そもそも企業法務とは?役割や仕事の内容・業務に必要なスキルまで詳しく紹介!
「そもそも企業法務って何なの?」
「具体的な仕事内容は?どのようなスキルが必要?」
などと疑問をお持ちの方もいるでしょう。
企業法務は外部の顧問弁護士に委託されていることもあるので、仕事内容などをよく知らないという場合が多いはずです。
そこで今回はそもそも企業法務とは何なのかということについて、その役割や仕事内容、求められるスキルなどを含めて解説します。
企業法務を勉強するのにおすすめの参考書も紹介するので参考にしてください。
企業法務についてざっくり説明すると
- 企業法務とは企業が行う法律事務
- 予防法務・戦略法務・臨床法務の3つに分類できる
- 規制改革などによって必要性は増している
そもそも企業法務とは
まずは企業法務に関する基本情報をお伝えします。
企業が行う法律事務を指す
企業法務とは、企業の法律事務のことを指します。全ての企業は法律に則って業務を行わなければならないので、全ての企業に企業法務は付随します。
なお、企業の業務は法律によって種々の制限がかけられているわけですが、その法律の数は膨大です。
そのため、その全てを遵守しながら企業法務を行うのは素人には難しいので、各企業は企業法に関する専門家に頼る必要があります。
企業にとっての目的は利益向上とコスト削減
企業は、全体の収支に関する数字を良くするために行動しますが、それには利益の向上とコスト削減という2つの観点が重要になります。
利益を拡大させることによって収入を増やし、様々なコストをカットすることで支出を減らせば、必然的に収支は改善するわけです。
ちなみに企業法務がそれらに直接的な好影響を与えることはありません。
企業法務は収支にどう関わる?
企業法務は利益の向上やコストカットに直結するわけではないことから、かつては軽視されていた業務でした。
しかし、利益を向上させるには契約が、コストをカットするには解雇がつきものですが、それらは法律によって厳格な規定が設けられているため、それらと企業法務は直接的に関わります。
そのため、企業法務は間接的には企業の収支に関わっているわけであり、企業活動が法律を基盤の一つとしている以上、その役割は重大だと言えるでしょう。
企業法務の担う3つの主な役割
企業法務にはたくさんの実務作業がありますが、役割という観点で見ると以下の3つに分類することができます。
適切な環境整備(予防法務)
企業法務は各企業を取り巻く法令や規制の環境に合わせて業務を行わなければなりません。
似たような企業であっても、法的な制限の条件が全く同じであるわけではないため、各企業の事業内容や属する業界に合わせた情報収集を行い、問題なく企業活動を行える環境を整える必要があります。
なお、企業には必ず企業法務が付随するため、小さな企業だからといって法律事務がないということはありません。
契約の仕方や定款などの重要法務書類を含む書類の管理などは、あらゆる企業に必須の法務であり、それらも環境整備の一環です。
法律に則った経営戦略を(戦略法務)
経営戦略を決定したり、変更する際にはそれが法律的に問題ないかという観点を意識しなければなりません。
そのため、企業法務の担当者が行う情報収集が、企業の円滑な意思決定を支える重大な要素となります。
また企業法務の担当者は、戦略が法律に背かないかとチェックするという消極的な態度だけでなく、より積極的な態度でも戦略を考えなければなりません。
例えば、法律の盲点をついた画期的な戦略で他社と差別化を図るということもできるわけです。
企業法務というと縁の下の力持ちというようなイメージをする方が多いでしょうが、戦略法務のように表舞台に立って主体的に提案をするような場面もあります。
トラブルなどの際の有事対応(臨床法務)
企業法務は、法律上の問題がないように契約を結ぶ契約法務や、社員がコンプライアンスに違反することがないように予防するコンプライアンス法務などで、トラブルを未然に防げるように努力します。
しかし、それでも紛争や契約事故などが起きてしまうことはあるので、その都度適切な対応をしなければなりません。この対応のことを臨床法務と言います。
特に刑事訴訟などの対応に関しては、法律の専門家が適切に対応しなければ、企業の存続に影響しかねないような大きな問題になってしまう可能性があるので、臨床法務の役割は重大です。
