宅建と行政書士のダブルライセンスのメリットと難易度比較|就職には有利になる?
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宅建士
関口秀人
宅建と行政書士の資格に興味がある!
両取りを目指す場合、どっちを先に勉強すればいいの?
このような疑問をお持ちではないですか?
宅建士と行政書士、それぞれに大きな取得メリットがありますが、ダブルで取得できるとより大きな効果が期待できます。
また、両方取得することにより転職・就職においてとても有利に運べます。
こちらの記事では、宅建と行政書士のダブルライセンスのメリットなどについて解説しておりますので、参考にしてみてください!
宅建の行政書士についてざっくり説明すると
- 宅建と行政書士のダブルライセンスの難易度は高いが、資格の相性はとても良い
- 宅建よりも行政書士の方が難易度が高い
- どちらの試験も出題範囲が広く、勉強法は工夫する必要がある
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宅建と行政書士のダブルライセンス
宅建の資格を持っていると不動産業界だけではなく、金融関係や保険関係など、他業種でも知識やスキルを活かすことができます。様々な業界で役立つ知識を習得することによって、就職活動が圧倒的に有利になります。
更に行政書士などの相性が良い資格を持つと、業務の幅を広げたり質の高いサービスをお客様に提供したりできるようになるのです。
ダブルライセンスのメリット
行政書士とは、官公庁への提出書類の作成や行政不服申立て手続きの代理など、国民に密着した法務サービスを提供する人のことを指します。
行政書士の業務範囲は広く、取り扱う書類は1万種類を超えるといわれており、また手続き先となる官公署も、各省庁、都道府県庁や役場、警察署など多岐にわたります。
宅建士として業務をする場合、物件の売買では各種契約書の作成手続きが必要になります。
行政書士の業務の中には、不動産売却に関する案件は少なく無いため、宅建士の不動産の知識が役立ちます。
特に、行政書士資格取得後に独立開業を考えている場合、宅建業者としての開業と、行政書士としての開業をすることで、様々な業務を行うことができるメリットがあるのです。
宅建をとってから行政書士を取る
共に取得は難しい資格ですが、宅建の方が比較的簡単です。
合格率で見ると、宅建はおよそ15%程度、行政書士はおよそ10%で推移しています。
そのため、宅建に合格してから試験勉強での知識と勉強方法ノウハウを生かして行政書士試験に挑むのが良いでしょう。
ダブルライセンスの難易度は高い
行政書士と宅建士で重複している科目は民法のみで、行政書士は行政法と民法が中心、宅建士は建築・不動産関連の法律を中心に出題されます。
ただし、借地借家法などは民法の規定がベースとなっているため、行政書士試験でも関連する問題が出題されたケースが過去にあります。
試験においても民法を中心に重複する部分がありますので、宅建の試験に合格してから、行政書士に合格とダブルライセンスを目指すことは可能です。 ただし、どちらの国家資格も合格率が低いため、効率良く日々の学習をこなしていきましょう。
ダブル受験する際の注意点
ダブル受験の問題点
行政書士試験が実施されるのは、11月の第2日曜日で、宅建士の試験日は10月の第3日曜日です。
間は1ヶ月弱の時間しか空いていないため、1年で2つの資格を取得するのは現実的ではありません。
さらに受験の範囲がそこまで重複していないため平行して勉強を両立することが困難でもあります。
息抜く暇もないタイトなスケジュールである上に、そもそも行政書士は1ヶ月程度の勉強期間で合格するのは絶望的です。
ダブル受験を目指せる場合
宅建で身に付けた民法は、行政書士試験の6分の1程度を占めています。
全く初めて学ぶ方には大変なダブル受験ですが、過去に行政書士・宅建士の受験経験がある方は、知識が備わっているため、ダブル合格が狙えます。
また、すでに法律系資格や不動産系資格の試験に合格している方であれば、そのときに勉強した知識をいかして、挑戦すると有利かもしれません。
行政書士と宅建士のそれぞれ仕事内容
宅建士
宅建は不動産関連の代表的な資格です。
宅建業を営む、または不動産業界で働くときには必要不可欠です。
不動産業者は宅建業法において、5人に1人以上の割合で宅地建物取引主任者の設置義務があるため、不動産業界の中の求職ニーズの最も高い資格です。
不動産会社での売買や賃貸のあっせん
不動産会社は土地や建物の売買、賃貸物件のあっせんなどを行っています。
契約の際に、お客様が知っておくべき事項(重要事項)を説明するのが宅建士の仕事で、この重要事項説明は宅建士の独占業務となっています。
宅建とは、不動産取引の専門家を示す資格といえるでしょう。
金融機関での不動産担保価値の評価
銀行や信用金庫などでも、宅建資格を持つ人材を広く募集しています。
担保を必要とする融資業務では、不動産に対する適切な知識や鑑定力がなければ融資の判断も難しいからです。
宅建の仕事内容については、下記の記事を詳しくご覧ください。
行政書士
