システムアーキテクトの難易度は?合格率から独学のおすすめ対策法まで解説!
「システムアーキテクトってどのくらいの難易度なの?」
と疑問をお持ちの方もいるでしょう。
システムアーキテクトは、IT系資格の最高峰である高度情報技術者試験の一つに数えられます。
しかし同試験の中でも難易度には差があるため、それらの難易度に関しては不明な点も多いはずです。
今回は、システムアーキテクトの難易度について、合格率から独学でおすすめの対策法まで、詳しく解説します。
これを読めば、システムアーキテクトの難しさと対策法がよく分かるはずです。
システムアーキテクトの難易度をざっくり説明すると
- 合格率は12〜15%の難関試験
- 独学ではインプットとアウトプットの徹底が基本
- 多忙な社会人には通信講座の利用もおすすめ
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システムアーキテクト試験の難易度は高い
システムアーキテクトは、ITストラテジストからの提案を元に、情報システム開発における一連の作業をリードする資格です。
具体的には、情報システム開発の要件定義から、それを実現するための設計までを行います。
上級エンジニアを目指す人には最適の試験と言えるでしょう。
システムアーキテクトは、情報処理技術者試験における高度情報技術者試験の一つあり、レベル区分では最上位のレベル4に分類されます。
その難易度は、情報技術系の資格の中でも最高峰です。
合格率は低い年度で12%後半、高い年度で15%前後を推移しています。合格率の低さからも難易度の高さが伺えます。
システムアーキテクトの偏差値はいくつ?
システムアーキテクトの偏差値は62です。これは一般のIT系資格に比べると高い水準となります。
例えば、応用情報技術者試験の偏差値は61です。この試験は同じく情報処理技術者試験の一つですが、システムアーキテクトのワンランク下であるレベル3に分類されます。
他の高度情報技術者試験と比較すると、ITサービスマネージャは同じく62、エンベデッドシステムスペシャリストは61です。
高度情報技術者試験の中で最も高い偏差値は、ITストラテジストの63になります。
システムアーキテクトに関しては、同試験の中で真ん中くらいの難易度といえるでしょう。
受験資格はなし
システムアークテクト試験に受験資格はありません。学歴や実務経験を問わず、誰でも受験が可能です。
そもそも情報処理技術者試験には、レベル区分に関わらず、全ての試験で受験資格がありません。
そのため、いきなり最難関のITストラテジストを受けることもできます。
難易度が高い理由
システムアーキテクト試験の難易度が高い要因としては、試験形式の多さが挙げられます。
また問われる内容が高度に専門的であることも、難易度を押し上げる一因でしょう。
試験は1日で4つを受ける
システムアーキテクト試験は、午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの4つに分けて実施されます。
各試験の試験時間および出題形式、出題数は以下の通りです。
試験 | 試験時間 | 出題形式 | 出題数 |
---|---|---|---|
午前Ⅰ | 9:30〜10:20(50分) | 四肢択一式 | 30問 |
午前Ⅱ | 10:50〜11:30(40分) | 四肢択一式 | 25問 |
午後Ⅰ | 12:30〜14:00(90分) | 記述式 | 4問 |
午後Ⅱ | 14:30〜16:30(120分) | 論述式 | 2問 |
午後Ⅰに関しては4問中2問を、午後Ⅱでは3問中1問を、それぞれ選んで解答します。
午前Ⅰ〜午後Ⅰは100点満点です。午後Ⅱ試験に関しては、ランクによって合否が判定されます。
上記の4つを1日で受験しなけらばならないため、負担の大きい試験だと言えます。
各試験ごとに出題方法が違うため、個別の対策を考えなければなりません。
このことが難易度の高さに繋がっていると考えられます。
午前Ⅰ試験は条件次第で免除可能
午前Ⅰ試験に関しては免除制度が存在します。具体的には以下のいずれかを満たせば、2年間の免除を受けることが可能です。
-
応用情報技術者試験合格
-
高度情報技術者試験に分類される試験に合格
-
高度情報技術者試験に分類される試験の午前Ⅰ試験で合格基準点をクリアする
受験者の多くがこの制度を利用しています。試験は長丁場になるため、少しでも負担を軽減しておくことは重要です。
ワンランク下の応用情報技術者試験では、システムアーキテクトに必要な基礎知識を身に付けることができるため、先に受験するのも良いでしょう。
試験内容も高度
午後試験では記述式・論述式の問題が出題されるため、専門知識に加えて作文能力も必要です。
複合的な能力を求められるため、難易度の高い試験だと言えます。
午前Ⅰ