企業法務の必要性
かつては軽視されがちだった企業法務ですが、時代の流れとともにその必要性は増してきています。
近年の企業法の流れ
従来の日本では厳しい制度によって各業界の既得権益が守られていましたが、1995年以降は本格的に規制改革が行われ、昨今ではかなり規制が緩和されてきています。
そのため、各企業は新しいことにどんどん挑戦することができ、新規事業の参入もかつてに比べれば容易です。
しかし、規制改革が進んだ分、どこまでが許されているのかがわかりにくいという難点もあります。
日本では規制改革によって「事前規制」が改められたため、色々なことにチャレンジしやすくなった反面、後から取り締まられるリスクは常にあるわけです。
近年の日本では法を犯した企業の信頼が失墜するというケースも多いため、信頼性を維持するためには規制をきちんと把握しつつ活動しなければなりません。
企業法務とコーポレート・ガバナンスの関係
企業活動の透明性を高めなければならないという意識から、国際的にコーポレート・ガバナンスが重視されるようになってきています。
日本でも2015年からコーポレートガバナンス・コードが導入され、監視役として社外取締役の設置が義務付けられました。
その役員は企業と全く関係のない人が務めなければならず、企業法務に詳しい弁護士が採用されるケースが多いです。
コーポレート・ガバナンスとは
コーポレート・ガバナンスは、社外取締役や社外監査役などの社外の管理者を設置し、企業が組織的な不正をしないようにその経営を監視する仕組みのことです。日本語では「企業統治」などと訳されます。
国際的な重要度が高まっていることを背景に、日本では2015年に金融庁と東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを公表しました。
これ以降、各企業は金融機関からの融資を受けやすいようにする、社会的な信頼度を高めるなどの目的で、コーポレート・ガバナンスに取り組んでいます。
企業法務の具体的な仕事内容は?
企業法務は何をするのかが想像しにくい仕事だと言えます。
そこで以下では企業法務を大きく4つに分類し、それぞれの詳しい業務内容を解説していきます。
契約法務
契約の締結や履行には法的な知識が必須であるため、企業法務が密接に関係します。
契約書の整備
企業は色々な取引先を契約を結ぶことによって事業を行います。
契約の際は自社にとって不利でない契約であるかどうかと、法律に抵触しないことを確かめなければなりません。
よって契約書の作成または精査は、企業法務の重要な仕事です。
債権の回収
相手方に期限日までにお金を支払ってもらうという旨の信用契約をする場合は、売掛金(まだ支払ってもらっていないお金)が発生します。
この売掛金が期限が過ぎても回収できない場合は、債務不履行として担保や資産を差し押さえたり、民事訴訟を起こすなどの法律上の手続きによって、債権を回収しなければなりません。
不動産業務
不動産の売買では大きなお金が動くので、契約書の条件を確認することがより重要だと言えます。
また自社が不動産を手に入れる場合は、新たに登記をしなければならないので、登記に関する法律知識も持ち合わせていなければなりません。
機関法務
企業は組織的に法律を遵守しなければなりません。そのために企業法務では以下のような業務を行います。
株主総会への対応
日本企業の9割以上は株式会社であるため、多くの会社では株主を集め、法律に則って株主総会を開かなければなりません。
またそれに関連する業務として、株主総会で提出する書類を精査したり、想定される質問に対する適切な回答を準備するなどの仕事もする必要があります。
労務に関する対応
企業は法律に従って残業代を支払ったり、労災保険を用意したりしなければなりません。
また昨今はパワハラやセクハラなどで社員や元社員から訴訟を起こされるというケースも増えてきているため、それに対する対応策や予防策を講じるということも企業法務の仕事です。
加えて実際にそうした紛争が起こってしまった場合は、適切に対処しなければなりません。
コンプライアンス業務
SNSが普及した昨今は、ある社員が社会的な不祥事を起こすとそれが瞬く間に拡散されてしまいます。
