の中でも最難関に位置付けられます。

予備試験の合格率は例年4%前後で、司法試験の合格率は40%前後です。

しかし予備試験合格者の司法試験合格率は90%を超えます

そのため数字の上では予備試験ルートからの方が司法試験に有利だと言えます。

予備試験合格者は司法試験に強いのは、試験に特化した勉強を予備校や通信講座などで行っているからです。

司法試験合格者の多くは司法試験講座を受講している

予備試験や司法試験対策には、大学の法学部の講義はあまり有効でないと言われています。

多くの試験合格者は司法試験対策予備校や通信講座を受講しています。例えば令和4年度の司法試験ではアガルートが全合格者のうち45.3%の合格者を輩出するという顕著な合格実績を残しています。

また、スクエアでも予備試験の指導で全合格者の3.2人に1人を合格に導くという実績を有しています。

こうした講座では、司法試験や予備試験に特化した講義を受けることができ、学習効率を飛躍的に高めることが可能です。

おすすめの司法試験講座については、以下の記事を参考にしてください。

弁護士の企業法務まとめ

弁護士の企業法務まとめ

  • 新エリート・企業内弁護士の需要は今後も増加する
  • 企業は雇用することで法務リスクを回避し、事業を拡大できる
  • 司法試験合格者の多くは司法試験講座を受講している

弁護士の企業法務について、様々な観点から解説しました。

法務が複雑化する現代では、企業内弁護士になることも企業内弁護士を雇用することも有益です。また司法試験にはぜひ予備校を活用して下さい。

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