午前Ⅰ試験の問題は、テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3分野から出題されます。これは応用情報技術者の試験範囲と同様です。
配点は1問3〜4点で、60点以上得点すれば合格となります。
テクノロジ系17問、マネジメント系5問、ストラテジ系8問の計30問という出題構成です。
問題は全て、同時期に実施される応用情報技術者試験の午前試験から選ばれるのが大きな特徴となっています。
また、考察を要する多く選ばれ、文章題が少なくなっていることも特徴の1つといえます。
上の数字でもわかるように、テクノロジ系での得点が合格に直結するといえるので、ここを中心に勉強する必要があります。
午前Ⅱ
午前Ⅱでは、午前Ⅰと同様の出題範囲から以下の9つが出題されます。
-
コンピュータ構成要素
-
システム構成要素
-
データベース
-
ネットワーク
-
セキュリティ
-
システム開発技術
-
ソフトウェア開発管理技術
-
システム戦略
-
システム企画
午前Ⅱ試験の配点は、各4点×25問です。こちらも60点以上の得点で合格となります。
午前Ⅰと試験範囲は同じですが、問われる内容は高度になるため注意が必要です。
午後Ⅰ
午後Ⅰ試験の問題は、情報システムと組込みシステムの2分野から出題されます。各分野の詳細は以下の通りです。
情報システム |
---|
契約・合意に関すること |
企画に関すること |
要件定義に関すること |
開発に関すること |
運用・保守に関すること |
関連知識 |
組込みシステム |
---|
機能要件の分析・機能仕様の決定に関すること |
機能仕様を満足させるハードウェアとソフトウェアの要求仕様の決定に関すること |
組込みシステムに応じた開発手法の決定に関すること |
汎用性モジュールの利用に関すること |
午後Ⅰ試験では、大問4問から2問を選んで解答する方式です。配点は選ぶ問題によって異なります。合格点は60点以上です。
長文形式の出題で、表や図を読み取って記述を行うという内容になります。
国語力も同時に問われるというところに難しさがある試験といえるでしょう。
午後Ⅱ
午後Ⅱ試験の範囲は午後Ⅰと同様です。大問3つから1つを選んで解答します。
採点は評価ランクに基づいて行われるため、配点や合格点の設定はありません。
IPAの公式サイトによると、評価基準は以下のようなものです。
-
設問で要求した項目の充足度
-
内容の妥当性
-
論理の一貫性
-
見識に基づく主張
ただし、問題冊子にある「解答にあたっての指示」に反するような解答を行った場合、論述内容を問わず評価の程度が下げられる場合があります。論述の際は指示に反しないように注意しましょう。
ランクにはA〜Dまでの4つが存在し、ランクAのみが合格となります。
短文を読んで、自分の考えを大論述形式で答えるという内容です。
文章力はもちろん、幅広い経験や論理的思考能力など総合的な力が試される試験であり、システムアーキテクト試験の中で最も難易度の高い試験となっています。
難易度を合格率・合格点の観点から検討
続いてはシステムアーキテクトの難易度を、合格率や合格点から考察してみましょう。
合格率は低い
以下はシステムアーキテクト試験における各年度の合格率です。
年度 | 合格率 |
---|---|
平成21年度 | 13.2% |
平成22年度 | 12.5% |
平成23年度 | 14.8% |
平成24年度 | 14.4% |
平成25年度 | 14.1% |
平成26年度 | 15.0% |
平成27年度 | 13.2% |
平成28年度 | 13.9% |
平成29年度 | 12.7% |
平成30年度 | 12.6% |
上記より、合格率は低い年度で12%後半、高い年度では15%前後で推移していることが分かります。これは低い水準だと言えるでしょう。
合格率で見ると、システムアーキテクト試験は難易度の高い資格と考えられます。
4種類の合格点を突破する必要あり
システムアーキテクトの4つの試験では、それぞれで合格点が設定されています。資格を取得するには、それら全てを突破する必要があります。
午前試験Ⅰ・Ⅱと午後試験Ⅰでは、100点満点中60点以上の得点が必要です。
午後試験Ⅱでは、独自の評価基準に沿って成績のランク分けがなされます。A〜Dまでの4つのランクの中で、ランクAのみが合格です。
また、ある試験で不合格となった場合、それ以降の試験に関しては採点されないというルールがあります。
例えば午前Ⅰ試験で合格点を下回れば、それ以降3つの試験では採点が行われないということです。
午前Ⅱ試験と午後Ⅰ試験に関しても同様で、不合格の場合は、それ以降の2つもしくは1つの試験は採点されません。
この合格に関するルールにより、各試験しっかりとした対策が求められるようになることから難易度が高くなっています。
他の資格と難易度を比較
他の資格と比較した場合、システムアーキテクトはどのくらいの難易度でしょうか。