そのため、社員一人ひとりが確かな法律知識やモラルを持って良識ある行動をするということが大切です。
企業法務はそれを実現するために、コンプライアンスに関するマニュアルを作ったり、セミナーや研修を実施したりして、社員の教育に努めなければなりません。
紛争の防止やその対応業務
企業同士で紛争になるケースもあるので、その予防先や対応策を講じたり、実際にそれに対応するという業務もあります。
特許など知的財産の管理
特許などの知的財産に関しては、きちんと法的な手続きを行って管理しておかなければ、他社にアイデアを合法的に奪われ、重大な損失を出してしまう可能性もあります。
また知的財産権を不当に侵害された場合は訴訟を起こしたり、そのような事態が起こらないようにするために商標調査をすることも必要です。
訴訟への対応
取引先とトラブルになって訴訟を起こす場合、もしくは相手方に訴訟を起こされた場合は、企業法務の担当者が適切な対応をしなければなりません。
訴訟及び裁判は法の下で行われるため、対応には確固たる法律知識が必要だからです。
なお、訴訟の性格などによっては、より良い対応ができる顧問弁護士に依頼すべきかどうかなどの判断もしなければなりません。
M&A
M&Aは双方の企業に損失が生まれないように進めなければなりません。
会社の設立や組織の運営・管理などのルールを規定するのは主に会社法ですが、買収先の条件によってどの法律が適用されるのかは異なります。
よって買収先の条件もチェックしながら、適切な契約を結ばなければなりません。
企業法務を扱うのはどんな人?
企業法務に携わるのは主に弁護士です。以下では企業法務を扱う弁護士について解説します。
また法務部に所属すれば、弁護士でなくても企業法務を扱うことは可能です。以下ではそのことについても言及します。
弁護士
企業法務は社外の弁護士に委託されるのが一般的なので、企業法務に携わりたいなら弁護士になるのが一番です。
なお、昨今は法律事務所の顧問弁護士に頼るのではなく、自社で企業内弁護士を雇用することもあります。
以下では両者の違いについて解説します。
年収の高い法律事務所の顧問弁護士
法律事務所には世間がイメージする通りのいわゆる「弁護士」が在籍しています。
企業法務だけでなく、民事事件や刑事事件、各種法務などを取り扱うため、仕事はかなりハードです。
しかし、勤務年数などによっても異なるものの、平均年収は500〜3,000万程度であり、忙しい分、かなり稼ぐことができます。
なお、企業法務を扱いたい場合は、企業の顧問弁護士になことで企業法務に関するアドバイスをしたり、実務を担当することが可能です。
安定が得られる企業内弁護士
企業内弁護士は、ある企業の専属の弁護士として企業法務に携わります。
この場合はあくまで企業の一社員なので、年収は一般的な会社員に毛が生えたくらいの水準まで落ちてしまいますが、その分福利厚生が充実するというのが魅力です。
法律事務所に比べると残業は少なく、産休や育休も取得しやすいため、ワークライフバランスはかなり良くなるでしょう。
そのため、年収ではなく安定した生活を求めるのであれば、顧問弁護士よりも企業内弁護士を目指すのがおすすめです。
企業内弁護士の平均年収は1,100万円
一般的に企業内弁護士の年収は顧問弁護士のそれよりも劣るとされていますが、それでも平均年収は1,100万円なので、お金に不足を覚えることはないでしょう。
なお、企業内弁護士の年収は弁護士経験の年数などによって上昇していく傾向にあります。
弁護士経験が5年未満なら年収500〜750万円程度にとどまることが多いですが、20年以上のベテランになると年収が2,000万円を超えることも珍しくありません。
社外取締役として関わることも
先ほども少し言及しましたが、上場企業にはコーポレート・ガバナンスのために社外取締役の設置が義務付けられています。
よって弁護士としてその役員になることで、企業法務に携わることも可能です。
社外取締役なら複数を掛け持ちすることもできるので、効率よく収入を伸ばしたいという場合にも良いでしょう。
ちなみに社外役員には年間で500万円程度が支払われることが多いようです。
企業法務を扱う弁護士になる方法
以下では弁護士として企業法務に携わるための方法を紹介します。
大手法律事務所に入る
5大法律事務所やそれに準ずる大手の法律事務所に所属すれば、国内の大手企業の法務に携わることができます。
