中小企業診断士に合格後の登録方法と資格の活用方法について解説!

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中小企業診断士

平井東

「中小企業診断士の登録ってどうやれば良いのだろう」

「中小企業診断士の試験合格後の手続きが知りたい!」

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

難関である中小企業診断士の試験に合格するためには、大体1000時間以上の学習が必要だといわれています。

ただ、試験に合格しただけでは、中小企業診断士としてすぐに登録できません。コンサルタントとしての実務経験が必要なのです

ここでは、試験合格後の資格登録のルートや、流れを詳しく説明します。

それぞれのパターンでかかる費用や登録までのスピード、メリット・デメリットまで把握しておきましょう。

中小企業診断士として登録するための3つのルートとは

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中小企業診断士の1次試験に合格したあとは、3つの登録ルートのいずれかを選択します

どのルートを取るかで、かかる費用が大幅に変わりますし、難易度もそれぞれ違います。

各々の状況に応じて、最適なものを選べるようにしておきましょう。

1つ目のルートは、2次試験に合格したあとで、実務補習を受講する方法です。15日間以上の受講が条件となります。

2つ目は、2次試験に合格後、コンサルティング会社などで診断実務に従事することです。この方法も15日間以上の実務従事が条件となります。

3つ目は、2次試験を受けずに、中小企業診断士養成課程を受講する方法です。

一番費用がかからない方法は、2つ目のルートです。

なぜなら、実務補習や中小企業診断士養成課程の受講料が発生しないからです。

さらに、中小企業診断協会に入会するかどうかも選べるので、入会しなかった場合、入会金や年会費もかかりません。

中小企業診断士の登録に必要なのは、試験料のみとなります。しかし、2つ目のルートはなかなかハードルが高いです。

理由は、勤務先がコンサル業界であるか、中小企業にコネがないケースでは診断実務を行うことができないからです

実際、中小企業に知り合いなどがいて、2次試験合格後に診断実務をさせてもらえる人はほとんどおらず、この方法で中小企業診断士に登録できる人はごく少数です。

診断実務先がなかった人は、実務補習を受講するか、中小企業診断士養成課程をとるかという選択になります。

しかし、中小企業診断士養成課程は、3つのルートのうちでもっとも費用がかかります。

養成課程の受講料は一般的に100万以上であり、さらに受講する学校によっては300万円近くかかることもあります。

二次試験を受けなくてよい、実務補習先が見つからなくても大丈夫というメリットは大きいですが、経済的にかなり余裕がある人でなければ選択できないでしょう。

これらの理由から、実際は1つ目の実務補習を受講する方法で登録をする人が多いです

実務補習を受講する場合

補習の様子 中小企業診断士の一次試験の合格者が選択する最も一般的なルートが、2次試験に合格したあとで、実務補習を受講する方法です。

そもそも実務補習はなぜあるのかなど、受講方法について詳しく説明していきます。

実務講習がある理由

中小企業診断士の試験では、主に経営における基礎的な知識などが問われますが、実際には知識を得るだけでは現場で働くには不十分です。

なぜなら、この仕事には企業の経営上の問題の本質を見つけ、改善する力が求められるからです。

実際の経営コンサルティングでは、必要な情報を集めることからはじめなければなりません。

企業を視察すると、思わぬ方向からの解決が必要なケースも出てきます。

それらの経験を補うために、実際に現場で企業役員や社員の意見をヒアリングし、その会社の経営改善について考えさせてくれる実務講習があるのです

実務講習には費用や時間がかかりますが、知識では学べない仕事の本質に触れることができるので、中小企業診断士として活動する前に受ける価値は十分あるといえるでしょう

費用と受講方法

実務補習は受講料がやや高く、およそ15万円かかります

しかし、中小企業診断士養成課程を受講するケースと比較すると費用は大幅に安くなります。

中小企業診断協会への入会金についてですが、実務補習は中小企業診断協会が運営・実施しているので、実際はほとんどの人が入会することになります。

