司法書士の仕事とは?求められる役割と必要なスキルを徹底解説

更新日時 2019/12/13

「司法書士って名前は知ってるけど、実際どんな仕事をしているの?」

そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

生活をしていく中での財産や権利を守り、法的な手続きの代行をしたり書類を作成する専門職種として頼られているのが司法書士です。

身近な法律家とも呼ばれていますが、その由来は多岐にわたる業務内容にあります。

司法書士法の改定に伴い業務の幅も広がっていく中で、今後期待される役割や司法書士の業務について解説していきます。

司法書士の仕事についてざっくり説明すると

  • 司法書士は登記申請・訴訟手続きのエキスパート

  • 裁判に関わることもでき、社会的ニーズの高い人気の資格

  • 独立開業が非常にしやすいが、営業などの努力も必要

司法書士の主な仕事

街並みの写真

司法書士が行う主な業務は以下のようなものがあります。

ここではまず司法書士がどのような役割を果たしているのか具体的に把握していきましょう。

登記に関する業務

登記とは、ある事柄や物に対する権利や義務を公示することで保護し円滑な取引を維持していく制度です。

代表的な登記として不動産(土地や建物)に関する権利関係の登録をする「不動産登記」があります。

不動産(土地や建物)が誰のもので何処に存在しどの程度の規模なのかや、その不動産に権利の変動が生じた際に公示することで権利が守られ尚且つ円滑で安全な取引が保障されます

不動産以外の登記で代表的なのは、企業の代表者や名称など重要な事項を登録する「商業登記」「法人登記」が挙げられます。

登記内容に変更が生じた際は、その都度登記に反映させる手続き(変更登記)を定められた期限内に行わなければいけません。

登記制度により公示されている内容は、登記事項証明書を取得すれば誰でも情報を知る事が可能です。

しかし第三者が登記事項証明書を取得した際に最新の情報が反映されていなければ、取引が滞ってしまうなどの支障が出るだけではなく安全性まで失われます

会社の変更登記に期限が定められているのはこのような事態を避けるための対処でもあります。

他にも債権譲渡登記や動産譲渡登記、筆界特定制度による登記など様々な登記業務がありますが、これらの法務局に対する登記申請は司法書士だけに与えられた「独占業務」なのです

登記業務は個人からも企業からも継続的に需要があるので、司法書士の資格に対する価値は今後も衰えることは無いでしょう

書類作成に関する業務

登記や相続に関する手続きに必要な書類は、法務局や裁判所へ提出する公的要素が強い内容の書類です。

専門の知識が無ければ作成や提出が難しい為、通常は依頼を受けた司法書士が代行します。他にも取引の際に起こりうるリスク管理やトラブルの予防といった対策のために民間での取引に関する書類を作成する場合もあります

そうする事で確実な法的効力が発生し契約内容が保障されるからです。

費用がかかったとしても契約内容を担保できるメリットにはかなわないという事でしょう

司法書士の隣接職業に行政書士がありますが、実際に役所などに提出する書類には行政書士業務と重複している項目があります。

試験科目(憲法・民法・商法)にも共通点が多いので、ダブルライセンスで働いている司法書士もいます

分かりやすい例を挙げると、遺言書を作成したい場合や相続登記を考えている場合にダブルライセンスの司法書士に依頼すれば依頼先を分ける必要が無くなるのです

そういった利便性を考えれば、行政書士の資格も併せて取得するというのもひとつの選択肢になります。

成年後見に関する業務

成年後見制度とは、認知症や精神障害などが原因で正常な判断能力が低下している状態の人の財産を保護し、支援していく人を選任する制度です。

この制度は大きく二つに分けられます。後見人と保佐人と補助人を選任する「法定後見制度」と、自らの判断能力が正常なうちに後見人の候補や支援の内容を決めておける「任意後見制度」です。

法定後見制度は既に判断能力が不十分な方への制度なので支援内容や候補者を自身で選ぶことはできません。

任意後見制度は将来の財産管理などに不安を感じたら、自分の判断能力が十分なうちに後見人候補者を選定したり支援内容を決めることが可能です。後見人候補者と支援内容の契約を公正証書で結んでおきます。