許認可申請
行政書士は、個人または法人から依頼を受けて、会社設立や店舗開業など、許認可に関する公的書類を作成したり、官公署への申請を代行したりする仕事です。
許認可申請書の種類は非常に多く、建設業許可を始めとして、宅建業免許登録、貸金業登録など、1万を超える種類の書類を扱います。
ビジネスコンサルタント
行政書士は会計記帳、決算、財務諸表の作成など会計業務に携わることができます。
中小企業に対して法務のプロとしての観点から幅広いアドバイスが行えます。
予防法務
行政書士はトラブルを未然に防ぐ予防法務を通して個人と企業をサポートできます。
予防法務とは、近い将来に法的な紛争が生じないよう、事前に何らかの措置を取ることです。
例えば、遺産相続などで書類の不備があったり、相続人の間でのトラブルを未然に防ぐことなどがあります。
権利義務・事実照明に関する書類の作成、提出はすべて行政書士のなし得る仕事です。
行政書士の仕事内容については、下記の記事を詳しくご覧ください。
行政書士と宅建士の試験の違い
受験資格
どちらの試験も受験資格は存在しないため、だれでも受験することができます。
年齢や学歴は関係ないため、どちらの試験も正しい対策法で勉強し続けることで十分合格することができるでしょう。
試験に関しての違い
宅建士は20万人以上が受験する人気資格です。
まず宅建士の試験問題の科目は、
- 権利関係
- 法令上の制限
- 宅建業法
- 税金その他
以上4つの分野から出題されます。
また試験の形式は、4択問題が50問出題され、合格基準点は設けられていませんが、例年7割程度に当たる35点が合否の境になっています。
なお、試験時間は2時間です。
勉強期間の目安としては3カ月から半年程度で、勉強時間の目安は250時間から350時間です。
もちろん個人差はありますが、一般的に合格まで250~350時間の勉強が必要といわれています。
行政書士試験の科目は、
「行政書士の業務に関し必要な法令等」として、
- 憲法
- 民法
- 行政法
- 商法(会社法)
- 基礎法学
「行政書士の業務に関連する一般知識等」として、
- 政治・経済・社会
- 情報通信・個人情報保護
- 分章理解
といった分野で出題されます。
また、宅建士と違い択一問題に加え、記述式問題があります。
合格基準ですが、以下の要件を全て満たしたら合格となります。
- 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上。
- 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上。
- 行政書士試験全体の得点が、(300点満点中)180点以上。
合格基準については、公式にこのように定められています。
次の要件のいずれも満たした者を合格とします。
- 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50パーセント以上である者
- 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上である者
- 試験全体の得点が、満点の60パーセント以上である者 一般財団法人行政書士試験研究センター
試験時間は特に分かれておらず、行政書士試験は3時間の試験となります。
各科目の問題数は、法令等科目が46問、一般知識等科目が14問の、計60問となっています。
3時間で60問ですから、単純計算すると、1問あたり3分でこなしていかなければなりませんので、行政書士試験はただ知識を覚えているだけではダメで、同時に解答スピードも求められる試験と言うことができます。
次の表は宅建士と行政書士のそれぞれの合格率です。
宅建士 | 行政書士 | |
---|---|---|
平成28年度 | 15.4% | 10.0% |
平成29年度 | 15.6% | 15.7% |
平成30年度 | 15.6% | 12.7% |
平成31年度 | 17.0% | 11.5% |
令和2年度 | 16.8% | 10.7% |
令和3年度 | 17.7% | 11.2% |
令和4年度 | 17.0% | 12.1% |
令和5年度 | 17.2% | - |
宅建士合格率出典:試験実施概況(過去10年間)
行政書士合格率出典:試験結果の推移
やはり行政書士よりも宅建士の方が合格率が高くなることが多いようです。
難易度の違い
宅建は試験範囲は広いですが、試験の問題は過去問の繰り返しや類似が多く、対応がしやすいです。
一方、行政書士は試験範囲外の法律に関連する内容の問題も出題され、また判例や条文に関する深い知識も問われるので、対応が難しいです。
また択一式のみでなく記述の問題も出ることから、行政書士の方が難しいです。
各試験の難易度については下記の記事をチェックしてください。
おすすめの勉強法
勉強の仕方の共通点
両資格とも、出題のウェイトが多く合否を分けるような科目を中心に勉強を進めると効果的です。
宅建の場合は権利関係と宅建業法で、行政書士の場合は行政法と民法がウェイトの大きい科目となります。過去問やテキストを繰り返し読んで必ず得点源にしてください。