中小企業診断協会に登録すると、コネができたり仕事がもらえたりすることがあるようですが、それだけで仕事が軌道にのることは少ないです。

メリットとしては、資格の更新の手間が減ることがあげられます

実務講習では、企業の経営コンサルティングをする場合の流れを体験します。

まず、中小企業診断士2次試験合格者が、5〜6人でグループをつくり、グループごとに実務経験が豊富な診断士が指導員としてつきます。

そのあとで、グループは実際の企業に対しての経営診断や改善案をまとめ、指導員がアドバイスをしていくというものです。

ちなみに、グループ編成は中小企業診断協会が決めるので、知り合い同士で組むことはできません。

スケジュールについて

実務補習は5日間を1セットとして、3セット受けなければなりません。

1回ずつ実施する5日コースと、3回連続でおこなわれる15日コースがあります。

1セット5日間の内容ですが、1日目はグループメンバーの顔合わせをし、2日目以降から企業の資料分析や調査、5日目に診断書を企業に提出するというものです。

2日目と3日目は分析と診断報告書の作成期間となりますので、グループ内で連絡を取り合うことができれば、集まる必要はありません。

実際は15日間のうち、9日間を使って診断報告書のまとめと企業への結果報告をおこないます。

15日コースと5日コースはどっちがいいの?

15日コースと5日コースどちらを受講しようか迷うと思いますので、受講期間やメリット・デメリットを説明します。

まず、15日コースですが、毎年2月に実施され、年1回しかありません。5日コースは2月、7月、9月にあります。

15日コースのメリットから説明します。まず第一に、受講が1回で済むことです。一刻も早く中小企業診断士として活動したい人、もしくは意識が視座が高い人が選択することが多いです。

第二に、15日同じグループメンバーと顔を合わせるので、仲良くなりやすいです。中小企業診断士として横のつながりを作ることができます。

逆に、15日コースのデメリットは、拘束される期間がかなり長いことです。まとまった時間が取れる人しか受講できません。また、費用はおよそ15万円かかります

一方、5日コースのメリットは、1回あたりの拘束期間が短いので、仕事を別に抱えている人でも受講しやすいという点です。

費用は1回約5万円になります。合計費用はどちらも同じですね。デメリットは、早めに登録したい人には向いていないという点です。

3セット受講しなければならず、2月から受講しても最短で9月まではかかります。

15日コースと5日コースのメリット・デメリットを自分の状況と照らし合わせ、都合のよい方を選びましょう。

実務講習で作成する診断報告書とは

診断報告書は、経営戦略、営業・マーケティング、生産管理・運営管理、財務・会計の4つの章に分けられます

これを2次試験の科目と同じように、グループで分担して、1人1章を担当します。

企業によって経営状況が様々なので、ケースバイケースで経営情報システム(IT活用)や人的資源管理(人事強化)の章も作成します。

人によっては、知らない人とのグループ作業は少々ハードルが高いと感じるかもしれません。

しかし、メンバー全員が中小企業診断士の2次試験合格者で共通言語も多いため、コミュニケーションについてそれほど心配する必要はないです。

合格した後にコストはかからない?

実務講習を修了し、登録したあとは資格の維持コストはかかりません。

ただ、中小企業診断士は5年に1回の資格更新が義務付けられており、コンサルタント業務を実際におこなった実績にプラスして、理論更新研修の受講が必要です

実務については、5年で30日間(30ポイント)以上の実績が必要です。

30日間というのは、中小企業診断士として働ける場所がある人は問題ないと思います。

しかし、個人で動いている場合、企業とのコネクションがなく、実務従事がなかなかできないことがあります。

もし大手企業に勤めているのであれば、購買課に相談してみましょう。取引先の中小企業からの経営相談を紹介してくれることがあります

それ以外には、中小企業診断士協会に登録しておくのもひとつの手です。年会費はかかりますが、さまざまな分野での研究会があり、先輩の中小企業診断士の紹介などで仕事が見つかりやすくなります

機会があれば、合同コンサルに参加することもできます。また、資格の更新には、専門知識補充要件として、理論更新研修を5年間で5回受講しなければなりません。セミナー1回につき約6000円かかります。

中小企業診断士協会には入会するべき?

