司法書士報酬の平均は?業務内容別の費用相場と稼ぐためのポイントを解説!

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司法書士の業務は登記や供託に関する手続きや成年後見など、じつに幅広く、業務内容によって得られる報酬が異なることが大きな特徴です。

そこでこの記事では、司法書士の費用はどのように決められるのかという疑問に答えるとともに、報酬の相場や稼ぐためのポイントを説明します。

司法書士を目指すにあたり、報酬に関する具体的な情報を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

司法書士費用はどのようにして決められるのか

疑問のイメージ 司法書士の費用は決まった金額があるわけではなく司法書士が自由に定めることができます

ただし依頼者に対してかかる費用の算定方法や、報酬の基準などをあらかじめ説明し、了承を得なければならないことが、司法書士法第22条に定められています。

自由に費用を決められるからといって根拠もなく法外な金額を設定したり、依頼者への説明を省いて後から費用を伝えるようなことはしてはいけないということです。

アンケートからわかる司法書士費用の相場

アンケートのイメージ それでは、2018(平成30)年1月に日本司法書士会連合会が行ったアンケート結果から、代表的な業務の平均報酬を紹介します。

実際の費用はどの程度の相場となっているのか、具体的な金額をあげながら見ていきましょう。

不動産の贈与に関する所有権移転登記

自宅の土地建物を親から子へなど、贈与する際に必要な土地建物の所有権移転登記手続(固定資産評価額の合計1000万円の場合)の報酬額です。

登記原因証明情報の作成や登記申請などの代理業務を行うことを想定しています。

全国各地区の報酬の平均幅は27,167~75,131円となっています。全国平均は44,936円です。最も平均額が高いのは近畿地区で54,505円、低いのは東北地区で41,219円です。

なお、確認作業のため出張をしなければならない場合などは、さらに出張費が加算されます。また、登録免許税分の収入印紙代なども実費として必要です。

不動産の売買に関する所有権移転登記

売買による土地建物の所有権移転登記手続(固定資産評価額の合計1000万円の場合)の代理業務に関しては、報酬の平均幅は29,556~83,406円となっています。全国平均は49,723円です。

最も平均額が高いのは近畿地区で64,090円、低いのは東北地区で42,585円です。同じ不動産に関する所有権移転登記でも、贈与に比べて全体的に報酬の平均額が少し上がっていることが特徴です。

不動産の移転に売買というプロセスが加わり、金銭のやり取りが伴われることにより、不随する業務がやや増えることが理由と考えられます。

なお、売買の所有権移転登記は、売買代金決済時に行われるため、決済に司法書士が立ち会う場合は別途出張費用などが発生します。また、登録免許税は売買の移転登記に関してもかかります。

不動産の相続に関する所有権移転登記

法定相続人は3名で、うち1名の単独相続による土地建物の所有権移転登記手続(固定資産評価額の合計1000万円の場合)を例にしています。

報酬の平均幅は37,815~105,522円で、全国平均は65,347円です。最も平均額が高いのは近畿地区で78,326円、低いのは東北地区で60,667円です。

相続に関する不動産の移転手続きは、不動産移転の業務の中でも最も費用が高い傾向にあります。

相続の場合は移転の際に遺産分割協議書が必要な場合が多く、書類の作成や戸籍の取得など付随する業務が増えるためと考えられます。

法定相続人が1人のみや、遺言書がある場合など、遺産分割協議書が手続きに必要ないケースであれば、費用は相場よりやや下がります。

なお、登録免許税はほかの不動産移転業務と同じく、実費分がかかります。

不動産の抵当権設定登記

住宅ローンを組んで不動産を購入した際の抵当権設定登記手続の代理業務(債権額1000万円の場合)を想定した費用です。

登記原因詳細情報の作成と登記申請が主な業務になります。報酬の平均幅は26,496~59,618円、全国平均は38,858円です。

最も平均額が高いのは近畿地区で46,219円、低いのは東北地区で35,377円です。なお、登録免許税に関してはほかの不動産関連業務と同様に実費が発生します。

不動産の抵当権抹消登記

住宅ローン完済時における抵当権抹消登記手続の代理業務の費用です。報酬の平均幅は9,387~27,100円で、全国平均は15,495円です。

最も平均額が高いのは近畿地区で18,795円、低いのは九州地区で13,821円となっています。

ほかの不動産関連の業務に比べてかなり費用が安いことが特徴です。登記の抹消を行うということで、新たな登記を行うよりも、業務内容が簡素であることから、このような費用相場になっていると考えられます。