他の情報処理技術者試験と比較する
他の情報処理技術者試験の難易度とシステムアーキテクトの難易度を比べてみましょう。
応用情報技術者
応用情報技術者試験は、情報処理技術者試験のレベル3に分類されるため、システムアーキテクト試験のワンランク下の資格と言えます。
応用情報技術者試験の合格率は20%前半なので、合格率の観点では、12〜15%のシステムアーキテクトの方が難易度は高いと言えるでしょう。
応用情報技術者試験の出題内容は、システムアーキテクトの午前Ⅰ試験と同じ、テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3分野です。
そのため、基本的な知識に不安を覚える場合は、まずは応用情報技術者試験を受けるのが良いでしょう。
基礎知識をおさらいした上で、スムーズにシステムアーキテクトの勉強に入れます。
応用情報技術者の難易度については下記の記事をご覧ください。
ネットワークスペシャリスト
ネットワークスペシャリストも、システムアーキテクトと同様に、高度情報技術者試験の一つです。
ネットワークスペシャリストは、情報システム基盤の最適化に関わる一連の作業で中心的な役割を担います。
ネットワーク関連の技術を駆使し、基盤の企画から保守までを主導するのです。
また、その高度な専門性を活かして技術支援を行うこともあります。
ネットワークスペシャリストも、情報処理技術者試験のレベル4に分類される資格です。
合格率は14%前後なので、システムアーキテクトと大差はありません。
また、システムアーキテクトの偏差値は62なのに対し、ネットワークスペシャリストは62と、偏差値で比較した際の差はあまりありません。
ネットワークスペシャリストの難易度については下記の記事をご覧ください。
ITストラテジスト
ITストラテジストも同じく高度情報技術者試験の一つです。
ITストラテジストは、企業の経営方針に沿ったIT戦略の策定を行います。
また高度なIT技術を活かした業務改革や他社を圧倒するサービスや製品創出の企画・推進もITストラテジストの仕事です。
こちらも情報処理技術者試験ではレベル4に分類されます。
合格率は14%前後なので、システムアーキテクトと同水準です。
しかし、偏差値を見るとITストラテジストの方が難易度が高いと言えます。
システムアーキテクトの偏差値は62でしたが、ITストラテジストは63です。これは高度情報技術者試験でもトップの数字になります。
ITストラテジストの難易度については下記の記事をご覧ください。
システムアーキテクトのメリットはたくさん
難易度の高いシステムアーキテクト試験ですが、取得のメリットが豊富なので大変人気があるようです。
転職で有利に立ち回れる
システムアーキテクトは平成21年より開始された比較的新しい資格です。そのため、経験豊富なシステムアーキテクトというのは、まだまだ不足しています。
システムアーキテクトは売り手市場と言えるため、転職の際は各企業から引く手数多の状態です。
この資格は開発の技術だけでなく、マネジメントなどのビジネススキルを備えていることの証明になります。
ビジネス現場で有能な人材と見なされるため、転職には有利な資格です。
スキルをアピールしやすい
資格とは、ある特定のスキルを有することの客観的な証明です。
システムアーキテクトでは、アプリやインフラの設計スキルや、システム面のコンサルを行う能力などが証明されます。
高度なIT人材にのみ与えられるシステムアーキテクトは、開発にとどまらず最終的なビジネスモデルまで見据えた設計が求められる資格です。
そのため取得すれば、プロジェクトにおけるリーダーシップやマネジメント能力を持っていることのアピールになります。
高収入を狙える
企業から高評価を受ける資格なので、取得すれば年収アップも期待できます。
システムアーキテクトの平均年収は600〜700万円です。これは他のIT関連の職業と比較してもかなり高い水準と言えます。
ちなみにプログラマーの平均年収は430万円程度、システムエンジニアは550.8万円です。
実力がある場合には、1000万円以上稼ぐチャンスもあります。
さらに企業によっては資格手当が支給される場合もあるでしょう。お金周りのメリットは大きい資格だと言えます。
国家資格の免除も
システムアーキテクトの資格に関わらず、高度情報技術者試験の資格を保持することで、以下の資格の一部試験が免除されます。
- 中小企業診断士の1次試験科目の一部免除
- 弁理士試験の論文式筆記試験選択科目の理工V免除
- 技術士試験の第一次試験の専門科目「情報工学部門」が免除
- ITコーディネータ試験の一部が免除される専門スキル特別認定試験を受験可能
これらの中には、難関資格と呼ばれるものもあり、システムアーキテクトを取得した際には有利な条件で難しい試験を受験することができます。
システムアーキテクトは独学合格できる?