司法書士は成年後見制度に関しての業務全般を支援するのが仕事です

この制度を利用するために家庭裁判所へ提出する申立書類の作成や、この制度に関する相談にも対応します。また、司法書士が後見人となって支援していくこともあるのです。

介護施設への入所手続きを行ったり遺産分割協議をする際も、本人の財産を守りながら支援していくという大事な役割を担っています。

司法書士はこの制度が導入された時から支援の必要な方のサポートや、将来必要となるのではと考える方へ理解を深める取り組みなどを積極的に行っています

相続・遺言に関する業務

身内が亡くなった際に所有していた財産(不動産、又は預貯金など)を引き継ぐことが相続です。

法律上は配偶者や子供など家族が引き継ぐことが可能ですが、生前に遺言書を残していれば家族でなくても財産を引き継がせることができます

こういった場合は遺言書での相続手続きになりますが、遺言書がある場合はその内容の通りに相続を実現できるように代表となって手続きを進めていく「遺言執行者」がいなければいけません。

遺言書内に遺言執行者の指定が無ければ家庭裁判所で選任の手続きをしなくてはいけませんが、司法書士は遺言執行者の役割を担う場面が多々あります

このように相続が発生した際には様々な手続きを代行します。

具体的な手続きとして不動産の名義変更(相続登記)の申請がありますが、これに付随する業務も重要なのです。

戸籍収集から始まり相続人の調査をしたら相続関係説明図を作成します。これは不動産の相続登記の際に必要書類として法務局に提出するものです。

また、相続人全員が遺産分割協議という話し合いを行いどのような内容で合意したかを遺産分割協議書という書面を作成し残しておきます。内容を明確にしておくことで後から起こりうるトラブルの防止にも役立ちます

場合によっては相続放棄や未成年者が法律行為を行う際に特別代理人を付けなければいけない場面も出てきます。

そういったあらゆる申立に必要な書類の作成や手続きを代行し、依頼人からの相談や疑問を解決していくことにも気を配りながら業務をこなします

債務整理に関する業務

消費者金融で借りたお金を返せなくなったり、クレジットカード会社で使った分の返済に困っている方の返済の負担を軽減する手続きを行います。

それにより借金の減額や無理のない返済計画での生活を可能にします

司法書士が代理人として行う業務は「任意整理」という余裕を持った返済計画の和解交渉と、利息を多く払い過ぎていた際に払い過ぎた分の返還請求をする「不当利得返還請求(過払い金返還請求)」です。

返還を受けた場合は他の債務の返済に充てる事も可能です。簡易裁判所に代行を認められている業務は訴額が140万円以下で、法務大臣から簡裁訴訟代理関係業務の認定を受けた司法書士と限定されています。

支払いの責任が無くなる「破産手続」や裁判所の認可を受け減額を行う「個人再生手続」に関しては、裁判所へ提出する書類を作成する業務があります。

書類作成だけではなく和解交渉や決まった範囲での裁判手続きも担う重要な業務の一つです

裁判に関する業務

司法書士は裁判所に提出する書類の作成も請け負っています

主に民事訴訟をするための書類です。民事紛争に関するものだけではなく相続放棄や成年後見の申立書などの家庭での事も含まれているのです。

債務整理でも解説したように、法務大臣の認定を受けていれば簡易裁判所で扱える民事事件の代理人として業務を行えます。

ただし、訴訟の目的となる価額は140万円以下です。この業務は簡裁訴訟代理等関係業務と呼ばれていますが、支払督促手続や少額訴訟債権執行手続きなども代行できます。

しかし一部の業務は限られた人だけが行える業務も含まれているので、資格取得の際には特別研修を受講して「簡易訴訟代理等能力認定考査」を受けてみるのも良いでしょう。

司法書士として行える仕事の範囲が広がれば、依頼人の様々な悩みを解決できる可能性が膨らみます

司法書士が請ける仕事内容は決して他人事ではなく身近な問題が多く並べられます。そのひとつひとつを依頼人と同様に本気で解決したいと思う気持ちも大切です。

司法書士の働き方の実態とは

法律のイメージ これだけ多岐にわたる業務を抱えている司法書士は実際どのような場所で、どのような流れで仕事を実践しているのでしょうか。

以下ではその実態を紐解いていきましょう。

司法書士の主な勤務先

専門性の高い資格なので就職先に選ぶのはやはり司法書士事務所が多いです

自身で開業している人も当然いますが、一般企業に就職しサラリーマンとして法務部に入る人もいます。

いきなり開業するよりは、安定していて資格も生かせる部署で積む経験が大きな財産になるでしょう

司法書士事務所ではない他の士業事務所に就職する人もいます。全国に展開している大手事務所や、行政書士法人と司法書士法人が協同運営している大手法人もあります。

たとえ職場がそれぞれ違っていても司法書士の資格に携る仕事ができればその経験を次のステップに生かすことが可能です。司法書士の仕事は業務の幅が広いので需要も大きいのです。