なお、抹消登記の手続きにも、登録免許税はかかるため、印紙の実費は別途必要です。

会社設立登記

設立時の出資者が2名、出資者全員が発起人となる株式会社の設立登記に関する代理業務を想定したものです。

報酬の平均幅は59,502~173,460円で、全国平均は102,752円です。最も平均額が高いのは四国地区で108,525円、低いのは北海道地区で98,172円です。

会社の設立登記をするためにはさまざまな書類が必要になります。

定款、議事録、取締役選任を示す書類など、書類の作成・取得などを含めた業務となるため、このような費用相場になると考えられます。

なお、会社設立登記の場合は、登録免許税のほか、定款認証費用も実費で発生します。ただし、電子認証の場合は認証費用は不要です。

成年後見人に就任した際の月額報酬

司法書士が成年後見人に就任し、財産管理や身上監護のための事務を行う場合を想定したものです。

1~2ヶ月に1度(原則)本人と面接し、医師、ヘルパー、親族と協力して本人の生活状況と健康状態の把握なども行います。

報酬の平均幅は13,654~68,073円、全国平均は30,640円です。最も平均額が高いのは四国地区で35,787円、低いのは中部地区で27,672円です。

なお、ここであげた金額は定額の報酬であり、被後見人本人の財産から月ごとに報酬が支払われることになります。

任意後見契約締結のサポート

任意後見契約書原案の作成及び公証人役場へ同道するなどのサポート業務を想定したものです。

報酬の平均幅は21,328~163,131円で、全国平均は78,004円です。最も平均額が高いのは近畿地区で96,734円、低いのは東北地区で60,615円となっています。

なお、公証人役場に同道する場合は、出張にかかる交通費や日当などの費用が発生します。

ほかの費用と比べて報酬の平均幅が大きいことが特徴です。任意後見のサポートは業務内容が個別のケースによって異なるため、このように相場の開きが発生しているものと考えられます。

個人民事再生の申立手続き

裁判所に提出する個人民事再生手続開始申立書及び関連書類の作成を主な業務内容と想定しています。

報酬の平均幅は58,023~337,556円、全国平均は217,436円です。最も平均額が高いのは近畿地区で240,827円、低いのは中部地区で207,108円となっています。

全体的に平均額が高いことが特徴です。なお、アンケートでは400万円の元金が減額されれば分割での返済も可能なケースを例にしていますが、書類を作成するためにはさまざまな調査が必要であり、実際の作成以外にかかる労力や時間は同じような借金額でも案件によって異なります。

なお、元金の減額に成功した場合は、成功報酬として減額分の何%かが費用に加算されます。

自己破産の申立手続き

裁判所に提出する自己破産申立書及び関連書類の作成業務を想定したものです。

依頼をした債務者の借金残債が大きく、月々の返済額が月収を上回り、返済が不可能というケースです。

報酬の平均幅は77,772~275,377円で、全国平均は170,429円です。最も平均額が高いのは近畿地区で195,726円、低いのは中国地区で160,337円となっています。

こちらの費用も個人民事再生と同様全体的に平均額が高くなっていますが、書類作成に付随する調査など、さまざまな業務にかかる労力・時間などを鑑みていると考えられます。

司法書士への報酬一覧表

司法書士の業務内容別報酬の全国平均は以下のようになります。

業務内容 全国平均
不動産の贈与に関する所有権移転登記 44,936円
不動産の売買に関する所有権移転登記 49,723円
不動産の相続に関する所有権移転登記 65,347円
不動産の抵当権設定登記 38,858円
不動産の抵当権抹消登記 15,495円
会社設立登記 102,752円
成年後見人に就任した際の月額報酬 30,640円
任意後見契約締結のサポート 78,004円
個人民事再生の申立手続き 217,436円
自己破産の申立手続き 170,429円

稼げる司法書士になるポイント

業績アップの様子 報酬を自由に決められるからといって高額に設定していると、相談者に敬遠され依頼が集まりにくくなります。

それでは、司法書士として稼ぐためにはどうすれば良いのか、具体的なポイントを説明していきます。

認定司法書士になる

認定司法書士とは、法務大臣の認定を受けた司法書士のことです。認定司法書士になると、簡易裁判所で取り扱う民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)などについて代理業務を行うことができます。

また、簡易裁判所での訴訟代理など関係業務は、法務大臣が認定した司法書士に限り行うことができます。受けられる業務の幅が広がるため、より多くの依頼者が集まる可能性があります。

