税理士試験の相続税法の難易度は?科目の特徴や出題傾向・頻出論点まで徹底解説!
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税理士
脇田弥輝
「選択科目の相続税法ってどれくらい難しいんだろう?」
「税理士試験の相続税法の難易度や特徴を知りたい!」
高齢化が進み相続の専門家の必要性が更に高まる中で、税理士試験の選択科目で相続税法を選択しようと考える受験生も多いと思います。
選択科目で何を選ぶかは税理士試験で重要なポイントになるだけに、相続税法について詳しく知りたい人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は税理士試験の相続税法について詳しく解説します。
試験の概要や合格率などの難易度、必要な勉強時間の目安や勉強法まで余すところなく紹介するので相続税法の特徴をしっかりと理解できるはずです。
税理士試験合格のために是非活用して下さい!
税理士試験の相続税法についてざっくり説明すると
- 税法9科目の中でも難易度が高く500時間程の勉強時間が必要
- 合格率は13%前後で理論問題で苦戦する人が多いのが相続税法
- 個人向業務を行う税理士を目指す場合は受験がほぼ必須の科目
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税理士試験の相続税法の概要
士業の中でも特に知名度が高くて誰でも知っているのが税理士です。普段の生活に大きく関わる税金を扱うだけに試験は非常に難しく、国家資格の中でもトップクラスの難易度を誇っています。
税理士になるには試験で11科目中5科目に合格する必要があり、このうち簿記論と財務諸表論以外の9科目の税法科目の1つが相続税法です。
あくまで選択科目なので必ずしも相続税法を選択する必要はありませんが、科目を選ぶ際には各科目の特徴を理解した上で選択しなければいけません。
以下で相続税法の特徴を確認していきましょう。
相続税法で学ぶ内容
親族などが亡くなり相続が発生した時に財産を相続する側にかかる税金が相続税です。所得税と法人税と並んで国税三法と呼ばれる法律の1つで、日本で最も重要な法律の1つでもあります。
財産の種類ごとに異なる相続税の計算方法を理解したり相続税の納税方法などを学習する科目です。相続税法だけでなく民法の相続規定など相続に関連のある他の法律も学ぶことになります。
ただし実際に出題される内容は相続税法や租税特別措置法の内容がほとんどなので、極端に学習範囲が広いわけではありません。
相続税法の科目の特徴と受験者数
相続税法は税理士として実務を行っていく上では必ずしも必須ではありません。特に法人向業務を中心に行う税理士であれば、相続税の知識を使う場面はあまりないでしょう。
しかし逆に個人向業務を行う税理士を目指すのであれば相続税法の知識は必要ですし、高齢化が進展して相続に対する関心が更に高まる中で税理士の相続関連業務への需要が今後高まることも予想されます。
そのため相続税法は受験生からの人気も非常に高く、税法9科目の中で法人税と消費税に次いで3番目に受験者数が多い科目です。
出題範囲
過去の出題内容を踏まえると相続税法の出題範囲は以下の通りです。
- 相続税法とその施行令、施行規則
- 租税特別措置法とその施行令、施行規則
- 民法
- 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律、施行令
- 国税通則法
- 租税基本通達、財産評価基本通達、相続税関係で個別に発せられた通達
相続税法だけでなく租税特別措置法や民法、各通達も学習する必要があり、相続税法の中に規定がある贈与税も出題範囲に含まれます。
選択必須科目である法人税法や所得税法に比べれば条文の量自体は多くありませんが、難解な規定も多くて理解できるまでに時間がかかるのが相続税法の特徴です。
出題形式
配点は理論問題50点・計算問題50点で、他の税法科目と変わらず標準的な出題傾向になっています。
理論問題では相続税に関する個別の規定を問う個別問題と複数の規定への理解が必要になる総合問題が出題され、計算問題では与えられた設問の状況を踏まえて相続税額を計算する問題が出題されます。
他の科目に比べて分量が多いことが特徴で、理論問題は解答用紙が4~6枚、計算問題では5枚与えられます。試験時間は2時間しかないので毎年時間との勝負になる科目です。
相続税法の難易度
相続税法は税法科目の中でも難易度が高く、選択科目の中では最も難しい科目なので合格は簡単ではありません。今後相続件数が増えて実務で役立つことが期待される科目ですが選ぶ際は注意が必要です。
