司法書士は儲からない?廃業してしまう理由と廃業しないために必要なこと

更新日時 2020/01/26

司法書士は、弁護士に次いで難しいとされる司法書士試験に合格しないと資格を得られません。

苦労してやっと手に入る資格ですが、実は司法書士は儲からないだと言われることもあり、廃業者も少なくないと言われています

そこで、司法書士の売り上げが伸びず廃業してしまう理由と廃業しないために必要なことについて解説します。

また、万一廃業してしまった後の転職先に関する情報も紹介します。

司法書士の廃業についてざっくり説明すると

  • 基本的には独立しやすく廃業しにくい士業だが、近年は廃業率が高くなってきている
  • 廃業率増加の原因は主に司法書士数の増加や司法書士法人解禁などによる競争の激化
  • 営業力を身につけることや専門分野を持つことが生き残りの鍵
  • 廃業してしまった場合でも複数の選択肢を取ることができる

司法書士は廃業する人が少ないって本当?

道筋のイメージ

弁護士や行政書士など他の士業に比べて「司法書士は廃業する人が少ない」という話を聞いたことがないでしょうか?

そこで、実情はどうなのかを解説していきます。

司法書士はすぐ独立・開業ができる

司法書士は試験の合格が難しいとはいえ、合格後は研修さえ受ければ誰でも開業することができます

研修中は業務を行えないわけではなく、司法書士事務所に勤めながら受講することも可能です。

また、司法書士の試験科目は登記手続きなど実務を想定したものが多く、試験に合格したら実務で役に立つ知識を身につけたと言えるので、合格後に独立開業することはさほど困難ではありません

さらに、司法書士の独立開業には事務所の開設が必要ですが、電話機やパソコンといった一般的な事務機器とソファやデスクなどの応接設備だけで司法書士会への入会が認められます。

そのため、初期投資に多額の費用をかける必要がありません。したがって、司法書士事務所を開業することは、他の業種より容易だと言えるでしょう

司法書士の廃業率は実は増加中

競合者の増えた司法書士の廃業者は年々増えつつあります。先述したように、独立開業が簡単なので開業者数が増えた分、競争が激化し生き残れなかった書士が、司法書士会の会費を払えず廃業に追い込まれているのです

平成24年度では業務廃止という事由で司法書士の登録を取り消した者の数は536名で、平成4年度の200名に比べて2.7倍にも増えています。

司法書士会の登録会員数が20パーセントほどしか増えていないことを考慮すると、廃業者数の増加が急激であることは明らかでしょう。

なぜ司法書士を廃業してしまうのか

これほど多くの廃業者がいるという事実の背景には、司法書士界独特の事情があります。

合格率4パーセントと言われる難しい国家試験に合格したのに、せっかく開業した司法書士事務所を閉じざるを得ない原因の大半は、想定以上に経営が厳しく継続が不可能になったからです

経営状態に問題は無いのに、司法書士より良い業種が見つかったから廃業するという人は少ないでしょう。

以下では廃業の原因について、外的要因と内的要因に分けて説明します

司法書士を取り巻く業界の厳しさ

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司法書士が廃業してしまう外的要因は2つ挙げられます。外的要因とは、司法書士を取り巻く環境の変化などです。

司法書士だけでなく関連する業界からの同種業務の参入も、司法書士の仕事を減らす要因となっているのです。

こうした司法書士を取り巻く業界の厳しさについて解説しましょう。

同じ法律を扱う士業との競合

外的要因の1つ目は、隣接士業との競合です。司法書士の隣接士業とは弁護士や行政書士のことです。

弁護士は紛争性のある案件について訴訟や示談の代理業務を担当し、特に裁判の代理人として活躍することは知られている通りですが、司法書士とは小額民事訴訟や相続問題で競合することがあります。

司法試験制度の改革により新司法試験が開始されることにより、旧司法試験では数パーセントだった合格率が20パーセント以上に上昇して弁護士会登録者数も飛躍的に増加しました。

毎年1500人から2000人の司法試験合格者が生まれるようになって、2008年からの10年間で約25000人から約40000人へと60パーセントも数を増やした弁護士は、他業種と競合する場面が増えていったのです

また、行政書士の数の増加も、司法書士の経営を脅かしていると言えます。行政書士は、建築確認や法人設立など行政機関への提出書類を作成することが主な業務ですが、商業登記の場面で司法書士と競合することがあります