また事務所の規模が大きければ案件数も多くなるので、企業法務に関われるチャンスも多くなるでしょう。
ただし、規模が小さい法律事務所であっても、中小企業の顧問弁護士などとして企業法務に携わることは可能です。
その場合は一人で一つの企業の法務を全て担当することができるため、大手の事務所よりも様々な経験を積むことができます。
企業内弁護士として企業法務に携わろう
弁護士になって特定の企業に雇用されれば企業内弁護士になることができます。
企業内弁護士は一つの企業に所属して、その企業のために企業法務のみに携わることになるので、働きたい業界や企業などがある方にとっては良いでしょう。
なお、企業内弁護士の人口はここ10年で8倍ほどに増えており、コンプライアンス意識の高まりとも相まって、今後はさらに需要が多くなると予想されます。
企業の社外取締役になろう
社外取締役は、各企業が不祥事を起こさないように外部から監視しようという趣旨のものであるため、企業と関係のない人を選ばなくてはなりません。
なお、企業はエクゼクティブ転職専用のエージェントを介し、社外取締役として弁護士を採用することが多いです。
よって社外取締役を狙うなら、そうしたエージェントに登録しておくのが良いでしょう。
志望動機が企業法務なら法務部で働くのもあり
弁護士になるには司法試験に合格しなければならないので、ハードルが高いと言えます。
そのため、弁護士になりたい志望動機が企業法務だけなのであれば、企業の法務部で働くのも良いでしょう。法務部に配属されれば、弁護士の資格を持っていなくても、企業法務に携わることができます。
就職の際は、法科大学院卒や法学部卒などの学歴があれば、良いアドバンテージになるでしょう。
ちなみに昨今は企業法務の重要性が高まっていていることから法務部を設置する企業は多いです。
商事法務研究会の調査によると、上場企業など約1,000社のうち、42%は独立した法務部を持っていると言います。
ただし、企業内弁護士を雇用している企業と顧問弁護士を採用している企業とでは、法務部の役割や仕事内容が異なる可能性があるので注意してください。
弁護士以外の行政書士等の資格も転職に活かせる
基本的に一般人が法律事務を単独で行うことは認められておらず、それをするには弁護士の資格が必要です。
しかし、行政書士は行政書士法によって一部の法律業務を行うことが認められています。よって弁護士資格の取得が難しい場合は、比較的取得しやすい行政書士を狙うというのも良いでしょう。
法務部の社員は、ある企業に雇用されて法務部に配属されているだけなので、異動になる可能性も十分にあります。
その場合、企業法務ということにこだわるなら他の企業の法務部に転職しなければなりませんが、転職の際には資格があった方が便利です。
企業法務に活かせる資格と取得難易度
法務部員として企業法務に携わるには、知的財産をはじめとする法的な知識や契約・取引に関するビジネススキル、コンプライアンスに関する理解などが必要です。
そのため、以下のような資格を取得して、知識やスキルを高めるのが良いでしょう。これらの資格があれば、転職する際には良いアピール材料になるはずです。
資格 | 合格率 | 受験資格 |
---|---|---|
行政書士 | 10%程度 | 制限なし |
司法書士 | 3〜4%程度 | 制限なし |
ビジネス実務法務検定 | 1級:17.2% 2級:40.9% 3級:75.1% ※2019年度 |
1級:2級合格者 2級・3級:制限なし |
上記の通り、企業法務関係の資格であれば、ビジネス実務法務検定が最も取得しやすいと言えます。1級は行政書士に準ずる難易度とされていますが、難しい分、取得すれば良いアピールになるでしょう。
一方で行政書士や司法書士は、かなり難易度が高いと言えます。ただし、弁護士資格のように複数回試験を受けたり(予備試験+司法試験)、司法修習を受ける必要はないので、まだハードルは低いでしょう。
幸い両者とも受験資格はないため、法務部員として働きながらコツコツ勉強を続け、毎年挑戦するというのも有意義です。
企業の法務部として企業法務を扱うまでの流れ
ある企業に採用され、法務部に配属されれば企業法務に携わることが可能です。
しかし、弁護士とは異なり、法務部の社員は異動になると企業法務を扱えなくなってしまいます。