以下では具体的なデータを使って相続税法がどれくらい難しいのかを見ていきます。選択科目を決める上で参考にしてみて下さい。
相続税法の合格率
相続税法の直近8年間の合格率は以下の通りです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2015年 | 3,895人 | 521人 | 13.4% |
2016年 | 3,636人 | 454人 | 12.5% |
2017年 | 3,303人 | 400人 | 12.1% |
2018年 | 3,089人 | 363人 | 11.8% |
2019年 | 2,897人 | 338人 | 11.7% |
2020年 | 2,499人 | 264人 | 10.6% |
2021年 | 2,548人 | 325人 | 12.8% |
2022年 | 2,370人 | 336人 | 14.2% |
合格率は年によって上下しているものの、相続税法の場合は13%前後であることが分かります。
税理士試験ではどの科目でも合格率はおよそ10~14%の間で推移しているので、相続税法の合格率も他科目と同様に標準的な水準です。
ただし選択科目の中には難しい年に当たると合格率が10%台や9%台まで下がる場合がありますが、相続税法の合格率は11%台半ば~13%台半ばという狭い範囲で近年安定しています。
合格率の振れ幅が非常に小さい科目なので、確実に上位10%以内に入れるかどうかがポイントになる試験です。
相続税法の合格ライン
税理士試験ではどの科目でも合格ラインは60点と定められています。つまり名目上は絶対評価形式が採用されていて、周囲の受験生の出来不出来に関係なく合格ラインは60点です。
しかし税理士試験ではいずれの科目も年ごとに難易度に差がどうしても生じてしまいます。その中で合格率が極端に変動していないことを考えれば、実際のところは相対評価の試験と言って良いでしょう。
全受験生の中で上位10%以内に入れれば合格することができ、そのために必要な点数は70点前後と言われています。
もちろん年ごとに試験の難易度には違いがあるので合格ラインは変動しますし目安に過ぎませんが、絶対評価の試験と思い込んで60点を目指すと合格できない可能性が高いので注意が必要です。
相続税法が難しいと感じる理由
相続税は内容そのものが難しいため、理解して問題を解けるようになるまでにどうしても時間がかかります。相続税法が「癖が強い科目」などと呼ばれるのはこのためです。
他科目と比較して試験範囲が特別多いわけではないのですが、相続税だけでなく贈与税についても勉強する必要があり、実質的に2つの税金について難解な内容を学習しなければいけません。
さらに相続税法には民法も絡んでくるため、法学部卒以外の人の中にはそもそも取っ付きにくさを感じる場合もあるはずです。理論問題で苦戦する人が多いのが相続税法の特徴でもあります。
試験当日の限られた時間内に大量の問題を正しく且つ素早く解けるかどうかが試されるので、知識レベルがそこまで達するまでにはどうしてもかなりの勉強時間が必要になる試験科目です。
相続税法向けのおすすめ勉強法
難易度が高い相続税法は勉強に時間もかかるので、効率良く学習を進めるためのポイントを理解した上で勉強に取り組むことが大切です。
以下では相続税法合格に必要な勉強時間の目安や試験問題の特徴について解説していきます。
勉強時間の目安
相続税法に合格するためには500時間程の勉強時間が必要と言われています。1日3時間ずつ勉強した場合に5~6カ月かかる計算です。
しかし500時間というのはあくまで目安でしかなく、それなりに相続税法を理解するのに必要な時間に過ぎません。
税理士試験は相対評価の試験なので、他の受験生よりも確実に得点を取れるだけの理解力を身に付ける必要があります。合格するためにはそれ以上の勉強時間がかかると考えたほうが良いでしょう。
問題演習を繰り返し行って理解を深めなければならず、5~6カ月前と言わずそれ以上前から勉強を始めて対策を行うことが大切です。
計算問題は過去問からの出題が多い
税理士試験の科目の多くは過去問からの出題がほとんどなく、試験内容が毎年大きく変わるのが特徴です。しかし相続税法の計算問題に関しては過去問と似た傾向での出題が多くなっています。
そのため相続税法では他の科目よりも過去問演習に重点をおく必要があり、一度解いたら解きっぱなしにせず類題を確実に得点できるよう丁寧に復習することが大切です。
もちろん過去問と違う傾向の問題が出題される可能性もあるので幅広く計算問題をこなすべきですが、相続税法では理論問題への対策にも時間を取られるので、効率良く学習を進めるようにして下さい。