依頼人が何を解決したいかで依頼する企業も違ってくる可能性があります。それを想定し就職先を考えることで、自分が目指したい目標に近付けるでしょう。

司法書士の仕事の流れ

司法書士の要ともいえる登記業務の例を見て流れを把握してみましょう。

依頼人から、法律上の手続きが必要な相談を受けました。ヒアリング作業で面談した際に事実関係や依頼人の要望を確認します。

依頼人の要望に応えられる解決法を提案し、手続きに必要な物や見積もりの確認をしてもらいます

依頼人から正式に申し込まれたら必要書類の作成に取り掛かり、裁判所や役所に直接足を運び公的な証明書などの準備をします。

必要書類がすべて揃ったら法務局に出向き申請を行います。相続関係の場合は公正証書の作成のため関係者を集めたりと内容によってやるべきことが変わるので細心の注意を払い業務に取り組みましょう。

滞りなく手続きが進めば遂に業務が完了します。依頼人に完了書類などを手渡しして、その対価として報酬を受け取ります。

司法書士に求められる営業力

営業のイメージ 人気も需要も上昇している司法書士ですが、目指す人が増えたことで競争率も上昇しました

このような状況の中でも顧客に安心して利用してもらえる仕事の質を保ち、仕事量を維持していかなければいけません。

それを実現するために必要な営業力について考えていきましょう。

営業力が仕事の質を高める

司法書士には悩みを抱えた依頼人の話から問題点の解決策を見出し提案するという、通常の業務の中にも交渉術を使うなどの営業機能が含まれています

常に意識するよう癖をつけ無意識のうちに通常業務と営業を同時進行できるように心がけましょう。

そして他の事にも気付けるように誠実な対応を続けることも大切です。柔軟でどんな案件にも対応できるスキルを理解してもらえれば顧客満足にもつながります。

依頼人の信頼を獲得し更に顧客を増やしてくれる可能性のある依頼人一人ひとりを大切にしましょう。

営業力が仕事の量を増やす

司法書士という職種は役割が豊富なうえ、誰でもできる仕事ではありませんのでそう簡単には廃業に追い込まれることもありません。そのため競争率も上昇傾向にあります。

そのような状況でも新規の顧客を確保できないわけではありません。営業する相手は個人の顧客だけではなく、その町にある不動産関連の会社や信託銀行などの金融機関が挙げられます

しかし既に業務を請け負っている司法書士事務所が存在している可能性が高いので挨拶しかできなかったとしても仕方がありません。他の士業業者との人脈が後に何かの役に立つ可能性もあります。

できることは何事も試してみることが大切です。競合となる会社についてはお互いの長所や短所を理解し差別化できる要素を存分に活用しましょう。

営業力はツールで強化する

webでの仕事も可能な時代なのでインターネットを活用した集客や営業方法はとても効果的です

開業した際に実行すべきことはホームページの作成です。誰でも見やすく多くの人の目に留まるホームページを作成するのが効果的です。プロに委託してセンスも良く効果的なホームページを作ってもらいましょう。

SNSで常に明確な情報を発信し続けることも効果的です。SNSやインターネットを使った情報の提供は場所を縛られないメリットがあります。

しかし地域での活動も大切にできればもっと可能性が広がります。

異業種交流会などに参加する事で人脈を作ったり情報を共有し合うことでお互いに助け合える仕組みが築き上げられます。

それにアナログなツールを活用する事も世代を選ばないので有効です。新聞広告やダイレクトメールを併用しましょう。

紙面を活用する際はQRコードやホームページのURLを掲載し一人でも多くホームページに誘導します。

司法書士の仕事に求められるものと今後期待されるもの

司法書士の仕事内容まとめ

  • 司法書士の業務は「登記」「成年後見に関する業務」「相続に関する業務」など、非常に多岐にわたる

  • 特別研修を終えることで簡易裁判にも携わることができる

  • 勤務先としては士業事務所や企業の法務部が挙げられるが、独立開業するのが一般的

  • 司法書士の仕事では営業も大切

司法書士は、個人の財産や会社をめぐる取引を安全におこなう専門家です。

法的に正しく手続きをおこなうことにより、未然にトラブルを防止するという、予防型の法律家であるところに基本的な役割があります。

今後、高齢化が進む中で、個人・法人問わず、相談業務の担い手として、また身近な法律家として、これからも社会に貢献していく職業として期待されています。