税理士試験の科目合格制とは?制度の特徴や活かし方・注意点まで徹底解説!

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税理士

脇田弥輝

税理士試験を受験したいと思っても、「試験のシステムが難しくて、どうやって勉強したらいいかわからない…」という方もいるのではないでしょうか。

科目合格制は一見複雑にも思えますが、実はとても合理的な制度で、一度理解すれば難しいことはありません。

この記事では「科目合格制とは何か」「科目合格制のメリット・デメリット」「科目合格制とキャリアとの関係性」など、科目合格制について詳しく解説しています。

科目合格制について理解し、税理士試験の合格に向けて頑張って勉強していきましょう。

税理士試験の科目合格制度についてざっくり説明すると

  • 税理士試験では5科目に合格する必要がある
  • 科目合格だけでも就職・転職で有利になる
  • 1年に1科目受験でもOKなので、合格を目指しやすい
  • 科目の組み合わせをしっかり考えることが大切

税理士試験の科目合格制度とは?

人とハテナ

税理士は言わずと知れた超難関国家資格です。

弁護士や公認会計士と並ぶ難易度を誇り、何年もかけて合格を目指す人が多くいます。

合格率は、令和3年度が18.8%、令和4年度が19.5%となっていますが、受験生の大半が何年も受験勉強をしている人ですので、それを踏まえると決して高い合格率とは言えません。

税理士試験では会計2科目、税法3科目の計5科目を選択し、5科目全てに合格すると試験に合格したことになります。

5科目全てに合格するためには3,000時間以上の勉強時間が必要とも言われているほどで、膨大な量の内容を勉強する必要がある試験です。

このような性質から、税理士試験は科目合格制度を取り入れています。科目合格制度とは、一度その科目に合格してしまえば、次回以降はその科目を受験する必要がないというものです。

そのため、1年に1科目ずつ合格し科目合格を積み上げ、5年で税理士を目指すということもできます。

科目合格制度のメリット

親指を立てる女性

科目合格制度にはメリットがさまざまあり、特に忙しい方にとっては魅力的な点が多いと言えます。

働きながらでも目指しやすい

税理士試験は3,000時間の勉強時間が必要と言われるほど勉強時間を多く確保する必要があります。

そのため、「働きながらでは合格が難しいのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。

しかし、税理士試験は科目合格制度によって少しずつ合格していけばよい仕組みになっています。

勉強してみて無理だと思った科目は受験せず、もっと合格を目指しやすい科目に途中で変えることも可能です。そのため、働きながらでも合格を目指しやすい試験だと言えます。

社会人は会計士よりも税理士

税理士と同様に会計を学べる公認会計士の資格ですが、こちらは一発勝負の試験となっているので、まとまった勉強時間が取れる学生の方が合格しやすくなっています。

実際、公認会計士の合格者はほとんどが学生であり、社会人になってから公認会計士に合格している人は極めて少ないです。

一方で、税理士は合格者の大半が社会人となっています。こうした事実からも、科目合格制度のある税理士の方が社会人には向いていると言えるでしょう。

学習量を調節できる

税理士試験は受験する科目数を自分で選ぶことができます。

そのため、忙しくて複数科目の準備ができない年は1科目、比較的余裕があって勉強時間が多く取れた年は2〜3科目を受験するなど、自分の仕事や家庭環境の状況に合わせて、学習量を柔軟に調節することができます。

つまり、仕事、家事、子育てなどをしながらでも受験勉強をすることは可能ということです。実際に、働きながら合格した方、専業主婦をしながら合格した方、仕事も主婦もしながら合格した方がいます。

このように、税理士試験はライフスタイルやライフイベントに応じて、自分自身のペースでチャレンジを続けられる点が、非常に大きなメリットとなります。

科目選びに余裕がある

税理士試験では11科目のうち5科目を選んで受験しますが、科目は最初に全て決める必要はありません。どのような科目を受けるのか、時間をかけて選んでいくことができます。

科目によって「比較的難易度が低いもの」「取っつきやすいもの」「実務に役立つもの」など特徴が違うため、勉強を進めていく中で、難易度や科目の特徴が次第にわかってきます。

そのため、はじめはどの科目を勉強すればよいかわからなくても、自分に合った科目が絞られてくるようになるのです。

科目合格制度のデメリット

イエスとノー

科目合格制度は、メリットが多くある便利な制度ですが、一方でデメリットもあります。

試験が長期化しやすい

税理士試験は1年に1科目の合格を目指すというようにペースを調整しながら勉強できるため、無理なく受験勉強を続けることができます。

しかし、短期間で集中的に追い込みをかけて勉強していく一発勝負の試験に比べて、数年計画で合格を目指す税理士試験の受験勉強は、どうしても長期化しやすい性質があります。

1年、2年で合格する人はあまりおらず、5年近くの年月がかかってしまう受験生が多い傾向にあり、中には10年かかってしまう人もいるほどです。

長期化しすぎないように、気を引き締めていくことも必要でしょう。

あとに引けなくなってしまう

最初は「知識を得るため」「就職に有利だから」などの理由で1~2科目の合格だけを目標に勉強を始めても、実際に科目に合格すると5科目全てに合格して税理士を目指したくなってしまいます。

そのため、当初の予定よりも時間やお金を使ってしまうことになりがちです。時間やお金を使えば使うほど、あとに引けなくなっていくでしょう。

もちろん、税理士資格を取得することは、キャリア形成において大変素晴らしいことです。

科目合格を通じて意識が高まり、目標が変わるということは悪いことではありませんが、予期せぬ受験の長期化が起こりやすいということは覚えておきましょう。

選ぶ科目によって税理士のキャリアにも影響する?