そのため、安定して企業法務に携わりたいのであれば、やはり弁護士資格を取得すべきです。それが難しいのであれば、行政書士などもう少し易しい資格を取得し、来る転職に備えるのが良いでしょう。
企業法務の実務に必要なスキル・人材
企業法務の仕事内容はやはりイメージしづらいはずなので、以下では企業法務に必要なスキルを、様々な実務の場面とともに紹介します。
資料作成など基本的な事務能力
企業法務の仕事は法的事務がメインになりますが、法的事務に契約書類の作成はつきものです。
そのため、書類作成能力に長けていた方が良いでしょう。基本的な文章力が高かったり、ビジネス文書を作り慣れている人材は重宝されます。
またタイピングやショートカットの活用など、PCの操作に関するスキルが高い方が、業務を円滑に行えるはずです。
情報収集能力や英語力
弁護士であっても全ての法律を覚えているわけではないので、場面場面に応じて適切な情報収集をすることも大切です。
また外資系企業は無論ですが、多くの上場企業では海外案件も扱うので、時には英語などで書かれた法律を確認しなければならないこともあります。
そのため、英語をはじめとする語学力にも長けていた方が良いでしょう。
コミュニケーションスキルや交渉力
企業のあらゆる活動が法律と関係しているため、企業法務の担当者は実に多くの人と協働します。
そのため、色々な立場の人と適当な距離感で関われるだけのコミュニケーションスキルが必要です。
また企業の上層部である経営陣と関わることも多く、違法性がある場合などには「No!」と言えるだけの信頼関係も築いておかなくてはなりません。
さらに契約やトラブルの対応などでは社外の人と関わる機会も多く、上手く利害調整ができるだけの交渉力も求められます。
ビジネスにおけるバランス感覚
企業法務に携わる人間には、法律に関する知識に詳しいことだけではなく、それをビジネスシーンでどのように活用していくかという感覚も必要になります。
また企業が属する業界の習慣や常識にもある程度精通していることも求められ、経営戦略に関わる提案をする業務ではセンスや発想力も大切です。
このように企業法務の担当者には、法律知識だけでなく、ビジネスパーソンとしての総合力が要るため、向き・不向きのある仕事だと言えます。
企業法務に最適なおすすめ本ランキング10選
企業法務を勉強するには実務的なノウハウを学んだり、会社法や労働法などの様々な法律知識も頭に入れなければなりません。
以下では企業法務の勉強におすすめの色々な参考書をランキング形式で紹介するので参考にしてください。
1位:事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック
この参考書には法務に携わるビジネスパーソンが押さえておくべき法律知識が体系的にまとめられています。
ビジネスシーンごとに、想定される法的リスクを「逆引き」し、法令の条文などを確認することができるので便利です。
明日から業務に役立てられるような即時性を求めている方や、実践的に企業法務を学びたいという方などにおすすめできます。
また著者がYouTubeで無料配信している本書に関するセミナーも視聴できるので、本を読んでいてわからない部分はそれで確認することも可能です。
価格も企業法務に関する参考書の中では安い部類に入るので、気軽に手に取ってみてください。
なお、『事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編』という姉妹書も出版されているため、そちらも合わせて活用すると良いでしょう。
2位:株式会社法
実務に携わる人間からは定番書と言われる権威性十分の教材です。中小企業や閉鎖型企業に関する問題を中心に会社法実務が詳しく解説されています。
なお、こちらは1,000ページ以上に及ぶかなり分厚いテキストであるため、これを軸に企業法務を勉強するというよりは、会社法についての辞書として活用するのが良いでしょう。
また法律には改正があり、時代の流れとともに内容は変わっていきます。そのため、法律学習は新しい教材を使うべきですが、こちらは2017年11月の出版なのでその点に関しては問題ありません。
平成29年度の民法改正や税制改正にも対応しているため、比較的最新の法律知識が載っています。