デスクの上 中小企業診断協会へ入会する場合、年会費が3万円〜7万円ほどかかります(支部によって異なります)。

入会は任意なので、メリット・デメリットを把握したうえで判断しましょう。

主なメリットは、実務従事や理論更新研修の要件を満たしやすくなり、5年に一度の資格更新がスムーズにいくという点です

実務従事とは中小企業のコンサルを実際におこなうことです。

個人では案件を見つけるのがむつかしい場合でも、入会していれば中小診断協会が中小診断の機会を設けてくれます。

理論更新研修についても、入会していれば1回6000円で受講できますが、入会していない場合は2〜3割ほど受講料が上がります

さらに、中小企業診断士コネクションができ、仕事の幅が広がるというのも大きなメリットです。

ちなみに、中小企業診断協会への入会は、試験合格後の3年以内にしかできないので注意しましょう。

資格をとってから、企業内診断士になるのか、独立するのかによっても、中小企業診断協会へ入会する必要性は異なります。

独立する場合はメリットが少ないように感じますが、コネクションが広がるという点で有益なケースもあります

メリット・デメリットを踏まえ、どうするか決めましょう。決められない場合は、先輩の企業内診断士に相談してみるのもひとつの手です。

中小企業診断士資格の活かし方

コンサルティングの様子 中小企業診断士の資格を取れば、将来への選択肢が広がります。得られる知識やスキルをさまざまな業種で活かせるからです。

受験の前に、資格取得後のキャリアアッププランを考えておきましょう。

職場でのキャリアアップ

資格の取得過程で得られた知識やスキルはビジネス全般に活かすことができ、現在働いている職場でも役立ちます

以前は、独立のために中小企業診断士の資格を取る人が多かったですが、多様性が求められるビジネスシーンにおいて、職場での昇進や人事異動など、キャリアアップのために取得する人も増えているのです。

実際に、資格取得を奨励している企業もあり、昇進の参考にされたり、資格手当受給の対象となったりすることも増えています。

中小企業診断士の似た資格に、MBA(経営学修士)がありますが知識分野が異なります。

企業において、経営や戦略に携わりたい場合は中小企業診断士の資格を取るのがよいでしょう。

他の資格との相乗効果

中小企業診断士の資格は、他の専門分野の資格と併せて持つことで魅力が倍増します

その領域においての専門的な視点以外に、経営面からみた問題点を提示できるからです。

解決策がどちらか一方向になることに比べ、説得力が格段にアップします。

さらに、営業先の企業の専門分野の資格と、中小企業診断士の資格を2つ持っていれば、コンサルタントとして採用される可能性も上がります

改善策についても、より的確な提案をできるでしょう。また、経営コンサルタントの仕事は、AIにとって代わられるリスクが少ないといわれています。

中小企業診断士と他の専門分野の資格を持っていれば、時代が進んでも十分活躍の場があります。長期的に考えても、取得する価値は高いのです

独立して収入アップ

資格を取得し、中小企業診断士として独立する方法もあります

ある程度の経験は必要ですが、顧客が集まれば企業内診断士として働くよりも高年収がのぞめます。

ただ、いきなり独立してやっていくのは難しいので、週末に講演や執筆など地道な活動をし、準備を整えていきましょう。

独立する場合は企業診断士の仕事以外に、多くの雑多な業務が生じるので、その点も含め計算しておきましょう。

また、女性の経営コンサルタントの需要は年々高まっています

男性コンサルタントとは違う、女性ならではの細かい視点で提案をしてくれるからです。女性の中小企業診断士は男性に比べると圧倒的に少ないですが、資格が取得できれば、差別化がはかれるので独立しやすいです。

さらに、独立すれば自分のペースで仕事ができ、プライベートを充実させられる点も魅力です。

中小企業診断士はさまざまな活用方法がある資格!

中小企業診断士の資格を取れば、企業の経営コンサルタントとしての仕事や独立はもちろん、職場でのキャリアアップも期待できます。

また、人や企業が複雑に絡み合う経営コンサルの仕事は、AI時代でもなくなるリスクが低いです。

中小企業診断士の資格は、自身のステップアップという面でも、長期的な目線でも、取る価値は十分あるといえます。

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