女性と矢印

会計科目は簿記論と財務諸表論の2科目しかありません。

しかし、会計科目は2科目に合格する必要があるため、簿記論と財務諸表論は必須科目となり、必ず受験しなければならない科目です。

また、税法科目の法人税法と所得税法は選択必須科目という科目に分類され、少なくともどちらか片方には合格する必要があります。

この必須科目2科目、選択必須科目1科目の計3科目以外の7科目は選択科目となり、自由に選ぶことができます。

そのため、科目選択の方法は「選択必須科目1つ+選択科目2つ」か「選択必須科目2つ+選択科目1つ」の2パターンのみです。

科目合格だけでも採用で有利になる

科目は何を選ぶかによって採用に影響が出ることもあります。

特に、会計科目である簿記論や財務諸表論の知識は企業の経理部や税理士事務所で重宝されます。

そのため、税理士試験に合格しなくても、会計科目に合格しているだけで採用に関して有利になりやすい傾向があるのです。

簿記論や財政諸表論は簿記1級以上の知識レベルが求められるため、有利になるのは当然とも言えます。

これに加えて、税法科目の法人税法や所得税法に合格していると、会計事務所への就職・転職はかなり有利に進めることができるでしょう。

就職・転職の際に評価される科目

就職・転職の際にはどのような科目が有利なのでしょうか。

簿記論、財務諸表論は二つとも会計科目の必須科目であるため、全員が受験します。そのため、会計科目では他の応募者に差がつきにくいと言えます。

差をつけるのであれば、税法の選択必須科目・選択科目で、かつ実務で役に立つ科目を選ぶのがよいでしょう。

具体的には

  • 法人税法
  • 消費税法
  • 所得税法
  • 相続税法

がおすすめです。

この中でも、特に法人税法に関しては税理士としてほぼ必須の知識となりますので、避けたい理由がなければ受験することをおすすめします。

また、所得税法と相続税法は個人の顧客に対して業務を行うときに役に立つ科目ではありますが、税理士の主な顧客は法人であるため、個人向けの事務所などでなければそこまで重視はされません。

科目免除者の場合はどうなる?

税理士試験には一定の条件を満たす人は試験の一部の免除を受けることができます。

・商学や会計学に属する科目で修士または博士の学位を授与された者

・10年または15年以上税務署に勤務した国税従事者は

・23年または28年以上税務署に勤務し、指定研修を終了した国税従事者

以上の条件を満たしている人は一部の試験が免除される可能性があります。 詳しい免除の規定についてはこちらを参照ください。

出典:国税庁 試験科目の免除について

とは言え、5科目をすべて試験で合格した人(官報合格者)と比べると、知識量はやや不足している傾向は否めません。

そのため、税理士の中には、科目免除者に対して実力不足だという印象を持っている人もいます。

しかし、最近は科目免除者の割合が増えてきており、科目免除を利用した合格は広く受け入れられてきています。

比較的難易度が低い科目

税理士試験の科目はどれも難易度が高くはありますが、以下の三つは他の科目よりも難易度が低めになっています。

  • 国税徴収法
  • 住民税
  • 酒税法

国税徴収法は税理士としての実務に直接役立つ機会は少ないものの、税法の知識を体系的に理解するのに役立ちます。

住民税や酒税法は難易度が低いものの、税理士の実務ではあまり取り扱われない内容であり、役立つ機会がかなり限定的なことから、受験する人は少なめです。

おすすめの科目の組み合わせは?

どの科目を受験すればよいか迷っている方に、おすすめの科目の組み合わせをご紹介します。

まず、難易度が高くはありますが、重要な知識を全て学べる科目の組み合わせは「簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・相続税法」です。

少し難易度は下がりますが、法人での実務に沿った内容の組み合わせは「簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・消費税法」です。

また、難易度はさらに下がりますが、重要知識をしっかり学べるのが「簿記論・財務諸表論・法人税法・消費税法・国税徴収法」となります。

以上3つが人気の組み合わせです。

税理士試験の科目とそれぞれの特徴については、以下の記事で詳しく紹介しています。

科目合格と年収の関係は?

科目合格をすることによって、就職に有利になることがあるとお伝えしましたが、年収は変わってくるのでしょうか。

結論からいうと、科目合格をしたからといって必ずしも年収が上がるとは言えません。税理士事務所によっては、全く給料に反映されないということもあります。

しかし、多くの税理士事務所では資格手当の一環で科目手当を設けており、金額は1科目につき5千円~1万円ほどが一般的です。

科目合格の数によって月給に上乗せされていきますので、科目合格の数を重ねるほど年収が上がるということになります。

税理士の科目合格まとめ

税理士の科目合格

  • 科目合格制は、学習量を調整しながら自分のペースで合格を目指すことができる制度
  • 科目合格制度を利用することで、社会人でも働きながら税理士合格を目指せる
  • 会計科目、税法科目の両方に合格していると就職・転職でかなり有利になる
  • 就職・転職で特に有利になりやすい科目は法人税法、消費税法、所得税法、相続税法

税理士試験の科目合格制度について解説しました。

科目合格制度は自分のペースで自由に受験することができるため、税理士は仕事や家庭などと両立しながら目指すことができる資格です。

また、科目合格をすると税理士事務所や会計事務所への就職・転職が有利になりやすい傾向もあります。

まずは1科目合格から目指して、受験勉強を頑張ってみてください!

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