3位:第3版 新版 新・労働法実務相談
企業法務の中でも、労働法関係の実務に特化した参考書です。
労働法の条文を読んだだけではイメージが掴みにくいという人は多いはずですが、本書では具体的なケースに即した質疑応答が300パターン収録されているため、非常にわかりやすいと言えます。
採用や労働契約、労働時間、解雇などの実践的な内容に関する質問に、弁護士をはじめとする専門家が、最新の法令や行政解釈などを踏まえながら答えてくれるので、明日から役立つ知識を習得可能です。
なお、本書は2020年に5年ぶりの改訂がなされ、最新の法改正にも対応しているので、購入するなら改訂版を買いましょう。
4位:良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方
昨今は多くの企業が自社のWebサイトを作ったり、Webサービスを提供したりしているので、Web関連の法的リスクが高まっていると言えます。
Webサービスには利用規約やプライバシーポリシー、特商法に基づく表示が必要不可欠ですが、それらに関する注意点は本書で学ぶのが良いでしょう。
本書では安全かつ円滑にWebサービスを運用するための秘訣が網羅的に解説されいているので、Web関連の業務に携わる方は是非とも一読しておくべきです。
なお、著者には企業内弁護士の経験者も含まれており、実践的な内容を学ぶ上での信頼性も申し分ありません。
5位:著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本
数少ない知的財産権を専門に参考書です。著作権に関するトラブルに対して、法律的な解釈ではなく、「実際にどうすれば良いのか」を優先的に解説しているため、かなり実践的な内容だと言えます。
「クリエイターのための〜」という表題ではありますが、コンテンツ制作の従事者やインハウスデザイナー、企業内担当者など幅広い人を対象にして書かれており、企業法務の学習者にももちろん有用です。
6位:事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編
このランキングの第1位で紹介した「逆引きビジネス法務ハンドブック」の姉妹書です。
本書ではM&Aの契約、株式取得のための契約、経営に参加するための契約という3つの内容が主に解説されています。
契約書類のサンプルを無料でダウンロードすることもできるため、より実践的にM&Aを学ぶことでき、実際の書類作成にもそれを役立てることが可能です。
さらにAIやデータに関連するサービスや、シェアリングエコノミー、プラットフォームサービスなど、最新のビジネスにも対応しているため、学ぶべきところは多いと言えます。
7位:企業法務のための初動対応の実務 Kindle版
法的対応が必要となる企業のトラブルをタイプを7つに分類し、それぞれの特徴や相談事例、対応のポイントなどをまとめた参考書です。
著者は若手弁護士を対象にしたセミナーや書籍で高い評価を得ている弁護士たちであり、彼らのノウハウが凝縮された本書の内容は、非常に信頼度が高いと言えるでしょう。
また企業法務の担当者が法律相談を受けた時に即座に使えるQ&Aや書式をダウンロードすることもできるので、実践的な対応にも役立てられます。
さらにKindle版であるため、スマホやタブレットなどから簡単に閲覧できるというのも魅力的です。仕事用のデバイスに入れておき、業務の際に活用するというのも良いでしょう。
8位:企業法務入門テキスト――ありのままの法務
架空のメーカーで働く3人の法務部員が、企業法務の様々な実務に奮闘するというストーリーを通して勉強できる参考書です。
企業法務における様々な実務課題に対応する流れをわかりやすく説明してくれるので、これから企業法務を学びたいという方には良いでしょう。
またストーリー仕立てなので楽しく読むことができ、堅苦しい参考書を読むのが苦手だという方もにもおすすめです。
ある程度の経験を積んだ法務担当者が、基本的なことをおさらいする場合にも役立つでしょう。
9位:「会社法」法令集〈第十二版〉
企業法務において、最も参照頻度が高いとされる会社法を専門に扱った参考書です。
他の会社法に関する書籍よりも豊富な法令が掲載されており、条例に関する解説も詳細かつ丁寧なのでおすすめできます。