個別問題からマスターする
最終的に総合問題に対応できる力を身に付けなければいけませんが、まずは個別問題を解いて各項目の基礎を固めることが大切です。
相続人の関係や課税・非課税、税額計算、相続税の納税方法などまずは個別の論点ごとに分けて学習して理解を深めるようにしましょう。
そして相続税法や租税特別措置法にわたって全体的に勉強できた所で総合問題形式の理論問題や計算問題を解くことをおすすめします。
相続税法では1つ1つの規定が難解なものが多く、各項目の理解が浅いうちに総合問題に着手しても歯が立たず自信を失いかねません。
まずは各項目の基礎から固めていき、ステップを踏みながら最終的に総合問題を解けるレベルに到達することが大切です。
相続税法の頻出論点
計算問題では納付すべき相続税額を求める問題が毎年必ず出題されます。この計算問題を解く上で特に重要なのが財産評価です。
預貯金や株式、土地、家屋など様々な財産の価格を計算しなければならず、その中でも「宅地及び宅地の上に存する権利並びに家屋の評価」や「取引相場のない株式の評価」は対策が絶対に欠かせません。
また理論問題についてはボリュームはそれ程多くはありませんが、計算問題ほど過去問から傾向を掴むことはできません。そのため個別問題を中心に満遍なく学習を進めて対策を取る必要があります。
相続税法は選択すべきなのか
相続税法は難易度がかなり高いので、合格だけを見据えた場合にはコスパは決して良くありません。勉強時間も多くかかるのでやや遠回りになる可能性もあります。
また法人相手の税理士を目指すのであれば、相続税法を選択するよりも実務で役立ち且つ難易度的にも易しい消費税法を選択すべきです。
しかし個人向業務を中心に行う税理士を目指す場合には相続税法は寧ろほぼ必須に近く、相続に強い税理士は今後需要が更に高まることも期待できて活躍の機会が増えることが予想されます。
相続件数・相続税課税価格は近年増加傾向
平成29年の被相続人は134万人・課税価格は15.6兆円で、平成20年の114万人と10.7兆円から大きく増加しています。相続専門税理士の活躍の機会が増えていることは間違いありません。出典:国税庁HP
さらに税理士の相続税申告業務では遺産総額に一定割合を掛けて報酬を決める場合も多いので、課税価格の総額が伸びている点は相続専門税理士の報酬が今後さらにアップしていく可能性も示唆しています。
税理士試験で何の科目を選択するかは誰もが悩むことですが、相続税法は実務で役立つ上に時代背景的にも税理士として成功できる可能性が他の科目に比べて高いと言えるでしょう。
難易度が高いので敬遠する人もいますが試験はあくまで通過点に過ぎません。将来のキャリアビジョンを意識して選択科目を決めることが大切です。
相続税法対策におすすめのテキスト・問題集
まず知っておくべきことは、相続税法に独学合格するのはほとんど不可能に近いということです。
もちろん内容の難しさも大きく関係していますが、それ以上に毎年のように行われる税法改正に自分の力だけで追いつくのは極めて困難であり、市販の教材を用いても十分な対策ができないからです。
そのため相続税法のおすすめテキストは、自分が受講している予備校や通信講座の教材ということになります。
ただし、計算力を鍛えるために「相続税法 個別計算問題集」のような問題集をこなすのは効果的です。このように市販のテキストはあくまでサブ的な使い方をするものであると覚えておきましょう。
まだ相続税法対策のための予備校・通信講座選びを済ませていない方であれば、スタディングの税理士講座をおすすめします。
スタディングであれば49,800円〜という破格の安さで相続税法対策講座を受講可能ですし、何よりスマホ学習機能に優れているので忙しい方でも隙間時間を生かして学習できます。
仕事でなかなか勉強時間が取れないという方には特におすすめの通信講座です。相続税法の学習をしている方は、この機会に一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
税理士試験の相続税法まとめ
税理士試験の相続税法まとめ
- 出題範囲は広くないが難解な内容が多くて理解に時間がかかる
- 問題量が多く合格には素早く問題を解くスピードも必要になる
- 個人向業務を行う税理士を目指すならば選択がほぼ必須の科目
今回は税理士試験の相続税法について紹介しました!
高齢化の進展・相続件数の増加を背景に今後さらに需要が高まることが予想されるのが税理士の相続関連業務です。
将来性のある相続税法は選択科目としておすすめの科目なので、相続税法の受験や税理士資格の取得を是非検討してみて下さい!