過去問は繰り返す
宅建も行政書士も、過去問は最低でも5年分を3周は行ってください。
両資格とも、過去問からの派生問題やほぼ同じ問題が多いため、過去問が最も効果的に勉強が進みます。
特に過去問の解説はじっくりと読み込んで、何度も何度も繰り返し記憶するようにしてください。
模試の活用
模試というのは、実際の試験時間と時間配分が体感できるとても有益な場です。
また受験者のレベルや、自分が平均点をとれているのかなどのデータも提供してもらえるので、日程が合えば必ず受験してください。
大手予備校であれば何日か模試の日を設定していますので、是非活用してください。
宅建
宅建の合格を目指す上で、満点を取る必要はありません。
満点を取るための勉強は非効率なので、7~8割程度を取るように要所を押さえるようにしてください。
権利関係(民法)
判例や条文がとっつきにくく、宅建の中で苦手とする受験生が多いです。
理解力が問われ、テキストを深く読み込んで民法や借地借家法などの関連法律を正確に理解しておく必要があります。
基本的な考え方と背景などを理解すれば解きやすく、数字の暗記などは少ない科目です。
宅建試験においては最も勉強に時間がかかる科目となります。
宅建業法
得点しやすく、取りこぼしは許されない科目です。
宅建試験において最も出題数が多く、宅建試験の中心となる科目です。
完璧に近い正解率で高得点をとりましょう。
宅建業法自体は読めば理解しやすく、また単純な暗記も多いので勉強したら勉強した分だけ得点につながる科目です。
暗記すべき数字等の知識が多いので、それについては試験前に徹底復習するなどして、暗記を強化しておく必要があります。
実際に不動産業界で働いているイメージを持ちながら勉強すると理解がより進みます。
法令上の制限
こちらも得点源としたい科目です。
宅建業法と同様に暗記中心の科目で、テキストを繰り返し読み込めば理解できます。
暗記すべき事項や数字がたくさん出てくるため、宅建業法と同様に暗記をしっかりして、取りこぼしがないように確実に得点を重ねることができる科目です。
税・その他
不動産に関わる税金に関する法律のほか、不動産評価、土地や建物に関する知識、統計情報等に関する問題が出題されます。
範囲が広く難問も多いため対応が難しいため、テキストや過去問の中で基本的な問題だけ落とさないように対策しておけば大丈夫です。
行政書士
行政書士試験は6割とれれば合格となります。
そのため、試験特性に合わせた無駄のない効率的な学習を心がけましょう。
基礎法学
出題範囲が広く、2問しか出ないので得点効率は悪いところです。
過去問で出題されるものを中心に押さえておくようにしておけば十分です。
憲法
学習範囲は狭いですが、全体の1割の配点があり、得点効率が良いところです。
また比較的難易度は低いです。
テキストと過去問の繰り返しで得点源にしましょう。
民法
行政法に次いて配点割合が大きい科目です。
事例問題が多く、条文・判例を理解するときには、それが具体的にどのような場面で適用されるのかをイメージしながら学習を進めまましょう。
ここを得意科目にできると大きいです。
行政法
行政書士試験で最もウェイトが大きい科目で、行政書士最重要科目です。
問題をこなした分、得点は伸びますので問題演習を丁寧にしてください。
「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」は、条文からの中心となりますので、過去問の演習が有効です。
絶対に苦手科目にしないでください。
商法
基礎法学と同じく、配点が小さく得点効率の悪いです。
5問出題されますので、2~3問の正解を目標にしましょう。
頻出する「株式」で過去出題されたところは絶対に間違えないように、知識を固めておけば十分です。
政治・経済・社会
出題範囲が広く、学習すべきところを絞りきれない科目です。
あまり時間をかけて勉強するよりも、日頃からニュースや新聞などを意識的に読むようにして時事対策をしてください。
情報通信・個人情報保護
法律科目と同じく、過去問を中心に問題演習を丁寧にこなすことで、比較的容易に得点できます。
文章理解
長文読解なので問題文が長く、解答時間がかかるのが特徴です。
新聞の社説などの小難しい小論文を読むようにし、普段から論理的に文章をことを心掛ければ、読む力がついてきます。
宅建と行政書士のダブルライセンスまとめ
宅建の行政書士まとめ
- 宅建と行政書士のダブルライセンスを目指すならまずは宅建から勉強するのが良い
- 試験日は非常に近いので、同じ年に2つの資格を取得するのはほぼ不可能
- どっちの試験でも民法が曲者である
宅建士と行政書士は相性がよく、ダブルライセンスを取得することにより就職・転職活動のみならず独立開業まで視野に入れられる資格です。
難易度は行政書士の方がやや高く、法律系科目が多いのであまり法律に関する勉強がしたことがないとっつきにくいかもしれません。
ダブルライセンスを目指す際はまず宅建から取得するのが良いでしょう。
苦労して取得した分、宅建も行政書士も共にメリットが大きい資格ですので、ぜひダブルライセンスを生かして自分自身の市場評価を高めていきましょう!