行政書士もロビー活動で業務範囲を着実に拡張しており、司法書士には脅威となりつつあると言っても過言ではないでしょう。

こうした「同業他社」の増加によって、司法書士の受注できる仕事の数が減少しているのは事実です。

司法書士法人の増加

外的要因の2つ目は、司法書士法人の増加です。

2003年に行われた司法書士法の改正により、従来は個人開業のみに認められていた司法書士事務所の法人化が解禁されました。

これにより、司法書士法人の数は2009年からの10年間で219法人から624法人と3倍近く増えています

法人化されることにより、税制や福利厚生面での優遇措置を受けられることになって経営面でもメリットが大きいため、個人事業主よりも優位に立てます。

また、広告の自由化や報酬の自由化などの規制緩和も行われて、インターネットやテレビなどで大手法人が大々的な宣伝をするようになりました。

報酬の価格競争も激化し、特に法人の多い東京などの大都市圏で個人事業主の司法書士が生き残るのが容易ではありません。

開業した人のスキル不足

時計の写真 一方、内的要因としては、司法書士本人のスキル不足を指摘しなければなりません。

スキル不足に関しては2つの要因が挙げられます。こうした要因についてひとつずつ説明していきましょう。

営業力がない

司法書士本人のスキル不足の1つ目として、顧客を開拓するために不可欠な営業力の不足が挙げられます。

司法書士になった後すぐに他の事務所に勤めていると、自分で仕事を探さなくても事務所から依頼された業務だけをこなしているだけで給料をもらえます。

これでは、新規の顧客を開拓するスキルが身に付きません。

いざ自分で開業してみると、集客のために何をしたら良いのかわからず困ってしまうことがあるのです。

当然ですが、独立開業したら継続的に新規の顧客を自力で獲得する努力が欠かせません

司法書士業務に関して高いスキルを持つ優れた司法書士でも、営業力がないと新規の仕事を見つけられず経営が行き詰ってしまうでしょう。

人脈がない

司法書士本人のスキル不足の2つ目として、同業者・顧客などの人脈が作れないことが挙げられます。

司法書士には重要な案件を依頼することが多いので、信頼が第1です。

信頼を得るためには、人脈の重要性を無視することはできません。同業者や顧客の人脈が無いと、未経験でいきなり独立開業しても実績の無い司法書士に依頼する顧客が自然に集まってくることは望めません。

試験勉強では学べない実務上のスキルを伝授してくれるベテランの同業者がいないと、開業当初から自己流の非効率的な経営となりかねないでしょう

実務経験の豊富な同業者の人脈を積極的に作ることができれば、業界の情報や動向を教えてもらえます。

効率的な顧客獲得方法や売上向上のためのアドバイスも教えてもらえるので、無駄な遠回りをせずに安定した経営ができるようになるでしょう。

同業者に依頼が重なって業務が追いつかない時には、顧客を紹介してもらえることもあります。

また、司法書士以外の関連業種の人脈も重要です。不動産業者と人脈があれば、不動産売買の際に必要な移転登記の業務を紹介してくれます。

さらに、顧客の人脈がなければ、新規の依頼者を実績のある既存の競合事務所に取られてしまう可能性が高く、新規の顧客獲得は容易ではありません。

顧客の人脈があったら、顧客間の口コミで新たな集客に結びつけることも可能です。

司法書士を廃業しないために必要なこと

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では、司法書士業を廃業しないためには何をしなければならないのでしょうか?

安定した経営を継続するためのポイントを3つ紹介しましょう。

ポイント1.営業スキルを磨く

どんなに登記など司法書士としての事務処理能力が高くても、顧客を集める営業スキルが無ければ経営を続けることは難しいでしょう

営業なくして経営は望めません。営業スキルを磨くことは、司法書士の新規顧客の開拓や人脈づくりのために不可欠なのです。

営業スキルとは、これから司法書士に依頼しようとしている顧客の信頼を得ることだけではありません。

業務終了後も顧客に困ったことは無いか尋ねるなど、きめ細かいアフターケアを行っていくことも重要な営業活動の1つです。

すべての顧客に平等に丁寧な対応をして、司法書士というよりも人間として信頼に足る人物だとわかってもらうことが営業には重要なのです

営業と言っても、一昔前のように飛び込み営業をすることは禁じられています。

代わりに、無料相談会を開催すると顧客獲得に繋がることもあります。無料相談会では、名刺を配って世間話をするだけでも事務所のある地域の住民と交流ができるので、有効だと言えるでしょう。

ポイント2.経営管理能力を身に付ける

営業が奏功して顧客獲得ができても、経営管理能力がないと安定した経営は難しいでしょう

経営管理とは、収支をきちんと把握して実効性のある長期計画を立て最低限赤字を出さないよう気を配ることです。

事務所を運営するには、賃貸料や光熱費のほか法務局への出張費など様々な費用がかかります。また、司法書士として業務を行うため司法書士会に登録するだけでも、年間30万円もの会費を支払わなければなりません。