また、認定司法書士であるということ自体が信頼度を高めることも集客に有効でしょう。

ただし、認定司法書士になるには試験合格後に特別研修を受け、認定考査に合格しなくてはなりません。

なお、特別研修を受けたからと言って認定考査に必ずしも合格できるわけではなく、落ちてしまう人も少なくない状況です。

突破するためには、特別研修のほかに独自に考査対策の学習を行う必要があるでしょう

専門分野を持つ

専門分野に特化して業務を行うことも稼ぐためのポイントの1つです。

司法書士の主な収入源は「不動産売買の際の登記申請・決済業務」「相続登記を中心とした相続関連の法務手続き」「高齢で判断能力が低下された方の財産管理を行う後見業務」です。

これらの業務は件数が多いため、専門的に掘り下げて知識を身に着け、経験・実績を積み上げることでさらに幅広く業務を行うことが可能になります。

宅建士やFPなどの資格を取得するとより案件への理解が深まります。また、顧客にとっても利便性が高いため喜ばれるでしょう。

オールマイティーな業務をこなせることも、さまざまな案件を受けられるという観点からは非常に良いことです。

ただし、専門分野があると人の印象に残りやすく、認知度が高まるきっかけにもなります。顧客により大きく印象付けたいと考えるならば、専門分野を持つことをおすすめします。

開業する場所を選ぶ

開業する場所と業務内容は大いに関連性があるため、自分のスタイルに合わせて開業する場所を選ぶことも重要なポイントです。

都市部は人口が多いため必然的に依頼数も多くなります。しかし、司法書士の人数も多く、競争が激しいことが特徴です。

顧客獲得競争の中で抜きんでるためには、どのようにすれば顧客の目に留まりやすいかを考えなければなりません。

専門分野を持ち、差別化を図るなどの工夫が必要になります。特定の分野の知識・経験を深めながらアグレッシブに働きたいという方は、都市部での開業が向いているでしょう。

地方は司法書士の人数がそれほど多くないため、競争はそこまで激しくないものの、顧客も少なく依頼が集まりにくいという問題があります。

依頼を集めるためには、不特定多数への宣伝だけでなく、人から人へ人脈を広げていく努力も必要になります

地域に密着した司法書士を目指す方は、このような環境が向いているでしょう。

また、「駅から近い」「駐車場がある」など顧客の利便性を考慮することも必要です。事務所があまりにもアクセスの悪い場所にあると、来所が面倒であるため顧客が離れてしまう可能性があります。

コミュニケーション能力を磨く

司法書士は顧客の困りごとや悩みを聞き出し、的確かつ正確に処理しなくてはなりません。そのため、顧客と円滑にやり取りを行うためのコミュニケーション能力は必須です

不愛想であったり、話がなかなかうまく繋がらなかったり、コミュニケーションに難がある司法書士に依頼したいと思う顧客はいません。

また、司法書士に依頼をする顧客の中には、債務整理や相続問題など、非常にセンシティブな問題を抱えている方も大勢います。

そのような顧客が安心して相談できるような環境・雰囲気をつくるためには、やはり司法書士のコミュニケーションスキルは欠かせないでしょう。

なお、コミュニケーション能力は人脈を広げて仕事の依頼を増やすことにも役立ちます。

司法書士に依頼される仕事は、HPや広告などを見た顧客からのものばかりではありません。

それまで培ってきたネットワークから、思わぬ仕事が舞い込むこともあります。ビジネスチャンスを逃さないよう、常日頃からさまざまなコミュニケーションを取り、人脈づくりを意識することも大切です

司法書士の仕事は種類によっておおまかにやることは決まっています。しかし、細かな業務内容となると一辺倒にはいかず、顧客の相談内容や状況によって随時判断し、適切な対応を行わなければなりません。

臨機応変な対応や配慮などをするためには、顧客と綿密なやり取りをし、しっかり話を聞いた上で必要な情報を取得することが必要です。司法書士には高いコミュニケーション能力と視野の広さが求められます。

司法書士費用は地域や業務内容によってさまざま

司法書士の報酬は自分で自由に決めることができます。

しかし、地域や業務内容によって報酬には平均的な相場があるため、あまりにも一般的な相場からかけ離れた金額を設定すると、なかなか集客につながらなかったり、顧客の理解が得られず離れてしまったりなどの問題が起こる可能性もあります。

相場から大きく外れないよう注意しながら、適切な報酬金額を設定しましょう。

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