法改正によって変化したポイントについてもわかりやすく明示されているので、企業法務に携わるベテランの方が、法改正の確認をするのに活用するのも良いでしょう。
ちなみに最新版には、コロナに対応した令和2年5月の法務省令改正までが載っています。
10位:新版 会社法実務スケジュール
会社法に基づく様々な法務手続きのスケジュールが載っているテキストです。
株主総会や取締役会、債権者保護手続きなどをはじめ、会社が行う様々な行為は会社法に立脚しなければならないわけですが、会社法の条文を逐一調べながら全ての手続きを行うのはかなり大変だと言えます。
特に各手続きに関して会社法に則ったスケジュールを立てるのはかなりの時間が必要です。
本書には頻繁に行われる代表的な企業活動について、手続きの内容やスケジュールがまとめられているため、これがあればかなり実務を効率化できるでしょう。
企業法務におすすめの参考書比較表
上記で紹介した参考書の特徴を、それぞれの価格と共におさらいしておきましょう。
参考書名 | 価格 | 特徴 | |
---|---|---|---|
1位 | 事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック | 3,960円 | ビジネスパーソンに必要な法律知識が体系的に学べる |
2位 | 株式会社法 | 7,599円 | 辞書として活用すべき会社法実務の定番書 |
3位 | 第3版 新版 新・労働法実務相談 | 7,920円 | 労働法関係の実務を専門に扱った参考書 |
4位 | 良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方 | 2,618円 | Webサービスの運用に関わることを網羅的に解説 |
5位 | 著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本 | 2,640円 | 著作権に関するトラブルの対処法が具体的に学べる実用書 |
6位 | 事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編 | 4,950円 | M&Aを専門に扱ったランキング第1位の姉妹書 |
7位 | 企業法務のための初動対応の実務 Kindle版 | 3,168円 | 法的対応が必要なトラブルを7つに分類して詳しく解説 |
8位 | 企業法務入門テキスト――ありのままの法務 | 2,860円 | 法務部員の仕事内容がストーリー仕立てで学べる |
9位 | 「会社法」法令集〈第十二版〉 | 3,300円 | 会社法の法令を他よりも豊富に掲載 |
10位 | 新版 会社法実務スケジュール | 6,050円 | 会社法に基づく手続きやスケジュールがまとめられている |
上記のうち、あらゆる方におすすめできるのは第1位の『事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック』です。
合わせてM&Aに関する第6位の姉妹書も持っておくと、実務の上では役立ちます。
また顧問弁護士などとして実務にバリバリ携わるという方であれば、辞書として活用できる『株式会社法』などを持っておくと良いでしょう。
なお、企業法務の具体的な仕事内容が知りたいという初学者であれば、ストーリー仕立てで法務部員の仕事内容が学べる『企業法務入門テキスト――ありのままの法務』がおすすめです。
企業法務についてまとめ
企業法務についてまとめ
- 契約法務やコンプライアンス業務など様々な仕事がある
- 携わりたいなら弁護士になるのが一番
- 志望動機が企業法務だけなら、法務部員になっても良い
企業法務について、役割や仕事内容などを詳しく解説しました。
企業の法律事務である企業法務は、大きく予防法務、戦略法務、臨床法務に分類できますが、契約法務やコンプライアンス業務など、実際はかなり色々な仕事を行っています。
そんな企業法務に携わりたいのであれば、弁護士になるのが一番です。しかし、弁護士資格の難易度は高いので、志望動機が企業法務だけなのであれば、法務部員になるのも良いでしょう。
なお、今回は企業法務の勉強におすすめの参考書も紹介したので、興味のある方はそれらを活用してさらに詳しく学んでみてください。