難易度の高いシステムアーキテクト試験ですが、正しい勉強法を実践すれば独学でも合格は可能です。
また独学には、スケジュール管理やモチベーション維持の工夫など、勉強面以外の部分も重要になります。
独学の際の対策法
独学で勉強を行う場合は、以下のポイントを大切にしましょう。
モチベーションを落とさない
独学で合格を目指すなら、モチベーション維持の工夫をすることが重要になります。
長い勉強期間においては、どうしてもやる気が落ちてしまう瞬間もあるからです。
具体的な工夫としては、目標点数や目標正解数などのノルマを設定することをおすすめします。
日々に達成感を得られる仕組みを作ることで、勉強が継続しやすくなるでしょう。
短期間のノルマをこなしていくことで、高いモチベーションを維持しながら試験本番まで勉強を続けることが可能です。
スケジュール管理をする
合格には継続的な勉強が何より大切です。そのために、まずは学習スケジュールを立てましょう。
合格までの道筋をはっきりさせておくことで、勉強が継続しやすくなります。
スケジュールを立てる際は、試験範囲をきちんと把握した上で、自分に合った勉強時間を設定することが必要です。
また、全てを満遍なく対策するのではなく、頻出範囲を重点的に特訓するようなスケジュールにすることも重要になります。
多くの場合、働きながら勉強を続けることになるので、スケジュール管理は大切です。日々やることを明確にしておけば、メリハリのある勉強になります。
勉強の両軸を押さえる
システムアーキテクトの4つの試験に共通して有効な勉強法が、インプットとアウトプットの徹底です。
インプットとは、テキストを読み込んで基本的な知識を蓄えること、アウトプットは問題集や過去問で演習を行うことを指します。
インプットでは、基本的な知識を中心に記憶し、試験内容の全体像を大まかに把握することが重要です。
特に午前試験は知識量がものを言う試験のため、インプット作業が有効になります。
基本的な知識に不安を覚える場合は、インプットにより多くの時間を使うようにしましょう。
アウトプットでは、演習を通して問題の形式に慣れることが大切です。また自らの弱点を発見し、克服していくことも必要になります。
午後試験の場合は特にアウトプットの量によって、記述の書ける書けないが決まってくるので、十分演習を積んでおくことをおすすめします。
また、この2つの勉強法はやる順番が大切になってきます。
知識のインプットなしにいきなり問題は解けないので、必ずインプット→アウトプットの順番で勉強するようにしましょう。
過去問の使い方が重要
システムアーキテクト試験の過去問は、IPAの公式サイトや市販の過去問題集を通じて入手することができます。
過去問を解くことで、出題傾向や頻出範囲を把握できるため、実力アップに効果的です。
また自分の弱点を発見し、苦手を克服する良いきっかけにもなります。
分からない箇所はテキストに戻って復習し、頻出範囲を中心に知識の穴を一つずつ埋めていきましょう。
午前Ⅰ試験に関しては、応用情報技術者試験の過去問を使って演習を行うのがおすすめです。
論文試験でも過去問演習は有効になります。定番の出題形式や記述の流れを掴むことができるため、得点アップには効果的です。
システムアーキテクト試験対策におすすめのテキスト
独学の際には、どのテキストを選ぶかで学習の効果が大きく変わってくるので、おすすめのテキストをしっかり選ぶことが重要です。
特におすすめの参考書が「ALL IN ONE パーフェクトマスター システムアーキテクト 2023年度」になります。
この本は4種類の試験の中でも特に午前Ⅱ試験と鬼門になる午後試験の2つについて解説が充実しています。
多くの人が苦労する午後Ⅱ試験の論文式に関しては、書き方の枠組みとなる「ユニット法」「ステップ法」と呼ばれるTACオリジナルの有効な考え方を利用することで、合格論文の作成能力を養うことができます。
システムアーキテクトの難易度まとめ
システムアーキテクトの難易度まとめ
- 合格率は12〜15%で偏差値は62
- 独学ではスケジュール管理やモチベーション維持も重要
- 短期間で効果的に勉強するには通信講座の活用もおすすめ
システムアーキテクトの難易度について詳しく解説しました。
試験の合格率は12〜15%で、偏差値は62という難関資格です。同じ高度情報技術者試験の中では真ん中程度の難しさになります。
よって、入念な対策を練ってから試験に臨むようにしましょう。