こうした出費に対して、収入を得られる時期は不安定で把握が容易ではないのです。

司法書士の得る報酬は案件によっては多額のケースもありますが、支払いが業務修了後の半年間も経過してからということも珍しくありません

このように収支のバランスが崩れると、資金繰りが上手くいかなくなり、短期間の廃業に繋がると言われています。

ポイント3.事務所の専門性をアピールする

司法書士事務所はたくさんあるので、依頼者はどこにしたら良いのか迷います。

その際に考慮要素として、どんな分野に特化した事務所であるかという視点を持つことは通常だと言えるでしょう

不動産移転登記・不動産保存登記から相続まで何でもやるという「何でも屋」の事務所は、低価格の報酬など別のメリットが無い限り、これといった特色が無くかえって敬遠されるかもしれません。

他事務所と差別化を図り専門分野をアピールすると、依頼者も選定しやすくなります

ただし、あまり専門分野を絞りすぎてしまうのも問題です。

司法書士に関する法改正は頻繁に行われているし、競合相手の進出なども予想されるので、専門分野が狭すぎると仕事が激減するおそれもあるので注意しましょう

やむを得ず司法書士を廃業したらどうする?

ビリヤードのイメージ 経営が上手くいかずにやむを得ず司法書士を廃業したとしても、その後司法書士の能力を生かしていろいろな仕事ができます

司法書士廃業後にどんな職業ができるについて、他事務所で司法書士の仕事を続ける場合と全く異業種に転職する場合という2つのパターンを紹介しましょう。

他の事務所に就職する

独立開業した事務所を閉じた後、また司法書士として働くために他の事務所に勤労者として就職するという選択肢があります

ただし、人脈でもない限り、一度独立開業した司法書士が他の事務所に採用される可能性は高くありません。

というのも、一旦経営者としての経験のある司法書士はすでに独自の業務スタイルを確立させているため、雇用しても事務所とやり方が合わず使いにくいというデメリットがあるからです。

こうした廃業者に関しては、廃業の経歴も周囲の同業者には明らかなので、廃業の事実を隠して他の司法書士事務所に再就職することは不可能だと言えるでしょう。

全く違う職業に転職する

このように困難を伴う司法書士事務所への再就職を諦めて、司法書士という業種にこだわらず、全く別種の業界に転職する選択肢もあります。

司法書士のスキルを生かしながら仕事ができる異業種とは、どんなものがあるのでしょうか?2つのケースを紹介しましょう。

一般企業のバックオフィス

司法書士以外の転職先として、一般企業のバックオフィスが挙げられます。

司法書士は会社経営に欠かせない重要書類の作成も手がけるので、経営や経理などの分野で事務処理の仕事をこなすことができます。

司法書士の業務は正確性が要求されるため、こうした細心の注意が求められる業務が向いていると言えるでしょう。

また、一般人の悩み相談を受けてきた司法書士は会社の事務サポートとして相談業務にも長けており、一般事務や営業事務として他の社員のサポート役を務めることが可能です。

不動産業界

不動産登記などに関わってきた司法書士は、不動産業界への転職も視野に入れることができます

法務局に通って不動産の売買や相続を原因とする移転登記や保存登記を手がけてきた経験があれば、

これまで学んだ法律の知識を生かせる不動産業界への転職がおすすめです。

たとえ、司法書士として不動産分野を専門としていなかったとしても、既に司法書士試験の勉強の段階で不動産登記や商業登記に関する知識を十分身に付けているので、不動産営業や不動産事務として即戦力になれます。

司法書士から転職する際の注意点

司法書士から他業種へ転職する際には、いくつか注意点があります。

企業の立場から見ると司法書士よりも社労士や行政書士の方がニーズが高いため、司法書士という資格だけを全面的にアピールしても採用につながりにくいのです。

そこで、司法書士という資格以外にも付加価値があるという点をアピールしなければなりません。

司法書士という資格を得るために学んだ知識を生かせるのは法務だけではなく、法務知識の必要な営業やコンサルタントなど様々な業種もあるのです。

これらのことを忘れず柔軟な思考で転職を目指せば、自分に合った職種を選ぶことができるでしょう。

司法書士を廃業しないために必要なスキルを身に付けよう

司法書士の廃業についてまとめ

  • 司法書士の廃業率は依然として低い水準だが、依然と比べると上がってきている
  • 他士業との顧客の奪い合いも発生してきている
  • 万一廃業してしまっても、司法書士として身につけた知識は転職やその後の仕事に生きる

合格率約4パーセントの司法書士の試験に合格することは容易ではありません。

それにもかかわらず、司法書士業界は甘い世界ではなく、廃業者もやはり一定数いらっしゃいます。

苦労して設立した事務所を廃業させないためにも、専門分野に特化し営業や経営管理の能力を高めるようなスキルを身に付けて、売り上げを伸ばし経営を安定させる工夫をしましょう。